『なぜこの店にはお客が入るのか』

書名	なぜこの店にはお客が入るのか
著者	小山孝雄
発行日	2002/06/06
発行所	中経出版

サマリー

商品は安いだけでは売れない。売り方のノウハウが大切。ストアレベルマーケティングの実施により売り上げは確実に伸ばすことが出来る！
（実店舗でのマーケティング方法について詳しく書かれているが、ネット上の仮想店舗にも通じる考え方がある）

第1章　勝利をよび込む「極意」

売上増大を実現するマーケティング

ナショナルレベルマーケティング…テレビや新聞を利用しての広告宣伝活動などを通じて、「全国規模で、きわめて短期に、ブランドイメージや認知度を高め、消費者に自店舗に来店したくなる、自社商品を購入したくなるといったモチベーションを与える」広域型のマーケティング
ストアレベル・マーケティング…「個店単位、地域単位で、地域の特性を生かした」地域密着型のマーケティング
これを実践すれば次のようなことが可能
- 現在来店しているお客様の来店頻度を上げる
- 新しいお客様を店舗へ引きつける
- 客単価を上げる
- 購入単価を上げる
- 店舗運営水準(お客様満足度）の向上
- 特定の商品の売り上げを上げる
- 特定の時間帯の売り上げを上げる
- 特定の曜日の売り上げを上げる
- 店舗イメージのアピールと広告宣伝
- 店舗存在のアピールと広告宣伝

売る”仕組み”がなければ生き残れない
- 商品力に依存しない…売れ筋商品にはライフサイクルがあり、衰退するときがやってくる。商品にこだわる方法で他店との差別化は難しい
- 競合店との差別化をはかる…他店が絶対に追従できないような仕組みを構築して圧倒的な差別化と高いレベルで店舗を運営することができるかどうかが、高収益確保の鍵
- ピークを獲る…客がよくくる時間帯の入店者数を伸ばす(トップアップ)ことで、お客が少ない時間帯にも人がいるようになる(ボトムアップ)。ただし、ピーク時の混雑に対応できるだけのパワーがないとイメージダウンにもなるので注意。

第2章　QSC(店舗運営水準)レベルアップ戦略

お客様の満足度を左右するQSC
- 店のイメージを高める…店舗のイメージ減はQSC→商品の品質(Quality)、良いサービス(Service)、清潔感(Cleanliness）、売上増大の最高のツールは店舗のイメージが良いと言うこと。店舗イメージが悪ければどんなツールを用いても売り上げは上がらない
- 高質のスタッフを確保する…高レベルのQSCの確立はマーケティングの第一歩。店長の態度は部下に反映されるので注意。低質の従業員の店には低質のアルバイトしかこない。
- QSCを徹底的に追求する…<品質>商品の品質が悪ければ客は購入しない。高品質の提供は全ての基本。<サービス>店の人的要素・スタッフサービスの良し悪しで新規顧客がリピーター化する。お客様の視点を常に意識して応対すべし。＜クリンリネス>時間が経つにつれ不潔感が増幅すれば客足は遠のく。掃除の形式化にとどまらず、常に清潔かどうかを心がけなくてはならない。
  ただし今日ではQSCは高レベルでアタリマエという風潮。
- 「人」が利益を生む…まずは、スタッフがいるから利益が生まれるのである。高レベルのスタッフ(人財)がいなければ、数字はあがらないことを意識しよう
自店舗のQSCレベルを把握する
- チェックを常に行う
- QSCの評価基準

