ハンターサポーター 第三部

作者:そけ


今日もまたいつもの時間に目が覚めた。やっぱり早朝だった。のだが、今日の仕事は遅出だった。
仕事病はこんな所にも出ている。今までなら遅くまで寝れるのに起きちまった〜!と嘆いていただろう。
しかし、昨日自分で恐れていた壁を乗り越えた今日の僕は心の熱が高くなっていた。

一晩寝ても、昨日の決心の熱は下がりそうに無い。この気持ちは本物なのだろう。
仕事や仲間に対する熱い気持ちが、いつもの嘆きをかき消していた。
「おぉし!今日は仕事を始めるまで何かをするぞぉ!」……なんなんだ、このテンション。
自分が可笑しくなって笑っている自分がさらに可笑しくなって、思わず1人の部屋で笑ってしまった。
ニヤケ顔のまま氷結晶で出来ている食品箱を開けて残っている食品をチェックする。
中を覗いてみると……
「うっぷっ!!」思わず声をあげてしまった。なぜなら見たくない物を朝から見てしまったからだ。
箱の中には半分溶けているシモフリトマトと粉を吹いているパワーラードが入っていた。
ひとまず、この異臭のおかげでニヤケ顔は終わって、引きつった顔になっている。
とりあえず塵袋を用意して、出来るだけ触る面積が少ないように指先だけで、かつて食材だった物をつまんで袋に入れる。変なしたたっている液体は見て見ぬふりで、塵袋に入れ終わったらボロ布でしたたった液体を丁寧に箱の中も全部拭き取り、目も口も固く閉じて、ボロ布も袋に詰め込み、袋の口も固く閉じる。
そして僕は新鮮で無味無臭の空気を大きく吸い込み、また大きく吐き出した。
かくして空になった食品箱の中身を買い足すべく、勢い良く玄関から飛び出す。
「財布も持ったし、さて!行くか!」この独り言は止めようとしても止まらないだろう。
そして走るようにランドの中心部の中央広場へ向かう。今日も温暖期の太陽が照り付けている。

中央広場に着くと、ハンターと町人達で中央広場はいつもより大いに賑っていた。
あちらこちらで商人の売り声、客の買い声が飛び交っていた。
「今日はドンドルマフェスタだよ〜!」と元気な声が僕の耳に飛び込んできた。
そうか、道理で人が多いわけだ。ドンドルマフェスタはその名の通りフェスタである。
ドンドルマの街の商店が全品半額となる、非常に庶民には心強い夢のようなセールなのだ。
正直、道具屋や調合屋のセールもあるらしいが、一般人には関係がほとんど無い。
このハンターの町ならではのハンターのためのセールなので、庶民はフェスタが1番美味しいのだ。
食材屋セールも時々してるが商品が増えるだけで、そんなに安くない。のでやはりドンドルマフェスタ命なのだ。
さっそく食材屋に寄って食材を選ぶ。食材屋の前には主婦の皆様が黒だかりになっていた。
どうやら獲りたての新鮮な魚が入ったらしいが僕は魚は自分で釣るので魚はちらっと見て違う所に目をやる。
隣の野菜枠を見ているとレアオニオンが売られていた。この玉ねぎは切っても涙が出ず美味で人気だ。
その横には穀物類のウォーミル麦と頑固パンが置かれていた。
それにしても人が多く後ろから横からと押されまくっている。
僕は目が止まったレアオニオンと麦とパンを買い、脇に抱え、お金を投げるように払い、人ごみを抜けた。
ふぅと息を吐くと、額から汗が流れるのが判った。この暑さに加えて人ごみの暑さが重なると半端では無い。
脇に抱えた食材を持ち直していると、お腹が鳴った。他人に聞こえるほどの大きさで……。
僕は大衆酒場に寄って朝食を食べる事にした。暑さから逃げるためにも酒場に行くに限る。
「おはようございま〜す!」お店に入るなり元気な声が聞こえると安心する。
「おはよう!んとね、オッタマケーキとコーヒー頂戴!」暑いのであんまり重たいのは止めておこう。
すぐに出てきたオッタマケーキをほおばりコーヒーで流し込む。贅沢気分を朝から味わっている。
ここでゆっくりとしていたいのだが、ハンターが激しく出入りしているので落ち着かない。
「じゃ、行くわ!お勘定!」「ありがとうございま〜す!」うぅ、ゆっくりしたい。

