(?)

第1課程
ドングリス
グマン兄弟
フラカチア・レウコサイシン

第2課程
オギヴォル・スカラルシン

第3課程
ゴブリン・マルズウェル
ブリューメン・ティンクトリアス
泥どろり
キィル・ビル

第4課程
アエルマイン・ブラコ・スカルプタラス
オニムシャ
ロック・グノロク

第5課程
特に敵名の記載なし

第6課程
ゴッブロウス
移植ノンマロ
アリ・グロトール
ミスター・ペンギン

第7課程
毒盛りアイミー
カタイガー
座頭イッシュワン
ファントメット

第8課程
仮面リベンジャー
シュティミ
富士スノーフォックス

第9課程
ドレモアン
ドクター・エッゴブ
フラショー
ベリー・ベアーバリアン

第10課程
ハイパースカンプ
ベアレンダイザー
メカモス
サイコシューズ
アイス騎士
起き上がりエッグ

ラグーンとクリチュール


グルタールが巨大なラグーンを倒すまでに、そう時間はかからなかった。しかし、村の住民たちは驚きあきれ、こう叫んだ。「何ということだ!これをきっかけに、なにか災いが起こるに違いない!」そして、ギスグールの村には重たい空気がのしかかっていった...。

ラグーンはあの恐ろしいクリチュールの息子だということを忘れてはならない。クリチュールはラグーンよりもずっと大きく、たくましく、そして恐ろしかった。自分の息子の復讐をしにやって来るまでに、そう時間はかからないはずだった。そしてグルタールは村中から非難されたのだった。

そして大きな決断が下された。グルタールとその母親を、あの恐ろしいクリチュールのところへ連行するのだ。ある者は彼らに定められた運命の残酷さと不平等さを哀れみ、またある者はそれこそが一番の解決策だと考えた...

しかしグルタールがその恐ろしい敵を一瞬で倒してしまうと、もう人々の意見が食い違うことはなかった。こうして、グルタールはこの世界で最強と思われていたモンスターよりも強い力を持っていることが明らかになったのだった。しかしそれでもグルタールは人々のことを恨むことはなかった。しかし、その神の如き力はいったいどこからやって来たのだろうか?それは謎に包まれたままだ。

時が経つにつれて、グルタールの力はさらに大きくなっていった。ギスグールの村の子どもたちにとって、グルタールはヒーローだった...。

「グルタールの幼少時代」抜粋

この本を読むと、アマクナの図書館から原文の原稿を探し出したいという衝動に駆られる。

(アロウィン)

 毎年10の月末、12の世界はアロウィンの呪いに襲われる。おとなしいトフやゴッボール達が、呪いにかかって恐ろしい生き物に変身してしまうのだ。冒険者にも伝染する呪いなので注意!

 しかしこの伝染病の起源はどのようなものだったのだろう?

 すべてはあるコンテストから始まった...それほど遠くない過去に、ここからそう遠からぬ場所で、最も大きいパンプキンを競い合う「パンプキン栽培コンテスト」が開催された。農夫である場合や、パンプキン愛好家である場合は積極的に参加することが推奨されていた。このコンテストは、味わい深いウリ科の植物を育てる者たちが、富を手にできるチャンスでもあった。コンテストで優勝すれば、1年間パンプキン販売権を独占できるからだ。

 その年のコンテストは接戦になりそうだった、コンテストの成り行きを予想できる者は一人としていなかった。しかしながら、みなが有力な優勝候補者として、アロウィンのパフォーマンスに期待していた。なにしろ彼は、これまで15年連続で優勝しており、大陸中で最も偉大なパンプキン栽培者として鳴らしていたからだった。その実力に反論する者は一人もいなかった。しかし不幸なことに、その年のパンプキン・チャンピオンの畑では収穫が遅れそうだった。彼のパンプキンはまだまだ熟すには程遠く、畑には熟し切っていない小さなパンプキンが広がっていた。優勝できなかったら、同業者の笑いものにされ、自分の富の源を失うかもしれない...アロウィンはそんな考えに耐えきれなくなった。