第3章　競合店はこうして打ち砕く

己を知る…問題点の把握と、自店の強みを把握
- 自店舗の「現状」を把握する
- 店舗視認性評価
- 店舗施設の評価
- マーケティング状況分析
- ビジネスレビュー(売り上げ、客数、客単価)分析
競合店を知る
- 相手を知らずして戦いには勝てない…競合店が集まることでマーケットが成熟し大きな集客力を実現する一面もあるが、競合点とはお客様を奪い合うライバルでもある。各店舗がどれだけ努力しても、パイは一定であると考えればパイ以上の集客は不可能。競合店を意識した戦い方が賢い選択。相手の強みを取り込んで自店を強化すべし。自店の強みは追いつかれないようにさらにのばすべし。
地域を知る
- 人の集まる施設を総チェック…TG(トラフィック・ジェネレーター=交通発生源)の把握。交通拠点(駅･バス停留所)、商業集積（ショッピングセンター)、娯楽・レジャー施設、住宅地、事務所、学校、病院・施設、各種団体、官公庁など、どのTGが自店舗にインパクトを与えるかを見極めてマーケティングを行うべし
- ローリスク・ハイリターンを可能にする情報収集法…どこで、いつ、どのような人がどれだけ集まるかを知れば、ローリスクな販促が可能。TGを訪問し、情報収集。キーマンに会うことで、プロモーションへの協力を取り付けられるかも。
機会点・問題点整理の着眼点…分析結果を、売り上げを伸ばしていく上でのプラスポイント(機会点)、マイナスポイント(問題点)に整理し、強みと弱みを押さえよう。

第4章　店舗の命運を左右する「商圏」設定

正しい「自店舗商圏」設定法
- 商圏とは何かを知る…定義は「商圏とは、現実に店舗周辺に来訪している人々が住む地域、および用意に来店促進が可能な人々が住む地域」、正しい商圏を設定してマーケティング活動を行えば少ないコストで大きな利益が生まれる。
- 商圏開発指数法で「商圏」を設定する…顧客アンケートを実施し、居住地域を調査士、係数化して商圏を設定する方法＝商圏開発指数法。その地域の全人口中何％が自店舗のお客様として開発できているかが数字でわかる。店頭にアンケートを置くだけでは不十分、直接インタビューをして集めないと効果は薄い。
  商圏開発指数が5～13％以上の地域を時勢商圏として設定。利用頻度が月に1･2回(5～8％ファーストフードなど)、月に3･4回(8.5～13% ラーメンやコーヒーショップ)、月に4回以上(13%～コンビに、スーパー)、実際に地図を塗りつぶすとよい。
- そのほかの商圏設定法…仮説商圏設定法(半径○㎞)、実査法(五感を駆使して情報収集)、来店手段による一般的な商圏範囲は→徒歩(10～15分圏内)、自転車（1000～1500㍍圏内）、バス(10～15分圏内）、TG調査法(TGを中心として商圏を考える)、顧客データベース法
商圏内統計データを有効活用する…、昼夜人口(総数、男女別、年齢別）、世帯数、住宅、学校数、学生数、事業所数、駅乗降者数、商業統計、道路情報など