取り合えずこの食材を家に持ち帰って、仕事までの時間をゆっくり過ごす事にする。


玄関まで着くと鍵を開けっ放しだった事に気付いた。うっかりにもほどがある。
部屋に入って食材箱に買って来た食材を詰め込もうとするが入りそうで入らない。
半額とはいえ買い過ぎてしまえば結局高価になり、さらに今朝のような惨事になる確率が高くなる。
「買い過ぎた……」と呟くと、頑固パンを1個だけ取り出し、後は力任せに押し込んだ。
暑い中で買い物をして、うっかりに冷や汗をかき、無理やり食材を押し込んだ僕は汗にまみれていた。
このまま仕事の時間まで居るには不快なので、シャワーを浴びることにした。
シャワーから出て、ベットに腰をかけて涼んでいると眠気が襲って来た。
仕事も遅出なのに早く起きた事は想像以上に睡魔のかっこうの餌食のようだった。

次に目を開けたときに寝ていたのだと判り、自覚の無い居眠りに少し後悔をする。
仕事に行くにはまだ早いが2度寝をしているほどの時間は無かった。
今日の遅めの昼食は「頑固パンにハチミツをかけて頂くとするかな」取り合えず独り言。だ。
ハチミツは常時、流し台の中に置いている。日陰に置いておけば大丈夫!……なはずだからだ。
「ハチミツ、ハチミツと…」少しかがんでハチミツの壷を奥から取り出そうと手を伸ばそうとしたその時だった。
僕の視界にある一つの黒い物体が目に止まった。「あ」と言った途端に僕は固まってしまった。
僕の視界には朝から僕を引きつり笑いさせてくれた、あの塵袋が見事に入ってしまったのだ。
塵袋には入れたものの勢い良く買い物に出たばっかりに、捨てる事を忘れていた。
鍵は閉め忘れるわ、ゴミは捨て忘れるわ、このハイテンションは、うっかりを引き起こすにもってこいなのだろうか。

僕はゴミを捨てに「集合ゴミ捨て場」に、その塵袋を掴んで急いで向かった。
「集合ゴミ捨て場」は1週間に1回、回収に来る。このゴミのほとんどが大衆酒場から出るゴミらしいのだが。
ゴミ捨て場は町外れの川の橋の下の方にある。僕の家からは歩いてすぐの所だ。
僕が着くと、すでに雪崩れてきそうなほど山積みのゴミが僕を迎えてくれた。
僕は塵袋を、その山のてっぺんに乗るように思い切り投げた。
雪崩れない所を見ると見事に着地してくれたらしい。「よしっ」と小さくガッツポーズを決めた。
そして家に帰ろうとすると、川の土手の方から人の声が聞こえた。何人か居る雰囲気だ。
そっちの方を橋の手すりの影から覗くように見てみると、1人座っていて、その後ろに2人が立っているようだった。
「あっ」小さく声を出した僕は少し見て思わず橋の手すりにすぐに隠れてしまった。

よくよく聞くと泣き声も混じっている。僕はまた影からこそっと覗くように見てみた。
「やっぱり……」1人は座っているのではなく、泣き崩れていたのだと理解するのに時間はかからなかった。
後ろに立っている2人はその泣き崩れている人の肩を持って慰めているように3人とも悲壮感が漂っていた。
その身なりは、明らかにハンターそのものだった。
今さら出て行く勇気も無く、僕は影からじっと3人を見ている事しか出来なかった。

そして僕は気付いてしまった。「あ、おさげの子?」そう、昨日運搬の時にすれ違った子だった。
僕が初めてモンスターを倒して、届けた支給品を使った、手を大きく振ってくれた、あの子だった。
そして、すれ違った時は4人船に乗って居た、あのチームのあの子だった。
僕は一瞬で彼女の涙の理由を悟ってしまった。それは多分ではなく、絶対と言っていいほどの確信が有った。
チームメンバーの死。それ以外に何か答えがあるなら、誰か僕に教えて欲しい。
ただ影から見ているだけでも辛そうな光景に僕は影に潜み、彼女達の声だけを聞いていた。
「私をかばったから……私が弱いから……」おさげの子の声らしい細く枯れた声が聞こえる。
「俺達も弱いから」「一人のせいじゃないよ」そんな慰めの声も聞こえる。
が、おさげの少女にはどの声も届かず、ただ、おさげの少女はただ泣き続けていた。

話の端々を聞いていると、どうやら仲間の一人はおさげの彼女をかばおうとして命を落としたようだ。
かばおうとしたと言う事は、その仲間は恐らく彼女の目の前で絶命したのであろう。

