最終更新: sen_no_risho 2009年05月23日(土) 20:14:20履歴
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前編(第二夜)では、スワップポイントが付く前段階として、その元となるFXの信用取引で、どのように大きな額の円と外貨が交換されているのか、実質的な仕組みについて書いてみた。
その例として、あなたが証拠金5万円で、NZD円1Lotのロングポジションを持った場合で、取引の仕組みを紹介した。
後編では、この場合でポジションをロールオーバー(日をまたいで保有すること)させた場合に、どのようにスワップポイントが付くのか、見てみよう。
まず、前編(第二夜)のおさらいをしておこう。
あなたがNZD円のAsk「50」を“ポチっとな”をした時に行われていることを書き下してみる。
・あなたの自腹5万円はFX会社に担保として拘束され、
・あなたはFX会社から50万円を借り、
・あなたは為替市場でその50万円を売って1万NZDを買い、
・あなたはFX会社にその1万NZDを貸す
ここで、あなたはFX会社と金銭の貸し借りを行っていた。
・あなたはFX会社から50万円借りている。
・あなたはFX会社に1万NZD貸している。
金銭の貸し借りは、当日中に返済すれば利子は発生しないのだが、日をまたぐと1日分の利子が発生する。
あなたはNZD円のロングポジションを持ったまま1日繰り越したとしよう。こうすると、あなたがFX会社と行っていた貸し借りのそれぞれに、利子が発生する。
・あなたは、FX会社から50万円借りているので、円の金利1日分の利子を払う。
・あなたは、FX会社に1万NZD貸しているので、NZDの金利1日分の利子を受け取る。
2008年2月現在の円の金利は、日銀の政策金利(無担保コールレート翌日物の誘導目標)で0.1%だ。これは年利である。
よって、FX会社から50万円を借りた1日分の利子は、
50万円×0.1%÷365=1.4円(支払い)
である。
一方、NZDの金利は、NZ準備銀行の政策金利(オフィシャルキャッシュレート)で3.5%だ。これも年利である。
よって、FX会社に1万NZDを貸した1日分の利子は、
1万NZD×3.5%÷365=0.96NZD(受け取り)
である。今、NZD円のレートが50であれば、0.96NZD=47.9円である。
かくして、あなたは1.4円支払い、47.9円受け取る。つまり、差引き47円(46.5円)を1日あたり受け取る計算になる。
逆に、あなたがNZD円のショートポジション(円買い・NZD売り)を持ったまま、ロールオーバーさせた場合はどうなるだろうか?
そう、この場合は貸し借りが逆になるので、発生する金利も逆になり、差額47円をFX会社に支払わなければならない。
この受取り額・支払い額が、スワップポイントというわけだ。このように、買いポジションのスワップポイント(買スワップ)と売りポジションのスワップポイント(売スワップ)とは、理論的には額は同じでプラスとマイナスが反対になる。
今回の例では、
(1日1万通貨あたり)
ということだ。
さて、NZD円のレートが50というのは、2009年2月27日の始値のおよそのレートであった。
2月27日のNZDの実際のスワップポイントの付与額はいくらかだったろうか。一例で、
だった。現実には、買スワップと売スワップは合計がマイナスになるよう(FX会社がスワップからも利益を上げるよう)FX会社が調整しているので、買スワップと売スワップは、符号(+、−)を除いて微妙に一致しないのが普通である。
そのため、両方の中心値(絶対値の中心値)を出すことで、買と売の調整分を除去してみよう。
( )は調整額
こうしてみてみると、みんFもMJも、スワップポイントの中心値は47円〜49円だと分かる。これは、先程の理論計算の47円とほぼ一致する。
こんな風に、スワップポイントは実質的にFX会社との貸し借りをしていることで発生する「金利差」を調整したものだと分かる。
実際、あるFX会社ではスワップポイントを「金利差調整分」と説明しており、これはスワップポイントの性格をうまく言い表しているといえる。
なお、先程は、理論値として政策金利を使用したが、
・短期金融市場の金利の実勢レートは政策金利と違って日々変動している。
・貸す場合と借りる場合でも異なってくる。
・スワップポイント自体はFX会社が自由に設定して良い。
ということで、最終的にはスワップポイントはFX会社の匙加減でいくらでも設定できることから、先程の理論値自体は参考程度ということは注意しておいて欲しい。
(インターバンクにおけるスワップポイントも理論値にはならない)
さて、スワップポイントは日をまたぐと付与されると言ったが、「日をまたぐ」といっても日本時間の0時ではない。
