最終更新: sen_no_risho 2009年06月03日(水) 23:25:53履歴
←トップページ ←第三十一夜 第三十三夜→
今回は、投機筋が先物市場で、今後の相場がどう推移すると考えてポジションを取っているかの指標になるCMEのIMM先物ポジションについて見てみよう。
我々FXをするのに、なぜ先物ポジションが参考になるかというと、先物市場というのは、その商品の将来の取引価格について取引するものだ。よって、将来その値段になるだろうという予想に基づいてポジションを取ることになる。今の相場(直物=じきもの)ではなく、将来の相場(先物)で売買しているので、先物ポジションを取る投機筋は、ちょっとした相場の動向に敏感に反応する。
よって、投機筋のもつ先物ポジションの動向を見ると、そうした敏感なトレーダーが今現在「将来、相場がどっちに動くと思っているか」が読み取れたりする(あくまで参考程度だが)。
なお、我々の行うFX(外国為替証拠金取引)は、先物ではなく直物だ。時々、FXが先物であると勘違いする人もいるが、今現在の為替市場で形成されている相場(レート)で取引されるのだから、FXは直物だ。
外国為替証拠金取引は、直物為替先渡取引(じきものかわせ・さきわたしとりひき)に相当し、先物ではない。ポジションを取る際、この先ドル高になると利益が出るだろうと予想してドルロングのポジションを取ったりすることから、先物と勘違いされるようだが、新規も決済も直物相場で取引していることに注意しよう。
FX会社の取引画面や取引レポートには、為替差益・差損にあたる欄には「スポット益」と書いてあるだろう(スポット益とスワップ益の欄がある)。この「スポット(spot)」が、直物のことだ。
(直物=spot、先物=future)
さて、CMEのIMM先物ポジションという名前は、
CMEは、Chicago Mercantile Exchange=シカゴ・マーカンタイル取引所のことである。
IMMは、International Monetary Market=国際金融市場のことである。
CMEのIMM先物ポジションとは、シカゴ・マーカンタイル取引所に開かれた国際金融市場における、先物ポジションということになる。この先物ポジションは、CFTC(米商品先物取引委員会)のページで生データを見ることができ、ここで日本円の先物ポジションの様子も知ることができる。
これらのポジションは、毎週火曜日のNY取引終了後にポジションをCFTCに報告し、その週の金曜日のNY取引終了後(日本時間土曜朝)に公表されるデータである。よって、データは週1回更新され、数日遅れのデータになるから注意しよう。水曜〜金曜の相場の動きは反映されていない。
このページは、最初のほうは、
上から順に、
と並んでいる。日本円は、ページで言うと、上から4割〜半分弱のところにある。
例えば、2008年5月29日(金)のNYクローズ後(日本時間では5月30日(土))に公表されたものは、5月26日(火)のNYクローズ時点での先物ポジションを表にしているが、次のようになっていた。
のようになる。
いろいろ数値が並んでいるが、見るべき数値は、Non-Commercial(非商業=投機筋)のLongとShortの数値と、その下にある、前週5月19日からの変化量の数値の4つだ。(表中の緑背景の数値)
この数値の単位は「枚」というが、FXのような直物為替でいう「枚(1万通貨)」のことではない。
先物ポジションの場合の「枚」は、英語でContractといい、その具体的な数量は表中に書かれている。日本円では、(CONTRACTS OF JPY 12,500,000) という文言が示すように、1枚(1コントラクト)は1250万円である。
ここでいうロング・ショートは、FXでやるような直物為替でいう「ドル円のロング・ショート」ではないことに注意しよう。
CMEの先物市場では、円は、畜産や木材と同じく「商品の1つ」として取引されている。よって、基本的に「ドルで円を買う・売る」という方向になる。なので、この表では、Longは「円ロング」、Shortは「円ショート」と呼ぶ。
円ロングとは、ドルを売って円を買うことであるから円買い、ドル円で言えばショートにあたり、「円ロング」の先物ポジションを持つことは、「将来、円高ドル安に向かうと考えている」ということになる。
円ショートとは、ドルを買って円を売ることであるから円売り、ドル円で言えばロングにあたり、「円ショート」の先物ポジションを持つことは、「将来、円安ドル高に向かうと考えている」ということになる。
そして、円ロングと円ショートの差を、「ネットロング」「ネットショート」と呼ぶ。ネット(Net)は英語で「正味の合計」という意味だ。
ネットロング=(円ロングの数)−(円ショートの数)
ネットショート=(円ショートの数)−(円ロングの数)
である。
普通、合計なら、ポジション数を足し合わせるが(上記の例なら、34,860枚+26,851枚=96,706枚)、円ロングと円ショートは逆向きのポジションなので、差を取るのだ(上記の例なら、円ロング>円ショートであり、34,860枚-26,851枚=8,009枚のネットロング)
この差分がどちらに傾いているか、そしてそれがどう増減したか、が、この先相場がどうなると先物投機筋が考えているか、の指標になる。