 一般的にはあまり知られていないが、農夫のように忙しい仕事でも余暇を楽しむ時間があるものだ。アロウィンの余暇の過ごし方は少し変わっていた。年老いた農夫は、実は数年前に魔術師ブォークに弟子入りしていたのだ。

 負けるかもしれないという恐怖心に怯え、一介の農夫に戻るなんてことがあってたまるかと思ったアロウィンは、魔術師ブウォークに相談した。ひとつ自分の畑のパンプキンに呪文をかけてはくれないかと。魔術師ブウォークの呪文が効くのにそう時間はかからなかった。数秒もすると、アロウィンの畑には鮮やかなオレンジ色に熟したパンプキンがあふれかえった。

 アロウィンのパンプキンはグングン大きくなり...ついにはママ・ブウォークのお尻と見間違うくらい巨大になった。この勢いだと、アロウィンは優勝を手にするどころか、栄光の道を歩むことになるだろう!

 当日、コンテストの審議にはほとんど時間がかからなかった。アロウィンの足元に及ぶ者は誰もいなかったからである。こうしてアロウィンは再びゴールデン・パンプキン賞を手にすることになった。

 コンテストの後にはパーティーが盛大に開催された。アロウィンは勝利に酔いしれ、ビールジョッキを次々と飲み干しながら、自分の才能にかなうものはいない、と尊大な態度で声高に叫んでまわった。しかし彼が予期していなかったのは、ブウォークの魔法は両刃の刃だったことである。パンプキンの成長促進だけが呪文の効果ではなかったのだ。彼が陽気に楽しんでいる間、汁も滴るような大きなパンプキンの匂いに引かれて、何も知らないゴッボールたちがアロウィンの畑に集まって饗宴を繰り広げた。するとこの哀れな動物たちは、あっと言う間に見るもおぞましい姿に変身してしまった。変身した自分たちの姿に慌てふためき怒り狂ったゴッボールは、群れをなしてパーティーに乗り込み、パンプキンの呪いを皆に知らしめてパニックを引き起こした!なんと、感染した動物に触れた人も変身してしまうのである!

 パニックは幸いにもどうにか収まった。変身は一過性のものだということが分かったからである。そして偶然にも、普通のパンプキンを頭にかぶると呪いから逃れられることが分かったからである(一人の子供が、中身が空のパンプキンの中に身を隠そうとしたことで分かった)。まったく、魔術師ブウォークが用いる手段には、うかがい知れないものがある...

 さてこうして、アロウィンの不正行為は明るみに出てしまい、有名な農夫はアマクナから追放されてしまった。追われて逃げだした彼の行方や、その後の身の上を知る者は誰もいない...その年以来、アロウィンが恥ずべき方法で勝利した日が近づくと、見えない彼の存在がアマクナに再び重苦しくのしかかり...その呪いがアマクナの生き物たちに襲いかかるのだ!

(削除)

(フィルトウンガ)


マウス・ボウッフによる序文

私はあちこちを旅し、12の世界にも行った。ノリフィス・ランドの薄暗い森からシディモート沼地の霧まで...。この素晴らしい場所から、数え切れないほどの思い出を持ち帰ってきた。しかし、最も重要なのは、旅路の間中私にまとわりついていたこの儚い感覚だ。その感覚は少しずつアイデアとなり、家に着いた時には料理のレシピとなった。私は料理人である。覚えている限りずっと以前から、私は良い肉や魚が好きだった。そしてそれにも増して、びっくりするほどおいしい料理を作るのが好きだった。

この豊富な旅行経験において、私は今まで作ることのできなかったたくさんのレシピを学んだ。しかし、それは重要なことではない。私は料理法の極致に到達したのだ。的確な量の材料を丁寧に混ぜ合わせることで、私は料理の中で最も繊細な料理と言えるものを考え出した。いや、私は傲慢にもそれを神話的なミートボールだと思っている。この料理をフィルトウンガと名付けた。この料理を最初に食べたパンダワが名付けた名前である。

