『TRPGオンセン』で活動しているSW2.0のコミュニティ【希望亭】のwiki

プロローグ Day_1094

「いい天気だな こういう日に外でお茶をするのはやはり気分が安らぐ」
私はアルファ ニンジャにしてイレブン傭兵団の騎士である
妹を誘い、今日は街へ降りている
「確かにいい日ですけど、鎧着たままお茶は流石にどうかと思いますよ 兄さん」
「見てドレイクとわかるのが街を歩いていたら怖がられてしまう マナーのようなものさ」
「兄さんも知られてるのはその鎧の姿ですもんね もうちょっと顔出してもいいと思いますよ」
相変わらず私の妹は優しいが、こうして自分の意見を言ってくれるようになったのは最近のことのように思える
「なにわらってるんですか? もしかして顔に何かついてた!?」
「いや、昔を思い出していただけだ 最初に会ったころは態度も随分違ったな、と」
「いつの話ですか…恥ずかしい話しないでください もう…」
怒ったり拗ねたり あの頃はそんな顔は見られなかったな
もう、3年も前になるあの日、私とポーラは私が住んでいた屋敷で出会った
つい、一つの蛮族領が滅んだと知らせを受けたあとすぐの頃だったな

Day_01

私は父に言われ、今日から私専属になるメイドと会うため屋敷のエントランスへ降りていた
もっとも、お目付け役と言った方が良いだろうか
なにぶん、このころの私は随分と活動的なやんちゃな子供だった
親も手を焼いてだろうし、当時の私は「どうやったらそのメイドをまいて外へ出るか」と考えていた
「お坊ちゃま 新しく配属されたお坊ちゃま専属のメイドをお連れしました」
「ありがとうリン 仲良くやれるといいが」
メイド長のリンはお辞儀するとその場を去っていく
残されたのは私と、私より年下の女の子だった
あの頃は正確な年齢差は知らなかったが、それでも一目で年下とわかる女の子だった
そして、その眼には怯えているとわかる眼だった
「君が私専属のメイドだな 私の名前は…」
「きょ、今日からお世話になるメイド、ポーラ・アーデルシュタインと申します! よろしくお願いします!お坊ちゃま!」
「・・・」
この子はおそらくメイド長か誰かに、何よりもまず自己紹介をせよと言われていたのだろう
故に勇気を出してくれたわけだが、見事に私の自己紹介中だったな
「あ、あの すみませんお坊ちゃま えと…」
「気にするな 私の名前などメイド長から聞いているだろう」
はっはっはと笑い、気にしていないとアピールしても…これは怖がられているな
「君と私は年が離れているがお互い子供だ 私を実の兄のように思ってくれてかまわない ここのことは私のが詳しいくらいだろうからね」
「え、えと…」
「さて、お茶にでもしよう 自己紹介はその場でゆっくりやらないか?」
「では、用意いたします!」
席には君もついてほしかったのだがね、と後で言っても座ってくれなかったのは今ではいい思い出か
緊張している以外は失敗はなかったからこそ、少しは打ち解けたかったと思ったのも記憶している

Day_05

この日、由々しき事態が起きた
部屋に貯めていた本を読み切ってしまったのだ
「まずい…な」
ポーラと打ち解けるため、お茶に誘い、話をし、仕事を手伝いに行っては「ダメです!」の一点張りで予想以上にヒマを持て余していたようだ
予想より早く読む本がなくなった私は部屋で一人頭を抱えていた
ポーラを置いて出かけるのは簡単だろう だからこそできない
絶対にリンにポーラが叱られてしまうからだ そんなことは「兄として」と言葉にした以上絶対にできない
「お坊ちゃま、どうかなされましたか?」
「ん?いやなんでもないよ 少しヒマだなと思っていてね」
待てよ… 仕事としての体裁をとっていれば、ポーラと打ち解けるチャンスなのでは?
「では、なにかご用意いたしましょう メイド長に聞いてなにか…」
「いや!その必要はない!」
「?」
「ポーラ、私と遊ばないか?」
「ダメです」
この子の「ダメです」から抑揚が消えつつあるのはどうしてだろうか…
「なに、私の相手をするのは専属メイドの仕事だと思わないかね? それに今までと違い、私が困っているのだ」
「うぐっ で、では少しだけです 私も相手をしていて欲しいとメイド長から言われていますから」
あとでリンにお礼を言っておこう
「では簡単なトランプゲームから…」

