『ソーシャル・ネットワーク・マーケティング』

書名	ソーシャル・ネットワーク・マーケティング～21世紀型『コミュニティ・マーケティング』と『顧客クラブ』
著者	山崎秀夫
発行年月日	2005/06/07
発行者	ソフトバンクパブリッシング株式会社

本の内容

序章『コミュニティ・マーケティング』と『顧客クラブ』

インターネット発の顧客クラブを立ち上げよう

本書の主題は、自社商品のファンクラブ(例：Jリーグのサポーターの集い)をネット上で組織して、販売上の効果を上げるという新しい関係性マーケティング手法の推奨。

新しいCRMの登場

アプローチは顧客との関係を課題としている＝CRMの一つと考えられる
社交クラブは、顧客と企業との縦の関係の上に顧客同士の横の関係を重ねたものといえる、企業と優良顧客との関係を確かなものにする手法
新規顧客獲得費用は既存顧客を維持する費用の5倍が相場だが、社交クラブ＝ブランドコミュニティは既存顧客維持が楽＆既存顧客が新規顧客を連れてくる仕組み
顧客の差別化も自然に出来る
「唱和する顧客」の集団が出現…口コミマーケティングで購入済みの顧客のブランド経験に基づいて新規顧客のブランドイメージが高まる

「ソーシャル・ネットワーキング」をコミュニティ型経験マーケティングに生かそう

2004年秋ごろ～日米でソーシャル･ネットワーキングを活用して、ユーザー会や顧客クラブを作り、マーケティングに生かそうという動き
ネット上に顧客中心の社交クラブ
→新しいライフスタイルの確立や自己表現を支援
→自社商品やサービスを「唱和する顧客」になってもらう
→顧客自身による自発的なマーケティングを期待する新しい関係性マーケティング手法
＝「ソーシャル・ネットワーク・マーケティング」or「ピア・ツー・ピア・マーケティング」
今までのネット上でブランドコミュニティを立ち上げようとした際の阻害要因：「荒らしの問題」「回線が弱い」など→SNMによりそれらはなくなりつつある

コミュニティ型経験マーケティングという捉え方

筆者はソーシャル・ネットワーク・マーケティングを、コミュニティ型経験マーケティングと捉えています
SNの仕組みを利用したブランドコミュニティや知識コミュニティを立ち上げて、参加者に「忘れられない経験」の舞台を提供。リピート顧客になってもらう＆商品のよさを推奨する「唱和する顧客」に成長してもらうための経験マーケティングの実現が本書のテーマ

ブランドコミュニティは90年代後半から注目のコンセプト
例：米国企業アップル自体ではなく、マッキントッシュという商品のブランドコミュニティ
こういったコミュニティの特徴
①共通の意識や感覚を共有する
②共通の儀式や伝統を持っている
③支えあう責任感を持つ(参加者は互いに認知欲求や神話欲求を感じている)

ブランド・コミュニティ作りはまだこれから

2004年秋…生活者型総合サービス領域ではmixiが独走
SNS提供者間で今後の戦略やビジネスの方向性の議論が盛んに
外部からシステムを購入しようというユーザー企業の動きも活発化

ソーシャル・ネットワーキングとは何かを振り返る

その特徴
①会員からの招待制
②知り合いの輪と呼ばれる個人ホームページにおける自己開示の徹底
ネット上のコミュニティが温暖期に
日本では2004年から総合型サービスがスタート
ヤマハ、全日空、ヤナセがソーシャル･ネットワーキングを活用した顧客クラブを先行的に立ち上げ

非営利企業とソーシャル・ネットワーク・マーケティング

自治体、官公庁、学会、大学や同窓会への広がり、社内のグループウェア的な知識コミュニティ活用

各方面で大きな変化が始まっている

ブランド・コミュニティと知識コミュニティ
- ブランド・コミュニティ＝顧客に「忘れられない経験」を提供する社交クラブ
- 知識コミュニティ＝社内や学会などを対象とした「アイディア創造経験」のための社交クラブ
- 本書で取り扱うビジネス目的のSNS
  ①自社のビジネスモデルと連動させ、その収益を向上させる目的でSNを立ち上げる事例
  ②システムの販売目的でSNを開発している企業事例
  ③非営利団体によるSNの活用事例
  ビジネス･プロセスと連動する社内の知識コミュニティを立ち上げる目的でSNSを活用している事例が今後は増えてくるのではないか
  実際はこれらの内容がいくつか絡み合って展開
2005年からのソーシャル・ネットワーキングの方向

2004年は総合生活者型＆独立型のmixiやGREE、Echoo!などが成功
2005年は次の特徴のものが流行る？

テーマ特化型(音楽や旅行など)
比較的小規模
ブログを超えた社交の手段の多様化
企業スポンサーが支える(顧客クラブなどのブランド・コミュニティ型)

