タグ検索で【光射す場所へ】66件見つかりました。

 1  2  3  4  次の20件

(77-955)光射す場所へ 第49話

「新しい仕事、どうですか?」 「おかげさまで順調だよ。鬱陶しい後輩もいないし」 「えー、衣梨奈そんなに鬱陶しくないですよ」 「自覚あるんじゃん」 里沙は食後の珈琲を飲みながらメールをチェックした。 盲学校を辞め、一般事務職に就き、もうすぐ8ヶ月ほどが経とうとしている。 めぐる季節をぼんやり眺めている暇はなく、新しい仕事に慣れるために急かされるばかりだ。 「にーがきさん、明日来れますよね?」 「あー、明日だったね。行くよ、さすがに」 「主役ですからね!」 「どこの世界に、半年以上前の退職記念を祝う人がい…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2877%2d955%29%b8%... - 2017年03月30日更新

(78-8)光射す場所へ 第50話

「………りほ、りほ……?」 月が静かに、顔を出す。 夜の街に照らされるように、彼女もまた、姿を現した。 彼女は何も言わず、さゆみの前に佇んでいる。 あの時より、少しだけ伸びた髪は、それでもまだミディアムショートという長さにしか足りない。 黒のトレンチコートに身を包み、不器用にポケットに手を突っ込んで。 前髪で目を隠し、さゆみの姿を映そうとはせずに。心さえも、隠そうとしながら。 かけるべき言葉が、見つからなかった。 あの時と同じだ。息苦しさに潰されそうになりながら、言いたいことが胸で閊える。 全身が震え…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2878%2d8%29%b8%f7... - 2017年03月30日更新

(77-880)光射す場所へ 第48話

行きたい場所があると絵里から告げられたのは、 れいなが北海道に出張する1週間ほど前のことだった。 今回の出張は、さゆみの何冊目かの写真集の撮影だった。 あの「事件」から、もうすぐ半年が経とうとしていた。 季節は巡り、れいなの傷も癒え、またいつものように、仕事に打ち込む日々が続いている。 愛佳の個展も無事に終了し、少しずつではあるが、彼女も「カメラマン」としての立ち位置を確立してきた。 もうれいなのアシスタントに入ることも、少なくなっている。 それは良いことなのに、何処か寂しくもあった。 さゆみの写真集撮…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2877%2d880%29%b8%... - 2017年03月30日更新

(76-650)光射す場所へ 第47話

「りほりほ……」 随分と久し振りに、彼女の名前を呼んだ気がする。 彼女は携帯電話を持ったまま、息苦しさを覚えながら唇を噛んだ。 こんなに近くにいたことを、後悔しているのかもしれない。 逢わないと決めていたのに、勝手に広島までやってきたさゆみの姿を一目見たいと願った自分の失態を。 それでも、観念するしかなかった。後悔したところで、過去は変えられない。 里保は深くため息をつき、「通話」を終えた。 ふたりの距離はまだ、5メートルほど離れている。 雨は変わらず傘に当たる。重い雨粒が、ふたりを遮る。 切り出す言…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2876%2d650%29%b8%... - 2016年08月11日更新

(76-551)光射す場所へ 第46話

その留守電を聞いた時に、鳥肌が、立った。 聞きたくて、聞きたくなかった、彼女の声。 それが告げるのは、破滅か、再生か。 私は覚悟を決める必要があった。  ------- それはそれは嫌味を言われたものだ。 一周回って、むしろ心配された。 あまりにもさゆみが休みを取りたいというものだから、マネージャーは体調不良どころか、心意的な問題を気にしていた。 新しくさゆみの担当になったマネージャーは、前任のサトウよりも年上だが、この業界に身を置いてまだ半年。 タレントの扱いには慣れていないらしく、こういう…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2876%2d551%29%b8%... - 2016年08月11日更新

(76-591)光射す場所への設定で他人が書いてみたよ編5

雨が、降る。 ずっと降り続けていて、やむ気配というものが全く感じられない。  ̄ ̄「前髪がうねって嫌になるの」 たとえ憂鬱な雨でも。今となっては宝物のような日々で、かけがえのない人の科白が思い出される。 −−馬鹿だ。愚かだ。 自分には、あの人を思い出す、そんな資格すらないのに。 それでも……。 雨が、降る。 −−否が応でも記憶の蓋が開いてしまう。 ………… モデル事務所の隅で、さゆみと里保は向かい合って明日の仕事の打ち合わせをしていた。 ふと窓に目をやると、激しく雨が降っていて。きっとこの雨は明日も…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2876%2d591%29%b8%... - 2016年08月11日更新

(76-474)光射す場所へ 第45話

風呂から上がると、仕事用のケータイがチカチカと光っていた。 着信を確認すると、依頼人と仕事先のカメラマン、そして非通知が3件になっている。 それだけならまだ良いが、留守電が、1件入っていた。 片方の眉が微かにぴくりと反応する。 留守電を聴かずに消去するかとも考えたが、結局「再生」を押すと、やはりそこからは、彼女の声が届いていた。 相変わらず、私は彼女に、勝てそうにない。  ------- 「まだ見つからないの?」 2杯目の麦酒に口を付けた新垣里沙の言葉に、同じく2杯目の生田衣梨奈の手が止まる。…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2876%2d474%29%b8%... - 2016年08月11日更新