その土地の方言であるこの言葉が持つ正確な意味は知らないが、一種の喜びの声のようなものだろうと私は推定した。後悔しているのは、材料がとても珍しく、揃えるのがとても大変であるため、もう1度この料理を作ることができなかったことだ。


フィルトウンガ - 野イチゴの層

まずメインを作り始める前に、皿とメインが直接接触するのは避けた方が良い。従って、フルーツのゼリー皿を覆わなくてはならない。これに適しているのは、イチゴのゼリーだ。出来合いのものを買うこともできるが、グルメな人は摘みたての新鮮なイチゴと、大麦糖を使う。

このステップの間は、子どもの手の届かないところで行う方が良い。指や舌の跡で、汚された料理は見たくないだろう。


フィルトウンガ - 味覚の準備

フィルトウンガはぜいたくな料理だ。よって、この料理のほとばしる感触と風味を味わう前に、味覚の準備しておくのは不可欠だ。皿にイチゴのゼリーを塗ったら、少量のレモン汁で味を付けた、薄切りのミュゾーで覆う。そこへ、余分なレモン汁を吸い取ってくれる生のイェビを無造作に投げ込む。このミュゾー・レモン・イェビのハーモニーが、これからやってくるご馳走の前に、胃を慣らしてくれる。おまけに、見た目もいい。


フィルトウンガ - メイン

このなめらかな層が出来上がったら、肉を焼く。最も良い焼き加減は、伝説のクラックラーの石で出来たオーブンで、先祖伝来のツリッターの木を使って焼くことで得られる。もちろん、この条件を満たすことは簡単ではないし、通常のオーブンでも十分だ。ドラゴ肉をまとめ、クルミ油の中で煮る。ブウォークのワキの匂いに似た香りがしてくるまで、2分ほど沸騰させる。

油から肉を取り出し、軽く油を切る。用意した皿の上に置く。


フィルトウンガ - 付け合わせ

この繊細な料理において最も簡単なのが付け合わせの調理だ。マッチする付け合わせは他にないから、レシピ通りに作ってほしい。ジャガイモとさらだ菜と腹ペコぐぅの花とクラヴイカをベースにしたピューレを作るだけだ。ゆでたジャガイモを手でつぶす。腹ペコぐぅの花をジャガイモに加える。ピューレがなめらかになったら、肉の周りにぶちまけ、さらだ菜と生のクラヴイカを散らせば良い。


フィルトウンガ - ナッパージュ

肉の煮汁はほとんど出ない。そこで、ソースを作る必要がある。フィルトウンガときちんと合うソースはただ1つ、作るのは比較的簡単だ。ブラックチョコレートを溶かす。その間にフライパンで玉ねぎを色づくまで炒める。ナスを何本かしぼり、溶けたチョコレートを炒めた玉ねぎに注ぐ。きれいな紫色が出るまでそのまま置いておく。ゴマを加える。

ソースはこれで完成だ。ドラゴ肉ステーキの上にかける。


フィルトウンガ - 飲み物

このステップで、料理は出来上がる。ふさわしい飲み物が一緒に出されるのでなければ、この料理の名にふさわしくはない。フィルトウンガに合うと思える飲み物は1つだけだ。パンダパイラーの小瓶、その色と比較し難い繊細さは、お客たちの心を奪うだろう。ただし、この飲み物には研ぎ澄まされた味覚が求められる。したがって、皆が飲んだ量をしっかり見張っておこう。


フィルトウンガの出来上がり。冷めないうちにどうぞ。

(ブウォークビール)

偉大なる魔術師ブウォークンロールによる

原材料
ホップ
酵母
ブォークの尿
赤ゴブリンの血または白ゴブリンの血

器具
青い蒸留器
オレンジの蒸留器
紫の蒸留器
ゴブリンの血を得るために使うメス
ゴブリンを押えるためのペンチ


仕込み

ホップを挽き、紫の蒸留器で煮込みます。


醸造

ブォークの尿を加え、蒸留器の温度を63℃にして30分間そのままに保ちます(この温度で、でんぷんはマルトースに変化し、しばらくそのままにすると糖分が醗酵されてアルコールに変化します)。


