wiki復活ツールをポケットから取り出しておもむろに作業を始めた。

幼体の時点で他のクモとヒメグモ類を見分けるコツは、腹部は上に高く丸っこいものや糸疣の上のほうが高まるものが多くオニグモ類のように腹部の肩の部分が幅広くなったり肩に隆起があるものはあまりない。
また足刺は比較的目立たず、一方腹部に長めの毛が生えてることが多い。

コガネヒメグモは沢や渓谷などで見られやすい美しいクモの一つで、その網も美しい。
縦糸の目立つ構造は他の種類とは幾分異なり、巣によってクモの存在に気づくこともしばしば。
成長過程では営巣位置(高さ)を徐々に上げていき、網の上下のスパンが段々大きくなっていく。
   

        庭で放し飼い中のもの
   
人の生活圏に近いとこで見られるカレハヒメグモに似るヤマトコノハグモは都市近郊の田んぼから山奥の渓谷、山小屋まで生息範囲は広い。
現地でヒトの往来を調査したところ、下の画像の個体を捕らえたとこでは沢登りの人の休息利用が多いようだった。
20kmくらい続く尾根では見られないのに小屋にだけ生息してる理由がわかった気がする。
(→下の画像はヤマトコノハグモからサンロウドヨウグモに訂正)
   

  山小屋の隅に大き目の不規則網を張ってた

  見た感じはドヨウグモっぽい。

ちょっとした刺激ですぐに死んだ振り
こうしてみてみるとサンロウドヨウグモの雰囲気ムンムンで、外雌器が一致しないとおもったのは成長過程だったからかな。
人間大の巨大な不規則網の主はオオヒメグモあたりでたまたまそこに侵入してたのだろうか?
窓のない小屋の隅ってことで日中も薄暗く生息適地だったようだ。
ドヨウグモの仲間が他のクモの巣に侵入して襲ってるのはたまに見る光景で、食後のひと時は網の主かと誤ってしまうこともあるかと。
これは他の『意外と他のクモの網に侵入することもある造網性のクモ』にもいえるかな。


改めてヤマトコノハグモの幼体を貼ってみると足刺が弱いことでヒメグモに近いグループかな?って感じになる。

ニホンヒメグモは以前はただのヒメグモと呼ばれてたクモで、都市部の緑地でもよく見られる。
生まれた頃の幼体は体色黄色く脚は黒ずみアブラムシのようだが、同じ環境に生息するワキグロサツマノミダマシの幼体も同じ姿をしていて成長過程でそれぞれ色は変わっていく。
生態はカグヤヒメグモなどに似るが、こちらは朱赤が目立つことが多い。

コンピラヒメグモは一見すると同じような姿をしてるが一回り小さく、湿所の下草の低い位置での営巣が見られる。
比較的ゆったりした空間利用をするニホンヒメグモ、カグヤヒメグモとは利用空間が異なるようだ。(パッチの差)
コンピラが多く見られた区域では、周辺でヨツボシヒメアシナガグモ・ヒメアシナガグモがよく見られた。
ヒメグモ類は糸器の周辺や第4脚の斑紋のパターンなどに特徴が現れることが多いので、まずその辺をチェックするといいかもしれない。
同じ草地でも上方には他のヒメグモ類が見られ、棲み分けてるようだ。


   崖地で営巣してるカグヤヒメグモの絶妙な保護色。
   少し後ろに下がると背景の地衣類に溶け込んでしまう。
    
平地で普通に見られるバラギヒメグモは高地まで幅広く分布する。   

タカネコモリグモの生息エリアの石の下に隠れてた小さなクモを拾ってきて
育ててみたところ・・・ささやかな期待を裏切ってただのバラギヒメグモになってしまった。(写真は採取から数週間後の幼体)
   
タカネヒメグモはブナ帯上部付近から出現する小型種で亜高山針葉樹林では優占種となる。
比較的高地にも出現するコケヒメグモの幼体がよく似て、時々間違えることがある。

  間違えてた幼体から成長したコケヒメグモとその卵
   

  卵嚢を小脇に抱えるタカネヒメグモ

     タカネヒメグモのまどい

       使用済みのオス
  
ヤホシサヤヒメグモは食物をとると着色してしまう透明度の高いクモで、その為摂食後の灰色の個体を発見してなんだかよくわからないクモに留まることも多いと思われる。
その腹背のヤホシ斑もサザナミ模様のように連続したり安定はしてはいないようだ。
背甲の黒筋に多少特徴があるので覚えるとよいかもしれない。
水田・河原の普通種で草地のタイプもあまり選ばない。
同じように斑紋が不明瞭になることが多い黄色系の小さなクモには、山地で広く見られるヒメヨツボシサラグモのグループがある。
こちらは個体差により灰色っぽかったりするようだ。
高地で見られるサザナミサラグモが似たような雰囲気を持つけどサザナミ模様の黄色いクモを見た場合は、ハイマツの生えるような高山ではサザナミサラグモ。
ブナの生えるような山地ではヒメヨツボシサラグモ。
山麓ではヨツボシサラグモ。
平野部ではヤホシサヤヒメグモ。
としておいて、気分に応じて精査するといいかもしれない。
ヨツボシサラグモと比べるとヒメヨツボシとサザナミはやや小型。