僕も隠れた態勢でずっと立ってる訳にもいかないので、その場に腰を下ろそうとした時だった。
僕の足下には橋の少し崩れた石が落ちていて何気なく足が当たって音をたててしまった。
その音をハンターである彼女達が聞き逃す事は無く、こっちに視線が向くのが判った。
後ろで慰めていたうちの1人が「誰かいるの?」と、こっちに声をかけた。もう隠れては居れない。
僕はうつむきながら橋の影から出た。「ごめん、盗み聞きするつもりは……」言い訳は無粋だった。
「何よ?人が悲しんでるのを見ていて、面白いの?」慰めていた女が攻撃的に言う。

「お前!他のギルドの奴なんだろ!いい趣味してやがるぜ!」慰めていた男も声を荒げる。
その声を聞いておさげの子も少し顔が上げて僕のほうを見ようとしていた。
何かに八つ当たりに当たったり、何かを、ののしりでもしないと気持ちが破裂しそうなんだろう。
僕はそんな気持ちだって理解できる。だって、僕には少なからず今の彼女達に似た経験があるから。
そして僕はその経験を乗り越えたのだから。……辛いのは判るんだ。
僕は悪い気もしたが、彼女達には判って欲しかった。から僕は話をしようとした。
「……判るよ、僕だって……仲間を無くすのは辛いよね……」僕は亡くなった先輩を思い出していた。
僕を先物隊に引き抜いて僕に初めて存在意義を教えてくれた先輩。
先輩が亡くなったとき僕も荒れた。気持ちの持っていく場所が無かった。
誰を恨むでもなく、モンスターに怒りをぶつけられるわけもなく、どうしていいか判らない、壊れそうな心を忘れられる訳も無い、どうしようもない気持ち。
今の彼女達はその気持ちに凄く似ている心境だと、経験者としては嫌でも判ってしまう。
僕は続けた「慰められても余計辛いだけだ。今はそっとしてあげなよ……」
それが彼女達に教えれる唯一のアドバイスだった。
先輩が亡くなったのも僕が、まだ仕事に慣れていない時にのシフトと交代して出て行ったくれた時だった。
その時に亡くなったので、周りからは「お前のせいじゃない」「仕方ない」そう言われ続けた。
だが、そう言われれば言われるほど「自分があの時、代わってなければ」そう後悔で
苦しみに苦しんだ。
おさげの彼女も恐らくそうだろう。今は周りの声は彼女の気持ちを苦しめるだけだ。

しかし、盗み聞きしてた何処の誰かも判らない男のアドバイスは逆効果でしか無かった。
「何処の馬の骨が何様よ!」「お前に何が判る!」……こう言う時は正しい行動でも悪になってしまう。
僕はただうつむき、ちょっと間ののしられ続けられるだろうと覚悟を決めた時だった。
「あ、昨日の先物隊の人……」おさげの彼女が細い声で精一杯言ってくれた一言が、みんなに聞こえた。
その時だけは時間が止まったように、彼女は泣き止み、僕は視線を上げ、彼女の仲間も静かになった。
「……ごめん、みんな。この人が言ったように今は皆の慰めの言葉にすら傷ついてしまうから……」
彼女の言葉に後ろの仲間2人はどうしていいか判らない様にお互いの顔を困惑の表情で見つめ合っていた。
「そ、そか…じゃ…」「うんそうね、またね…」仲間の2人は申し訳なさそうに彼女から距離を取った。
「うん、みんなありがと!優しさだけもらっておくから……」おさげの彼女は涙を拭いながら2人に言った。
その言葉を聞き、2人は少し安心したように立ち去った。最後に僕に睨みをきかせていたが……
「さて、僕も行くよ。話に割って入ってごめんね。」僕も仕事があるので立ち去ろうとすると、
泣き崩れた姿勢の彼女の手が僕のズボンの裾を掴んだ。
力は入っていなかったが僕は立ち止まらせるには十分な効力があった。
「ありがとうございます…少し助かりました…」精一杯彼女が僕にお礼を言ってくれた。
「いえいえ、僕も似た様な経験sるから……でも、いい仲間に囲まれてるね。みんな優しいし♪」僕が言うと
「私が…悪いんです…すいません…私も自分でどうしていいのか判らなくて…」
まるで迷い子が、神父さんを見るような目で、声で僕に話してくれた。
この今の自分の気持ちから抜け出そうと必死なんだろう。逃げ出そうと立ち向かっているのだろう。
「ん〜、今君に必要なモノは仲間を大切にする気持ち……後は時間かな?」僕が少し笑顔で言うと「…そうですか…」と呟いた。特別な言葉では無かったけど、彼女の心には少し癒しの薬になったようだった。
「あの…重ね重ね申し訳ないんですが…」彼女が申し訳なさそうな顔で続けて言う。