それから一時間後、そこには若干ながら涙目のポーラと苦笑いの私が居た
「つ、次のにしよう 今度のは私は少し苦手なんだ」
「はい…」
後にわかったことだが、ポーラはこういう遊びをしたことがなかったそうだ
接待どころではなかったと、後日言われてしまったよ…

Day_364

ふと気が付けばあれからしばらくの時が経っていた頃
若干の態度の軟化はされたが…まだ目標は達成できていなかった というのも…
「お坊ちゃま どうかなさいましたか?」
態度は軟化したが、未だに兄と呼ばれていない 何か作戦が必要だな…
「もしかして今日のお茶はお気に召しませんでしか!?」
「そんなことはない! むしろ美味しいくらいだ!」
「必至だと嘘っぽく聞こえますよ…」
「すまない… 別の考え事をしていてな…」
「最近考え事が多くありませんか? メイド長も他のメイドも心配されていましたよ」
それはこの屋敷に居る半数以上の人物に私が悩んでることがばれてないか?
「おそらく心配されてなかったのはご主人様だけだったような…」
前言撤回 99%の人物だ
「私の心配は無用だ もしかしたら時間が解決するものかもしれない」
「それよりだな ポーラは何か困っていることはないか?リンに便宜を図るのも私の役目だろう」
「とくに困ってないですよ そもそもメイド長には良くしていただいてますし、ある程度は自分で申しているところもありますから」
リンの面倒見の良さに私が泣いた 彼女はいいメイド長だな!
「それなら、私の一つ我が儘を聞いてもらえないだろうか?」
「お茶の席について欲しい以外でなら考えましょう お茶の件は私は給仕係ですので」
「(´・ω・`)」
「そんな顔してもダメです」

そんな、いつかは仲良くできるんじゃないかと希望を抱いている木漏れ日の日を
私はいつまでも続くと思ったその時だった
「彼女を拘束してください」
「きゃっ」
「なに!?」
リンが即座にトロールに捕らえられ、私はリンに制されていた
「どういうつもりだリン いくらメイド長であっても彼女を無理やり拘束するいわれはないはずだ」
「つい先ほど ご主人様が大事にしていた宝玉『竜の顎』が盗まれて居ることが発覚しました」
「その件とポーラに何の関係がある!」
「ご主人様は、まだ来て日が浅いポーラを疑っています」
あの堅物親父は何を考えているんだ!?たったそれだけのことで決めつけるとは主としてどうなのだ!とはらわたが煮えくり返ったが、ここは激高してはいけない
むしろ、リンにポーラが捕まっている今は安全だ なぜなら、リンも今は仕方なくということが雰囲気からもわかる
「…父に会いに行く 書斎へ通してくれ」
「かしこまりました こちらへ」
「お坊ちゃま…」
「なに、心配するなポーラ 私がポーラと居た時間は多い、すぐに無実とわかるだろう」
私は、この時もポーラからあの怯えた眼を見た
だからこそ、兄貴分として彼女を守る そう、誓ってあの場所へ向かったのだ

Day_364_2

「父上!邪魔するぞ」
「久しぶりに書斎に顔を見せたと思えばそのセリフか 何か気に食わなかったかね?」
私は実のところ父と仲が良くなかった
長男であるということもあって、父は私を煩わしく思っていただろう
「なぜポーラが疑われている 仕事の時は他のメイドと、普段は私と共に居る彼女にそんな盗みをする時間はない!」
「なぁに 皆が寝静まっている頃に、見回りの番でくすねれば簡単だろう」
「我が家の警備は確かにメイド任せだが、ポーラは私の専属だ 故に見回りに参加せず日頃の仕事のみを担当しているのはリンに確認済みだ」
「うぐっ」
相変わらず我が父は考えなしだな これでは器が知れるか
「だ、だが他のメイドたちは忠誠心が高い 彼女以外この屋敷に出入りして盗むような人物は居ない!」
我が父親ながら馬鹿なんじゃないだろうか?
「なんにせよ、証拠もないのなら不当だ 即刻開放すべきだ」
「ふん、怪しい奴を処罰し続ければいずれは犯人も捕らえられるだろう 簡単ではないか」
「それまでに屋敷から人が全員いなくならなければいいがな」
どうやら、一度言ったことは覆したくないらしい 主に私に指摘されてでは

