「なんか適当に好きなもの飲んでいいよ」

リビングのソファに腰かけて、テレビを見ている道重さんに言われて、ためらいながらも冷蔵庫を開けた。
2Lのペットボトルと、缶が何本か入っている。ぶどうの絵が描いてある缶を手に取り、冷蔵庫を閉めた。

テレビに夢中になっている横顔に思わず笑顔が漏れる。隣に座り、缶ジュースを口に含んだ。ぶどうの風味と炭酸の刺激。道重さんの視線を追って、わたしもテレビに目をやった。

だんだん熱っぽくなってきた。暖房が効きすぎているのかと思ったが、ついてさえいなかった。
風邪を引いたのかもしれない。うつさないうちに帰らないと。

「あの、道重さ…」
「あー!リンリン」
「え?」
「これお酒じゃん、お酒」

おさけ?これ、ジュースじゃないの?すっかり飲み干してしまった空き缶に目をやると、小さな字で“これはお酒です”と書いてあった。
どうしよう。

少し混乱した。わたしはまだ19歳で、日本では20歳にならないとお酒は飲んじゃだめで…
どく、どく、といつもよりもずっと大きく響く鼓動。酔うってこういうことなんだ。「わあ…リンリン、かわいー」

目を輝かせてわたしの頬を包む。ゆっくりと顔を近づけられ、口づけを受ける。キスをしたままソファに押し倒された。
いつものように。ただ、なんだか、わたしはいつものわたしじゃないようだ。
わたしの首筋にキスを落とす道重さんの肩を押して、そのまま体勢を入れ換えた。いつも見上げる表情を見下ろす。
驚いた表情。これを、めちゃくちゃにしたい。快感に歪む姿を見たい。その欲望に突き動かされ、わたしは道重さんの首に顔を埋めた。

細くて白い首筋。吸いつくと、すぐに赤い痕が残った。うわずった声が唇から漏れる。いつもあたしに触れる唇。その赤さに胸が疼いた。
鎖骨にキスをして、胸に手をやる。柔らかくて、なんだか安心する。

「リン、リッ…ン」
「道重さん…好きです、ほんとに」

凄く切ない。本当に切ない。眉根を寄せ、頬を赤く染め、甘い声を漏らす道重さんを見ていると、胸の奥のほうがきゅーっと締め付けられる。
溢れる気持ちを全て言葉にしたいのに、できない。だから、代わりに口づける。

「痛く、ないですか…?」
「…っ、うん」

指をゆっくりとさしこむ。そこはすっごく濡れていて、いつもわたしの耳元で「すごく濡れてるよ」なんて言ってるくせに、と思うと少し嬉しかった。
どこが気持ちいいんだろう。ゆっくりと動かした。びく、と揺れる体。同じところを執拗に触れると、道重さんの呼吸がだんだん乱れてきた。

「…はっ、あっ……リンリン、もう、さゆみっ…」
「…え?」
「だめ、も、あぁっ…」

中指だけでなく人差し指も入れた。さっきよりも少し動きを速めると、道重さんはわたしの肩をつかんだ。
そして、締め付けをいっそう強くし、体をびくびくと震わせ、道重さんは果てた。

さっきからずっと、心臓がドキドキ鳴ってる。これは、酔いのせいなのか、それとも。

肩で息をする道重さんの、乱れた髪を耳にかけた。濡れた唇にキスをする。
舌を絡めると、首に腕を回された。ゆっくりと体を沈めていく。
道重さんの腰に手を回し、いっそう深く密着した。

道重さんはとても色っぽくて、さっきから鼓動がずっと速く鳴ったままだ。
忘れたくない。この表情を。そして、誰にも見せたくない。

「…あの」
「ん?」
「もう、一回しても、いいですか?」

意を決して尋ねたら、黙ってうなずいてくれた。頬を赤らめて。その頬をなでて、キスをした。

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