NY(ニューヨーク)時間が基準になっていて、NY市場がクローズするNY17時、日本時間で翌朝7時(米国の夏時間では6時)が「FXの1日の終わり」であり、スワップポイントの付与もその時刻である。
また、証拠金取引は通常、受渡し日が2営業日後である。
そのため、月曜にポジションを建てると、受渡し日は水曜に設定される。
(FXは直物為替(じきもの・かわせ)であり、2営業日後までに受け渡せば直物)
月曜に建てたこのポジションを月曜中に決済すれば利子も発生せず(スワップも付与されず)、決済の受渡し日は当初通り、2営業日後の水曜となる。利益が口座から引き出せるのが2営業日後なのもそのため。
一方、このポジションを月曜中に決済せず、火曜に繰り越した(ロールオーバー)とすると、水曜だった受渡し日も木曜に繰り越され、ここでスワップポイント1日分が発生することになる。
このスワップポイント1日分が、ポジションを月曜から火曜に繰り越した時点(月曜のNYクローズ=火曜の朝)で確定し、付与される。
(何となく複雑だが、ポジションを月→火に繰越すと、受渡日が水→木にずれ、受渡日がずれたことで発生するスワップが、ポジションを火に持ち越した時点に“さかのぼって”確定し付与されるということ)
こんな風に、
月から繰越し→受渡日が水から木に(スワップ1日分発生)→火曜朝に1日分付与
火から繰越し→受渡日が木から金に(スワップ1日分発生)→水曜朝に1日分付与
水から繰越し→受渡日が金から月に(スワップ3日分発生)→木曜朝に3日分付与
木から繰越し→受渡日が月から火に(スワップ1日分発生)→金曜朝に1日分付与
金から繰越し→受渡日が火から水に(スワップ1日分発生)→土曜朝に1日分付与
となる。(曜日は日本時間の曜日)
ポジションをロールオーバーすることで、2営業日後の受渡日がずれる。
ポジションを水曜から繰越す時だけ受渡日が週をまたぎ、そのためスワップが3日分発生するため、水曜のスワップは木曜朝に3日分確定・付与されるのである。
このようなわけで、スワップポイントは水曜に3日分付くところが多い。
(FXの水曜は、日本時間木曜朝に終わるから、木曜朝に付くことに注意)
金曜からの繰り越しは月曜への繰越しであり、土日は何もしておらず、受け渡し日が動くわけではないので、土日にはスワップも付与されない。
結果、月火木金は1日分、水に3日分で、1週間持ち越すと7日分の付与となる。1年間持ち越せば、365日分の付与である。
もちろん、平日が祝日にあたったりすると、水曜3日分が火曜4日分になったり、その他多少変則的になったりする。また、通貨ペアによっては、相手方通貨の国が祝日だったりすると、その通貨ペアだけ他の通貨ペアと違うスワップの付与のされ方をすることもある。
なお、FX会社によっては毎日処理が行われることで、毎日1日分付与されたり、週をまたぐ金曜に3日分、というところもある。処理のもとになる受け渡し日などの前提が違っているのであろう。
なお、このように書くと、スワップポイントが魅力的に感じられてしまうかも知れないが、スワップポイントは、基本的に「おまけ」のようなものだ。無視してもいい。
額も、1日1Lotあたり数10円、多くて100円前後。この額は、pips換算すれば、わずか1pip前後。どんなにがんばってもスプレッド(買値と売値の差)のほうが大きい。
さらに言えば、1日の為替変動の方が、はるかに大きい。
仮に、1日50円のスワップが付いたとしても、レートが2円(200pips)落ちてそのまま定着したとすると、スワップでこれを埋めるには400日もかかるわけだ。しかし、400日かけてプラマイゼロに戻すためにスワップ派になったのではなかったはずだ・・・
サブプライムローン問題以降の諸通貨の下落で、ロングポジションはとてもスワップポイントでは穴埋めできないほどの為替差損を生み出した。
スワップポイントは、先の計算でもあるように、レートと金利の両方で計算される。金利が引き下げられると金利妙味が失われてレートも下がったことから、ダブルパンチである(スワップが減ったので、損を埋める期間が当初想定よりずっと長くなったはずだ)。
最後までスワップ狙いの円キャリートレードを行っていたのは日本人とも言われるくらい。今後再び、諸国が金利を上昇させ、日本だけ低金利で、リスク指向が強くなれば、また円キャリートレードが復活するかも知れないが・・・
スワップポイントについては、どうして付くのかの仕組みだけ知っておいて、基本的にはその存在を無視していても良いだろう。
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前編(第二夜)では、スワップポイントが付く前段階として、その元となるFXの信用取引で、どのように大きな額の円と外貨が交換されているのか、実質的な仕組みについて書いてみた。