「なんにせよ、彼女は捕えておく 貴様が無実だというなら3日待とう それまでに無実だと解らなければ彼女は領主として処刑する」
「なんだと!?」
「3日待つだけでもありがたいと思え 私としてはすぐにでも処刑したいが、メイド長の奴が優秀な人物だからしばし待てと言ってな」
「…了承した 3日だな?日付を間違えないでくださいよ父上」
「ふん 言われなくとも間違えんわ!」
この時、私は焦ってはいなかった
リンが作ってくれた3日という時間は貴重だが、むしろ3日以降後で盗人の足を追うのは無理だ
むしろ初日、まだ現場も閉鎖されているだろう今、この瞬間
最初の勝負はまさに今であると 私の直感が言っていた

Day_364_3

現場へすぐ向かった私は、メイドたちが封鎖している宝物庫(と言っても広い部屋に件の宝玉ぐらいしか置いてなかったが)にやってきた
「ご苦労様 父に言われて捜査しに来た」
「あの…ポーラさんは…」
「大丈夫だ ポーラならリンメイド長が守ってくれている」
メイドたちもよほど心配していたのか、安堵の表情が読み取れる
だが、みなまだ心配らしい
それもそのはず、調査に始めてきたのが私だけだからだろう
仲間もなし、屋敷から飛び出してはやんちゃをする子供に何がわかるのかと言ったところだ

が、私には実は奥の手があった
ポーラと出会うほんの数日前、私はある技術を皆伝として認められた
それは『バルフォール式忍術道場』、つまり斥候の術だ
多少なりメイドたちよりは探せるものも多いだろう

そう思い現場に入った私は驚いた
確かに件の宝玉はない
それを置いてあったガラスケースも粉砕されている、が
「ふむ、奇麗すぎるな」
そう、片付いているのだ
地面に散らばったガラス以外 すべてが一度掃除されている
「ガラスの数が少ない と、すれば」
そしてこの部屋は一見すれば真ん中のガラスケース以外何もない部屋だが
「ここにある隠し部屋は盗人も知らなかったか」
ガチャリと壁を押し込むと、扉が開く
そこは今は亡き先祖が残した部屋 武術の秘伝などが書かれている
もっとも、父は聞かされておらず、今この屋敷で知っているのは長男である私だけだ
実はこの部屋は傾いている 若干だがこの隠し部屋にほんの数度だけだが
本来この広い部屋は人間体でも模擬戦のためにある
数度傾いているのは足場の違和感を鍛えるためともう一つ
「やはり血痕か…やはり誰か戦ったようだな」
そう、闇討ちで倒される前にここへ来れば、こうして隠し部屋に染み出た血で脅威が居ることを残せるのだ
ポーラは戦っていない 彼女は昔拳闘士の経験があると言っていたが、試しに組手をしたが本当に見習い程度だった
武器無くしてはこの血は彼女に流せない 不意打ちでもしない限り無理だろう
「だが十分な証拠ではないな だが、犯人への手掛かりか」
そういって私は別の場所へと行く 私の知らないことを知っている人物へ出会うために