第5章　顧客を倍増させるプロモーション戦略

プロモーションが必要な理由…売上は「客数×客単価」で決まる。プロモーションとは、顧客及び消費者が自店舗に来たくなるよう、モチベーションを与える活動プログラム
- 客数を増加させる…新規顧客の獲得、固定客とその来店頻度の増大、高レベルなQSCを実現してこそリピーターは増える。
  CRM(顧客関係管理)＝顧客満足度を向上させて、顧客との長期的な関係を築くという概念。ユーザの分類に対応したプロモーションをしよう。ヘビーユーザには「ここがさらにグレードアップ」、ミディアムユーザ、ライトユーザには「一度ご来店を！」。クレームをつけてくるのはヘビーユーザ。
- 客単価をあげる…ワンモアアイテム、トレードアップ、グレードアップ、グループサイズアップ、の4つの戦略が基本。商品の値段を上げるのではなく、購入点数をいかにあげるか。POP戦略、店内活動、商圏でのイメージ作りなど。+
プロモーション決定手順
- 目的の決定…自店舗の特徴を知り、必要なポイントを明確化。固定客だけでは売上増大に限界があるので新規顧客の開拓も力をいれるべし。
- プロモーションによる獲得売り上げを予測する…プロモーションの効果を予測するには、実施ごとに、チラシなどの回収率、売上の変動、客単価の変動などのデータを分析、保管する。一定期間売上が確保された実績があるプロモーション、自店舗の中心客層をターゲットにしているプロモーション、シンプルなメカニズムのプロモーション、これらは効果的である。
- 売り上げ達成の条件…プロモーション前日までに全てをそろえて、当日は店長は全力であたるべし。お客様のお金の使いやすい時期を知り、効果的なアプローチを。ターゲットを絞り、プロモーションが効果的な場所と時間を探る。
この戦略なくして成功はありえない
- プル戦略とプッシュ戦略
  - プル戦略…消費者需要を喚起するために、広告や消費者むけプロモーションを行うこと。いかに「入店させるか」「入店してもらうか」。店舗視認性レベルが高いことが重要
  - プッシュ戦略…製品が消費者へ到達する過程において、小売側が消費者に対し製品をプッシュするために行う直接的な働きかけのこと。いかに「商品を購入してもらうか」「一品でも多く購入してもらうか」　高レベルのQSCの上で、店内の動線に沿ったPOPの展開、推奨販売(サジェスト)を行う。
  - 日本はプッシュ戦略に偏っている傾向がある。どちらの戦略にどんなツールが必要かを見極めよう。
- プロモーションメカニズムの決定…ディスカウント(安売り)ではなく、フィッシングメニューを用意しよう。わかりやすい目玉商品を設定し客を集め(プル)、「儲けメニュー」を追加購入していただく(ﾌﾟｯｼｭ)。

第6章　売り上げアップに直結するPOP戦略（…まぁPOPはSNSとは遠いかな）

QSCに次ぐ売上増大戦略
- 消費者と店舗を結ぶPOP(購買自店広告)
- お客さまに情報を浸透させるコツ
最も効果的なプロモーションツール戦略
- ツール作成時の注意点
- わかりやすい「ツール事例研究」
クーポン券などの取り扱いには要注意

第7章　ロスを絶対出さない動線への攻め方

消費者を店舗まで連れてくる(プル戦略)
- 商圏に対しての攻め方…タイアッププロモーション＝商圏内に有力なパートナーを見出しそこと提携してプロモーションを行うこと。クロスクーポン、景品配布、キャンペーン、フリーパスの発行など。
- キー･アクセスポイントに対する攻め方
- 店舗近隣への攻め方-TG訪問
- 店舗20メートル前での攻め方…人間の購買行動の意思決定に要する時間と、その決断が持続する時間は、ともに15～20秒。自店舗前で配るより、20mは慣れたところで配ったほうが入店度は高い。
- 店舗前での攻め方…入店のしやすさ(店内が外から見える、店内が明るく雰囲気が良い、価格や商品情報をオープンしている、入り口が広い、入り口が清潔)
客単価をあげる(プッシュ戦略)
- 購買意欲を刺激する
- レジ･売り場での対応…推奨販売は一人のお客さまに一回、クーポンなどは必ず手渡しし、一言添える。
- 店内でのそのほかの攻め方…視覚、聴覚、嗅覚、インパクト、アプローチを押さえた店内プロモを。
プロモーションの評価・記録
- 目的
- 評価の実施…売上増大はスタッフの成長の証、スマイルの産物なのだ。

感想・まとめ

ストアレベルのマーケティングについて詳しく記述されており、評価シートや着眼点・分析方法がわかりやすく表でまとめられている。基本的には自店舗の研究、他店との差別化について。そのためのツールについては従来どおりの、クーポン、割引券、チラシであるため、目新しい印象は薄い。要するに形ばかりの配布ではなく、効果的な渡し方があるのだという内容。店長クラスの人が読むべき本なので、商売根性たっぷりで売り倒すぞ感が強い。この通りに実施した場合「ほら、買え！」と強調された店舗に仕上がりそうで、ちょっと引くかも。客はデータであり、数字であるという印象。まぁこれくらいの勢いのある店に信頼や期待をよせる消費者は多いだろう。ワイワイガヤガヤ大人気の店より、ひっそりとしつつも確実に通には知られている店に通いたい、そんな人は少数派ということか。

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