『お客様を信者に変える！』

書名	お客様を信者に変える！儲けを生み出す「対話＝ダイアログ」のつくり方
著者	細野晴義（黒田実彦協力)
発行日	2004/10/16
発行者	実業之日本社

サマリー

顧客との対話(ダイアログ)を作ることがビジネスを進めていく上で直面する課題を解決していく。その結果、お客様が自社の信者に変わる。信者は、自社製品を宣伝してくれることさえあるありがたい存在。対話により信者を増やす方法を紹介する。

第1章　今をとらえることからマーケティングは始まる

2003年にコトラーが唱えた新しいマーケティングの目的＝「顧客とのつながりをつくることである」
プロダクトアウト(製品志向)から、マーケットイン(顧客志向）へ
顧客第一とは言いつつも、お客様の声を生かしきれないところが多すぎた。今は真の意味での、企業と顧客との対話(ダイアログ)が求められる時代となっている。
今の時代は、個人の知識が高度化している。ネットで調べれば、詳細な情報を手に入れることもできる。
一般の人々の知的水準の高さは「公開する」という風土を作り上げた。企業サイトは一般の人によって暴露される前に商品に関すること、利用者の評判などを正直に明かすようになった。受け答えをする姿勢を見せることが大切。
ネット掲示板での悪評は一種の真実であり、社内で汲み取れなかった意見もあるため、サービスの向上につながるケースもある。
買う側は吟味を求める。先回りして説明できることは全てしておけば「誠意ある会社」として見られる。
売る側と買う側の境目はほとんどなくなってきている。女性は買う側、男性は売る側であったが、今は男性も女性も売る側であり買う側となっている。
人々の消費行動では「お金をかけるところはかけるが、かけないところにはかけない」ような二極化が起きている。ならば、付加価値と低価格のどちらの立場でビジネスを行うかがポイントとなる。大量生産時代に好調であったものは今では価格競争に陥っている。
付加価値を付けるというのは、買う側が購入にダイアログを必要とする。
後に「こんなはずじゃなかった」と言わせないためにも、対話は重要。

まとめると、

これまではブラックボックスをつくることが、権威付けだったが→しかし今はとことん公開する
これまではお客様に、極力シンプルに伝えることが大切だった→しかし今はとことん詳細を伝える
これまでは、売る側がスペックを決めていた→しかしこれからは買う側がスペックを決める

→そのためには顧客とのやり取りが必要。それがダイアログ、という考え方。

今までと同じにやっていて売れるわけが無い。それが今という時代。

第2章　ダイアログという考え方

ダイアログ、ダイレクト･マーケティングでは他社の事例が役立たない。顧客との対話が生み出すマーケティングでは全ては顧客が決めるので、自社の顧客がこうしたいというのであればそれに従わなければならない。個々の企業によって解決方法は異なって当然。
CRMを導入した企業のうち70%が失敗に終わっている。それは、顧客データベースをぶん回すことを目的にしていたからであり、お客様のために手間をかけるという基本を後回しにしていたからだ。
お客様を引き止める秘訣は「お客様に手間をかけ続ける」「求めるものを提供し続ける」…求められていも無いのにＳＮＳを作っても人は集まらない。
「マーケティングとは、自然に売れてしまうようにすることだ」by Ｐ･ドラッガー
マーケティングの成功パターンとして揚げられる4つのパターン…詳しくは4章で。

①公開性②詳細さ③人間臭いこと④ネットワーク
　

従来のマーケティングの４Ｐモデル（Product、Price、Promotion、Place）では表せないものが増えてきた。ブランドや顧客とのコミュニケーションなど。
新しい考え方４Ｃモデル（Consumer wants and needs,Cost,Convenience,Communication）も考え出された。
４Ｐ、４Ｃは何かを考えるときには便利だが言葉遊びに終わっているように見える。４Ｐとは言いつつもProductが優先されていたのではないか？

まず顧客との対話を軸に置くべき。そのためにはデータベースが必要。そして対話が商品を形成し、プロモーションを決め、価格を決めていく。３P＋２Dという中澤モデルがこれからのキーワード

４Pで進めるなら一時的な収益はつくれるが、価格競争を強いられる。
３Ｐ＋２Ｄでは付加価値訴求の企業にはオススメ。
みんなが付加価値を求め、一方で付加価値を求めないもの(低価格なもの)を必要としているので、全ての企業がダイアログを必要とするわけではない。

ＡＩＤＭＡ（Attention、interest、desire、Memory、Action）も古典マーケティングの一種顧客の心理変容を表現。ただし、ダイアログは生まれない、一方通行のマス･マーケティングに終わる。
ダイアログを作るうえでは、記憶はどうでもいい。検討して納得してもらい(Conviction)、満足してもらうべき(Satisfaction)→ＡＩＤＣＡＳ
顧客のＤＢ化とは顧客の囲い込みをすることであるが、顧客は囲い込みをされたいとは思っていないのに注意。囲い込まれるよりも自身にとって何が便利かを選択するようになってきている。
客は常に簡単な理由で浮気する＝離反は止められない。
「既存顧客だけに注目しているとその企業は衰退する」by ピーター・ドラッガー
離反に対する戦略「新サービス導入で離反を食い止める」「新規顧客を取り込む」の両方を展開すべき。
ダイアログとは「経験ブランド」を作り上げていくこと。「ああ良かった」との一言を発するいい経験はダイアログから生み出される。
ニーズ…必要。ダイアログはニーズを刺激する。ダイアログによりニーズにあったソリューション(解決策)が生まれる。
ウォンツ…欲求。マス・マーケティングが注目してきたもの。ダイアログは発生しない。

