小ネタ458

初出スレ:5代目458〜

属性:




彼の温かい腕と手の平を背中と腰に感じる。
体温も、呼吸も、逞しい体つきも全て服越しに伝わってきた。
優しく抱きしめられてはいるのだけれど、シーツの上で身じろぎしようとすると制されてしまう。
仕方なく目線だけでもずらしてみると、暗い部屋の中彼の首元が目に入った。
私とは違う、茶色い肌。
2、3年前、今より子どもだった時はこの肌がどうしてもチョコレート色にしか見えなかった。
今でもたまに、この肌を舐めてみたら甘い味がするのだろうか、
なんて思うことがあると知られたら彼は笑うだろうか。

―なんで私抱きしめられてるんだっけ・・・
どうにも頭がぼーっとして、上手く思い出せない。
でも経緯なんて、どうでもいいと思った。
なんとなく、今までぶらりと力を抜いていた腕を持ち上げる。
出会った頃はこの筋肉バカの背中に両腕を回しても届かないくらいだった。
でも今の私は背だけならば大分伸びたので、簡単に手と手が触れ合う。
そうして少し力を入れて抱きしめ返してみると、今度はもっときつく抱きしめられた。
破壊締めかと思うほどの力に驚いていると、彼は私の首に顔をうずめて息を吐いた。
その吐息が首に当たって、ぞわぞわする。

確か昔もこうやって抱きしめてくれた。
私はあの時間が大好きで、この腕の中にいるととても落ち着いた。
今もそれは変わらないはずなのに、どうしてこんなに落ち着かないんだろう。
なんでこんなに鼓動が早まるんだろう。
こうしていることが何よりも好きなはずなのに、何で切ない気分になるんだろう。
もう、昔とはきっと違うのだ。
自分の体が成長するにつれ、彼との体格の違いが気になってくる。
男の子といるとこの人と比べてしまうし、彼が異性といれば心穏やかでいられない。
頭を彼の首にもたれかけさせて、ゆっくり目を閉じる。
自分の気持ちに、私はとっくに気づいていた。


関連ページ

続き→アレックスとルーシー

2011年03月24日(木) 18:45:07 Modified by tknt7188




スマートフォン版で見る