その観点で、ネットショート・ネットロング量をグラフ化したものが、こちらのページである。
このグラフを見ると、2008年9月頃から、2009年3月頃まで、グラフの棒が下に伸びているのが分かる。
これは、この期間、「円ロングが円ショートより多かった」ことを意味する。円ロングが円ショートより多いということは、その期間、将来円高に向かうと思う人の方が、円安に向かうと思う人よりも多かった、と大雑把に言える。
一方、2009年2月頃から、積み上がっていた円ロングポジションは急激に減少し、2009年3月には円ショートに転じた。
これは、この期間、円ロングが減って円ショートが増えたことを意味する。つまり、将来円高に向かうと思う人が減り、円安に向かうと思う人が増えた、と大雑把に言える。そして、2009年3月には、将来円安に向かうと思う人の方が僅かに上回った、ということになる。
(厳密には人数ではなく、単にポジション数の比較である)
このように、今どうであるかを知るには、先程の表のAll欄のLongとShortを、
前週からどう変わったかを知るには、先程の表のChange in ... というところのLongとShortを見る。
後者は、前週からの変化なので、マイナスの数値になる場合もある。
先程の表でこれらの数値だけ抜き出すと、次のようになる。
現在の値のロングは、今「将来円高になると思う人」のポジション、ショートは、今「将来円安になると思う人」のポジションである。
変化の値のロングは「将来円高になると思う人」のポジションの増減、ショートは「将来円安になると思う人」のポジションの増減、を意味する。
さて、上の値の場合、現在値は、円ロングのほうが円ショートよりも多い。ということは、今のところ、将来円高になると考えている先物筋の方が多い、ということになる。
一方、前週に比べてどうなったか、というと、ネットロングの量で言えば、前週よりロングが増えたことになっている。実際、前週に比べて増えたロングのほうが、増えたショートよりも多いから、「円高になると思う人は前週より増えた」と言っていいだろう。
しかし、「円ショートも増えた(円安になると思う人も増えた)」という点は考慮すべきである。
本当に円高になると思う人が増えたと言えるのは、前週比で「円ロングが増え(+)」「円ショートが減る(−)」というケースだろう。
同じようなケースで、2009年の2月から3月にかけて、急激に円ロングが減少した際には、
前者は、明らかに、円ロングが円ショートに転換したことを意味し、「将来円安になると思う人が増えた」とハッキリ言える。
後者は微妙だ。確かにネットロング(円ロング−円ショート)は減った。が、円ロングも円ショートも減った場合、元々円ロングの方が多かったのであれば、「円ロングと円ショートの比率を保ったまま両方とも減少した」という意味では、将来円高になると思う人と円安になると思う人の比率は変わらず、全体が縮小した、とも言える。これは、「将来円高になるか円安になるか“迷う”という人が増えた」と言った方が近いだろう。
一方、2009年3月から4月は、若干であるが円ショートに傾いていた(将来円安になると思う人の方が少しだけ多い)という状況であったのが、5月に入ってから再び円ロングに転じた。
これは、大雑把に言えば再び円高になると思う人の方が増えてきた、と言える。
金融危機以降、CMEのIMM先物ポジションは、円ロングに傾斜していることの方が多く、その量も5万枚前後と膨大な量が積み上がっているのが常だった。米経済が多少回復して円ショートに転じても、その量は1万枚あるかどうかで、おっかなびっくりのネットショートといった印象。何かあればすぐ円ロングに転じる状況であった。特に、2008年7月中旬の週、米住宅金融機関のファニー・メイやフレディ・マックの経営危機のとき(第三十夜も参照)は、1週間で一気に5万枚までネットロングとなるなど、市場はパニックになった。
このように、円ロングと円ショートの差(ネットロング、又はネットショート)の推移を見る場合には、ネットロングやネットショートが減った場合には、明らかにどちらかに傾いたのか、それとも相場の推移に迷う人が増えて市場が縮小したのか、CFTCの「元のデータ」(先程の4つの値)をしっかり見る必要があるだろう。
なお、CMEは、シカゴ・マーカンタイル取引所という1つの取引所なので、これが先物市場全体を表しているわけではない。が、これが、先物市場全体の縮図である、と考えられるので、皆が注目しているのである。
ただし、CMEの先物ポジションは、毎週火曜日のポジション保有量を、CFTCに報告しなければならない。
これがイヤで、CMEにポジションを持たない投機筋もいるわけなので、そういう隠れた投機筋が別の取引所で動いていることも頭の片隅に置いておく必要はあろう。
いずれにしても、このデータを以って、即、円買いだ、円売りだ、と動いてしまわないほうがいいだろう。むしろ、その週の相場の動きを見て、「やはり先物筋はそう考えたか」とチェックする程度の使い方の方が良さそうである。また、円ロングや円ショートのどちらかに大量に積み上がっている場合、相場が戻り出すとポジションを大量に崩してくるので、相場の動きが加速されるケースもある。何万枚も先物ポジションが積み上がって飽和状態に見える場合は、その後の推移にも要注意である。
