タグ検索で!859◆93FwBoL6s.29件見つかりました。

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リビングメイルと苦学生 7

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  上半身。下半身。そして、左腕。  朝、アパートを出る時にはいつも通り繋がっていたはずの彼女が、三分割されて居間の畳に寝かされていた。正視したくなかったが、視線を逸らせなかった。銀色のヘルムは天井を映しているだけで、こちらには向かない。彼女の周囲では、茜が泣いている真夜を支えていて、ヤンマが胡座を掻いて苛立たしげに顎を噛み鳴らしていた。 …

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リビングメイルと苦学生 6

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  一秒でも早く、家に帰りたい。  授業を終えて下校した真夜は、アルバイトに向かう茜と自宅の方向が違うシオカラと別れ、一人帰路を辿っていた。左手に提げたスーパーの買い物袋の重みも、まるで気にならない。彼は何も食べないが、誰かがいるだけで違う。夕暮れに染まる住宅街を歩きながら、真夜は独りでに緩んでしまった頬を元に戻そうとしたが、上手く行かなか…

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リビングメイルと苦学生 5

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  好奇心は猫をも殺す。  興味を抱かない方が身のためだ、と常々思っていた。それが彼女のためであり、自分自身のためなのだと。だが、結局調べてしまった。そして、後悔した。挙げ句に忘れようにも忘れられなくなって、眠気が失せてしまった。  薄暗い天井を見つめながら、祐介は嘆息した。下半身には、求められるままに精を放った余韻が残っていた。今夜もまた、アビゲイルは祐介に迫ってきた。体を動かすための力を得るために、祐介の持つ生…

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リビングメイルと苦学生 4

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  洗濯物の詰まったカゴを抱え、狭いベランダに出た。  アビゲイルは力強い暖かさを含んだ日光を甲冑に浴びて、目を細めるような気持ちで、ヘルムの上に手を翳した。春めいてきたと思ったら、急に気温が増してきて日中は暑いくらいだ。ついこの間までは、あんなに寒かったのに。風に乗って舞い込んできた桜の花びらが、年季の入った木製のベランダに散らばり、淡い…

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リビングメイルと苦学生 3

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  午後八時を回ると、なんとなく気が抜ける。  夕食も食べ終わり、かといって風呂に入るには少し時間が早く、勉強に取り掛かるにはいくらか気力が足りない。祐介は頬杖を付いて意味もなくテレビを眺めながら、傍らで背筋を伸ばして正座しているリビングメイルに目をやった。アビゲイルは、明らかに西洋生まれのリビングメイルであるにも関わらず、純日本人である祐…

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リビングメイルと苦学生 2

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  夕暮れに染まる街を越え、古びたトタン屋根に足を下ろした。  下両足の黒い爪でトタンを掴むと、砂っぽい感触が伝わった。透き通った四枚の羽を下げてから、街並みを見渡した。駅前に立ち並ぶビルは半身を朱色に染め、周辺の民家は濃い影に埋まり、家路を急ぐ子供達の姿が複眼に映る。今日も特に異変が起きなかったことを安堵する傍ら、少々不満に思いつつ、ヤン…

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リビングメイルと苦学生 1

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  今日も良い天気だ。  窓と雨戸を開け終えたアビゲイルは、緩やかに流れ込んできた湿り気を帯びた朝の空気を感じ、気持ちを緩めた。こういう日は、布団を干すのに丁度良い。だが、その布団の主は、深夜まで根を詰めたせいか起きる様子はない。勉強机の上には教科書や参考書が散らばり、飲みかけのコーヒーが入ったマグカップがそのまま放置されていた。  アビゲ…

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リビングメイルと苦学生 8 完

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  目が覚めたら、彼女はいなかった。  眠ったつもりはなかったのに意識が落ちていて、腕の中にいた彼女の上半身が残りの部分と共に消えていた。その代わりに毛布が掛けられ、右手の傷が手当てされ、丁寧な字で書かれたメモがテーブルの上に残っていた。  ごめんなさい、ありがとう。大好きでした。と、広告の裏に書かれ、署名はなかったがアビゲイルの字だと解っ…

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虫の甲斐性

>シリーズ → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  戦いの余韻が残る体を、ベンチに預けた。  爪に付いた砂と土を払ってから、手近な自動販売機で買ってきた樹液ベースのドリンクを開け、喉に流し込んだ。胃の中に冷たく甘い液体が満ちていくと、少し温度の上がった体液も冷めていき、全身の高揚感も落ち着いた。  昼下がりの太陽の下、公園のベンチに座るヤンマは、背もたれと座面の間から出した長い腹部を…

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OLとシオカラトンボ 完

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  久し振りの快晴だった。  数日間に渡って降り続いた雨が止み、分厚い雲が途切れ、待ち侘びていた日差しが空から落ちていた。湿気が多かったせいで重たくなっていた羽も乾燥して軽さを取り戻し、水の匂いが残る風を切り裂いていた。眼下に広がる街並みでは、屋根や雨樋に溜まった雨水がきらきらと輝いていて、時折複眼を刺してきた。空の色はシオカラの外骨格よりも若干濃いが、複眼よりも薄いが、高度を高く保てば馴染んでしまうだろう。  シ…

