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千のFX千夜一夜 第十二夜 〜 くりっく365と非くりっく365

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※本情報は、2009年3月時点のものです。各商品の特徴は、各取引業者の都合および関係する法令の改正により変更される場合があります。

くりっく365」は、FX取引を透明・公正なものにするために、改正金融先物取引法の施行(2005年7月)にあわせて、東京金融取引所に開かれた公的なFX市場での取引のことだ。

日本でのFX取引は、大きく「くりっく365」と、そうでないもの(いわゆる「非くりっく365」)があり、くりっく365取扱業者とそれ以外のFX会社に大別される。

「くりっく365」と、非くりっく365(店頭取引。普通のFX)は、同じ為替証拠金取引(FX)でも違いが沢山あるので、今回はその違いを見てみよう!

「くりっく365」が登場した背景には、FX業界における負の歴史がある。

1998年に外為法が改正・施行され、外国為替証拠金取引(FX)には200社以上の先物会社・証券会社が参入したと言われる。

しかし、取引を規制する法律や、監督官庁が無いという状態だったため、一部の悪質な取引業者の勧誘行為などでのトラブルが急増。また、自己資金が乏しいFX会社が日常的に顧客の証拠金を流用して自分達のFX取引を続けていたところもあったという。

ようやく2005年7月に、FXを規制する金融先物取引法が改正・施行され、取引業者に対し
・金融庁(財務局を含む)への登録義務
・財務基盤の健全性の確保
・取引を希望しない顧客への勧誘を禁止
といった、悪質業者の排除のためのルールが決められた。

さらに、FX自体に透明・公正な取引の場を提供することを目的として、東京金融取引所にFXの公的な市場(取引所為替証拠金取引市場)が開設された。

これが「くりっく365」である。

もちろん、くりっく365に参加しない(取り扱わない)店頭取引のFX会社も多数存在する。

2005年に法規制がされた時点でも、金融庁は一部のFX業者のずさんな実態を把握しきれておらず、金融庁が検査したFX会社の6割は何らかの違法行為があったという。
(いくらかのFX業者は、当時の違法行為に基づく行政処分を受けている)

現在は、2007年9月に金融商品取引法が施行されたり、2009年に入ってからは顧客の証拠金の信託保全を義務付ける方針が金融庁から発表されるなど、FXを取り巻くルールは整備されつつあり、FX業界全体として、より透明性の高い取引ができる方向に向かっていると思う。

さて、このように、透明で公正なFX取引の場を提供するために作られた「くりっく365」は、税制も含めて、非くりっく365の店頭取引のFX会社といろいろな違いがある。

また、「くりっく365」の取引をとっても、レートやスワップポイント、証拠金基準額など全てのくりっく365取扱業者で共通のものもあれば、注文方法、委託手数料など取扱業者間で異なっている独自サービスもある。そうしたものを項目別に挙げてみよう。

(なお、下記の比較は、千夜一夜が「くりっく365」を推奨したりあるいは店頭取引を推奨したりするものではない)

取引形態

くりっく365
 「取引所取引」である。
 どのくりっく365取扱業者を選択しても、東京金融取引所に開設された同じ取引の場で取引される。
 顧客の取引相手は事実上、東京金融取引所。
 くりっく365取扱業者は仲介役(仲介があるので、手数料は高めである)。

店頭取引(非くりっく365)…
 「店頭取引」である。
 顧客の取引相手は、各FX会社。

取扱業者

くりっく365
 金融商品取引法と、東京金融取引所の基準に適合し、東京金融取引所からくりっく365の取引資格を得た業者。
 銀行系、証券系、さまざまである。現在、16社が参加。

 くりっく365という看板に乗っかる形であることから、FX会社としては大手でないところもあるようだ。

店頭取引
 金融商品取引法の基準に適合し、金融庁・財務局に登録した業者。
 銀行系、証券系、さまざまである。くりっく365と店頭取引の両方を別々に扱っている業者もある。

