昭和九年第六五回会議用擬問擬答
満州国の阿片制度
問 満州国の阿片麻薬の制度如何
答 （イ）昭和七年十一月三十日阿片専売法令を施行し漸禁主義に依る煙膏吸食認可制度を樹立せり
（ロ）麻薬類に関する制度は目下立案中の趣なり
阿片諮問委員会に於ける満州国阿片問題の討議
問 昨秋開催の国際連盟阿片諮問委員会に於いて満州国阿片制度が問題となりたる趣なるところその真相は如何
答 第十七回阿片諮問委員会は昨年十月三十日より十一月九日に亘り寿府に於いて開催せられたるが本邦よりは澤
田公使（委員）の代理とし横山参事官之に出席せり同委員会は最近の世界阿片麻薬事業に関し審議を為したる
が極東の阿片麻薬状勢に関連し十一月二日及び三日の会合に於いて満州の現状が問題となりたり。
討議に先立ち議長は本委員会が技術的機関に関して本問題に関する政治上及び法律上の問題を取り扱うことを
求められ居らざることを説明し各委員の注意を喚起したる後米国委員「フーラー」は
「米国政府は極東殊に支那の東北三省に於ける阿片麻薬の状勢殊に満州阿片専売制度に関し深甚の関心を有
し居ること
「現在の満州�聽僂糧�給セル麻薬輸入許可証を認ることは阿片条約の精神に反すること
のに点を主眼とし痛烈に満州国阿片制度を非難し伊、瑞西、葡佛、支、蘭、白等の委員又夫々意見を陳述種々
討議の末結局諮問委員会は
（イ）満州国阿片制度の実情に関する正確なる資料を入手するの必要なるを認め理事会に対し右の為適当な
る方法を考究することの肝要なるを報告すること
（ロ）輸出国政府に対し満州への阿片麻薬の輸送を厳重に監視する必要に付き注意を喚起する旨の一節を報
告書中に含めること
を決議せり
満州阿片問題に対する我方の態度
問 将来再び阿片諮問委員会等に於いて満州国に於ける阿片制度問題となりたる際取るべき我方の応酬態度
答 本件は独立国たる満州国の内政問題にして帝国は何等の関係も責任も認め居らず従って本件問題となりたる場
合は弁解がましき態度を執らず委員会等より情報等を求めらるる場合にも之を回避する方針なり
（尤も本件に関連し帝国に対し直接間接非難を加うべき向きに対しては敢然弁明すべきこと勿論なり）
（註）本件制度の樹立に関し実際満州国側より我方に対し意見を求め来たることなし元来満州は独立漸は支那
と同様の制度の下に阿片禁断主義を採用し居りたるものなるが先般阿片専売制度を採用せるは一見改悪
の観あるも右は表面的皮相の見解にして事実は旧政権の下に於いても阿片の密売密吸食は殆ど公然行わ
れたる所にして旧政府は功に此の状勢を利用して不純なる巨利を収めつつありたる次第にして苟も事情
に通じる者にとりては支那の禁断制度の如きは一笑に付されるべき所なりされば満州国阿片専売制度は
斯かる偽善的制度を改めて我台湾に於けるが如き吸煙特許制度を伴う専売制度を採用したる次第なり
満州国への阿片麻薬取締振り
問 満州への阿片麻薬の輸出は如何に取締り居るや
答 阿片に関しては本邦より満州国へ輸出せらるること実際上なきを以て取締りの問題生ぜず
麻薬類に関しては本邦未だ一九三一年の麻薬製造制限及び取引に関する條約を批准し居らず満州国は何れの国
際阿片條約にも加わり居らざるを以て現状に於いては一九二五年の寿府阿片条約第十八条（締約国と非締約国
との関係を規定したるもの）に依り帝国は事情の許す限度においてのみ麻薬の国際取引を取締る義務ありたり
と謂うべし故に満州国官憲発給の輸入許可書の提出あれば是に基づきて輸出を許可する方針なり
問 最近台湾粗製「モルヒネ」を支那に輸出せむとする計画在るやの趣なる處真相如何又右計画に対する政府の方
針如何
答 左藤清治なる者度無償より台湾粗製「モルヒネ」在庫品の払い下げを受け之を粗製「モルヒネ」と為して支那
に輸出するの計画を樹て客年末粉川伊之助及び安倍広市の両人を南京に派し南京政府内政部係官より右粗製
「モヒ」五千瓩輸送に必要なる護照（名義人は上海薬房主支那人李春生）を入手し右護照に対する在南京帝国
総領事の証明を求めたるも同総領事は右護照入手に経路に付き疑いありたるに依り外務大臣に請訓の上右証明
を差し控えたり本年に入左藤は外務省その他の関係省を歴訪し本件輸出許可に対する運動を開始せり依って関
係省（外務、大藏、内務、拓務、司法）係官より成る阿片委員会幹部会は一月二十五日内務省に会合協議の結
果本件左藤の輸出計画は手続き上及び条約上不備の点あるを以て是を許可せざること又台湾「モヒ」処分方法
に付きては内務拓務両省間にて交渉することに打ち合わせ遂げたり
問 満州国の阿片麻薬の制度如何