第3章　ダイアログの作り方

付加価値：小ロット×高価格…ダイアログが必要
低価格帯：大ロット×低価格…ダイアログに向かないが、いつかダイアログによる差別化が生まれるかもしれない。
買う側はそれを買うのに瞬時に判断する
買う側はじっくり考えてから判断する…ダイアログが必要。企業のマーケティングに一貫性をもたらす。
買う側の心理変容は大まかに「認知→関心→購入検討→購入」
フロントエンドでは見込み客の獲得、バックエンドでは見込み客の顧客化＆顧客の維持

顧客との接点を持つ最初の段階であるフロントエンドでは、企業の知名度は有効であり、マスメディアの利用価値は高い。バックエンドではCRMを活用し、顧客を逃さない戦略が有効。
レスポンスのバリエーションは顧客が選べるようにする。
顧客化したら、商品購入後でも何かあっても安心していられる体制を用意すべし。
顧客維持は未来永劫のものではない。顧客は常に離反していくもの。
どこまで行っても売る側に主導権は無く、あくまでも買う側に主導権がある。

第4章　ダイアログを実践するための4つの原則

今後のデジタル放送では、ＴＶ局と視聴者の双方向のやりとりが実現していく。これはダイアログ向きのメディアが育つということ。
ダイアログの4つの原則は以下の通り
- 公開性の原則

webサイトでは時間の制限もスペースの制限も無いので、豊富な情報を載せることが出来る。十分な情報を載せていなければ顧客は離れていく。ガラス張りの状態で中がすかすかなのを見せるか、ぎっしり詰まっているのをみせるか。曇りガラスで混沌とした中を見せないのか、中は整ってるのに見せていないだけなのか。人々はガラス張りの美しさを求めている。

詳細に説明をするという原則

webには当然詳しい情報があるはずという前提で接してくる。知的生産の社会環境はいつでも「なぜ？」と思う修正を身につけさせてしまった。居間は、情報が遮断されている時代に有効だった、イメージ中心のマーケティングがだんだんときかなくなりつつある。

人間くさいことをするという原則

自社商品について語るときや顧客とのダイアログをつくろうとするとき、まずは自分たちの言葉で語りかけてみること。アタリマエだが、対話とは人間と人間が織り成すものなのだ。

ネットワークを作るという原則

メトカフの法則＝そのネットワークの価値は、そのネットワーク内の数字の二乗に比例する。加入者の数がそのネットワークの価値を押し上げていく。

ネットワークを牽引するのは最初はスタッフかもしれないが、いずれ顧客の中からリーダー格が生まれてくる＝最初の信者。徹底的なダイアログで信者は生まれる。ダイアログが信者を生み、信者が新規顧客を開拓してくれる。

顧客同士の会話が増えると、そのネットワークがなくてはならないものになっていく。
売る側の理論を押し付けていないことが重要。人は囲い込みされたいとは思っていない。
クラブツーリズムは次のようなことを考えている
- CRM(顧客管理)とは、パッケージソフトを入れてすむようなものではない。顧客のために手間をかけることはCRM
- サービスを提供する側と受ける側が明確に分かれる必要はないなら、どんどん互助会事務局のようになる。
なぜダイレクトメールはなくならないのか。それは、ベッドで寝転がって見られる点、多くの情報を載せられる点(携帯よりはという程度だが）などが挙げられる。ＤＭとは手紙である。相手をワクワクさせる、惹きつけることが重要である。

第5章　信者を生むダイアログ

ダイアログは業務を統合化する。かつてフロントエンドとバックエンドは別の人間が担当してきたが、これをつなぐのがダイアログである。いくらシステム的には成功しても、それを動かす人の心が伴っていないと失敗するケースが多い。
お客様と向き合ったソリューションを提供しようとすると、企業はあらゆる部署を統合しなければならなくなる。客としては企業の内部事情は知ったことではないので、企業のどの部門に接したとしても同じような態度で朗らかに対応してほしいものである。
顧客志向を徹底するためにもアドバイザーが必要となってくる。アドバイザーは顧客ごとにカルテを作り、ダイアログによって課題解決(ソリューション提供)を行うスペシャリストである。
カルテをデータベース化することによって、複数のアドバイザーが情報共有可能。顧客を属性に振り分けるのではなく、テキストマイニングなどを用いて、顧客とのやりとりを丸ごと記録することができるようになってきた。
webサイトやＨＰはウォンツで構成しようとするとトップページがうるさくなるか、階層が深くなり、多大なクリック数をユーザに強いる。深い階層を作っても、上部にニーズベースのインデックスをつくれば、クリック数を少なくすることが出来る。
- 自社サイトのウォンツ型インデックスに漏れがないか調べ、つぎはぎの増え方をならしておく
- ニーズによるインデックスをできるだけ多く考えてみる
- ウォンツベース(売る側にとって便利な分類)とニーズベース(買う側にとって便利な分類)のマッチングを行う
顧客の求める視点でソリューションを提示しその結果、モノが売れることを狙うべし。顧客は自分のニーズを満たすことが出来、売る側は達成感をもつ。
ダイアログの目標は信者を作ること。