ハンターサポーター 第二部

作者:そけ




今日は目覚めが良かった。と言うより勝手に目覚めてしまった。僕はベットの上で頭を掻いている。
いつも「運搬係」の時は不安と興奮で早くに目が覚めてしまう。
温暖期特有の蒸し暑さのためか、はたまた恐怖を感じてなのか背中にはぐっしょり汗をかいていた。
「ん〜・・・今日は最悪な1日にならないようにしよう・・・。」独り言をまた言ってしまった。

「運搬係」とは、ハンターがクエストを受注し、ギルドに申し込まれるとギルドから支給品の依頼が入る。
そして依頼を受けた「指令係」がクエストに応じた支給品の内容を書いた紙を「物資係」と「運搬係」に渡して
「物資係」が倉庫から特殊な支給品と地図を出して、準備をして「運搬係」に渡す。
「運搬係」はベースアイテムと呼ばれる、携帯食料・携帯砥石・応急薬・ペイントボールを用意する。
そして「指令係」は「運搬係」に運搬命令を出し、命令を受けた「運搬係」はその支給品を持って、狩場の支給品ボックスに納品する。といった流れだ。誰が順番に行くといった振り分けは運搬係の中で決める。
運搬係は人数枠が多めに採られていて、1日に3人で順繰り回っている。
忙しい時だと3人では少ないと思うが、暇な時は暇な仕事なので休憩になる事もしばしばだ。
運搬係といえば先物隊の代表的な仕事だと言える。ハンターが先物隊の仕事はあまり知っていないだろうが、先物隊と言えば、支給品の運搬だろう。ぐらいはどんなハンターでも知っているだろう。

僕がそんな仕事で何に恐怖するんだ?と思う人もいるだろうが、運搬係は運ぶだけの簡単な仕事だけじゃない。
ベースキャンプのエリアの安全確保。ここが1番不安で怖い事なので僕は不安に刈られる事になる。
ベースキャンプにモンスターが居ないのは、もちろん大型モンスターは入れない大きさの所に設置しているから。
しかし、小型モンスターは入ってこれる大きさで、一応入ってこない様に龍殺しの実を加工した鈴はついている。
だが、モンスターが入ってきている時もある。モンスターと鉢合わせる確立は5%を切るらしいが・・・
僕達はプロで、与えられた仕事をしないといけない。先物隊の誇りと誓いを守るためにも完璧にする。
つまり、時には小型モンスターと鉢合わせになって僕達が討伐する事になる。

それぐらいでも恐怖になるほどじゃないと思う人が多いかもしれないがハンターには何気ないモンスターの1撃も、何も訓練していない僕達にすれば、その1撃が致命傷にもなる。
事実、僕が怖がるのは・・・僕を先物隊に引き抜いてくれた先輩がそれで死んでいる。
ベースキャンプの安全を確保するがために、先輩は自分の命を確保出来なかったのだ。
そして、先輩より明らかに経験も剣さばきも劣る僕が肉食モンスターになんか出会う物なら・・・
命に関わってくるのが安直に想像しても、はっきりと判る。
先輩が無くなった時に僕は恐怖と不安で先物隊を辞めようと思い、それ以来運搬の仕事は慣れないままだ。
先輩が亡くなって、恐怖しながらでも僕は何故は先物隊を続けているのだろうか・・・先輩に引き抜かれ、人生で初めて誉められ必要とされて・・・それが今僕を動かす力
だと自分で思う。
それに、僕は運良く、この仕事を始めて半年が経つものの、まだモンスターと遭遇した事は無い。
心の何処かで襲われるわけが無いと、5%に入るわけがないと高をくくっている所も少なからずあるのだが・・・。