ホップ添加

次に搾汁を青い蒸留器に入れて沸騰させます。ビールの色を濃くしたい場合は、沸騰が始まったときに、ゴブリンの血を入れるといいでしょう。そのまま2時間ほど沸騰させると、渋みのある樹脂を抽出することができます。


醗酵

できた液体は青い蒸留器で冷やします。温度が25度まで下がったら、酵母とゴブリンを蒸留器に入れます。酵母によってゴブリンが完全に分解されたらビールの出来上がり。


頭蓋骨

ビールの泡を保つためには、昔の敵の頭蓋骨に脂がついていてはいけません。ビールの上に泡がのっていると、空気による酸化を防ぐことができるだけでなく、見た目にもおいしそうになり、口当たりもよくなります。


飲み方

頭蓋骨にビールをなみなみと注いだら、まずじっくりと眺めて色、輝き、泡立ち加減を楽しみましょう。それからグラスを傾げて香りを楽しみ、次に口の中でコクやのどごしを楽しみます。


げっぷ

最後に、隣で飲んでいる人に向かってゲップをして、一番口数の少ない人が一番飲んでるんだって教えてあげましょう!

(ギルドガイド)

本書は、ギルドの創造に付随するあらゆる記事の抜粋を翻訳したものだ。


文中には、アマクナ初期のセレモニーの際に使われた古代人の祈りの言葉や、私のコメント付きの、世紀に渡る指示や忠告が書かれている。

この本の推敲に助言を頂いたハリー・ストッテル氏に、この場を借りてお礼申し上げる。

おお、過ぎ去った時の子孫よ、来たる世紀の父よ!

ギルダロジェムを永遠の宝石箱に納めるのはキミの役目だ。

祖父母の名をこの歴史ある地へ蘇らせるのはキミの役目だ。

仲間の栄光のために勇者たちを導くのはキミの役目だ。

大地や商業から利益を受け取るのはキミの役目だ。

つまり、忠実な者たちを守るのはキミの役目だ。

しかし、忘れるな!

ギルドの石は、バトルでその勇気を証明した魂の前でしか輝くことはない。その永遠の光は、キミが少なくとも9人の仲間を手に入れない限り、輝くことはない。

孤独でいる者たちに、そして10人以下に留まり続ける者たちに恥を!

今日の日は10人、明日はさらに多くの仲間と、その存在によってアマクナの地を輝かせる者たちに栄光を!

何故なら、共有された彼らの経験はギルドの真の力を生むことになるのだから。

「新米の冒険者は、バトルで倒したモンスターの腹の中から、ギルダロジェムを見つけることができるだろう。」


この石は実のところ、有機体のクズが結晶化したものである。よって、モンスターの肉を切って手を汚すことさえ恐れなければ、アマクナのあらゆるところで見つけることができる...。


