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【定義】

道元禅師が、建仁寺に行った際、師として仰いだ僧。栄西禅師から臨済宗黄竜派の法を嗣ぐ。房号は仏樹房。道元禅師などを連れて中国に渡り修行したが、天童山で客死した。

生没年:元暦元年(1184)〜宝慶元年(1225)
出身地:伊賀国(道元禅師『舎利相伝記』に「伊州の人」と表記)
俗 姓:蘓氏

【略歴】

幼少時に出家し、比叡山に登った時には、杉井房明融阿闍黎を師とした。菩薩戒を受けて、顕密二教を修学した。また16歳の時に南都東大寺戒壇院で具足戒を受けていることが戒牒より知られる。後には、建仁寺の栄西禅師の会下に参じ得法した。また入宋する前には、後高倉院に対して菩薩戒を授けたともいう。そして、入宋の志が強かったが、受業師である明融阿闍黎の病が重く、決しかねていた。その様子を、道元禅師は以下のように伝える。
示云、先師和尚入宋せんとせし時、本師叡山の明融阿闍梨、重病に沈み、すでに死なんとす。〈中略〉時に先師、皆の議をはりて云、「各々の議定、皆とどまるべき道理なり。我が所存は然らず。今度止りたりとも、決定死ぬべき人ならば、其によりて命のぶべからず。また、我とどまりて看病外護せんによりて、苦痛もやむべからず。また最後に我があつかひ勧めんによりて決定生死を可離道理にもなし。ただ一旦命に随ひたるうれしさばかりか。是によりて出離得道のために一切無用なり。誤て求法の志を障へて、罪業の因縁となるべし。然に、若入唐求法の志を遂て、一分の悟リをもひらきたらば、一人有漏の迷情にこそたがふとも、多人得道の縁となるべし。功徳若勝れば、また師の恩報じつべし。たとひまた渡海の間に死て本意をとげずとも、求法の志をもて死せば、玄奘三蔵のあとをも思ふべし。一人のためにうしなひやすき時を空くすぐさん事、仏意にかなふべからず。依て今度の入唐、一向に思ひきりをはりぬ」とて、終に入宋しき。〈以下略〉 『正法眼蔵随聞記』巻6-13

そこで、貞応2年(1223)2月に、道元禅師、そして高照・廓然などとともに入宋し、始めは妙雲が住持を務めていた景福寺に詣で、更に天童山の無際了派に参じた。なお、参学の様子について詳しくは知られないが、道元禅師が中国の典座から教えを得た際には、我が事のように喜んでいたという。
向来一段の事、先師全公に説似す。公、甚だ随喜するのみ。 『典座教訓

しかし、その道誉が中国各地に響くようになった宝慶元年(1225)5月27日に、天童山の了然寮にて示寂した。世寿42。なお、道元禅師を弟子として印可証明を行っている。また、瑩山禅師に依れば、道元禅師は禅の系統のみならず、密教までも明全和尚から授かったという。
因て十八歳の秋、建保五年丁丑八月二十五日に、建仁寺明全和尚の会に投して僧儀を具ふ。〈中略〉彼明全和尚は、顕密心の三宗を伝へて、独り栄西の嫡嗣たり。西和尚建仁寺の記を録するに曰く、法蔵は唯明全のみに嘱す。栄西が法を訪はんと思ふ輩は、須らく全師を訪ふべし。師、其室に参じ、重て菩薩戒を受け、衣鉢等を伝へ、兼て谷流の秘法一百三十四尊の行法、護摩等を受け、並びに律蔵を習ひ、又止観を学す。初めて臨濟の宗風を聞て、大凡顕密心三宗の正脈、皆以て伝受し、独り明全の嫡嗣たり。 『伝光録』第51章

なお、実際に道元禅師も中国で客死した明全和尚の舎利戒牒とを持って帰国し、剃度の弟子である京都の智姉に与え、建仁寺に埋葬したともいう。戒牒は永平寺に蔵されている。そして、道元禅師が記された戒牒の奥書(『明全戒牒奥書』)と、『舎利相伝記』によって明全和尚の行実が残されたのである。道元禅師は明全和尚を参学師として尊崇していたことは明らかである。
予、発心求法よりこのかた、わが朝の遍方に知識をとぶらひき。ちなみに建仁の全公をみる。あひしたがふ霜華、すみやかに九廻をへたり。いささか臨済の家風をきく。全公は祖師西和尚の上足として、ひとり無上仏法正伝せり、あへて余輩のならぶべきにあらず。 『弁道話

また、晩年に到って、永平寺に入られてからは、度々明全和尚の供養のために上堂を行って菩提を弔っている(『永平広録』巻6-435・7-504上堂)。さらに、明全和尚のための真賛も詠んでいる。
仏樹和尚 平生の行道徹通して親しし、寂滅より以来面目新なり、且く道え如何が今日の事、金剛焔の後真身を露す。 『永平広録』巻10-真賛5

なお、この真賛には、明全和尚が日常から厳しく参学していたこと、そしてその死後には面目を新たにして、火葬した後に舎利が残ったことなどを示している。

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