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千のFX千夜一夜 第一夜 〜 ロングとショート

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FXをする上で日常当たり前のように使っているロング(long)ショート(short)。良く考えると、なぜ売買方向をロング・ショートというのだろうか・・・?

今回は、FXの取引を簡単に観察しながら、ロングとショートについて、考えてみよう!

まず、FXの取引には、どのくらいの種類があるだろうか?
話を簡単にするために、ドル円で考えてみよう。

(1)ドル円ロング新規
(2)ドル円ロング決済
(3)ドル円ショート新規
(4)ドル円ショート決済

この4つがある。

・・・・・と思った方、大変に惜しい。いや、間違いではない。FXをやる上ではそれでも良い。しかし、実際に行っている取引は、もっとシンプルなはずだ。

(A)ドル円の買い(ドル買い円売り)
(B)ドル円の売り(ドル売り円買い)

の2つしかないのである。我々は、ドル円という通貨ペアで、買うか、売る、のどちらかしかしていない。この場合、上で書いた(1)(4)はどちらも「(A)ドル円の買い」であり、(2)(3)はどちらも「(B)ドル円の売り」だ。

念のため、「ドル円の買い」というのは「ドル買い円売り」のことだ。ドル買い円売り、つまり円を売ってドルを買うという行為を「ドル円の買い」と呼ぶのである。

・・と書いてくると、そろそろ、既に混乱してくる向きもあるのかな?

この原因は、どちらも通貨だからであるので、話を簡単にするために、対象をモノにしてみよう。

例えば、1個100円のリンゴを買う場合にたとえてみる。

我々は、スーパーマーケットに行くと、そこにはリンゴが1個100円の価格が付いているのを見て、これを買う。この世界では、買った消費者もそのマーケットで好きに売ることが出来るものとしよう(日常的には、無理であるが)。
あと一応、リンゴは腐らないものとする。

さあ、今あなたは100円を支払って、リンゴを1個手に入れた。このリンゴ、あなたならどうするか?

(a)食べる →→これは実需である。
(b)後で転売して儲ける →→これは投資・投機である。

(a)の食べるを選んだ人は、そのリンゴの持つ本来の価値である栄養に注目して、これを食した、ということで、実需といえる。リンゴは目の前からも無くなってしまうわけで、そこでオシマイである。

一方、(b)の後で転売して儲ける、を選んだ人は、そのリンゴを食べてしまうわけにいかない。どうするかというと、転売する時期を待って、「保有し続ける」状態が続かなければならないし、いずれ転売する、ということは、買ったものをいずれ売る、という行為が待っている。そうでないと、いつまでたっても売買益は得られない

このように「いずれ転売して売買益を得る」という点では、リンゴを持っている状態での価値は乏しい。なぜならば、他に使える100円を支払っており、目の前のリンゴを食べてしまうわけにいかないわけだから、極論すればそのリンゴに「今利用可能な価値」は無いわけだ。

でも、はたして本当に価値は無いか?というと、そうでもなさそうだ。

昨日は1個100円で買ったけれども、今日スーパーマーケットに行ったら、どうやら今日は1個105円の値がついているようだ。ということは、今日このリンゴをスーパーマーケットに持ち込めば、105円で売れるということだ。そうすれば、あなたは差額の5円だけ儲けることができる。

つまり、今日の時点でそのリンゴは「“今売れば”5円儲かる」と評価することができる。このように、今目の前にリンゴがある状態では何の価値もないのだが、「今売れば5円儲かる」という状態では5円分の利益をもたらす価値が評価できる。

このように評価可能な5円の利益が「評価益(評価損益)」なわけであり、暗にその利益が出る可能性を含んでいることから「含み益」とも言う。

さて、その含み益(評価益)、持っているだけでは実益にならない。先に述べたように、投資なのだから、リンゴそのものに意味は無く、どこかで転売して利益を得て、はじめて取引は完結する。このように、買った場合はいずれ売るという「反対売買」をするのが投資の宿命である。
(これに対し、実需は、リンゴは食べてしまってかまわないのであって、そこでオシマイである)

とすると、リンゴを持っている状態は取引の中途段階にあるわけだ。この状態を「(リンゴを買った、という)ポジションを持っている」と表現する。あなたはいわば「リンゴ買い」のポジション保有者だ。

さて、あなたは初め、100円を支払ってリンゴを買った。この行為を考えてみよう。

“あなたの手元から100円が出て行った。
 一方で、あなたはリンゴを手に入れた。”

つまり、100円とリンゴが「等価なもの」として交換されたわけだ。

ここで通貨をもモノとみなせば、100円玉とリンゴの「物々交換」で取引が成立したといえる。

この交換という概念が大事だ。実は、我々がいつもやっている為替(かわせ)は、英語でいうとexchange(エクスチェンジ)であるが、この語はもともと「交換」という意味だ(外国為替は、foreign exchange、略して“FX”、あるいはForex)。

“あなたの手元から100円が出て行った。
 一方で、あなたはリンゴを手に入れた。”

このような場合、自分の手元から出て行くほうを「売り」と呼ぶことにし、手に入れるほうを「買い」と呼ぶことにすると、

“あなたは100円を売ってリンゴを買った”

と表現できる。

そして、先程「リンゴ買い」のポジションを持ったと言ったが、ここに、100円を売る、つまり「円貨と交換してリンゴを持った」という意味合いをこめて、「リンゴ」を「リンゴ円」のように呼んで、売った通貨が分かるようにしよう。