 くりっく365に参加しない業者は、くりっく365の制約に縛られないで取引に独自性を持たせたい
 大手も含まれるようである。

カバー取引先

くりっく365
 東京金融取引所にレート提示する「マーケットメーカー」は、2009年3月現在
 ・ゴールドマンサックス証券(GS証券)
 ・ドイツ銀行
 ・ドレスナークラインオート(ジャパン)リミテッド
 ・野村證券株式会社
 ・三菱東京UFJ銀行
 ・UBS銀行

店頭取引
 カバー取引先はFX会社により異なる。
 例えば、2009年3月現在、
 ・みんF:ドイツ銀行、GS証券、バークレイズ銀行、シティバンク
 ・MJ:ドイツ銀行、GS証券、バークレイズ銀行

インターバンクとのつながり(模式)

くりっく365
 顧客 ⇔ くりっく365取扱業者 ⇔ 東京金融取引所⇔マーケットメーカー ⇔ インターバンク

店頭取引
 顧客 ⇔ FX会社 ⇔ カバー取引先 ⇔ インターバンク

取扱い通貨ペア

くりっく365
 23通貨ペア(09年3月現在)・・・くりっく365取扱業者共通
 ・対円12種(ドル円と、クロス円11種)
 ・ドルストレート6種
 ・その他5種(ユーロポンド等)
 (昔はドル円とクロス円6種の計7種だけだったらしい)

店頭取引
 FX会社により取扱い通貨ペアはかなり異なる。独自性の出るところ。
 多いところでは150通貨ペアなど。

提示レート、スプレッド

くりっく365
 「マーケットメイク方式」
 インターバンク市場に参加するドイツ銀行など6社が東京金融取引所に提示したレートから、
 最も有利な価格を提示することで、低スプレッドを実現。
 (最も低い買値と、最も安い売値を組み合わせる)
 スプレッドはドル円で概ね1〜2pips程度。

 マーケットメーカーが、そのレートで実際に取引可能なLot数も同時に提示しており、リアルタイムで分かる。
 東京金融取引所が決めるので、レートはくりっく365取扱業者どこでも同じ

店頭取引
 FX会社が提示するレート。
 カバー取引先が異なることで、FX会社が提示するレートも少しずつ異なる。
 最終的に顧客に提示する気配値は、スプレッドも含めてFX会社が自由に決めて良いため、
 FX会社間でレートが異なる。くりっく365とも異なる。

 FX会社によっては、スプレッドが5pips〜7pips程度のところもある。

 くりっく365と同様に、複数のカバー取引先(ドイツ銀など)から提示された少しずつ異なるレートから
 最も有利な価格を提示することで、ドル円で1pip程度の低いスプレッドを実現するところもある。

スワップ

くりっく365
 買スワップと売スワップは(プラスマイナスの違いを除いて)同じ。
 これを東京金融取引所が決めるので、くりっく365取扱業者どこでも同じ。

 ポジションを決済せずにスワップだけ引き出すことは出来ない。
 水曜が3倍デー(木曜朝に付与)。

店頭取引
 FX会社が独自に決めて良い。
 通常、受け取る額より支払額の方が多くなるよう(売買スワップの合計がマイナスになるよう)
 調整されている。

 FX会社によっては、売買スワップが等しいところもある。
 ポジションを決済せずにスワップだけ引き出せるところもある。

 水曜が3倍デー(木曜朝に付与)のところや、金曜が3倍デー(土曜朝に付与)のところもあり、
 付与のされ方に違いがある場合もある。

手数料

くりっく365
 「委託手数料」がかかる。
 1万通貨あたり片道100円〜300円程度。1050円もかかるところもある。(決済すると往復でかかる)

 くりっく365取扱業者で異なる。

 デイトレ等での割引や、大口割引(月3000Lotとか)などの独自性はある。
 取扱業者から見ると、カバー先との間に東京金融取引所が仲介として入っているため、
 その仲介手数料を支払う必要性から、取引手数料も高くなる。

