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千のFX千夜一夜 第二夜 〜 スワップの付き方(前編=FXの信用取引)

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前回第一夜は、ロングポジションとショートポジションについて、リンゴの売買を引き合いに出して、外為取引の様子を見てみた。

今回は、FXの特徴ともいえるスワップポイントについて、考えてみよう!

スワップポイントがなぜ付くか、どう付くかを見るには、その元になる信用取引(証拠金取引)の姿について書かないといけないので、

 前編(第二夜):FXの信用取引
 後編(第三夜):スワップの理論値

という形で書いてみたい。

スワップポイントはFXの特徴のひとつであり、同じ外国為替の中でも外貨預金とは違う点である。

円を含む通貨ペア(ドル円、ユーロ円など)のロングポジションを持つと、概ね「スワップポイント」がプラス=受け取りであり、ポジションを1日寝かせる毎に、1Lotあたり数10円から100円くらいの「おまけ」が溜まっていく。

ということで、《サブプライムローン問題が発生するまでは》、日本ではFXは「ロングを持っていれば為替差益とスワップ益でかなり稼げる」とまで言われていた。

これは、長らく日本が0.5%以下の超低金利状態を続けていて、一方で他国は徐々に金利を上げ、3%、5%、8%といった高い金利をつけた時期があったことで、日本円を売って他の通貨を買っていれば(高金利通貨のロングポジションを持っていれば)年間かなりのスワップポイントがたまったからである。

金利が上がればスワップの妙味も出るということで買いが買いを呼び、対円レートも上昇したことで、スポット益(為替差益)とスワップ益のダブルで儲かるという「スワップ派」が生まれた。こうした運用は、円キャリートレードとも言われる。

しかし、これは数年前の話。

サブプライムローン問題以降、対円レートでの急降下、相次ぐ利下げ、経済状況の悪化で、「スワップで稼ぐ」という手法は今やほとんど通用しない、ということは先に書いておく必要があるだろう。

このようにスワップポイントは、円のような低金利通貨を売って、NZD(ニュージーランド・ドル)のような高金利通貨を買って保有すると、日々少しずつたまっていくということからして、どうやらスワップポイントは、

「各通貨の金利」に関係している

ようだということが分かる。

性格的にも、ちょうど外貨預金の金利(利息)にも似ていることから、時に「スワップ金利」などと呼ばれる。

しかし、正確にはスワップは金利ではない。「スワップ金利」という言葉は誤用であることに注意しよう。

スワップ(swap)という言葉は、為替のexchangeと同じく「交換する」という意味だ。何かを交換したことで発生する、という意味合いである。何を交換したかで「○○スワップ」と呼ぶ。

スワップポイントを「スワップ金利」と呼ぶのは誤りと書いたが、「金利スワップ」という言葉を見ることもある。しかし、これは用語としては存在するが、FXのスワップポイントとは違う。金利スワップは、同一通貨(例えば円)で固定金利と変動金利を交換したことで生まれるものを指す。

FXのスワップポイントは、2つの通貨を交換することで生まれるものなので「通貨スワップ」と呼ばれるものになる。

・・・名前の呼び方はさておき、FXのスワップポイントは、交換する2つの通貨の「金利差」に応じて決まる。

そもそもどうして金利や金利差が登場するのだろうか?

というわけで最初に書いたように、前編では、スワップが発生する根幹となるFXの信用取引の実質的なすがたについて、見てみよう。

・・・前回、FXの取引をリンゴ1個の売買になぞらえてみたが、このFXの世界、実はリンゴ1個程度の売買など扱ってはくれない。

あなた「リンゴ1個を転売目的で100円で買いたいのですが」
FX会社「うちは、リンゴ10000個単位じゃないと扱わないのですが」
あなた「ということは、100万円必要ですか?」
FX会社「そういうことです」
あなた「今そんな多額の手持ちは無いのですが」
FX会社「プロは最低でも100万個(1億円)単位ですよ。1万個でも十分少量です」

さあ大変だ。FX会社はリンゴ1万個単位でしか扱ってくれないという。

多くのFX会社がそうであるように、ドル円を取引したいと思ったら、だいたい1万ドル単位でしか扱ってもらえない。ユーロ円なら、1万ユーロ単位だ。

このように、1万ドル・1万ユーロといった通貨の数量を表すのに「1万通貨」という言い方をする。1万通貨と言ったら、ドルなら1万ドル、ユーロなら1万ユーロ、円なら1万円だ。

世の中、1万通貨のことを「1枚」と呼ぶ慣わしがある。
プロのトレーダーが取引する数量は100万通貨=100枚であり、これを「1本」と呼ぶ(よく「仲値不足額180本」というときの本だ)。