(76-60)光射す場所へ 第44話

「さよーなら!」 「さよぉーならぁ!!」 元気な子供たちが、街の人たちに挨拶をしながら下校していく。 「知らない人でも挨拶をしましょう」とは、今の時代にそぐわないかもしれないが、良い教育だと思う。 それにしても大きな声だ。 道路に面しているとはいえ、マンションの3階のこの部屋にまで届くものかと苦笑した。 ぽつりぽつりと雨が落ちる音も混ざってきた。 朝から空を覆っていた黒雲が遂に泣き出したかと、陰鬱な気分を抱えて、ため息を吐く。 資料をデスクトップに保存すると、パソコンを閉じ、立ち上がった。 部屋の隅に…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2876%2d60%29%b8%f... - 2016年08月02日更新

(74-949)光射す場所へ 第43話

真紅にまみれた彼女が、倒れ込んでくる。 彼女の名を叫びながら目を覚ました。 もう何度目かの、悪夢だ。 汗の海に溺れ、「あぁ」と漏らす。 どれだけ時間が経っても、赦されることのない、罪だ。 大切な人を傷つけ、泣かせ、苦しめた私は、罰を受けなければならない。 繰り返し見る悪夢もそのひとつだけれど、私が受けた罰は、何よりも――― ひとつ息を吐き、立ち上がる。 引き出しの奥の、さらに奥、小さな箱の中にしまったそれを、取り出す。 ずしりと重い鉄の塊は、あの日と何も変わらない。 ぐっと銃口をこめかみに押し付ける。…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2874%2d949%29%b8%... - 2016年07月13日更新

(75-156)光射す場所への設定で他人が書いてみたよ編4

朝、ひどい悪寒と割れるような頭痛で起きた。 二日酔いかとも思ったけれど昨日は飲んでいない。 ̄ ̄ ̄ ̄そんなことを思い出すのも億劫なくらい、頭がボーっとしている。 ふらふらとベッドから出て、念のために体温計を取りに行く。 その間に床に散らばっている雑誌に蹴つまずいたり、脱ぎ捨てた洋服に足を縺れさせた。 体温計をキャビネットから出して、ワキに挟む。そのまま力無くソファに座った。 しばらくすると、体温計がピピッと鳴ったので、ワキから取り出して画面を見ると、38.2℃と表示されていた。 完璧な、夏風邪だ。 取り敢え…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2875%2d156%29%b8%... - 2016年07月21日更新

(74-243)光射す場所へ 第42話

静かな風が吹いていた。 私は彼女の手をそっと握り、頬に当てた。 血が通っているはずなのに、少しも温かくない手があまりにも寂しくて切ない。 この手は確かにあの日、私をこの世界に繋ぎとめてくれたはずの優しい手なのに。 「今日は風が気持ちいーよ」 そう、呼びかけた。けれども返事はない。 もう10日。ずっとこんな感じの日がつづいている。 それでも私は、あなたを待つ。 「今度は私の番だね」 世界はずっと真っ暗だった。 両親が事故で死んでしまったあの日から、私の中で光は消えた。 だけど、だけどね。 あなたに…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2874%2d243%29%b8%... - 2015年07月04日更新

(74-707)光射す場所への設定で他人が書いてみたよ編3

里保は喫茶店のテーブルに書類を広げ、コーヒーを飲みながらそれらに目を通していた。 ……これは来週の予定、これは経理に回して、これはチーフマネージャーと相談…… 「頑張ってるね、りほりほ」 里保の向かいの席には、さゆみが紅茶を前に、両手で頬杖をついて里保を眺めていた。 「……これが仕事ですから」 さゆみの微笑みながらの視線から逃れるように、コーヒーを飲み干した。 そこにちょうどウエイトレスが通りかかったので、おかわりを注文することにした。 「すみません、ブレンド一つ」 「はい、ただいま」 ウエ…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2874%2d707%29%b8%... - 2015年07月04日更新

(74-522)光射す場所へ 「独占欲」

「あんた仲良いんだから」 その言葉を受けた鞘師里保は、手帳を開きながら溜息を殺した。 「うまく説得しなさいよ」 もう何度、言われたことだろう。 「仲が良い」ことと「説得」とがつながらないといつも反論する。 だけどこの議論はどうにも噛み合わず、平行線を辿るだけだった。 「本人が嫌がっているじゃないですか。ドラマだけは断ると」 「舞台もね」 里保の言葉にチーフマネージャーは呆れたように頷いた。 彼女―――いま、カメラマンである田中れいなに撮影されているモデル、道重さゆみは、「演技」の仕事を断り続けて…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2874%2d522%29%b8%... - 2015年07月04日更新