←トップページ ←第三十一夜 第三十三夜→
今回は、投機筋が先物市場で、今後の相場がどう推移すると考えてポジションを取っているかの指標になるCMEのIMM先物ポジションについて見てみよう。
我々FXをするのに、なぜ先物ポジションが参考になるかというと、先物市場というのは、その商品の将来の取引価格について取引するものだ。よって、将来その値段になるだろうという予想に基づいてポジションを取ることになる。今の相場(直物=じきもの)ではなく、将来の相場(先物)で売買しているので、先物ポジションを取る投機筋は、ちょっとした相場の動向に敏感に反応する。
よって、投機筋のもつ先物ポジションの動向を見ると、そうした敏感なトレーダーが今現在「将来、相場がどっちに動くと思っているか」が読み取れたりする(あくまで参考程度だが)。
なお、我々の行うFX(外国為替証拠金取引)は、先物ではなく直物だ。時々、FXが先物であると勘違いする人もいるが、今現在の為替市場で形成されている相場(レート)で取引されるのだから、FXは直物だ。
外国為替証拠金取引は、直物為替先渡取引(じきものかわせ・さきわたしとりひき)に相当し、先物ではない。ポジションを取る際、この先ドル高になると利益が出るだろうと予想してドルロングのポジションを取ったりすることから、先物と勘違いされるようだが、新規も決済も直物相場で取引していることに注意しよう。
FX会社の取引画面や取引レポートには、為替差益・差損にあたる欄には「スポット益」と書いてあるだろう(スポット益とスワップ益の欄がある)。この「スポット(spot)」が、直物のことだ。
(直物=spot、先物=future)
さて、CMEのIMM先物ポジションという名前は、
CMEは、Chicago Mercantile Exchange=シカゴ・マーカンタイル取引所のことである。
IMMは、International Monetary Market=国際金融市場のことである。
CMEのIMM先物ポジションとは、シカゴ・マーカンタイル取引所に開かれた国際金融市場における、先物ポジションということになる。この先物ポジションは、CFTC(米商品先物取引委員会)のページで生データを見ることができ、ここで日本円の先物ポジションの様子も知ることができる。
これらのポジションは、毎週火曜日のNY取引終了後にポジションをCFTCに報告し、その週の金曜日のNY取引終了後(日本時間土曜朝)に公表されるデータである。よって、データは週1回更新され、数日遅れのデータになるから注意しよう。水曜〜金曜の相場の動きは反映されていない。
このページは、最初のほうは、
MILK, Class III - CHICAGO MERCANTILE EXCHANGE Code-052641 Commitments of Traders - Futures Only, Xxx dd, 20yy ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- : Total : Reportable Positions : Nonreportable :---------------------------------------------------------------------------------------- Positions : Open : Non-Commercial : Commercial : Total : : Interest : Long : Short : Spreading: Long : Short : Long : Short : Long : Short -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------のようになっており、各商品ごとに表が並んでいる。
上から順に、
- MILK, Class III
- LEAN HOGS
- LIVE CATTLE
- RANDOM LENGTH LUMBER
- FEEDER CATTLE
- RUSSIAN RUBLE
- CANADIAN DOLLAR
- SWISS FRANC
- MEXICAN PESO
- BRITISH POUND STERLING
- JAPANESE YEN
- :
と並んでいる。日本円は、ページで言うと、上から4割〜半分弱のところにある。
例えば、2008年5月29日(金)のNYクローズ後(日本時間では5月30日(土))に公表されたものは、5月26日(火)のNYクローズ時点での先物ポジションを表にしているが、次のようになっていた。