ツクネグモはクモとしては比較的珍しい腹部がキチン化した?種類でその形状も面白い。
腹部のキチン化と奇妙な形状はダニではよく見られるもので、ウズタカダニのように変わった形状のものもいる。
土壌性のヨロイヒメグモも腹部はやや硬質化してるようだ。
ハラダカツクネグモは敵が接近すると巧妙な擬死を行い、クモの巣に引っ掛かってブラブラと風に揺られる木屑のようなゴミに扮する。
ゴミグモに擬態したイソウロウグモといったような雰囲気があって、足を縮めて静止して風にトゥルトゥル揺られてるのを見るとヤリグモにも似てるかな。
擬態が巧妙なので以前は比較的珍しい種類かと思われてたようだけど、意外と身近な環境の林縁などで見られる。
この種はゴミグモ類によく似る。
このクモが見られる場所で色々なイソウロウグモが見られることもある。
ヒメグモ科からは別のグループに分けられるかもしれない。


      ウズタカダニは2本爪かと思ったら・・

 
       カワイイ3本爪なのでした。  



オナガグモはクモ食いのクモとして知られてるけど飼育下ではクモを食べないまま餓死してしまうことも多い。
放し飼いだとクモを捕食してるシーンが見られる。



クモ食といっても大体のクモは他のクモを食べるものである。
外にもクモを襲う習性で知られてるのがヤリグモやムナボシヒメグモなど。
イソウロウグモ類は他のクモの網の片隅に定位して、宿主のクモのおこぼれをもらっていると言われていたが実際には網の主を襲う場合もあるようだ。
イソウロウグモの中でも特に小型の種類は、小さいことで網主にとっての餌としての価値が減少して襲われるリスクが低下してるのかもしれない。
他のクモの網の横糸にイソウロウグモ類の独特の形状をした卵嚢がぶら下がってるのがしばしば見られる。

クモの捕獲術を発達させたのがセンショウグモ類だけど、じわじわとにじり寄ってる間に相手がすたこらさっさと逃げてしまうことも多く狩りの成功率はあまり高くはなさそうだ。
単純にクモに襲い掛かる能力については、フクログモやヤチグモなど牙が発達して運動能力の高いクモや待ち伏せ方のコオニグモモドキのように、腕力の強いクモほどのものでもないのかもしれない。
センショウグモは他のクモを発見すると急に動不審になることで見分けられる。
同所的なムナボシヒメグモとは、腹端両脇に突起があることで見分ける。
コオニグモモドキについては同所的なホシミドリヒメグモなどが犠牲になってるのを見るけどとにかく腕力が強いようだ。




   なんかカラフルなセンショウグモの卵嚢  

ミジングモ類は、もっぱらアリを襲うアリ専食のクモとして知られてるが飼育化では双翅類を食べて正常に成体に成長する。
特に冬季の地上の落葉間ではホラヒメグモの仲間がミジングモにやや似て間違いやすい。
このクモは低木や草の茎沿いに糸を垂らしてぶら下がり、アリが近づくと粘液をつけた糸を引っ掻けて捕らえる。
自分よりもはるかに巨大なアリとの肉弾戦にも優れ、糸を利用しない直接対決でもまず負けることはなさそうだ。
クモ喰いの傾向の強いクモが返り討ちにあう場合があることと比べると、アリとの関係はほぼ絶対的のようだ。
巨大なアリがミジングモの脚の付け根を牙でがっちりと抑えて、腹部に針を刺そうとするものの そこまで体を曲げられずに四苦八苦してる光景が見られた。
アリの毒に対する抗体を持ってると面白いんだけど・・
ミジングモ類はクモを捕食する傾向は特に低いようで、冬季樹皮下で集団で越冬してるのが見られる。
体色変異のある種が多く、同定については交尾器等の精査を要する。
山里では比較的多くの種類が見られる。
夜、葉の裏に糸を引いてぶら下がってるのをたまに見るけどアリを待ち伏せてるのだろうか?


