長谷川櫂さんの案内のままに進んできた於多福姉の「古池や」の旅も終りに近づきました。
それで「おくのほそ道」の旅の後、京周辺での二年間に芭蕉が何を思ったか、整理します。
この間、芭蕉が｢病鳫｣の句より重要な句を詠んでいないと仮に決めたうえでの整理です。
芭蕉は｢古池や｣の俳句に相応しい新生・蕉門の組織づくりが必要だと考えたことでしょう。
蕉門は芭蕉を中心に進んでいきますけれど、その後までも視野に入れなければなりません。
組織は中心者・松尾芭蕉を魂とし、有能な弟子が順次・守り続けていかなければならない。
新しく生まれた｢俳句｣の伝統を皆で作り・途絶えないように守り続けなければなりません。
人材探し・人材育成・人材育成のマニュアル・やることは余りにも多く、時間は限られる。
芭蕉が真っ先に考えた課題は「おくのほそ道」を仕上げる事ではなかったと云えましょう。
江戸に戻る前にし終えなくてはならない計画が『猿蓑』を去来・凡兆に仕上げさせること。
古い感覚の弟子たちに蕉風俳句を理解させるには時間が掛かることは明らかだったのです。
『猿蓑』の編纂作業は感覚の新しい弟子を育成するのにピッタリだと思われたのでしょう。
じっさい、去来と凡兆は互いに良きライバルとして競い合いながら『猿蓑』を仕上げます。
新生・蕉門の両翼たるべく、芭蕉が頼みとし期待した去来と凡兆だったと云えるでしょう。
何事も凡てが計画通りに進んだなら、新生・蕉門は高くたかく天空に舞ったことでしょう。
しかし逆に・順調に進んだばっかりに、天空で空中分解して消えてしまったかも知れない。
ともあれ、凡兆が落ち、片肺飛行を余儀なくされながらも飛び立つことになったのでした。
不遇に気落ちすることなく、安寧に惰眠を貪ることなく、蕉門は芭蕉につづいたのでした。
気を引き締め・引き締めしながらの慎重な操縦で蕉門は未来への長旅を続けていくのです。
＊ 病鳫の夜さむに落て旅ねかな
雁の一団が飛んでくる。長いながい旅の途中に
疲れた仲間・傷ついた仲間・病んだ仲間もいる
リーダーは一人の落伍者も出さないように護る
目的地へ向かう上昇気流を捜し・仲間を導いて
そうしてやっと今・羽を休められる岸辺を見る
安全を確かめて・そうして蘆の間に落ちてゆく
そっと落ちて・ひっそりと身をしずめる雁たち
風に吹かれて揺れる蘆の間で気持ちよげに寛ぐ
いつしか仲間たちは深い眠りについて夢見よう
仲間の安らかな寝息のなか、目を瞑るリーダー
それは落伍者のなき事を祈る芭蕉の旅寝に似て
それで「おくのほそ道」の旅の後、京周辺での二年間に芭蕉が何を思ったか、整理します。
この間、芭蕉が｢病鳫｣の句より重要な句を詠んでいないと仮に決めたうえでの整理です。
芭蕉は｢古池や｣の俳句に相応しい新生・蕉門の組織づくりが必要だと考えたことでしょう。
蕉門は芭蕉を中心に進んでいきますけれど、その後までも視野に入れなければなりません。
組織は中心者・松尾芭蕉を魂とし、有能な弟子が順次・守り続けていかなければならない。
新しく生まれた｢俳句｣の伝統を皆で作り・途絶えないように守り続けなければなりません。
人材探し・人材育成・人材育成のマニュアル・やることは余りにも多く、時間は限られる。
芭蕉が真っ先に考えた課題は「おくのほそ道」を仕上げる事ではなかったと云えましょう。
江戸に戻る前にし終えなくてはならない計画が『猿蓑』を去来・凡兆に仕上げさせること。
古い感覚の弟子たちに蕉風俳句を理解させるには時間が掛かることは明らかだったのです。
『猿蓑』の編纂作業は感覚の新しい弟子を育成するのにピッタリだと思われたのでしょう。
じっさい、去来と凡兆は互いに良きライバルとして競い合いながら『猿蓑』を仕上げます。
新生・蕉門の両翼たるべく、芭蕉が頼みとし期待した去来と凡兆だったと云えるでしょう。
何事も凡てが計画通りに進んだなら、新生・蕉門は高くたかく天空に舞ったことでしょう。
しかし逆に・順調に進んだばっかりに、天空で空中分解して消えてしまったかも知れない。
ともあれ、凡兆が落ち、片肺飛行を余儀なくされながらも飛び立つことになったのでした。
不遇に気落ちすることなく、安寧に惰眠を貪ることなく、蕉門は芭蕉につづいたのでした。
気を引き締め・引き締めしながらの慎重な操縦で蕉門は未来への長旅を続けていくのです。
＊ 病鳫の夜さむに落て旅ねかな
雁の一団が飛んでくる。長いながい旅の途中に
疲れた仲間・傷ついた仲間・病んだ仲間もいる
リーダーは一人の落伍者も出さないように護る
目的地へ向かう上昇気流を捜し・仲間を導いて
そうしてやっと今・羽を休められる岸辺を見る
安全を確かめて・そうして蘆の間に落ちてゆく
そっと落ちて・ひっそりと身をしずめる雁たち
風に吹かれて揺れる蘆の間で気持ちよげに寛ぐ
いつしか仲間たちは深い眠りについて夢見よう
仲間の安らかな寝息のなか、目を瞑るリーダー
それは落伍者のなき事を祈る芭蕉の旅寝に似て
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