「この石を持つことで、新米の冒険者はセレモニールームに入ることができる。石は、決められた台座に置くことになる。

そしてアマクナの習慣により、鍛え上げていくこととなる紋章に先祖の名前を刻むことができる。


そう、わたしの優秀な同僚であるバルナベ・ルブレが訳したように、「身に着けることになるブルゾンに...」

「そのギルドリーダーとしての新しい力を鍛え上げるためには、9人の仲間を集め、知性によって彼らの力を鍛え上げなくてはならない。」


リーダーは、各々にそれぞれ役割を与え、それぞれがギルドに注ぐ経験値の割合を決定する。


「新たなリーダーは洞察力を発揮し、常に理性の声に従う。」

この文は、ネコ年13年に盲目で耳が聞こえない狂人モルドールがリーダーになった際にいささか問題となった。


「ギルドの人数については、リーダーが決めることとなる。」

新しい仲間を集めることは、優秀なリーダーの基本的な仕事の1つであることは間違いない。それは獲得経験値を高め、新しいパーセプターを設置することに繋がる。


「各々の経験は全ての者の経験」

また、ギルドの能力を上げるには、メンバーがそれぞれ自分の持つ経験値をギルドに捧げなくてはならない。


「大地と商業からの利益を受け取るには、パーセプターの力に頼ることになる。」

パーセプターは貪欲なヤツらだ。彼らは皆、悪魔のようなロバから生まれた。

少なくともこの定義は、アマクナでは見たことがないほどに偉大な商人であるオクタビオン・ドストレアンが明言していたことである。 (この優秀な商人のもうけに対して、この4足獣が手にした利益を考えると、この憎しみに満ちた文章にも納得がいく。)

一方、アマクナでは見たことがないほどに偉大な貿易商ユイル・コウパットは1度も不満を言ったことはなかった。パーセプターたちはこの貿易商の収穫物からボーナスをもらい、その恩恵としてユイルとギルドの間の通商関係を作り上げていたのだろうと考えられる。


「フルイェスク蘭のように、パーセプターは下劣なヒキガエルたちの渇望を掻き立てる。」

この暗示は、ギルドの財産が持つ根本的な面について、オニリック・ハットフルが発言したものである。パーセプターによって回収される素材やカマは、冒険者や盗賊が横取りしようとする前に、リーダーや任命された者たちによって回収されなくてはならない。パーセプターの保護に注意を払い、ギルドのメンバー間で保護者を任命しなくてはならないのはそのためだ。パーセプターに自ら身を守る術を身につけさせなくてはならないのもこのためである。


「パーセプターとは、開け、そして閉めなくてはならない扉のようなものである。」

この言葉も同様にオニリックによるものである。素材を手に入れ、経験を積み、今後遭遇せずにはいられないであろうあらゆる攻撃から身を守るためのポイントを、パーセプターたちに与えることの必要性を指摘している。

(ソフトカシワ)

 ずっとずっと昔、人々がやって来て、町が築かれる以前、アマクナは植物が茂り、動物や植物がのびのびと幸せに生きる地域だった。

 人々の多くは周囲の山々や海からやって来たが、彼らはこの地に、人を寄せ付けない生命を宿した森があるのを発見した。

 何人もの人々がその森で姿を消し、人々は、その森には恐ろしい秘密が隠されているということに気が付いた。そう、現在「ツリッター」とよばれる生きた木の存在である。新参者が森に住みつくのを嫌がった木々は、近づく者を誰かれかまわず攻撃した。

 ツリッターたちは、森の中心部から力を与えられていた。アラックロクモの召喚能力を持ち、バトル中に自分をヒーリングできるツリッターは、その脅威を知らずに立ち向かう人々にとっては非常に恐ろしい存在だった。しかし何はともあれ、人々が火を放ったことで森はおさまっていく。

 以後、新しく何かを建設するときは、松明を灯し、必要な土地の一部を燃やすことが恒例となった。森の拡大は止み、ツリッターも次第に姿を消した。

 しかし、アマクナの北西に、森の一部が無傷のまま残っている。火を放っても、斧をふるっても、そこを攻略することは叶わなかった。

 森の中心にはソフト・カシワがいる、という者もいた。


 ソフト・カシワは昔から存在する守護者であり、植物たちの崇拝の対象でもある。噂によれば、森の心であり、意識である、とも言われている。

 この伝説の木を調べようとした冒険者はたくさんいた。しかしその多くは、知的好奇心というよりは、ソフト・カシワの財宝にひかれてやって来た。そして、自分たちが見た者を人々の前で披露するために戻って来ることのできた者は多くはなかった。

 冒険者たちの話はそれぞれ食い違うので、ときの権力者たちは彼らの話をあまり信用しなかった。

 しかし、力のある者たちが森で行方不明になってしまうと、人々はツリッターの脅威が復活したのだと確信した。


 この暗い森を灰にしてしまうことなんて無理だ、と人々はもう長いこと諦めている。そんなわけで、謎は今でも謎のまま残っている。

()

