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千のFX千夜一夜 第四夜 〜 仲値

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仲値(なかね)は、東京時間における最大の特徴の1つであろう。

ロンドン市場におけるLDNFIX(ロンドン・フィキシング)のように、時間の決まった値決めとして、仲値はおそらく海外勢にも有名なはずだ。

そして、仲値という言葉自体は大変便利なことばで、仲値に関係したものを全て「仲値」で済ませてしまう場合がある。

そのため、それらの「仲値関係用語」がどういう関係にあるのか、良く分からなくなってしまうこともあるようだ。

そこで今回は、仲値の意味と、仲値の値決めのプロセスを追ってみてみよう!

「仲値」という言葉はさまざまな意味合いに使われる。

例えば、

(1) 9:55の「時刻」そのものを指す
(2) 9:55に決まる「値決め」のことを指す
(3) 9:55の値決めまでに行われる、8時台からの「銀行の売買プロセス」を指す
(4) 9:55の値決めで決定された「価格(9:55のレート)」を指す
(5) 9:55のレートで決定されたその日1日の「買値と売値の中間値(基準相場)」を指す

といった塩梅だ。

仲値ということば自体は、上でいうと(5)が定義上もっとも合うだろう。

仲値は、銀行がその日1日の対顧客レートを建てる上で中心となる値段で、「公表仲値」「公示レート」などとも言う。
英語で TTM(Telegraphic Transfer Middle rate、対顧客電信仲値相場)と言われることもある。

仲値は、その日のドルの需要と供給によって決まる。

実需の企業からすると、第一夜でも述べたように、本来は、例えば輸出筋は海外で商品を売った代金のドルを円に替えるために常にドルを売り続け、輸入筋は海外から商品を調達するためにドルが必要で常にドルを買い続ける存在であった。

例えば、海外から資源を輸入する企業からすると、実際に必要となるドルは相当なものであるはずだ。そこで、

「担当者の相場観に任せると、急激な相場の変化で買えずに、上昇してしまったり、投機を行ってしまうケースがあります。従って、公表される取引銀行の仲値で、機械的に買った方が、確実に買えて、かつ値段は誰もがわかる(透明性)ため、ディーラーを部署に置かなくても為替取引(処理)が出来ることから、仲値預け(仲値で売ったり、買ったりすること)が広まったと考えています」
(Webの拾い物:アクロスFX(株)相場展望・為替実践セミナー第22回・2007/11/29版より引用。以下、本資料を部分的に参照)

こうしたことから、仲値(の値段)でドルを売ったり買ったりしたい人は、前もって取引銀行に連絡しておく。このように連絡されたドル買い・ドル売り額の合計が、ドル買いの方が多いと、ドルを市場から調達しなければならない(ドルが不足しているため)ことから、「仲値不足」と呼ぶ。

反対に、合計がドル売りの方が多いと、余った分を市場で売ることになる(ドルが余っている)ことから、「仲値余剰」と呼ぶ。

非常に簡略化した表現だが、「仲値不足」とは、
 「仲値の値決めのための需給でドルが不足状態(買わなければならない状態)」
といった意味合いだ。

仲値は9:55に決定(値決め)されるため、銀行からすると早めに連絡されるのが好ましい。

毎朝8時台のFXニュースで流れてくる「本日の仲値不足額200本」とかいうのは、仲値で売買したい金額が、差引きドル買い側に200本(2億ドル=約200億円)傾いている、つまりドル買い需要の方が多い、ということだ。差引きなので、ドル売り需要が無いわけではない。

仲値の不足額・余剰額は需要と供給のバランスで日々異なっているが、「ゴトー日」といって決済が集中する日がある。「ゴトー日」というのは、日付が「五(ご)または十(とお)」が付く日のことで、5日、10日、15日・・・といった5の倍数の日付のことだ。

こうした「ゴトー日」は、官公庁の決済があるとも言われている。

なお、ゴトー日には30日は含まず、かわりに月末があてられる。また、本来のゴトー日が土日や祝日にあたる場合は、その前の平日にさかのぼってゴトー日となる。例えば、本来のゴトー日である20日が日曜の場合、前の金曜までさかのぼって18日がゴトー日となる。こうしたゴトー日を「変則ゴトー日」と言ったりする。

通常、仲値不足額は50本〜150本程度のことが多いが、ゴトー日となると200本以上、時に400本近くの大量不足のケースもある。
(1本とは100枚、1枚は1万通貨なので、1本は100万通貨、ドル円なら100万ドル、およそ1億円である。400本近くということは、約400億円分の取引が必要になる)

400本の不足であれば、銀行は9:55までに4億ドル分のドル買いを入れることになるので、特に売り圧力がなければドル円のレートは上昇するであろう。

こうしたことは一般投資家も知っていて、400本の不足と知るや、予めドルを買っておき、銀行が400本買い終わる頃、相場が上昇していれば、一般投資家も仲値終了(9:55)と同時に売ったりしてチャッカリ儲けてしまう。

(ただし、仲値不足でもいつも相場が上昇するとは限らない。200本以下だと変動も誤差範囲だったりするので注意)