「ずっと同じ態勢だったので…立てなくなってしまいました」一瞬だったが涙の中で、彼女の笑顔が垣間見えた。
「そうだね、ずっと泣き崩れてたもんね!かれこれ何時か…ん!?」僕は頭の中が一瞬で真っ白になった。
「ほい!ちょっと脇の下に手を入れるね!ほい!!」僕は彼女を強引に野菜を引き抜くように立たせた。
「ほい!これでどう?!大丈夫?!いいね?!いいよねこれで!?」僕が急に慌て出したので、
彼女も驚いた声で「はい!あ、大丈夫です」と明らかに戸惑いながら答えてくれた。

その声を最後まで聞くか聞かないか僕は全速力で自分の家に向かって走り出す。
後ろのほうでおさげの彼女の泣き枯れた声が聞こえた「あの!あなたのお名前は!?」
僕はその声に見合った大声で「ヨシっていいますさようなら!」と区切らず、後ろも振り向かずに走り去った。
何でこんなに急いでるかと言うと、今日も僕は先物隊の仕事です。はい。1分1秒を争います。
もちろん遅刻ぎりぎりは許されますが、本当に遅刻した日なんて……地獄を見さされます。
こうして慌てて自宅に戻り仕事着に着替えて職場に向かいます。はい、全力です。

「うお〜!!!」と言う悲鳴にも聞こえる声と共に出勤したのは、夕方も18時になるほんの少し前だった。
遅番は昼から深夜に向けて働く、時間とハンターと睡魔に勝たないといけない仕事だ。
遅番で製作の仕事は無い。携帯食料や携帯砥石、支給品専用の閃光玉や爆弾類は、朝から作り出して、1日の間に1〜2週間分と大量に作り貯めておくので、週の始めに多い肉体労働だ。
逆に遅番と言うと、運搬、指令、物資の3種の仕事になる。朝からもこの3種はやらないといけないのだが遅番はこの仕事をメインにこなしていく事になる。
なんせ先物隊が先物隊である由縁の仕事で、この仕事がないとハンターは苦労するだろう。
ハンターが狩りに行けないと街が回らなくなる。こう考えると不思議と凄い重要な仕事に思えてくる。
熟練ハンターになるほど「先物隊?支給品がなくても狩りは出来る」と言うのだが、そんな大口を叩けるほどの1人前のハンターになるまで、本当に支給品無くして大丈夫だったんだろうか?
全部現地で採取してアイテム調合して、肉焼いてと不可能ではないだろう。でも忘れてないか?
何回応急薬がハンターを救ったろう。携帯食料食べずに、果たしてスタミナを気にせず戦えるだろうか?
地図もなく自分の歩いた道だけを覚えて、未開の地を踏んだろうか?今は出来ても昔の自分は?
今の装備になるまで支給品無くして何倍の時間を使うのだろう。支給品は正にハンターをサポートしている。
慢心すればするほど、周りに対してや過去に対しての感謝を忘れていくものなんだろう。