そう、あなたが「円売り・リンゴ買い」したときにできたポジションが、「リンゴ円の買い」ポジションということだ。

さあ、ここまでの説明でなんとなく分かってもらえたら、説明の中の「リンゴ」を全て「ドル」に置き換えて読んでみて欲しい。それが「ドル円」の説明になる。
(ただし「(リンゴを)食べる」は「アメリカ旅行で買い物をする」など、ドルに合うように適宜読み替えて欲しい)

最後の部分だけ書き換えたものを書いてみると、あなたが「円売り・ドル買い」をしたときに出来たポジションが、「ドル円の買い」ポジションということだ。

リンゴ」を「ドル」に置き換えてもう一度読んでみる



さて、もう一度話をリンゴに戻そう。

先程、リンゴを買う、つまり100円支払って(売って)リンゴを手に入れる(買う)と言った。

この反対を考えてみよう。つまり、あなたが持っているリンゴを売ることを考える。あなたはスーパーマーケットへ行き、リンゴを1個105円で売る。

このときあなたはリンゴ1個を手放して、105円を手に入れる。つまり「円買い・リンゴ売り」だ。

今あなたがリンゴを売ることが出来たのは、リンゴを1個持っていたからだが、もしリンゴを1個も持っていなかったとしたら・・?

1個も持ってなくてもリンゴを「売る」ことができるのが、FXを含めた信用取引の醍醐味である。

ここから先は若干想像力が必要であるが、あなたはスーパーマーケットに行って、持ってないリンゴを1個、売ってしまおう。こうすると、市場から105円手に入れることができる。

さあこの105円は現金だから自由に使おう・・・・というわけにはいかない。なぜか? あなたは持っていないのに持っているということでマーケットを信用させ、リンゴを1個売って代金をもらってしまっている。この状態を「空売り」という。

強いて言うと、あなたは、リンゴを「−1個(マイナス1個)」持っている、ということだ。個数がマイナスということは、リンゴが不足している、ということ。売れば手元から無くなり、不足する。それこそが、ショートの本来の姿。

英和辞典で、shortの意味を調べて欲しいが、たいていは
 1)短い、2)足りない、3)空売り
という風に出ているはずだ。実際、shortが空売りの意味になるのに、

短い(short)→足りていない(short)→不足→手元に無い→売りポジション(short)

という意味合いでつながっている。

そして、リンゴを−1個持っている状態(空売り状態)のままでは架空の状態なので、そのままには出来ない。この状態が「売りポジション」を持っている状態になる。いずれ、代金を支払って市場からリンゴを1個買い戻さなければならない。リンゴを1個市場から買い戻すと、持っていた「−1個」のリンゴと打ち消しあって、晴れて消えてなくなる。

今日、市場で1個105円で売った「仮想のリンゴ」が、明日もし市場で1個100円の値が付いていれば、安く買い戻すことが出来て、あなたは差額の5円の儲けを得るだろう。

さて、リンゴを売ってしまうと手元から無くなり不足するのでshortという言葉になるのだが、反対はどうか?
リンゴを買った状態は、リンゴについて言えば充足している状態である。これも同じように、

長い(long)→足りている(long)→充足→手元にある→買いポジション(long)

という意味合いでつながる。これが、買いポジションがロング売りポジションがショートと呼ばれるわけである。ロング(買い)=商品が手元にある(充足)、ショート(売り)=商品が出払っている(不足)、という感じだ。

もしあなたがリンゴ農家の人で、毎年リンゴを育てて手元に常に本物のリンゴが生まれ続ける人であれば、ずっとスーパーマーケットでリンゴを売り続け、代わりに円を手に入れ続けることができる。これは実需である(実需売り)。リンゴを売ってしまえば、その後リンゴを買い戻す必要もないし、そもそもリンゴを売ったときに得る円が欲しかったのである。

このように、実需常に片方の取引だけで完結する。実需の例では、輸出筋は海外で商品を売って得たドルを円にしたいので常にドルを売り続ける存在だし、輸入筋は海外から商品を調達するためにドルが必要なので常にドルを買い続ける存在。基本的に彼らは片方の取引で完結し、反対売買などしない

それに対し、投資は、売買をスタートしたら必ず反対売買で締めくくらなければならない。そのため、売買をスタートする「新規」という取引と、反対売買で締めくくる「決済」、そして、その間の期間の、「商品を保有している状態」である「ポジション」という概念が生まれる。

そのためどうしても、「ロング新規」「ロング決済」「ショート新規」「ショート決済」という4つの取引があるように感じられてしまうのであるが、そこにあるのは、例えばドル円であれば、
「ドル円の買い」(=ドル買い円売り)
「ドル円の売り」(=ドル売り円買い)
の2つしかないのである。

よって、トレードで言えば、もしドル円の買いに適したシグナルが出たとすると、
・ロングを新規で持つ か
・ショートを手仕舞う(決済する)
ことになる。よって、新規と決済は、トレードに関して一切区別する必要は無く、シグナルも「買い」「売り」しか出ない。

もし売りシグナルが点灯した時にロングを持っていたらロングを手仕舞うわけだし、ノーポジだったとすればショートを新規で持つわけだし、「ロングを手仕舞ってショート新規」(どちらも売り)というドテンをしてもよい。そのようなわけで、新規と決済についての取引根拠は元来同等であるべきといえる。

また、先に述べたように、元来取引には「ドル円の買い」「ドル円の売り」しかないのだから、両建てと決済が同じであることも分かるのではないかと思う。

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