経験的には、400本程度の多額の不足で、大きな売り圧力がなければ、だいたい30〜40pips程度も上昇すればいい方だろうか。

銀行も、市場全体でドル不足の傾向であれば、早めに買っておきたいところ。それもそのはず。早めに安く買っておいて、後から市場全体でドル不足傾向で買い上がり、仲値の9:55の時点で、買った時より高い値段で値決めされれば、銀行は自分が買った価格より高い価格で顧客と取引できる(売ることができる)。

一方で、輸出筋も時々大きな売りを持ち込んでくる。輸出筋はできるだけ高く売りたいから、ドル円の相場が高くなっている日に、仲値にかけた買いでさらに上昇していれば、その時点で売りを入れたりする。

こうした場合、仲値の9:55の少し前に、仲値不足だった需給が一転、仲値余剰になるケースもある。これは、急に売りが持ち込まれて、ドル不足からドル余剰になってしまったケースで、銀行はあわててドル売りをすることになる。

なお、予め取引額を聞いておいて、9:55のレートで取引するといっても、銀行は必ずしも9:55までに全ての額を市場から調達しきってしまうわけでもないようだ。

例えば、仲値に向けて相場が上がっていくのを見て、高値で仲値が決まったあと、その後下がってしまってからドル買いをすることも出来るので、そうすれば銀行は儲けになるかも知れない。

反対に、仲値が決まったあとも下がる気配がなくずんずん上昇するケースもあるわけで、仲値の9:55までに買えないまま、仲値決定後に銀行が市場から高く買わざるを得なくなると、顧客には仲値でドルを売らなければならないので銀行は損をすることもある。

まあ、個々の企業が、それぞれの担当の判断で相場に乗り込んで思惑で売買するよりも、一定の仲値で売買するほうが良い・・・という選択をしたリスク部分を、銀行が背負ったと言ってもいいかも知れない。

実際、

「仲値決めの時間は低く仲値を付けたい(前もって上から売り始めた銀行)余剰銀行と高く仲値を付けたい(下から買いあがってきた銀行)不足銀行とが殴り合いの真剣勝負をする時間帯」(先程の資料より)

だそうだ。

さて、このようにして銀行の攻防が行われて9:55を迎えると、その時点でのレートでその日1日の「仲値」が決定される(値決め)。あらかじめ、取引銀行と仲値で売買することを決めていたところは、その後、銀行とその仲値で売買をすることになる。

もちろん、仲値で売買をすることを選択せず、個別に取引を持ち込んでくるところもあるだろう。

特に、輸出筋は、海外で商品を売った代金であるドルをいつ円に替えるかのタイミングを見計らっている。昨年3月のように、急な円高で社内の想定レートをかなり下回ってしまった時には、決算期であってもドルの円転を見送っていたところもあったようで、例えば、

FX wave 2007/3/5 8:46
「本日はゴトー日に当たりますが、大きな不足は現時点ではないようです通常の不足額に近いです。また輸出の持ち込みも水準が105円を割り込んでおり来年度の社内レートを鑑みると実需の売りは閑散の状況」

のような状況もあるようだ。

また、一般客が、外貨預金をしたり外貨と円の両替をしたりする際も、仲値が基準となる。

先程も書いたように、仲値はTTM(対顧客電信仲値相場)であり、通常、ここから1円足した金額が、
TTS(対顧客電信売り相場)=銀行が顧客に売る値段=お客が円を外貨に両替する値段

反対に1円引いた金額が、
TTB(対顧客電信買い相場)=銀行が顧客から買う値段=お客が外貨を円に両替する値段

となる。空港などで「現金ベース」で両替するときは、足したり引いたりする額は1円ではなく2円半〜3円くらいのこともある。

最近は、銀行でもレートを1日1回ではなく、例えば5分に1回程度の「リアルタイム性」を持たせたところもある。

また、TTMに1円を足してTTS、1円を引いてTTBの値段を設定するが、この1円が為替手数料であり、外貨にするときにかかるのを「片道1円」、外貨にしたあと再度円に戻すときの合計を「往復2円」などと表現する。

「往復2円」の手数料は、FXで言えば、「スプレッド200pips」と言っているのと同じことだ。うーん、デカすぎる。

最近は、為替手数料が片道1円もせず、50銭や30銭、10銭程度のところも出てきている。

(空港での現金ベースの両替手数料が、外貨預金の手数料よりも高いのは、電信ではなく、現金そのものを輸送するリスクとコストがかかるためだと言われる)

なお、TTB、TTSは仲値に対して1円の猶予があるので、1円までの為替変動なら手数料の範囲内で銀行は損をしないが、1円以上動くと銀行は損をする可能性がある。このときは「公表停止」といって仲値の使用を一旦とりやめで相場連動とし、さらに1円動いたところで「第二仲値」を設定し、さらに1円動いたら再度「公表停止」とし・・・といった具合になるようである。

このような塩梅で、固定のレートで取引したい需給から仲値の値決めが9:55までに行われ、9:55のレートを以って「仲値」として以後の取引に使用する、といった感じになっているのが日本の仲値である。

みんなで揃って同じレートで取引しましょ、というのは、いかにも日本的といえば日本的な感じもするものである。

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