店頭取引
 「取引手数料」 最近は、0円のところが多い。

 かかるところは、1万通貨あたり片道100〜300円程度など様々。

取引時間

くりっく365
 対円 月曜7:10〜土曜6:00 ただし毎日6:55〜7:55の1時間は不可
 他   月曜7:10〜土曜5:30 ただし毎日6:25〜7:55の1時間半は不可
 (米国標準時間)

 夏時間の場合は、月曜スタートを除いて1時間繰り上げ。

 くりっく365の説明HPでは「24時間取引可能」と書いているが、上記のように対円で1時間、その他
 (ユーロドルも含む)で1時間半も取引が停止するのでは、とても24時間とは言えないだろう。
 (広告方法として問題があるのではなかろうか)

 ロールオーバーは気をつける必要がありそうである。

店頭取引
 FX会社により異なる。

 一例で、月曜7:00〜土曜7:00 ただし毎日6:50〜7:10の20分間メンテナンス(米国標準時間)。

 月曜オープンが7時でなくオセアニア時間に合わせているところもあるようだ。

 FX会社にもよるが、毎日のオーバーロール時に、くりっく365のように1時間や1時間半も停止する
 ところは無いのではないだろうか・・

取引数量

くりっく365
 注文の最小単位=1枚(1万通貨) 上限は300枚
 くりっく365取扱業者どこでも同じ。

店頭取引
 注文の最小単位=1枚(1万通貨)を1Lotとするところが多い。
 10枚(10万通貨)が1Lotのところや、1000通貨から扱えるところもある。

証拠金基準額、レバレッジ

くりっく365
通貨ペア証拠金基準額
ドル円1万ドルあたり10,000円
ユーロ円1万ユーロあたり13,000円
(2009年4月6日より)

 他の通貨ペアも証拠金基準額は一律固定。どのくりっく365取扱業者でも同じ。

 上記2つのポジションレバは実質約100倍
 (2009年4月6日に証拠金基準額が約半額に引き下げられた。引き下げ前のレバは実質約50倍)

店頭取引
 証拠金基準額で決めるところと、レバレッジ倍数で決めるところとある。
 FX会社により異なる。
 ポジションレバレッジは、1倍〜400倍までさまざま。
 最低レバ10倍のところもあれば、最高レバ50倍のところもある。

注文関係

くりっく365
 取扱業者共通のもの
 ・指値の値幅は制限あり(ドル円で±3円、ユーロ円で±4円など)
 ・受渡し決済(ポジションを外貨で受け取る)は無い。

 取扱業者により異なるもの
 ・注文の種類(指値、成行、IFDなど)

店頭取引
 FX会社によりサービスはかなり異なる。
 ・指値の値幅制限があるところもある。
 ・受渡し決済が出来るところもある。
 ・OCO、トレール付き注文、時間指定成行などFX会社の独自性が出るところ。

自動ロスカットレベル

くりっく365
 くりっく365取扱業者により異なる。
 概ね、証拠金維持率30%で自動ロスカットになるところが多いようである。
 (他に、50%設定のところなども)

店頭取引
 FX会社により異なる。
 概ね、証拠金維持率20〜30%で自動ロスカットになるところが多いようである。
 相場急変で追証(おいしょう)が発生しないよう、70%程度に引き上げているところもある。
 証拠金維持率100%を切ると、維持率が100%以上になるよう一部のポジションが決済される、
 というところもある。

デモ取引

くりっく365
 現在のところ、扱っている業者はないようである。
 (将来、出るかも知れませんが、東京金融取引所が出さない限り無いでしょう)

店頭取引
 デモ取引が出来るところもある(FX会社にもよる)。
 デモ取引上の制約は、個々のFX会社で異なる。

証拠金の保全

くりっく365
 「取引所預託」(金融商品取引法、東京金融取引所規則)
 くりっく365取扱業者が破綻しても、取引所に預託された証拠金は原則、全額返却。

店頭取引
 「分別管理」(法的義務付け)
 それ以上は特に義務なし(09年に入り、金融庁は信託保全義務化を検討)
 ・分別預貯金・・・FX会社とは別口座で預貯金。預け先銀行の破綻リスクあり。
 ・信託保全・・・・信託会社に預託。信託保全比率が問題。
 ・全額信託保全・・100%(かそれ以上)を信託会社に預託。全額保証される。