おかしな伝説 : p. 3
ザカリー・アスプ : p. 4
マリーの挑戦 : p. 5
キプ山 : p. 6
証人 : p. 8
モロック・アルク : p. 11
キス : p. 12
愛のムチ : p. 14


 世界には様々な生き物がいる。ここでお話する獣は、間違いなく、この世で最も奇妙な獣である。

 「奇妙」とは、よくいったものだ。クランチャーの話はよくおとぎ話と混同されるが、誰に語らせても( たとえヤツの悪口であっても) そこには1つの共通点がある。「偉大な魔術師を以てしても解明できない謎」だということだ。その謎は、たとえ賢者ブラダッチョやその弟子ラダマであっても分からないという。

 クランチャーの話は(まあ、ヤツが存在すればの話だが)、かの有名なゼロート・アスプの息子、ザカリー・アスプという青年とは切っても切り離せないと我々は考えている。

 この本で、ザカリーがキプ山へ向かった経緯をなぞるのはそういう理由からだ。


 アマクナの魔術師のなかでもとりわけ経験主義者と見なされていたザカリー。バロワスの天使と同様、自分の目で見たものしか信じなかった。あるとき彼はおかしな賭けにでる。「クランチャーは単なる迷信にすぎない」と世界に証明する、というのだ...。

 ことの発端は、「輝く指の宿」の入り口で、くつろいだ雰囲気の中で起こった。ここは、男魔術師と女魔術師が出会えるちょっと下品なバーで、うっぷんをぶちまけたい魔術師たちもよく集まってきていた...。

 だが、ザカリーがここに通う理由は他にあった。「輝く指の宿」は、鞭打ちマリーと、彼女に心を奪われた若い男たちの聖域だったのだ...。

 酒もたっぷり入ったその夜、若い魔術師の度重なる告白に嫌気がさしていた鞭打ちマリー は、クランチャーが存在すること、あるいは存在しないことを証明できたら、求婚を受け入れてあげる、とザックに約束した。

 女というのは時に、求婚者に対して残酷になれるものだ。彼女がザカリーに与えたこのミッションは、交尾中のミノトロールの上に立って何時間も動かずにいろというようなものだ...(いや、例えが悪かった。ザカリーはこれくらいなら既にやってのけているから)。

 だが若いザックは、笑顔で受け入れた。彼女の永遠の愛撫を受ける権利が手に入るなら、そんなこと取るに足りないと思ったのだ。

 と、これが、若い魔術師が小さな荷物を肩に背負い、頭の中でいやらしい空想をしながら冒険に出た理由だ。彼はキプ山に向かい、クランチャーと接触したことがあるという者たちに会いに行った。

 彼らのいる場所にたどり着くのは容易ではなかった...。道のりは長く、危険に満ちていた。ただ1つ恵まれていたのは、クランチャーに出会ったことのある人々は皆同じ隠れ家に集まっていたこと...。

 ザカリー は何としてもたどり着かなくてはならなかった。彼らの話を聞くためだったら、どんな困難も乗り越えなければいけない。とはいえ、この部分はまだ話の「山場」ではない。


 隠れ家に入るのは極めて困難だった。というのも、そこにいるのは皆狂人ばかりだったから。脱走に備えて、彼らに破られないような罠をいくつも用意しておく必要があったのだ。

 彼らにはある共通点があった。クランチャーの存在を否定できない、という共通点だ。ヤツは存在しているのかもしれない、という嫌な空気がその場を支配していた。


 また、彼らには変な傾向があった。女たらし、変質者、リンゴ食いやヌードルバーナー...それぞれが、おかしな性癖をかかえていて、奇妙な行動をとるのだった。獣の姿を見たことによるショックでそうなったのか、自分たちの犯してきた罪への償いの気持ちからなのか、とにかく皆がキプ山の隠れ家に集まっていた。

 乗り込んできたザックの顔には笑顔が浮かんでいた。脳裏には常にマリーの姿。こんな最悪な事態に遭遇してもなお、マリーへの愛のおかげで、ゆるぎない鋼の意思が彼に生まれているようだった...。