第1章　ソーシャル･ネットワーキングの基本的な視点を深く理解しよう

人類の賢さは社交、人脈作りから生まれた
恋人選びが進化させたコミュニティ型経験マーケティングの要素

第2章　ソーシャル・ネットワーク・マーケティングの台頭

脱マスマーケティング時代の本格的な始まり

販売広告＝テレビ・新聞・雑誌などのマスメディアが中心
個人の購買履歴やプロフィールに基づくワンツーワン・マーケティングも90年代に進化(顧客価値のセグメント化)←マスマーケティングの補足的側面
近年メスマーケティング効果が衰え始めている
インターネット広告が着実に成長
ブログなどソーシャルメディアの登場によりビットキャスティング時代がスタート
地上波テレビなどのブロードキャスティング時代はゆっくりと衰退
情報発信の主体は企業から生活者・消費者へ
生活者のライフスタイルを支えるプラットフォームとしてのソーシャルメディアに広告や宣伝のメッセージを乗せる必要がある＝コミュニティ型経験マーケティングの可能性

ソーシャル・ネットワーキングをマーケティングに活用しよう

ワンツーワンマーケティング…カタログや電子メールカタログによる関係性マーケティングだが、電子メールカタログは一方通行。
米国ではソーシャル・ネットワーク・マーケティングが注目（電子店舗、実際の店舗に繰り返し誘導するために顧客を囲い込む、新規顧客の獲得のためSNSを活用する←一種の広告投資）

有効性が薄れた従来型のネット･マーケティング

これまでの電子的なマーケティングを振り返る…CRM

バナー広告…電子マーケティングの基礎。ホームページにおけるバナー
ネットコミュニティ(掲示板での参加者の交流)…見知らぬもの同士がネット上で出会い、親密な知り合いになる「仮想社会モデル」が上手く働かず、参加者同士の非難合戦、企業や商品の批判などネガティブ方向に。
eメール・マーケティング…メルマガは費用がほとんどかからない魅力があるが、受け手はスパムや迷惑メールと思うことがある。
Q&A相談やガイドによる支援…したと一緒
ブログサイト…アフィーリエイト・プログラムによるブログを書く生活者を一種のビジネス代理店に仕立てる。ネット上でブログは広く公開されているので、荒らしの問題をさけることは難しい。穏やかな社交に充分答えられ泣けケースもある。
顧客プロフィールの活用…データベース・マーケティングやワンツーワン・マーケティングで進化。アマゾン・ドッドコムは同じ読書傾向を持つ人が呼んだ類似書籍を他の顧客に紹介するクロスセルで大成功＝データ分析＋社交の要素→データ・マイニング手法
顧客同士の横の交流が薄いの、顧客プロフィールの不十分な活用がが弱点
購買履歴の活用…上と一緒

ソーシャル･ネットワーク･マーケティングは既存の仕組みやマーケティング手法を全て取り込む

ソーシャル･ネットワーキングをいかに企業ビジネス･モデルに組み込むか

顧客創造の段階　①プロスペクト　②サスペクト　③ワンタイム・カスタマー　④カスタマー　⑤アドボケート・カスタマー

ブランド・コミュニティにおいて⑤は、積極的に買い物日記を書いて購買を促し、アフィリエイトポイントを稼ぐ人。洗剤顧客をクライブに招待するし、イベントを積極的に提案、主催する客層。こういった唱和する顧客を増やすことがビジネス成功の鍵。そのための手段がSNによるブランド・コミュニティの立ち上げ

ソーシャル・ネットワーク・マーケティングは顧客を囲い込んで自社の電子店舗のなじみ客にするために適している。

進化するCRM分析手法

SNMでも従来のCRMを応用していける。顧客分析にバイラル･マーケティングの要素を加えて、より正確なマーケティングを行う傾向が見られる。

ソーシャル・ネットワーク・マーケティングの構造
- ソーシャル･ネットワーク･マーケティングのレイヤー(階層)
  - コミュニティレイヤー
  - CRM分析レイヤー
  - 販売用ビジネス･プロセスレイヤー
- ソーシャル･ネットワーキングの代表的なタイプ
  - 本格的な顧客クラブを販売用ビジネス･プロセスから独立して立ち上げる方式
    SNにより社交クラブを立ち上げて、晩培養ビジネス･プロセスへ顧客を穏やかに誘導、ビジネス色は薄い
  - 販売用ビジネス･プロセスの中に顧客同士の交流の場面を組み込む方式
    顧客コミュニティがCRM分析レイヤーを内包する販売プロセスの中に組み込まれる。
伝統企業が開発したソーシャル・ネットワーク・マーケティング