Day_364_4

「というわけだリン 今怪我をしている屋敷の人物か、今消息不明の人物は居るかい?」
「簡単に言いますね 把握できている範囲でなら答えられますが、なんにせよそんな部屋知りませんでしたよ」
「一度見習いであったころに興味本位で屋敷中を探索してね その時偶然見つけていたのだよ」
「というか、私に全部言ってよろしかったのですか? 私にはご主人様への報告義務がありますが」
「心配いらないさ どうせ父はなにもできんよ」
不思議な顔を浮かべているリンに私は本題を促す
納得できなさそうだが、彼女は答える
「怪我をしている人物は存じませんが、いなくなったメイドなら知っています」
「やはりか…その人物は昨晩の見回り担当だな?」
「ええ、居なくなったのに気が付いたのはメイドたちの報告によるものですから、先ほどです」
「やはりリンも調査してくれていたか!頼りになるなぁ我らがメイド長は!」
「これでもメイドたちは愛していますから しかし、居なくなったメイドの子の生死は絶望的ですね」
「それは…すまない、話すべきではなかったか」
「いえ、犯人を許せないと心に誓ういい機会になりました」
しかし、とリンはわからなさそうに話を続ける
「戦闘して怪我をしているなら犯人でしょうが、メイドの話では怪我をしている人物は居ないとのことです これでは振りだしでは?」
「いや、メイドは知らないだろうが私が知っている」
「は?」
「では答え合わせと行こう 先ほどの屈強なトロールとリンには仲間につけるために先に推理を教える」
「まあ、いいですけど 本当にわかってるんですか?」
「なに、あれの思考は誰よりも知っている自信があるんだよ」

Day_365

「で?戻ってきたからには証拠が見つかったんだろうなドラ息子」
「ああ、実に有意義な10時間だったよ」
「こんな早く見つかるわけがないだろうがぁ!さっさと探しに行けぇ!」
「まあ焦るな父よ 答えは簡単、怪我をしている人物だ」
「はん!そんな奴が居るか 喧嘩でもしたわけではあるまい」
「それが喧嘩をした奴が居たのだ父よ そしておそらく、犯人は宝玉の秘密も知ってしまったのだろう」
「なに?」
「あとだが、随分と厚着だな父よ まるで見られたくないものが体にあるようだ」
「ま、まさか私を疑うのか!? ありえん!持ち主だぞ!」
「宝玉の秘密を知れば父ならやると信じているよ」
「だ、第一宝玉の秘密とはなんだ? お前の推理はそれがなければ破綻するはずだ」
そんな父の顔は焦りに満ちていた 相変わらず隠すのが下手だ
「ではこれを見てもらおうか」
それは小さな黒いかけらだった
「なんだそれは?ゴミなら捨てろ!」
「違うな、宝玉だ」
「な!?証拠はどこにある! 第一それが宝玉だからと言ってなんだ!」
「では順を追って説明する これが宝玉である証拠は成分だ」
「私はあの石が表面だけ奇麗にされたただの石ころであると知っていたよ 父は宝石の類と信じていたね、ついこの間までは」
「その表面の加工は私は文献で調べ済みで、割れてしまえばこのような小さな尖ったかけらをたくさん生み出すことを知っている ガラスのかけらに混じって沢山落ちていたぞ」
「な、に…」
「ついでに言えばあの宝玉は消して割れぬ権力の象徴とか言っていたな父よ 随分自分でたたき割ってしまったのが悔しかったらしい」
「だ、第一私がけがをしたのがあの晩だとはわかっていない 昨日貴様と話した後かもしれんだろう!」
「昨日私が話した時点で怪我をしていたのは体の動きで把握済みだ それより以前に体に怪我をするタイミングは盗まれた晩しかありえんよ父上」
「馬鹿馬鹿しい!付き合ってられるか!」
「どちらへ行かれますか?ご主人様 いえ、前ご主人様」
「な、なに? 何を言っているリン、私がこの屋敷の主だぞ!」
「現在の私たちの主は前お坊ちゃまへ委任されています これらの決断はメイド長である私が判断しました」
「どういうことだ!」
「簡単だろう あなたの寝室から証拠品が見つかれば離反するだけの忠誠心だったということだよ」
「わ、私の部屋くらいメイドたちが入るはずだ! メイドたちも疑え!」
「前ご主人様 あなたはこうおっしゃいましたよね 『しばらく私の寝室と書斎には人をいれないでくれ』と、あの朝に」
「そういうことだ あの部屋にあの晩入れたのは父上だけ そしてそれ以降も父上しか入っていないのさ」
「くっ トロールども!なにしてる!こいつらを捕まえよ!反逆者だ!」
「悪いが 俺たちも お前を許せない」「本家様に 伝え済み 観念するのは お前」
「イクリプス家当主代行として命ずる この謀反者を捕えよ!」
「は!」「おう!」
こうして父親は連れていかれた 彼はこの1週間後、本家にて処刑され、正式に私が家を継ぐこととなるのはまた別の話だ
「お坊ちゃま…いえ、頭首代行様 よかったですね」
「あー呼ばれ方が変わってもやはりうやうやしくされるのは慣れないな こう、もっとフレンドリーでも…」
「ダメです」
今思えば、ポーラの「ダメです」は彼女が教えたのかもしれない いつも私を叱っているのはリンだったからな…