(61.1-293)光射す場所へ 第41話

雨の海辺にはだれもいなかった。 そんな中で波打ち際に佇む私はずいぶん物好きかもしれない。 寄せては返す波の音を聞きながらふっと目を閉じた。 「ねぇ、似合う?」 ふいに、彼女が訊ねてきた。 眩しいくらいの太陽の下、肩にかけていたタオルを、胸元を見せつけるように広げて見せた。 私は思わず息を呑み、それと同時に彼女の両手を握って改めて胸元を隠させた。 「やめて下さい。男性のスタッフの方も多いんですから」 「へー。キミはスタッフを信用してないわけ?」 「そうじゃありませんけど……やっぱり、どうかと思います…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2861%2e1%2d293%29... - 2014年03月06日更新

(70-919)ストール

[[&ref(https://image02.seesaawiki.jp/e/r/e6esr/f62b825e4dc51a59-s.jpg)>https://image02.seesaawiki.jp/e/r/e6esr/f62b825e4dc51a59.jpg]] その姿を見て、私はまた無力だと思い知るんだ。 彼女を護ることなんて、私にはできやしないんだ―――  ------- この1週間は特にスケジュールが過密だった。 撮影、インタビュー、バラエティー、生放送……そしてボイトレだ。 モデ…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2870%2d919%29%a5%... - 2014年10月30日更新

(68.3-519)時空を超えww

とある街の午後4時を過ぎた時刻。 この時間帯には部活や委員会などに所属していない学生たちが次々と学校から出て街に散らばっていく。 これから帰る者、遊びに行く者、電車やバスを使う者――様々である。 そんな中。駅前という好立地に建っている大き目な一軒のビル――そのビル丸ごとが『カラオケ’14なの』という、 なんだか胡散臭い名前だが、れっきとした、そしてこの街で一番流行っているカラオケ屋で。 今回の舞台が始まるのである――。 101号。 「里ぃ保―、こっちっちゃん」 フリードリンクバーで、コップの縁…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2868%2e3%2d519%29... - 2014年07月04日更新

(67.4-748)光射す場所へ 「広島の夜」

[[&ref(https://image02.seesaawiki.jp/e/r/e6esr/ec2f9ec96d562086-s.jpg)>https://image02.seesaawiki.jp/e/r/e6esr/ec2f9ec96d562086.jpg]] そのまま空気に溶けてしまいそうなほどに、あなたは透明だった。 ねぇ、どうか、消えないで。 私はまだ、あなたになにも伝えられていないのに――― 「晴れましたね」 朝から聞こえていた雨声が消え、漸く空が開けた。 夕刻を過ぎ、夜を…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2867%2e4%2d748%29... - 2014年05月04日更新

(63-797)光射す場所へ 第36.5話「想いの痕」

「本日の撮影すべて終了です!お疲れ様でしたー!」 「お疲れ様でしたー!」 「おつかれーっす!」 時計の針がてっぺんで重なろうという直前、アシスタントである光井愛佳の声が響いてスタジオ内の空気が緩んだ。 田中れいなは、手元のカメラからパソコンに送り込まれたデータを確認した。 カチカチとマウスを操作し、カットの度に表情を変える彼女―――道重さゆみを凝視しながら、やはり、格が違うと生唾を呑み込んだ。 今日は彼女の事務所の後輩とふたりでの撮影だった。 まだあどけなさを残した10代の後輩と並んでも顕色のないさゆみ…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2863%2d797%29%b8%... - 2014年03月06日更新

(59-914)光射す場所へ 第40話

まるでだれかの涙のように、雨は静かに街に降りつづけた。 ある病院に入院していた男は、雨音に舌打ちし、トイレに行こうとベッドから降りた。 点滴架台とともに病室を出ると、廊下の先に髪の長い女の姿を見かけた。 男は直感した。あいつだ。オレをこんな体にしたあいつが此処に居る。 重い体を引きずるように走り出す。カラカラと車輪の音が響く。 角を曲がり階段まで向かうが、そこに女の姿はなかった。逃げたのか。 冗談じゃない。あいつはオレのものだ。だれにも渡さない。今度こそ手に入れてやる。邪魔はさせない。 病室に戻ろうと歩…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2859%2d914%29%b8%... - 2014年03月05日更新

(58-504)光射す場所へ 第39.5話

それは、ずっと前に封印されていた物語――― 道重さゆみはその日、朝から雑誌の撮影をしていた。 しかし、一昨日から始まった月経がさゆみの体調を狂わせ、良いカットが撮れずになかなか「OK」の声がかからない現場は、微妙な空気に包まれていた。 休憩中、自らの態度の悪さを反省しているさゆみのもとに、たまたま現場に来ていた雑誌のスポンサーが笑いながら話しかけてきた。 「どうしたの?さゆみんらしく、ないじゃん」 肩をポンと叩かれたさゆみは慌てて立ち上がり、テキトーな愛想笑いを返した。 この男は、へらへら笑って腹…

https://seesaawiki.jp/w/e6esr/d/%2858%2d504%29%b8%... - 2014年03月05日更新

 1  2  3  4  次の20件

メンバーのみ編集できます