って今はそんな事考えてる場合では、すでにない。
僕は全速力で物資係の部屋に入る。そこにはアイルーのファーが小さな体で走り回っていた。
アイルーとは獣人種と呼ばれる種族の生き物で、見た目は2本足で歩く一回り大きな白猫といった感じである。
言葉を覚えて人々の生活に関わっている者も多いらしいが、大半は狩場に集落を作って暮らしている。
それでも人に色々売ったり買ったりして生計をたてているらしい。そのアイルーのファーが足下に寄って来た。
「にゃ〜!ヨシだけは、ず〜と遅刻寸前なのにゃ!」今にも爪でひっかきそうな顔で僕を見据えている。
「そうか?昨日は早く来すぎて嫌味言われたよ」と、少しおちょくったように言い返すと、「そりゃそれぐらい言われて当然みゃ」と無表情に言うファーが居た。ちょっと引いた。
「さ、さてと!そろそろ交代だ!ゆっくり休めよ」僕が笑顔で言うと、「にゃぁ〜」と嬉しそうに背伸びをしている。
そう言えば、今日のシフトを見ていなかったので、部屋に貼っているシフト表を見てみる。
「ふぅ〜ん、セインが休日で、今日は指令がアカネか〜」するとファーが「お疲れにゃ」と部屋を出て行った。
急いで帰るって事は、さぞかしアカネの指令が厳しかったのか……何となく想像がつく。
指令はぺいぺいが出来る仕事ではないので、もちろんそれなりのポストの人間しか出来ない仕事だ。
うちはセインとアカネだけが指令を出来る。ほとんど隊長のセインがする仕事なのだが、セインが休みの時はアカネが持ち場を当たることになるのだ。が、まだ慣れていない事もあり、よく間違った支給品の注文が来るので、下で働く僕らがてんやわんやになる事もしばしばだ。
そして、さっきのファーの様子を見る限りでは、てんやわんやになったのは間違いないようだ。
そんな事を考えていると、司令部屋から声を伝える管から早速指令が降りてきた。
物資部屋と運搬部屋には指令部屋から管が通っていて、その管は声を大音量で部屋に流してくれる。
「みんな、新しい指令が来たよ!支給品の内容は……」さて、お仕事が始まった。
やはりアカネの指令は早いし内容物は間違えは無かった。でも……数を間違えまくっていた。
「ペイントボール20個……?」って、どんなクエストなんだ?!モンスターのペイント漬けが出来そうだ。
そんな想像をしていると、この仕事も少し楽しくなってくる。
慣れてくれば支給品の内容でどんなクエストか判ってくるらしいが、僕はまだ何がなんだか。

そして、アカネの指令に振り回されながらも、携帯食料を盗み食いしながら夕飯を済ませた。
物資係は意外にサボれる。これ、先物隊の名言だ。力を抜くところでは抜かないと駄目って意味だ。
みんなに急かされながら物資係の特別支給品を揃えては出し片付けて、返却される物をちゃんと準備しながら整理しつつ片付けては出して、……たまにサボって……そんなこんなでバタバタしていると、だんだんと外が白んできた。
もうそろそろ仕事の終わりを告げる太陽が昇ってくるだろう。
しかし、ハンターは朝晩関係なく狩りに出かけるので、先物隊が急に忙しくなる事もある。
それこそ残業なんて数え切れないほどだから終業時間があるが無いがごとしだ。
太陽が出る頃には次の物資係のベルグが入ってきた。
「よう若者!遅番ご苦労だったな!今からは俺に任せろ!」「あぁ、心強いね〜」と挨拶をした。
僕はひとつ背伸びをして「じゃ上がるわ」とベルグに言い残して部屋を出た。
仕事上がりの退勤を押そうと事務所に行くとそこにはセインが立っていた。
「やぁ!遅番だったんだね?ご苦労様!帰って横になって疲れ取れよ!」といつもの笑顔で言っている。
「お前の油っこい笑顔を見てると余計と胃がもたれるよ〜」と笑顔で冗談を言うと、
「ほう!君が遅番でその笑顔を出せるとは!もう一仕事やってくかい?」と冗談で返されてしまった。
僕はさすがに足がおぼつかなくなりそうだったので「給料を倍にするなら考えてやる」と言い残して門を出た。
ここまで言い合えるのも仲がいいからなんだろう。が、今は何より空腹と眠さに押されている。
最近、朝方は少し涼しい。そろそろ季節も変わり始めているんだろうか。
家に帰る道で、あのおさげの少女を思い出した。辛いだろうが乗り越えて欲しい。
そう、僕でも悲しみながら、弱音を吐きながら、フラフラしながらでも乗り越えてきた。
ハンターである彼女が乗り越えれない訳が無い。時間はかかるだろうが必ず……何かを乗り越えて人は強くなれる。それは何事もそうだろう。
問題を解決することが明日の自分の糧になる。そう信じて僕もみんなも頑張っているんだ。
ハンターがどんどん未知のモンスターと対峙し狩猟する事、それに似ている。
何事も恐々としながら、手探りで体当たりで困難に負けず立ち向かっていく。
それに時間は関係ない。自分が乗り越えたときが乗り越えるタイミングだろう。
そんな事に帰り道に思いをはせていると、あっと言う間に玄関の前に立っていた。
部屋に入り窓を開けて空気を入れ替える。窓の外では人々が動き出している。
僕はまたシャワーを浴びてベットに横たわる。今日は休みだから、また昼過ぎまで寝るだろう。
温かい風に包まれた部屋の中でまた眠りについた。体も心もたまには休めてあげよう。

〜第3部完〜
2007年04月22日(日) 21:22:13 Modified by funnybunny




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