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OLとシオカラトンボ 3

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  思わず、耳を疑った。  まさか、こいつの胸郭からそんな言葉が発声されるとは。ヤンマは心底驚きながら、背後に振り向いた。シオカラはいつものようにへらへらと笑っていて、ヤンマが殴り倒した五匹の羽アリ人間を片付けていた。街の上空を飛び回っていたヤンマに絡んできた連中で、路地裏に連れ込んで十秒と立たずに倒したのだ。そして、事を終えたヤンマが飛び去ろうとすると、どこからともなくシオカラが現れた、というわけである。  シオ…

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OLとシオカラトンボ 2

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  あれは現実の出来事だったのだろうか。  何度思い返してみても、夢だとしか思えない。だが、現実でなければこんなにも考え込まないだろう。綺麗なお姉さんに声を掛けられて連れ込まれて無理矢理、というのは童貞なら一度は考える妄想だ。実際、シオカラ自身もそれらしいことを考えたことは少なくなかったが、もちろん口に出したことはなかった。誰しもが一度は考える妄想だが、だからこそ、そんな出来事の当事者になってしまったことが信じられ…

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OLとシオカラトンボ 1

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  世界中のカップルは死ねばいいのに。  そうすれば、少しは気が晴れるというものだ。憎しみで人が殺せたら、と言う言葉が頭から離れない。普段は気にも留めない光景がいちいち癪に障り、八つ当たりしたくなるが辛うじて理性で押さえ込んだ。  夜に移り変わった街を行き交う雑踏の一部になりながら、ほづみは顔を強張らせて大股に歩いていた。そうでもしなければ…

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河童と村娘 番外編

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  夏の日差しよりも眩しい、白無垢を纏った花嫁が歩いていた。  付き人の手で赤い番傘を差し掛けられ、母親に手を引かれ、新郎を伴って神社の前を過ぎていく。新婦の後ろに付いている父親と思しき年配の男性は、紋付き袴に身を包み、厳かな表情だった。その後ろには親族や参列者が二列に並んでずらりと連なっていて、花嫁の門出を祝っていた。角隠しを被った花嫁の背後では、穂を膨らませた稲が風に揺らされ、さわさわと波打っていた。空はどこま…

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河童と村娘 完

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  どおどおどお。ごうごうごう。  山が、川が、啼いている。怒りに至る憤りで、澱みから成る妬みで、性に抗えぬが故の僻みで。風が狂い、雨が襲い、雷が猛る。その一つ一つには、荒々しくも生々しい情念が漲っている。人であろうとも、憎悪や嫉妬を滾らせた者を制するのは容易くない。それが神であるなら、尚更だ。  見慣れた風景が、見慣れぬ嵐に襲われていた。冷たい岩に座り込んだまま、呆然と凝視する。鉛色の雲から放たれた大粒の雨が木々…

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河童と村娘 3

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  雄々しい太鼓に、繊細な笛が重なる。  神社の鳥居を挟むように設置されている灯籠からは、ろうそくの暖かな光が零れ出していた。いつもは静まっている神社も今日ばかりは騒がしく、村の内外から訪れた人々で賑わっていた。本殿に繋がる石畳の両脇には縁日の屋台が軒を連ね、香ばしい匂いや甘い匂いが流れていた。  慣れない下駄を鳴らしながら石段を登った清美は、人々の間を擦り抜けて本殿前へと向かった。はしゃぐ子供達を避け、早くも出来…

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河童と村娘 2

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  待ち遠しかった夏休みが、この瞬間から始まった。  清美は教科書や辞書が詰まっている重たい通学カバンをものともせずに、全速力で走っていた。ツタの絡んだ校門を抜け、擦れ違った同級生達に別れの挨拶をしてから、アスファルトを蹴っていく。通学カバンのせいで半袖ブラウスの背中は透けるほど汗が染み、膝丈のプリーツスカートが煩わしい。かかとを履き潰してしまったローファーは走るのに向いていないので、何度か脱げてしまいそうになった…

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河童と村娘 1

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  一歩、一歩、軟らかい土を踏み締める。  たっぷりと水を含んだ腐葉土がスニーカーの下で潰れ、落ち葉の間から泥混じりの水が溢れ出した。木々の隙間から零れる日差しと夏の暑さで充分成長した雑草を、両手で掻き分けながら進んでいく。前回の自分の足跡を探したが、先日の雨で消えていた。だが、どこに行けばどう出るのかは把握している。逞しい木々の間を擦り抜けてきた頼りない風が汗ばんだ肌を舐めていき、一時だけ涼しさを与えてくれた。 …

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Evil love

&align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  全身が、鈍く軋む。  砕けそうな膝を起こして顔を上げると、胸部装甲を縦に分断している傷からオイルが零れ出した。視覚センサーを焦がす炎は凄まじく、双方の体から零れたオイルが煮え立って煙を発していた。無数のコンクリート片と折れた鉄骨の下から這い出すが、左足の関節は言うことを利かなかった。回路から送られたはずの電気信号が腰の辺りで途切れているので、ケーブルが切れたのだろう。だが、まだ倒れるわけにはいかない。アストロス…

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魔女と聖騎士

>関連 → [[ヤンマとアカネ>作品目録 シリーズ物#S2]] &align(right){&size(16){''859 ◆93FwBoL6s.様''}}  ただひたすらに、緩やかな時間だった。  膝の上には真夜が座っているため、人間椅子と化したアーサーは真夜の頭越しに意味もなくテレビを見ていた。風呂上がりなので真夜の肌は全体的にほんのりと上気していて、艶やかな黒髪は整えられて背に流されていた。全身鎧の膝の上では尻が痛まないのだろうか、といつも思うが、当の真夜は平然とした顔で雑誌をめくってい…

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