その例として、あなたが証拠金5万円で、NZD円1Lotのロングポジションを持った場合で、取引の仕組みを紹介した。
後編では、この場合でポジションをロールオーバー(日をまたいで保有すること)させた場合に、どのようにスワップポイントが付くのか、見てみよう。
まず、前編(第二夜)のおさらいをしておこう。
あなたがNZD円のAsk「50」を“ポチっとな”をした時に行われていることを書き下してみる。
・あなたの自腹5万円はFX会社に担保として拘束され、
・あなたはFX会社から50万円を借り、
・あなたは為替市場でその50万円を売って1万NZDを買い、
・あなたはFX会社にその1万NZDを貸す
ここで、あなたはFX会社と金銭の貸し借りを行っていた。
・あなたはFX会社から50万円借りている。
・あなたはFX会社に1万NZD貸している。
金銭の貸し借りは、当日中に返済すれば利子は発生しないのだが、日をまたぐと1日分の利子が発生する。
あなたはNZD円のロングポジションを持ったまま1日繰り越したとしよう。こうすると、あなたがFX会社と行っていた貸し借りのそれぞれに、利子が発生する。
・あなたは、FX会社から50万円借りているので、円の金利1日分の利子を払う。
・あなたは、FX会社に1万NZD貸しているので、NZDの金利1日分の利子を受け取る。
2008年2月現在の円の金利は、日銀の政策金利(無担保コールレート翌日物の誘導目標)で0.1%だ。これは年利である。
よって、FX会社から50万円を借りた1日分の利子は、
50万円×0.1%÷365=1.4円(支払い)
である。
一方、NZDの金利は、NZ準備銀行の政策金利(オフィシャルキャッシュレート)で3.5%だ。これも年利である。
よって、FX会社に1万NZDを貸した1日分の利子は、
1万NZD×3.5%÷365=0.96NZD(受け取り)
である。今、NZD円のレートが50であれば、0.96NZD=47.9円である。
かくして、あなたは1.4円支払い、47.9円受け取る。つまり、差引き47円(46.5円)を1日あたり受け取る計算になる。
逆に、あなたがNZD円のショートポジション(円買い・NZD売り)を持ったまま、ロールオーバーさせた場合はどうなるだろうか?
そう、この場合は貸し借りが逆になるので、発生する金利も逆になり、差額47円をFX会社に支払わなければならない。
この受取り額・支払い額が、スワップポイントというわけだ。このように、買いポジションのスワップポイント(買スワップ)と売りポジションのスワップポイント(売スワップ)とは、理論的には額は同じでプラスとマイナスが反対になる。
今回の例では、
買swap | 売swap | |
NZD円 | +47円 | -47円 |
ということだ。
さて、NZD円のレートが50というのは、2009年2月27日の始値のおよそのレートであった。
2月27日のNZDの実際のスワップポイントの付与額はいくらかだったろうか。一例で、
買swap | 売swap | |
みんF | +33円 | -65円 |
MJ | +39円 | -54円 |
だった。現実には、買スワップと売スワップは合計がマイナスになるよう(FX会社がスワップからも利益を上げるよう)FX会社が調整しているので、買スワップと売スワップは、符号(+、−)を除いて微妙に一致しないのが普通である。
そのため、両方の中心値(絶対値の中心値)を出すことで、買と売の調整分を除去してみよう。
買swap | 売swap | |
みんF | +49円(-16円) | -49円(-16円) |
MJ | +47円(-8円) | -47円(-7円) |
こうしてみてみると、みんFもMJも、スワップポイントの中心値は47円〜49円だと分かる。これは、先程の理論計算の47円とほぼ一致する。
こんな風に、スワップポイントは実質的にFX会社との貸し借りをしていることで発生する「金利差」を調整したものだと分かる。
実際、あるFX会社ではスワップポイントを「金利差調整分」と説明しており、これはスワップポイントの性格をうまく言い表しているといえる。
なお、先程は、理論値として政策金利を使用したが、
・短期金融市場の金利の実勢レートは政策金利と違って日々変動している。
・貸す場合と借りる場合でも異なってくる。
・スワップポイント自体はFX会社が自由に設定して良い。
ということで、最終的にはスワップポイントはFX会社の匙加減でいくらでも設定できることから、先程の理論値自体は参考程度ということは注意しておいて欲しい。
(インターバンクにおけるスワップポイントも理論値にはならない)
