『インターネット社会のマーケティング』

書名インターネット社会のマーケティング
著者石井淳蔵 厚美尚武
発行日2002/03/30
発行所有斐閣

サマリー




序章 誰かと一緒に何かをやりたい


第1章 アクティブなコミュニティサイト
     妊娠・出産・子育てを応援「ぷれままクラブ」

  • インフォメーション、コミュニケーション、ショッピングの三要素で成り立っている
  • コミュニケーションから生まれるユーザの本音が詰まっている
  • 他の大手サイトに比べて会員数は多くはないがコミュニケーションの密度は圧倒的。一つの質問に対する反応が非常に多い。
  • コミュニケーションが、ユーザに対し安心感と共感を保証する。コミュニケーション・プロセスの中で問題を解決し、欲しい情報を得て、仲間意識を高めあう構造。そのままサイトへの信頼にもつながる
  • 妊婦に必要なグッズを嫌味にならないように紹介することで売上を上げている。有料会員からの会費もあり、企業としては黒字
  • サイト運営者によれば、コミュニティ・サイトの成功は「居心地のよさ」をいかに作り出せるか
  • ぷれままの事例が示唆するもの
    • 活発なコミュニティでは密度の濃い本音のコミュニケーションが交わされ、サイトへの信頼感を構築する。
    • コミュニケーションの好循環→ユーザ関与度が高いコミュニティが形成→ビジネスへの可能性あり。コミュニティにおける関係性がユーザの帰属意識を高めるから。コミュニケーションによる問題解決がサイトへの信頼感を深めるから。
    • 運営者は最初から収益モデルを考えていた。運営者の経験が効果的に運営に反映されていた
    • 居心地の良さはユーザが求めるコミュニケーションを提供できるかどうか

第2章 インターネットが可能にした「再開」と「出会い」〜この指とまれ!

  • ユーザが増加することでいっそう「ゆびとま」の価値が高まり、さらに多くのユーザが登録してくるという好循環=ネットワーク外部性
  • ユーザ数とユーザが教授するサイトの価値との関係性→ユーザの増加
  • 自分の母校の登録者のみ一覧が見られるセミクローズド・サイト

第3章 コミュニティとコミュニティ・サイトの理論的基礎

  • システムの成長も衰退も、メンバー間のコミュニケーションがどの程度活発に行われるかに依存する
  • コミュニケーションがコミュニケーションを呼ぶシステム
    • 「創造的瞬間」=手段であったサイトが目的としてのサイトに変化する」
    • フレーミング(場の設定や再設定)
  • 「スティッキング」=メンバーに「サイトから離れたくない」と思わせる誘因
    • サイトの規模
    • マッチングの効能を高める、マッチングのコストを下げる
    • 参加費の徴収…お金をかけた分は楽しみたい
    • ポイントの配布…ヘビーユーザほどお得になる仕組み
    • 閾値の効果…参加回数が増えるほど楽しさが増す仕組み
      ゲームやスポーツなどは習熟度が一定以上になると面白くなる
    • 独自の価値…取引の場が取引の場で終わらず交流の場となる付加価値
  • 継続するコミュニケーションこそがコミュニティ・サイトの構成要素。メンバーが入れ替わってもコミュニティは続くが、コミュニケーションが継続しないとサイトは崩壊する
  • コミュニティサイトであるためには、創造的瞬間を準備し、メンバーの居心地のよさを確保しコミュニケーションを促し、コミュニティの新しい目的や価値を育てることに注力しなければならないが、フレーミングはそうした役目を果たす。
  • マッチングの可能性や効能を高める、経済的な報酬や楽しさを企画する、あるいは理念を浸透させるといった、コミュニティを離れがたくさせる工夫や制度(スティッキング)がコミュニティに埋め込まれると、コミュニティの存続は容易になる。


第4章 インターネットに咲いたアナログの花
     同窓会サイト「アイラブスクール」

  • コミュニティ・サイトにとって大事なのは会員数の多さより、人情に基づいた会員間の関係の濃密さ
  • サイト運営において急ぐべきは新規会員の誘致より既存会員を優遇する仕組みを作ること
  • アイラブスクールはある臨界点を超えてから、単に環境要因やサイト・コンセプトに還元して説明できない自己組織的拡張運動を見せ始めた。
  • 関係の無限なる膨張には、必ずコストがかかるもの
  • アイラブスクールはその非商業性、アナログ的な交流によって反響を呼んだが、会員数の増加にはコストが生じる。収益モデルを備えようとすることで、アイラブスクールのアイデンティティが薄れてしまうというパラドックスを含んでいる。

第5章 農家と消費者をつなぐネット・コミュニティの苦闘


第6章 コミュニティ・サイトは業界の新しいインフラとなりうるか?


第7章 ロールプレイング・ゲームとコミュニティの結合


第8章 インターネット的市場とは何か〜ウェブからコミュニティへ


第9章 消費者参加の製品開発コミュニティをめざして


第10章 リレーションシップ・ポータル構築の試み


第11章 コミュニティ・サイトのビジネスモデル


動機\構造実名性匿名性
コミュニケーション自体が目的課金型モデル提供型モデル
コミュニケーションの結果が目的支援型モデル成果型モデル

  • 課金型モデル…コミュニティに集う人々がコミュニケーション自体を目的に集まっている。こういったコミュニティでは会員となる条件があるのが一般的であり、資格審査が必要。それによってコミュニティの信用が保たれる。
    会員の高いロイヤルティと情報の共有価値が特徴であり、こういったコミュニティは自体で収益構造を持つことが可能。運営者が運営費を賄うための会費や広告は黙認される。ただし、大もうけしようとビジネス色を強めてコミュニティの居心地の良さを崩すことは厳禁。会員の反発を買うだろう。
  • 提供型モデル…コミュニケーション自体に価値がありつつも参加条件がほとんどないケース。コミュニティで匿名的な存在を楽しみ、アマゾンの書評コミュニティももこのケース。コミュニティ主催者に対し、活動の場を提供してくれている価値を認めることになる。柔らかなフレー民具が特徴であり、コミュニティを構成する条件が緩やかであるためマネジメントは困難。
  • 成果型モデル…コミュニティ主催者はコミュニケーション活発化に注力。その結果、コミュニティが目的としている価値を得ることができる。@コスメなどのクチコミ評価サイトや、消費者の要望やスペックの情報など。入会は厳しくないが、入会後はコミュニケーションが求められる。コミュニケーションの結果で生み出されたものの価値によって、ビジネスと結合する可能性がある
  • 支援型モデル…実社会におけるリアルな存在に依拠し、コミュニケーションの結果を目的とする。コミュニティはリアルな社会の補完の役割になる。コミュニケーションの結果によって、リアルなビジネスに収益を与えるモデル。コミュニケーションによる品質保証で、実際の販売が伸びるケース。


第12章 企業戦略に確信をもたらす触媒としてのコミュニティ

2006年01月04日(水) 01:28:47 Modified by zin941_9x19




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