第3章　経験マーケティングの新しい進化

経験価値の重要性

経験マーケティングとは、生活者やビジネス顧客に対して顧客自身による「忘れられない経験｣や「生涯思い出に残る体験」のための舞台を提供し、自社商品やサービスをそのための小道具に活用しようというマーケティング手法。
経済価値の重要性は、商品→サービス→経験
ブランドは商品やサービスの品質を区別する記号だったが、コミュニティ経験マーケティングでは違う。生活者の自己表現、ライフスタイル、プライド、社交によるドラマの展開、テイストや雰囲気、自己暗示的効果、商品やサービスは小道具、強烈な共同体意識、機能や品質
なぜ経験が重要視されるのか…人材の流動化時代、個の確立、自由の獲得、人間関係の希薄化、孤独・孤立の流れのある今、人々は接触飢餓に悩んでいる。ブランドコミュニティは関係性欲求に適合。
経験マーケティングは、生活者の個性表現を重視するドラマ･ステージ提供型のマーケティング手法
筆者はSNを経験マーケティングの手段として考える場合、顧客のための社交クラブであるブランド･コミュニティ設立が重要ととなえる。「ブランド」はイメージや自己表現、ライフスタイルや共同体意識などが付加。
経験マーケティングを推進すらブランド･コミュニティの特徴

商品が、ある種のライフスタイルを特徴付けている
生活者の自己表現の手段となっている
参加者に高いプライドが見られる
強烈な共同体意識を醸成している
自由で柔軟かつ多様な社交を求める
幻想的なイメージ要素が強い

なぜインターネット発のソーシャル･ネットワーキングから始めるのか

ネット上でのコミュニティ立ち上げはフェースツーフェースのコミュニティよりコストが安い、デザインが褐炭、手間もかからない。ユーザ会を立ち上げる入り口となる

第4章　多様に分岐するソーシャル･ネットワーキングの方向性

ビジネスの視点

仕組みからソーシャル・ネットワーキングを分類

独立事業者型…単独の収益モデルを確立する独立採算型。
参加者の定期購読料、広告に依拠する「新聞モデル」
案件1件あたりの手数料収入を基本とする「イーベイ型モデル」
企業スポンサー型…各企業が自社用のソーシャルネット・ワーキングを立ち上げてブランドコミュニティを運営、自社耳鼻ネスも出るとの連動による販売増を狙う
システム販売型…ソーシャルネット・ワーキング事業者がSNの仕組みの販売や運営代行を担う

スポンサー企業による活用の視点
- 電子商取引企業によるブランド･コミュニティの立ち上げ…企業によるSN活用の方向はプランドコミュニティの立ち上げ(コミュニティ型経験マーケティング)であり、電子商取引専門企業が早くから興味を示している。泉屋、ライブドア、ネットフリックス(米）など。
- 伝統企業によるブランド・コミュニティの立ち上げ…電子通販専企業が説教的に動く一方、伝統企業の動きはゆっくり。全日空、ヤマハ、三越、キリンウェルフーズ、など。
- 活発に動き始めた非営利組織…穏やかなコミュニティを活用した社交や人脈作りにとしてSNを活用。SNシステム提供企業からは利益の出る相手ではないが、システムの必要度は高い顧客といえる。
- 知識、情報共有の手段としての活用…SNは企業内に浸透する機能が豊富。

「日本の事例」1～18　（別ページ）

米国におけるソーシャル・ネットワーク・マーケティングの動向

限界が見え始めたeメールマーケティング
オンライン世代の台頭とeコマース
既存物理店舗への影響
市場調査会社の見方
いろいろな組み合わせの妙
「米国の事例」1～7

第6章　自社の顧客クラブ、ブランド・コミュニティの立ち上げ手順

企画段階
- 「ステップ1」名前によりブランド･コミュニティの目的、ビジョンを明確にしよう
- 「ステップ2」プロジェクト･チーム(事務局)を立ち上げよう
- 「ステップ3」大きなロードマップを考えよう
- 「ステップ4」初期の投資予算を決め、SNSシステムを選定しよう
ブランドコミュニティのテイストを考慮しよう
パートナー企業の得意、不得意を見極めよう
- 「ステップ5」ソーシャル･ネットワーキングのコンテンツ(社交手段）を決めよう
- 評価指標を決めよう
- 規格案を提示し社内で承認を得よう
立ち上げ段階
- 参加者を集めよう
- 社交クラブをスタートしよう
- 地域参加者の動きを意識しよう
- イベントでリラックスしよう
- 規模の拡大を図ろう
- 他の事業領域への横の拡大
- 高い評判を維持しよう
- 常に新鮮な話題や仕組みの提供するファシリテーターを大切にしよう