控え室 | |
亜子 | ついに初LIVEやね、Pちゃん! ここまで長かったような、あっという間やったような。 |
そうだ!せっかくの晴れの舞台だし、 会場の雰囲気を先にみたいんやけど、ええかな? | |
そんな心配そうな顔せんでも大丈夫! 人がいっぱいおってもビビったりせえへんよ。 ほらほら、Pちゃん、いこいこ! | |
亜子 | やー、そうきたか! お客さん、全然おらへんね!あはは! |
ま、そりゃ無名のド新人やもんね。 ひとりでも覚えてくれればめっけもん!みたいな? | |
ドラマや物語とは違うんだもんね。 そりゃ。こんなもんか。 ありがと、Pちゃん。もどろっか。 | |
亜子 | ふぅ……。もうすぐ出番やね、 ……ん?Pちゃん、どうしたん? |
脚が…… | |
亜子 | あ……あはは。震えてるの、バレた? 最後までビビりがなおってなくてゴメンな? |
人が少ない会場見たら緊張もほぐれるかなって思ったけど、 そう上手くはいかないもんだね。 | |
でも、いけるよね? | |
亜子 | ……うん。もちろん。 |
夢は努力しないと叶わない。大病はお金がないと治らない。 白馬の王子様は待ってても来たりしない。 現実は、物語みたいに優しくないよね。 | |
それでも、諦められないものがあるから。 現実を這いまわって、アタシはそれを手に入れてみせる。 そのために……やれることは全部やる。 | |
まずは、目立たなアカンね。 商売がたきの新人アイドルなんて山ほどおるわけやし。 | |
なーんも持っとらへんアタシが商売で切れる札は、ハッタリだけ。 だから今日も、かましてきたるつもり。 | |
今はハッタリの借金まみれでいい。 後で利子つけて返したる。その覚悟はもう決めてあるんよ。 だから──いってきます。 | |
亜子 | みんなー、おおきにー! 新人アイドルの、土屋亜子でーっす! |
まずは自己紹介やね! アタシの好きなものは……お・か・ね! | |
観客 | え?アイドルが、お金……? |
亜子 | ……おっとっと、みんなヒかんといて! だってそうやん? お金があれば、アタシはまたみんなと会えるんやもん! |
観客 | な、なるほど……。 そうか、歌も衣装も、いろいろ準備にお金がかかるのか。 |
亜子 | そういうこと! それとな……ファンのみんなにもお得な話があるんよ! |
新人のうちからアタシの投資しとけば、ぜったいお得! 今のアタシのサイン、将来めっちゃ価値でるで! | |
観客 | 将来……投資……?たしかにそうかも……? もしかしてこの子、大物なのか……? とりあえず、なんか面白い子が出てきたな! |
亜子 | ……お、ちょっと興味持ってくれた? じゃあここでー、歌っちゃおっかな。 |
アタシが将来の大スターになるって、みんなが信じれるように! | |
観客 | おおっ! いいぞーっ!信じさせてー! |
亜子 | アタシへの投資、超お得やったって言わせてあげる! さぁ、いっくよーっ!! |
亜子 | はぁー……!おつかれちゃーんっ! ただいま帰りましたーっ! |
お疲れさま | |
亜子 | うん、ありがとう。 アタシの初ステージ、どうやった? |
採用してよかったよ | |
亜子 | あはは。そう言ってもらえると、嬉しいなぁ。 アタシが最初にかましたハッタリも、 ちょっとだけ現実にできたってことかな。 |
でも、さっきもまた大きいのかましてきたし、 まだまだ始まったばっかりやね。 | |
これからも頼りにしてくから、一緒に頑張ってこな、Pちゃん! |
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