JAPANESE YEN - CHICAGO MERCANTILE EXCHANGE Code-097741 Commitments of Traders - Futures Only, May 26, 2009 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- : Total : Reportable Positions : Nonreportable :---------------------------------------------------------------------------------------- Positions : Open : Non-Commercial : Commercial : Total : : Interest : Long : Short : Spreading: Long : Short : Long : Short : Long : Short ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- : : (CONTRACTS OF JPY 12,500,000) : : : : All : 96,706: 34,860 26,851 355 37,916 49,511 73,131 76,717: 23,575 19,989 Old : 96,706: 34,860 26,851 355 37,916 49,511 73,131 76,717: 23,575 19,989 Other: 0: 0 0 0 0 0 0 0: 0 0 : : : : : Changes in Commitments from: May 19, 2009 : : 6,502: 5,334 3,325 -40 345 2,871 5,639 6,156: 863 346 : : :これを表の形に整形しなおすと、
Total | Reportable Positions | |||||||
Open Interest | Non-Commercial | Commercial | Total | |||||
Long | Short | Spreading | Long | Short | Long | Short | ||
(CONTRACTS OF JPY 12,500,000) | ||||||||
All | 96,706 | 34,860 | 26,851 | 355 | 37,916 | 49,511 | 73,131 | 76,717 |
Old | 96,706 | 34,860 | 26,851 | 355 | 37,916 | 49,511 | 73,131 | 76,717 |
Other | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
Change in Commitments from: May 19, 2009 | ||||||||
6,502 | 5,334 | 3,325 | -40 | 345 | 2,871 | 5,639 | 6,156 |
のようになる。
いろいろ数値が並んでいるが、見るべき数値は、Non-Commercial(非商業=投機筋)のLongとShortの数値と、その下にある、前週5月19日からの変化量の数値の4つだ。(表中の緑背景の数値)
この数値の単位は「枚」というが、FXのような直物為替でいう「枚(1万通貨)」のことではない。
先物ポジションの場合の「枚」は、英語でContractといい、その具体的な数量は表中に書かれている。日本円では、(CONTRACTS OF JPY 12,500,000) という文言が示すように、1枚(1コントラクト)は1250万円である。
ここでいうロング・ショートは、FXでやるような直物為替でいう「ドル円のロング・ショート」ではないことに注意しよう。
CMEの先物市場では、円は、畜産や木材と同じく「商品の1つ」として取引されている。よって、基本的に「ドルで円を買う・売る」という方向になる。なので、この表では、Longは「円ロング」、Shortは「円ショート」と呼ぶ。
円ロングとは、ドルを売って円を買うことであるから円買い、ドル円で言えばショートにあたり、「円ロング」の先物ポジションを持つことは、「将来、円高ドル安に向かうと考えている」ということになる。
円ショートとは、ドルを買って円を売ることであるから円売り、ドル円で言えばロングにあたり、「円ショート」の先物ポジションを持つことは、「将来、円安ドル高に向かうと考えている」ということになる。
そして、円ロングと円ショートの差を、「ネットロング」「ネットショート」と呼ぶ。ネット(Net)は英語で「正味の合計」という意味だ。
ネットロング=(円ロングの数)−(円ショートの数)
ネットショート=(円ショートの数)−(円ロングの数)
である。
普通、合計なら、ポジション数を足し合わせるが(上記の例なら、34,860枚+26,851枚=96,706枚)、円ロングと円ショートは逆向きのポジションなので、差を取るのだ(上記の例なら、円ロング>円ショートであり、34,860枚-26,851枚=8,009枚のネットロング)
この差分がどちらに傾いているか、そしてそれがどう増減したか、が、この先相場がどうなると先物投機筋が考えているか、の指標になる。
その観点で、ネットショート・ネットロング量をグラフ化したものが、こちらのページである。
このグラフを見ると、2008年9月頃から、2009年3月頃まで、グラフの棒が下に伸びているのが分かる。
これは、この期間、「円ロングが円ショートより多かった」ことを意味する。円ロングが円ショートより多いということは、その期間、将来円高に向かうと思う人の方が、円安に向かうと思う人よりも多かった、と大雑把に言える。
