お疲れさまでしたーと、挨拶が飛び交う舞台裏。コンサートが終わり、気持ちの良い疲労感が体を包む。
汗をふき、水を飲んだ。衣装を着替えるために楽屋へ帰ろうとしたら、大好きな後ろ姿が目の前にあった。
駆け寄って抱きしめると、リンリンは驚いたような声をあげた。

「お疲れさま」
「お疲れさまです!今日も楽しかったですね」

屈託のない笑顔に胸が弾む。ふと、唇に視線が釘付けになった。

「あれ、リンリン、リップがなんか…」

くずれたリップを拭うように唇を指でなぞった。ぞく、と背中に何かが走る。

キス、したい。

誰もいない廊下。リンリンの背中は壁に預けられていて、今、あたしが覆い被さってるような体勢。
ゆっくりと近づく唇。あと少しで、重なる。心臓の鼓動がやけに大きく聞こえた。

「もぉーカメはほんとにだらしないなあー」
「ガキさんにだけは言われたくないですー」

人の気配に、体を離した。リンリンは不思議そうにあたしを見上げている。

「…あ、リップ、大丈夫だよ」
「はい、ありがとうございます!」
「あ、さゆみーん」

手を振るガキさんに歩み寄る。さっきのことは無かったかのようにして。
指先には、リンリンの唇の熱が、鮮明に残っていた。

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