 全額信託保全を達成するところは、それをウリにするはず。
 もし「信託保全」と書いてはあるが「全額信託保全」とは書いていないFX会社は、
 まず信託保全比率が100%ではないと思って良いだろう。

業者破綻の場合

くりっく365
 くりっく365取扱業者が破綻しても、東京金融取引所が認めれば、保有中のポジションは決済
 あるいは他のくりっく365取引業者に移管が可能。
 (顧客の取引相手は最終的にすべて東京金融取引所なので)
 ただし、東京金融取引所が破綻したらどうなるのかは不明。
 東京金融取引所も1つの株式会社に過ぎない。

店頭取引
 基本的に保有中のポジションは決済。
 ただし未決済の利益分は確定しない可能性あり。(業者破綻リスクの1つ)
 証拠金が戻るかどうかは、FX会社が証拠金をどのように管理しているかによる。
 「全額信託保全」をうたうところでなければ全額は保証されない。
 また、全額信託保全でも、顧客が信託先に請求できるわけではない。

課税

どちらも、FXの損益は「雑所得」で確定申告する。

くりっく365
 「申告分離課税
 所得やFX損益に関わらず、税率は一律20%(所得税15%+住民税5%)。
 (どんなにFXで儲けても)

 一部の先物の利益と損益通算が可能
 (金・砂糖等の商品先物取引、日経平均株価先物取引(日経225)、
  東証株価指数先物取引(TOPIX)、など先物取引に係る雑所得のもの)

 損失繰越が可能。
 (翌年以降3年間にわたって申告分離課税となる先物取引に係る雑所得等の金額から繰越可能)

 くりっく365は、税制としてはFXの中で優遇されている。
 (ただし課税所得が少ない水準の場合はかえって損をする)。

店頭取引
 「総合課税
 所得に応じて税率が変わる。例えば、課税所得金額が330万超695万以下の水準であれば、
 合計30%(所得税20%+住民税10%)。
 (所得税の方は最低5%〜最高40%まで段階がある。住民税は一律10%)

 損益通算できない(総合課税の雑所得内では可能)。
 損失繰越できない(利益なら税金を取られるが、損失でも税金は戻らない)。

さらに、くりっく365と店頭取引では、同じ雑所得でも、申告分離課税総合課税で違うので、
両者の損益の合算もできない。完全に別々。

大ざっぱな例で言うと・・

・くりっく365で利、店頭取引で損 のとき
 ⇒合計がゼロだったとしても、くりっく365で課税される。
 (店頭取引の損は、どうにもならない)

・くりっく365で損、店頭取引で利 のときは
 ⇒合計がゼロだったとしても、店頭取引で課税される。
  ただし、くりっく365の損を繰り越すことはできるので翌年以降に相殺できる可能性あり。

・店頭取引A社で利、店頭取引B社で損 のときは
 ⇒合計がゼロなら、同じ区分なので相殺できる。

・・・以上が、くりっく365と非くりっく365(店頭取引)の違いである。

基本的には「くりっく365」は、東京金融取引所にオープンしているFX取引市場の一商品であり、これを16社が顧客に提供している、という感じである。

くりっく365自体についてより詳しく知りたい場合は、「くりっく365」そのもののHP(http://www.click365.jp/)をご覧下さい。ただし、これはくりっく365のページですので、全般的にくりっく365のメリットがうたわれている感じがします。

課税関係は、できれば国税庁のHPでより詳しく・・・

各商品の特徴は、変更されることもあるかも知れません。

2009年7月21日、大阪証券取引所はFX市場「大証FX」の取引を開始した。大証FXは、本稿で扱った東京金融取引所の「くりっく365」に次ぐ2番目の取引所取引のFXである。よって、2009年7月21日現在、日本における取引所取引のFXは、東京金融取引所のくりっく365と大阪証券取引所の大証FXの2つである。
 大証FXについては、大証FXのページをご覧下さい。

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