カニミジングモ♂(成体になると背甲に何者かに噛まれたような陥没ができる)


 キベリミジングモ♂(上は亜成体/下は成体)


キベリミジングモ♂・・成体になると頭胸部のツートンカラーは消えて盛り上がった背甲が陥没する

小型種のキベリミジングモに酷似したクロササヒメグモという別属のクモがおり、簡単には第四脚の腿節の黒色部分がないことで見分ける。
ミジングモ属からは数種がササヒメグモ属に転属されている。

コホラヒメグモは平地から山地まで広く見られる普遍的な種類。
ナカブサホラヒメグモ?は亜高山の苔むした林床で見られ、同時にオツヌヤミサラグモなども見られる。
やや標高を減じたダケカンバ林などでは平地との共通種のコホラヒメグモが見られる。
とりあえずメモを取る都合でナカブサとしてるけど、近縁の未記載の別種かもしれない。
山里のクモの解明は進んでるけど山岳がちょっと手薄になってるようだ。
趙雲のような無双の勇士が現れれば高地のクモの解明度も上がるだろう。
一方で住宅地の裏手のちょっとした林なんかも見落とされてるクモの宝庫っぽい。
自然度の高い奥深い山になるとわりとクモ相が単調になるようで、人為的なかく乱の多い山麓のほうが色々なクモが見つかる傾向があるようだ。


     ナカブサホラヒメグモに近い種類か?

アシブトヒメグモは、平地の小枝の先に不規則網を張るがトベラの花粉を食うというクモとしては非常に珍しい習性が知られている。
おそらくタンパク質として摂取してるのだろう。他の種類からも植物性のタンパク質の摂取例が確認されるかもしれない。
アシブトヒメグモは沿海地で優占種となりやすく、近縁にイワワキアシブトヒメグモなどがあるが識別は難しい。
腹背の斑が目立たず全身が赤紫っぽく輝く美しい個体もいて、見つけるとちょっと得した気分になる。
また飼育中に卵嚢を口にくわえて運ぶのが見られた。

スネグロオチバヒメグモは、名の由来となる前足の黒色部分が目に付きやすいクモ。
ヒメグモの中ではそう多くはない土壌性のクモとして各地に普通で、都市部の落葉層のある公園から低山にかけて見られる。
比較的獰猛でアリや他のクモを襲うハンターである。
同所的にタンボグモ、メキリグモ類、ヤミイロカニグモ類、各種小型のサラグモ類などが見られ土壌の生物層が豊かなところでよくみられるようだ。

ヒメグモ類ではオスとメスとの間では形態的にはそれほど差がないものが多いが、イソウロウグモ類やミジングモ類では、雄の頭部が極端に高まったり突起を持っていたりと大きな形態の差を示すものも知られている。
    
ヨロイヒメグモはちょっとした民家の裏の林や都市部の緑地にもいるようで、平野部にも広くいるクモのようだ。
同所的な赤いクモとしてナルトミダニグモが捕れることもある。
動きのもっさりしたヨロイヒメグモとずーーーっと走り回ってるナルトミは好対照。
そんなヨロイも意外と素早く動くこともある。
ペアリングしてみても離れたとこに定位してしまうことが多い。
ダニにもやたらと走り回るやつがいるので、ナルトミのほうはそういうのを追いかけて捕獲するのに適応した形態だろうか。
冷蔵庫で冷やせば動きが鈍るので撮影しやすくなる。
身近な種類なので、どちらも高級な機材で誰かが撮影することに期待したい。
腹部の上面の形状はちょっと変わっててこれは一見の価値アリ。


    
 

縁に沿ったほつれた糸のようなのがヨロイヒメグモの巣


     ムラクモヒシガタグモ幼体は山麓では冬場の落葉層の定番


           ガチ迷彩色(いずれも画像中央付近で下はひっくり返ってるとこ)




            触肢が膨らんでるけどまだ体長は3ミリ程度

                     ところで・・・・




山麓の谷筋のリター間で時々採れるクモで、これがモリヒメグモの仲間なのかな・・・
サラグモより毛深くて足が太めで足刺が見えないことと、定位中の様子がサラグモと微妙に違うのがポイント。
http://www.spiderling.de/arages/Fotogalerie/specie...
最初はホラヒメグモやミジングモの一種の暗色型かと思って、次に一生懸命サラグモの図を見てたので上のページを見るまでは正体がはっきりしなかった。


                触肢の手首っぽいとこにも強い特徴がある

Robertus arundineti の♂触肢の画像にも似たような構造があるけど、手先の方に張り出した平たい?ブツが交尾の時にどのように動くのかが興味深い。
リターを5〜10kg採取してたまに1匹混じってる程度だけど、例によって民家の裏シリーズなので裏の林に自信のある人は探索されたし。
薄暗い枯沢や沢の源頭、林道沿いの余り湿ってないよく片づけられてるスギ植林地林床とかいろいろな環境で採れてる。
脚が太いことと脚のツートンカラー、サラグモ類と比べると腹部が妙に毛深いこと、採集後は営巣するまではミジングモみたいにじっと壁に張り付いてるのが特徴かな。
アカガネウラシマグモ種群?同様普遍分布と思われるけど、サラグモの小さいのと思って同定を保留にしてしまうのが記録県が少ない原因かな?

 
          こっちは近郊の雑木林(乾いたコナラ林床)で得られたメスっぽいの。


                   営巣の様子は一見するとサラグモっぽい

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