いつもより早めに動き出した僕は昨日の残り物のサシミウオの塩焼きをほおばった。

そして黒い制服に身を包み。気をひきしめて職場へと颯爽と向かった。
職場の門をくぐり、1番乗りだと思って、気合を自分に入れるためもあり大声で「おはよう!!」
と、言ったか言わないかぐらいに「今日は早いじゃないか!!何かあったのか??」
と逆に大声をかけられた。
「・・・朝が早いんだな。さすがは隊長・・・なのか?」と声の主の方をゆっくりとにらんで見る。
するとそこには、やはり朝からうっとうしいほどの油っぽい笑顔と嫌味なほど爽やかに光る歯のセインが立っていた。
「君が早いと言う事は運搬係に君が入っていると言う事だね!今日も頑張ろう!」と油っこい顔でセインが言う。
それと対照的に僕は引きつり気味の枯れた作り笑いで「そうだな・・・」と答えている。
油っこい笑顔から逃げるように運搬係の待機部屋に入り下準備を始める僕。
僕がいつもより早くに仕事を始めていると大柄な影が見えたと思うとマツがのそっと入ってきた。
相変わらずクシャクシャな髪型は前髪で目が隠れている。そしてまた、ぼそっと一言僕に言った。
「今日は早いんだな」髪の下の目が驚いて少し大きめになっているのかと想像すると少し可笑しかった。
「今日は俺、運搬だぜ?気合も十分なんだよ!俺をなめるな〜!で、マツは今日は?」と聞き返すと、マツは僕のテンションが可笑しかったらしく「ふっ・・・」と少し含んで笑い、次に
は真顔で「俺は携帯砥石作りだ・・」と言って奥の備品作成部屋に歩いて行った。
携帯砥石は砥石の上に石ころを置いて、特製の大きな超重量のハンマーで思い切り叩く。
すると石ころと砥石が衝撃でくっ付き、普段1個で使われる砥石が4個から5個分になる。
これを砥石面だけ使えば携帯砥石の出来上がりだが、何十回もハンマーで叩くこの作業は
携帯食料作りより地味で、半日もすれば腕が上がらなくなり、1日すれば手の震えが止まらなくなる。
それほど辛いのだが、一人が好きで、力持ちのマツは、携帯砥石作りが好きな様だ。


ある程度の準備をして、僕が指令を待っていると、仕事開始時間の少し前にカリムが部屋に入ってきて「よお、遅刻王。今日は早くだな」と言った。僕に対しては皆が同じ嫌味の入った挨
拶が出るらしい。
「お約束だな、皆に早い早いと嫌ほど言われたから少し慣れたよ」と言うとカリムは「そうなのか」と大声で笑った。
カリムは僕の2年先輩で、元ハンターと言う経歴の持ち主で、モンスターの知識は群を抜いている。
「今日は俺とお前とベルグが運搬で・・・指令にセインと、物資にアカネか・・・後は製造の仕事っと。」
カリムが何気なくシフト表を読んでいるのだが、運搬係が僕だと強調されているようで何故か冷や汗をかいた。
「ベルグは遅番だな・・・ふむ・・・朝はお前と俺・・・」そこまでカリムの話は聞いていたが限界だ。
「ちょっと水を飲んでくるわ、暑いからな」と言って逃げるように部屋を出た。変な汗をかくのは、もう嫌だった。
水瓶から水を手のひらにすくい、顔を洗うように水を飲んでいると、「おぉ〜い!!」と元気な女の子の声が早足で近づいてくる。その声は間違えなくアカネだった。
「今日は早いのね〜!」ここまでチーム全員に徹底して早いと言われると明日から少しでも早起きしたくなる。
「今日は物資係らしいね?」と僕が言うと「私は走り回れる運搬が好きなんだけど」
とアカネは苦笑いをこぼした。
僕とは正反対で、彼女は勇気も、純粋な明るさも、皆からの信頼も持ち合わせている。
その彼女が僕の顔を覗き込んで「ん〜?今日はイイ事なさそうな顔だね?」と真面目な顔で僕に言った。
「はっ!何も無いよ〜今日も元気に1日が終わるのさ・・・って始まったばっかやし!!」と平常心を装った。
まるで昨日の運搬係を言い当てた時のデジャブそのまま、今日の不幸を予想された気分になった。
「そか!今日も頑張ろうね♪」と満面の笑顔で言うとアカネは自慢の俊足で物資の部屋に向かって行った。
彼女は悪気無く、不安ですと大文字で書かれている様な僕の何かに取り憑かれた様な顔を見て何か嫌な雰囲気を感じて、元気出せよとあんな事を言っただけのはずなのに今の僕には彼女の笑顔がまた悪魔の笑顔に見えそうな気分でいる。
まだ何が起こるかなんて誰も知らないのに、僕の思考は今、悪いことしか考えられない脳みそになっている。
今日は確実に不幸が待っている。それを確信的に絶対ある。と、言い当てられた。そんな気分だ。