個人がFXをする際は、プロの単位の100分の1の「1枚=1万通貨」を最低単位とし、これを「1Lot」と定めるところが多い。

中には、10万通貨を1Lotとしているところや、逆にさらに細かい1000通貨(0.1枚)単位で扱ってくれるところもある。
Lotの定義はFX会社により違うが、枚の定義は1万通貨である)

ここでは、一番メジャーであると思われる「1万通貨を1Lot」と定めた業者だとしよう。

また、スワップの計算値が大きめに出るよう、ドルの代わりに、金利の大きいNZD(ニュージーランド・ドル)を例にとろう。

さて、あなたはNZD円のロング1Lotを取引するのに、1万NZDに相当する約50万円を用意しなければならない。

あなた「今50万円は持っていないのですが」
FX会社「では、あなたの口座開設時の資料から、信用があると考えますので、あなたに50万円を貸します。
    そのかわり、担保としてその10分の1の、5万円を差し出して下さい」
あなた「分かりました。5万円なら持っています」

こうしてあなたは、手持ちの5万円を担保としてFX会社に差し出す。これが証拠金である。5万円を担保として差し出すことで、あなたはFX会社から50万円を借りて投資運用できることになる。

このように、自腹5万円で、その10倍の50万円を運用することを「レバレッジ10倍である」という。

さて、あなたはFX会社から50万円を借りることができた。50万円を借りている間は、差し出した5万円は担保であるから拘束されており、手元に戻すことはできない。これを「証拠金の拘束」という。

次にあなたは為替市場で、今借りたばかりの50万円を売り、1万NZDを買う。円売りNZD買い、つまり「NZD円のロング」ポジションを持つ。

買ったNZDはどうするかというと、これは外貨現金で手元に持つことは出来ない仕組みで、FX会社にそっくり預けることになる。これは、暗にそういう仕組みになっていると思うしかない。

結局、借りた50万円も、為替市場で交換した1万NZDも、手元に来ることはない。

上記の一連の流れは、あなたが取引画面上で、NZD円のAskが「50」のときに“ポチっとな”をすると、FX会社のシステムが自動的に行ってくれる。

かくして、

・あなたの自腹5万円はFX会社に担保として拘束され、
・あなたはFX会社から50万円を借り、
・あなたは為替市場でその50万円を売って1万NZDを買い、
・あなたはFX会社にその1万NZDを貸す

ということが同時に一瞬にして行われた。結果、あなたはFX会社と金銭の貸し借りを都合2件、持っている。

さて、こうして持った「NZD円のロング」ポジションであるが、今日中にレートが50から51に上がったとしよう。日をまたがずに決済したいと思ったとする。

するとあなたが「決済」の注文を出すと、自動的に、

・あなたはFX会社に貸していた1万NZDを返してもらい、
・あなたは為替市場で1万NZDを売って51万円を手にし、
・あなたはFX会社に「借りていた50万円だけ返す」。
・差額の1万円は、あなたの懐に入る。
・FX会社は担保の5万円の拘束を解き、あなたの資産は6万円になっている。

ということが行われる。

上の例ではレートが上がったので、差額の1万円があなたの懐に入ったが、損する場合もあるということで逆も書いておこう。

今日中にレートが50から49に下がったとすると、あなたが「決済」の注文を出したときに、自動的に

・あなたはFX会社に貸していた1万NZDを返してもらい、
・あなたは為替市場で1万NZDを売って49万円を手にし、
・あなたは証拠金5万円の中から1万円を補填・充当して、
・あなたはFX会社に「借りていた50万円をキッチリ返す」。
・FX会社は担保の残りの4万円の拘束を解き、あなたの資産は4万円に減っている。

ということが行われる。証拠金は、お金を借りる担保として使われるとともに、為替差損が出たときの穴埋めの原資としても機能しているのである。

レートが下がってもFX会社にはキッチリ借りた分を返さねばならぬので、足りなくなった分はちょうど担保としていた証拠金があるので、そこからまかなう、というわけだ。

かくして、あなたの証拠金は1万円減り、損失となる。

さて、ここで挙げたのは、いずれも「当日中に決済まで済ませた場合」だ。通常、金銭の貸し借りは、当日中に返済を終えると利子は発生しない。

ところでこのロングポジションを、日をまたいで保有するとどうなるか・・・?

・・・・とりあえず、前編はここまでである。スワップポイントを理解する前提として、FXの信用取引(FX会社とのお金の貸し借り)を見てもらった。

後編では、ここまでの流れ、つまり、あなたが信用取引でFX会社と金銭の貸し借りを2件行っている、ということに基づいて、実際に利子を計算してスワップポイントを出してみよう。

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