さて、スワップポイントは日をまたぐと付与されると言ったが、「日をまたぐ」といっても日本時間の0時ではない。
NY(ニューヨーク)時間が基準になっていて、NY市場がクローズするNY17時、日本時間で翌朝7時(米国の夏時間では6時)が「FXの1日の終わり」であり、スワップポイントの付与もその時刻である。
また、証拠金取引は通常、受渡し日が2営業日後である。
そのため、月曜にポジションを建てると、受渡し日は水曜に設定される。
(FXは直物為替(じきもの・かわせ)であり、2営業日後までに受け渡せば直物)
月曜に建てたこのポジションを月曜中に決済すれば利子も発生せず(スワップも付与されず)、決済の受渡し日は当初通り、2営業日後の水曜となる。利益が口座から引き出せるのが2営業日後なのもそのため。
一方、このポジションを月曜中に決済せず、火曜に繰り越した(ロールオーバー)とすると、水曜だった受渡し日も木曜に繰り越され、ここでスワップポイント1日分が発生することになる。
このスワップポイント1日分が、ポジションを月曜から火曜に繰り越した時点(月曜のNYクローズ=火曜の朝)で確定し、付与される。
(何となく複雑だが、ポジションを月→火に繰越すと、受渡日が水→木にずれ、受渡日がずれたことで発生するスワップが、ポジションを火に持ち越した時点に“さかのぼって”確定し付与されるということ)
こんな風に、
月から繰越し→受渡日が水から木に(スワップ1日分発生)→火曜朝に1日分付与
火から繰越し→受渡日が木から金に(スワップ1日分発生)→水曜朝に1日分付与
水から繰越し→受渡日が金から月に(スワップ3日分発生)→木曜朝に3日分付与
木から繰越し→受渡日が月から火に(スワップ1日分発生)→金曜朝に1日分付与
金から繰越し→受渡日が火から水に(スワップ1日分発生)→土曜朝に1日分付与
となる。(曜日は日本時間の曜日)
ポジションをロールオーバーすることで、2営業日後の受渡日がずれる。
ポジションを水曜から繰越す時だけ受渡日が週をまたぎ、そのためスワップが3日分発生するため、水曜のスワップは木曜朝に3日分確定・付与されるのである。
このようなわけで、スワップポイントは水曜に3日分付くところが多い。
(FXの水曜は、日本時間木曜朝に終わるから、木曜朝に付くことに注意)
金曜からの繰り越しは月曜への繰越しであり、土日は何もしておらず、受け渡し日が動くわけではないので、土日にはスワップも付与されない。
結果、月火木金は1日分、水に3日分で、1週間持ち越すと7日分の付与となる。1年間持ち越せば、365日分の付与である。
もちろん、平日が祝日にあたったりすると、水曜3日分が火曜4日分になったり、その他多少変則的になったりする。また、通貨ペアによっては、相手方通貨の国が祝日だったりすると、その通貨ペアだけ他の通貨ペアと違うスワップの付与のされ方をすることもある。
なお、FX会社によっては毎日処理が行われることで、毎日1日分付与されたり、週をまたぐ金曜に3日分、というところもある。処理のもとになる受け渡し日などの前提が違っているのであろう。
なお、このように書くと、スワップポイントが魅力的に感じられてしまうかも知れないが、スワップポイントは、基本的に「おまけ」のようなものだ。無視してもいい。
額も、1日1Lotあたり数10円、多くて100円前後。この額は、pips換算すれば、わずか1pip前後。どんなにがんばってもスプレッド(買値と売値の差)のほうが大きい。
さらに言えば、1日の為替変動の方が、はるかに大きい。
仮に、1日50円のスワップが付いたとしても、レートが2円(200pips)落ちてそのまま定着したとすると、スワップでこれを埋めるには400日もかかるわけだ。しかし、400日かけてプラマイゼロに戻すためにスワップ派になったのではなかったはずだ・・・
サブプライムローン問題以降の諸通貨の下落で、ロングポジションはとてもスワップポイントでは穴埋めできないほどの為替差損を生み出した。
スワップポイントは、先の計算でもあるように、レートと金利の両方で計算される。金利が引き下げられると金利妙味が失われてレートも下がったことから、ダブルパンチである(スワップが減ったので、損を埋める期間が当初想定よりずっと長くなったはずだ)。
最後までスワップ狙いの円キャリートレードを行っていたのは日本人とも言われるくらい。今後再び、諸国が金利を上昇させ、日本だけ低金利で、リスク指向が強くなれば、また円キャリートレードが復活するかも知れないが・・・
スワップポイントについては、どうして付くのかの仕組みだけ知っておいて、基本的にはその存在を無視していても良いだろう。
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