本気を出す

■とつげき東北


 少年漫画「ドラゴンボール」等の戦闘系マンガにおいては、敵だけでなく主人公たちまで、最強の状態を引き出すまでに何段階もの「本気」を出さなければならない。これは、同じ戦闘を延々と繰り返すよりも、戦闘を長引かせて連載を続かせつつも、読者に飽きられないための新しい戦闘展開を演出し続けるための技巧である。それによって少年たちは、登場人物が本気でなかったことに衝撃を受け、その冷静で余裕のある態度に感嘆し、さらに激しくなった戦闘に酔いしれるわけである。

 だが、本気を段階的に出し続ければ次々とパワーアップできるのは、それがマンガだからである。
 このことをうっかり忘れ、自分の奥底に隠れているはずの能力ややる気を過信し、現在の自分とは別様の本当の自分が存在し、本気を出すことにより比較的容易に本当の自分を引き出して状況を変化させられる、と信じている人も一般には少なくない。

 筆者が予備校や大学に通っていたころ、試験が近づくにつれて、こちらが赤面してしまうほど大真面目に「―」宣言を繰り返していたものの、一向に学力が上昇しなかった生徒が周囲に少なからずいた。
2006年05月06日(土) 17:22:17 Modified by totutohoku




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