答 （イ）昭和七年十一月三十日阿片専売法令を施行し漸禁主義に依る煙膏吸食認可制度を樹立せり
（ロ）麻薬類に関する制度は目下立案中の趣なり
阿片諮問委員会に於ける満州国阿片問題の討議
問 昨秋開催の国際連盟阿片諮問委員会に於いて満州国阿片制度が問題となりたる趣なるところその真相は如何
答 第十七回阿片諮問委員会は昨年十月三十日より十一月九日に亘り寿府に於いて開催せられたるが本邦よりは澤
田公使（委員）の代理とし横山参事官之に出席せり同委員会は最近の世界阿片麻薬事業に関し審議を為したる
が極東の阿片麻薬状勢に関連し十一月二日及び三日の会合に於いて満州の現状が問題となりたり。
討議に先立ち議長は本委員会が技術的機関に関して本問題に関する政治上及び法律上の問題を取り扱うことを
求められ居らざることを説明し各委員の注意を喚起したる後米国委員「フーラー」は
「米国政府は極東殊に支那の東北三省に於ける阿片麻薬の状勢殊に満州阿片専売制度に関し深甚の関心を有
し居ること
「現在の満州�聽僂糧�給セル麻薬輸入許可証を認ることは阿片条約の精神に反すること
のに点を主眼とし痛烈に満州国阿片制度を非難し伊、瑞西、葡佛、支、蘭、白等の委員又夫々意見を陳述種々
討議の末結局諮問委員会は
（イ）満州国阿片制度の実情に関する正確なる資料を入手するの必要なるを認め理事会に対し右の為適当な
る方法を考究することの肝要なるを報告すること
（ロ）輸出国政府に対し満州への阿片麻薬の輸送を厳重に監視する必要に付き注意を喚起する旨の一節を報
告書中に含めること
を決議せり
満州阿片問題に対する我方の態度
問 将来再び阿片諮問委員会等に於いて満州国に於ける阿片制度問題となりたる際取るべき我方の応酬態度
答 本件は独立国たる満州国の内政問題にして帝国は何等の関係も責任も認め居らず従って本件問題となりたる場
合は弁解がましき態度を執らず委員会等より情報等を求めらるる場合にも之を回避する方針なり
（尤も本件に関連し帝国に対し直接間接非難を加うべき向きに対しては敢然弁明すべきこと勿論なり）
（註）本件制度の樹立に関し実際満州国側より我方に対し意見を求め来たることなし元来満州は独立漸は支那
と同様の制度の下に阿片禁断主義を採用し居りたるものなるが先般阿片専売制度を採用せるは一見改悪
の観あるも右は表面的皮相の見解にして事実は旧政権の下に於いても阿片の密売密吸食は殆ど公然行わ
れたる所にして旧政府は功に此の状勢を利用して不純なる巨利を収めつつありたる次第にして苟も事情
に通じる者にとりては支那の禁断制度の如きは一笑に付されるべき所なりされば満州国阿片専売制度は
斯かる偽善的制度を改めて我台湾に於けるが如き吸煙特許制度を伴う専売制度を採用したる次第なり
満州国への阿片麻薬取締振り
問 満州への阿片麻薬の輸出は如何に取締り居るや
答 阿片に関しては本邦より満州国へ輸出せらるること実際上なきを以て取締りの問題生ぜず
麻薬類に関しては本邦未だ一九三一年の麻薬製造制限及び取引に関する條約を批准し居らず満州国は何れの国
際阿片條約にも加わり居らざるを以て現状に於いては一九二五年の寿府阿片条約第十八条（締約国と非締約国
との関係を規定したるもの）に依り帝国は事情の許す限度においてのみ麻薬の国際取引を取締る義務ありたり
と謂うべし故に満州国官憲発給の輸入許可書の提出あれば是に基づきて輸出を許可する方針なり
問 最近台湾粗製「モルヒネ」を支那に輸出せむとする計画在るやの趣なる處真相如何又右計画に対する政府の方
針如何
答 左藤清治なる者度無償より台湾粗製「モルヒネ」在庫品の払い下げを受け之を粗製「モルヒネ」と為して支那
に輸出するの計画を樹て客年末粉川伊之助及び安倍広市の両人を南京に派し南京政府内政部係官より右粗製
「モヒ」五千瓩輸送に必要なる護照（名義人は上海薬房主支那人李春生）を入手し右護照に対する在南京帝国
総領事の証明を求めたるも同総領事は右護照入手に経路に付き疑いありたるに依り外務大臣に請訓の上右証明
を差し控えたり本年に入左藤は外務省その他の関係省を歴訪し本件輸出許可に対する運動を開始せり依って関
係省（外務、大藏、内務、拓務、司法）係官より成る阿片委員会幹部会は一月二十五日内務省に会合協議の結
果本件左藤の輸出計画は手続き上及び条約上不備の点あるを以て是を許可せざること又台湾「モヒ」処分方法
に付きては内務拓務両省間にて交渉することに打ち合わせ遂げたり
2009年01月11日(日) 11:25:59 Modified by sityorunokana