Day_365

と、いうわけで即時ポーラは釈放となったわけだが
「えっぐ…えっぐ…」
「泣くな…こうやって助かったことを喜ぼう」
「だって…だって…」
ちなみにリンは「仕事がありますので迎えに行ってあげてください」と言って鍵だけ渡してどこかへ行った
気を使ってくれたのはわかるんだがもう少し素直に言って欲しいものだが…
「どうして…助けてくれたんですか?」
「ん?当然だろう だって私はお前の兄だぞ」
「それはそれくらい親しくしてって意味では…」
「違うな 私は本当にお前の兄になりたいと思っている 今もな」
「なにせ、一人っ子で父親は傲慢で自分勝手 母はとうの昔に見限って出奔」
「あ、ああ…」
「ゆえに家族は、この家のメイドたちだ 母であり姉であると言える」
「そしてお前は、私にできた初めての妹なのだ 私はお前が来てくれて初めて兄というものを知った」
「だから当然だ お前が困っていたら助けるのは兄として当然のこと…なぜ泣く!?どこか痛むのか?」
「だって…だって… 私そんなこと知らなくて…知ってたらもっと…」
「なら、今知っただろう それでいいじゃないか」
優しくなでても泣き止まないポーラは初めてだったな もっとも、今までが無感情すぎたとも言えるが
「はい… これからも、よろしくお願いします!」
「では、戻ろうか リンに頼んであることもあるしな」
泣き止み、首をかしげるポーラを連れて食堂へ向かう
そこは飾り付けがされ、普段ではないごちそうが用意されていた
「え、えっと お坊ちゃま…ではなく、当主代行就任祝いでしょうか?」
「いや、流石にそんな微妙な役職に就いただけで祝う者は…もういないだろう」
「では?これらは…?」
「あなたに用意したものですよ ポーラ」
「メイド長?皆さんも!」
「前にお前に誕生日を聞いただろう だが、知らないと言っていたからな」
「あ、はい 私は親からは認知されてないも同然でしたから」
「ゆえに!私がお前の誕生日を作った!」
ええ…という顔をしているポーラの顔は未だに覚えている よほど納得できない言葉だったのだろう
「何も根拠のない日ではない 今日は一年前、お前がここへやってきた日だ」
「あ…」
「一年間ありがとうポーラ 新しいお前の始まった日、それがお前の誕生日だ」
「おめでとうポーラ 今日までよく頑張りましたね…」
「リンさん… 当主代行…いえ、今は 今だけは…兄さん…」
「今だけというな 当主代行の権限だ」
「私はずっとお前の兄だ それに偽りはない!」
「はい…ありがとうございます 兄さん」
今日何度目かわからないポーラの涙
しかし、今の涙は、先ほどまでとは違う、うれしさの表れである
それが、兄である私にとっても幸せだった

Day_1095

「風が気持ちいですね 兄さん」
「ああ、こうやって風を浴びると高台の草原へ皆で行ったのを思い出す」
「あれも驚きましたよ 突然言い出さなかっただけましですけど、数日前から計画するから手伝えなんて」
「ははは そうだったかすまないな」
「でも、そうやって私たちメイドを連れ出して家族として扱ってくれたり、いつかのために武術をみんなに教えてくれたり そうやってずっと助けてくれるのが兄さんですからね」
「さて、そろそろだな」
バルバロスの我々からすれば煩わしく思っていた太陽が昇ってくる
だが、夜明けの美しさに今は魅せられている
「誕生日おめでとう ポーラ 今年も一年ありがとう」
「はい これからもよろしくお願いしますね!兄さん!」
―End.

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