 傷の手当てをしてしまうと、ザックはいかれたダモッグに何かたずねようとした。タモッグはビールの醸造者で、トフの血が入ったビールを作っていた。そのおかげで多くの飼育者が路頭に迷ったが、一方で彼はアマクナ随一のビールを作り上げた。無論、飲んでいる人たちには何でできたビールか分からなかったわけだけれど...。このビールを出す宿屋はまだあるようだが、その危険性を指摘され、ダモッグもここに収容されていた。

 さて、ダモッグは訪問者に興味を示さず、「もっと...もっと...」と繰り返してばかりいた...。タモッグに限らず、話を聞かせてくれるはずだった人たちは皆同じような態度で、ザックは落ち込んだ...。切り裂きジャンゴも、軽薄ファルドもそうだった...。誰もが同じ言葉を、同じ調子で繰り返すばかり...。


 そう、1人を除いて。

 希望を失いかけながら、ザックは最後の人物に会いに行った。間違いなく一番すごいやつ、ハゲ頭の大きな男だった。飛び出したその大きな目は恐ろしく鋭く、見る者の心を見透かすかのようだった。だがザックはそれも気に留めなかった。こんなヤツの目を怖がるために、旅を続けてきたわけじゃない...。鞭打ちマリーのお尻を彼に忘れさせるほど強烈なものなど、そうそうあるはずはない...。


 モロック・アルクという名のその男は、他の「同居人」と違って同じ言葉を繰り返すこともなく、奇妙なほどに静かだった。恐ろしいほど静かだったと言ってもいい。

 モロックが口を開いた。この世のものとは思えない、信じられないほどしゃがれた声がする。ここじゃ言えないようなポーズを取ったマリーの想像でもしていなければ、ザック は逃げ出してしまいそうだった。それもそのはず。モロックが放った「やぁ」という短い言葉は、イオップの神の血さえも凍らせてしまうほどのものだったから。


 ザックはこころなしか震える声で1001個の質問をした。そしてこの伝説が嘘だという証拠を探した。


 ザック としては、クランチャーの存在の有無さえ分かればそれでよかった。ここへ来て、欲望は大きく膨らんでいた。無駄な時間を費すほど、マリーに会えない不毛な時間も刻々と進んでいく。

 不意に、モロックが喋りだした。さきほどと異なり、若々しく優しい声...「キスをしてくれないか、ザカリー。キスをしてくれたら、オマエが欲しい証拠をあげる。キスして。そうしたら、この旅を終りにしてあげる。」

 不審に思ったザカリーはしばらく考えた...こんな荒唐無稽な話は、1度でも信じたことはなかった。愛する女性を手にし、その上名声を手にできるとしても、こんな狂人にキスするなんて。

 ヤツは鎖に繋がれていた。誰かが攻撃してくるにしても、少なくともこいつではないだろう。ザックはゆっくりと近付き、微笑みを浮かべながら、モロックの顔に両手を添えると、アマクナで最も極悪な盗賊であり暗殺者の1人であるその恐ろしい男に、心をこめてキスをした。

 護衛たちが目を覚ましたのは、それから何時間か経ってのことだった。彼らの証言によれば、ザックの唇がモロックに触れた瞬間、ものすごい光があたりを照らしたという。そして彼らが目を覚ました時、ザカリー・アスプ の姿は消えていて、モロックはといえば部屋の隅で縮こまり、絶え間なくつぶやいていた。「もっと...もっと...」


 これは集団錯覚だろうか?とにもかくにもクランチャーの存在は未だ解明されていない...。


 しかし、その数日後、今度は鞭打ちマリーが姿を消した。それからかなりの時が経ってから、何人かの迷い人が、森の奥深くで、大笑いをしている男をムチで打っている彼女の姿を見たという...。


 クランチャーが存在しようがしなかろうが、私たちは知った。愛は人を無謀な行動にかきたてる...完全に狂わせるということを!
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