一方、2009年2月頃から、積み上がっていた円ロングポジションは急激に減少し、2009年3月には円ショートに転じた。
これは、この期間、円ロングが減って円ショートが増えたことを意味する。つまり、将来円高に向かうと思う人が減り、円安に向かうと思う人が増えた、と大雑把に言える。そして、2009年3月には、将来円安に向かうと思う人の方が僅かに上回った、ということになる。
(厳密には人数ではなく、単にポジション数の比較である)
このように、今どうであるかを知るには、先程の表のAll欄のLongとShortを、
前週からどう変わったかを知るには、先程の表のChange in ... というところのLongとShortを見る。
後者は、前週からの変化なので、マイナスの数値になる場合もある。
先程の表でこれらの数値だけ抜き出すと、次のようになる。
Non-Commercial | ||
Long | Short | |
All(現在) | 34,860 | 26,851 |
Change(変化) | 5,334 | 3,325 |
現在の値のロングは、今「将来円高になると思う人」のポジション、ショートは、今「将来円安になると思う人」のポジションである。
変化の値のロングは「将来円高になると思う人」のポジションの増減、ショートは「将来円安になると思う人」のポジションの増減、を意味する。
さて、上の値の場合、現在値は、円ロングのほうが円ショートよりも多い。ということは、今のところ、将来円高になると考えている先物筋の方が多い、ということになる。
一方、前週に比べてどうなったか、というと、ネットロングの量で言えば、前週よりロングが増えたことになっている。実際、前週に比べて増えたロングのほうが、増えたショートよりも多いから、「円高になると思う人は前週より増えた」と言っていいだろう。
しかし、「円ショートも増えた(円安になると思う人も増えた)」という点は考慮すべきである。
本当に円高になると思う人が増えたと言えるのは、前週比で「円ロングが増え(+)」「円ショートが減る(−)」というケースだろう。
同じようなケースで、2009年の2月から3月にかけて、急激に円ロングが減少した際には、
- 「円ロングが減って、円ショートが増えた週」
- 「円ロングも円ショートも減った週」(差を取ると円ロングが減った)
前者は、明らかに、円ロングが円ショートに転換したことを意味し、「将来円安になると思う人が増えた」とハッキリ言える。
後者は微妙だ。確かにネットロング(円ロング−円ショート)は減った。が、円ロングも円ショートも減った場合、元々円ロングの方が多かったのであれば、「円ロングと円ショートの比率を保ったまま両方とも減少した」という意味では、将来円高になると思う人と円安になると思う人の比率は変わらず、全体が縮小した、とも言える。これは、「将来円高になるか円安になるか“迷う”という人が増えた」と言った方が近いだろう。
一方、2009年3月から4月は、若干であるが円ショートに傾いていた(将来円安になると思う人の方が少しだけ多い)という状況であったのが、5月に入ってから再び円ロングに転じた。
これは、大雑把に言えば再び円高になると思う人の方が増えてきた、と言える。
金融危機以降、CMEのIMM先物ポジションは、円ロングに傾斜していることの方が多く、その量も5万枚前後と膨大な量が積み上がっているのが常だった。米経済が多少回復して円ショートに転じても、その量は1万枚あるかどうかで、おっかなびっくりのネットショートといった印象。何かあればすぐ円ロングに転じる状況であった。特に、2008年7月中旬の週、米住宅金融機関のファニー・メイやフレディ・マックの経営危機のとき(第三十夜も参照)は、1週間で一気に5万枚までネットロングとなるなど、市場はパニックになった。
このように、円ロングと円ショートの差(ネットロング、又はネットショート)の推移を見る場合には、ネットロングやネットショートが減った場合には、明らかにどちらかに傾いたのか、それとも相場の推移に迷う人が増えて市場が縮小したのか、CFTCの「元のデータ」(先程の4つの値)をしっかり見る必要があるだろう。
なお、CMEは、シカゴ・マーカンタイル取引所という1つの取引所なので、これが先物市場全体を表しているわけではない。が、これが、先物市場全体の縮図である、と考えられるので、皆が注目しているのである。
ただし、CMEの先物ポジションは、毎週火曜日のポジション保有量を、CFTCに報告しなければならない。
これがイヤで、CMEにポジションを持たない投機筋もいるわけなので、そういう隠れた投機筋が別の取引所で動いていることも頭の片隅に置いておく必要はあろう。
いずれにしても、このデータを以って、即、円買いだ、円売りだ、と動いてしまわないほうがいいだろう。むしろ、その週の相場の動きを見て、「やはり先物筋はそう考えたか」とチェックする程度の使い方の方が良さそうである。また、円ロングや円ショートのどちらかに大量に積み上がっている場合、相場が戻り出すとポジションを大量に崩してくるので、相場の動きが加速されるケースもある。何万枚も先物ポジションが積み上がって飽和状態に見える場合は、その後の推移にも要注意である。
←トップページ ←第三十一夜 第三十三夜→
最新コメント