僕が運搬係の部屋に戻るとカリムが慌しくしていた。「おい!指令が入ったぞ!!」
「よっし!!!!」
僕は自分自身に気合を入れた。不幸は起こさず確信をくつがえしてやる!と言い聞かせてた。
指令書を見ると「密林:特殊アイテム・音爆x2・素材球x3」と書かれていた。
「じゃ、僕は地図と特殊アイテムを物資から調達してくるから、ベースアイテムを用意しておいて!」と言って
物資係のアカネの元へ走る。アカネは慌てたそぶり無く「地図と例の特殊アイテムはこれね!」と説明してくれた。
「で、サブの支給品がこの箱に入ってて、箱の鍵はこれ。」と落ち着いていたので僕も気持ち少し冷静になれた。

サブターゲットの支給品は小箱に入れて鍵をかける。そして支給品ボックスの中に鍵を吊るし、
サブターゲットを完了したら、その小箱を鍵を使って開けていい事になっている。
もしサブターゲットを成功させずにサブ支給品を使うと、そのクエスト自体が無効となり、その時の所持アイテム、クエスト完了後に不正が判ったなら、倉庫のアイテムまで全部没収となるらしく、超ハイハイリスク&超ローローリターンなので今までに、その不正をしたのは片手で数えられるぐらいだそうだ。

僕が特殊アイテムを持ち、カリムがベースアイテムを揃えてくれた所で指令係から正式命令が下りた。
カリムがベースアイテムの準備で汗だくになりながら「どっちが先に行く?どっちでもいいぞ!」と僕に聞いたので、「もちろん僕が先だ!」と勢い良くカリムの汗まみれの手に持たれたパンパンのリュックを奪うように背負い、運搬係に支給されている小振りの武器と装備を全部ひっくるめるように持った。
そして、全力で街門まで走る。今は全力で今日の不幸の予感を払いのけるべく駆け抜ける。
「恐らく大名狩りだ!気をつけていけよ!!」とカリムの声が聞こえたので、僕は振り返らず手を振った。

街門に着くと、大老殿の上の方で大きな風車がゴウゴウと耳に障らない重低音を出しながら回っている。
あれは砦を襲う、超巨大なヤドカリの大きな素材を難しい技法で切り出して音の出る巨大風車を作っている。
何せその砦を襲う巨大ヤドカリの威嚇音がずっとあの巨大風車から風を動力に奏でられているらしい。
人間の耳には音が低すぎてあまり聞き取れないらしいが、凄い音が出ているのだと行商達が以前言っていた。
あの巨大風車のおかげで小型のモンスターはもちろん、鳥竜も飛竜も近寄ってこないので、街は安心して生活が出来ている。あの巨大風車が街の守り神だと言う事らしい。

「じゃ行って来ます!!」僕は誰に言うでもなく、巨大風車に向かってまた独り言を言ってしまった。
アカネのデジャブもはずれ、僕の嫌な予感も外れることを期待して、自分の気持ちを落ち着かせる。
街門を通り抜け、街のはずれの大河の岸に行くと、先物隊専用の小型の船が置いてある。
これは電気袋を動力に、燃石炭を燃料にして高速で海や川を移動する1人乗りの小型船だ。
「ん〜・・・今のこの時間なら・・・潮は安定してるな!よし!出発〜!!」と言って荷物を積み込み、潮の1日流れを書いた潮見表と時刻を照らし合わせてから小型船の電源を入れる。
ハンター達は大人数で行く事が多く、この船だと逆に非効率的で危険度が増すだけなので、風が動力の中型船で来る。密林の島へ行くのは、このリベラル地区からは少し離れている。
密林では、島の周りの潮の流れが安定してなく、潮が安定している時間だけが狩猟の可能な時間となる。
わずか小1時間だが、モンスターがこの広い洞窟や大水量の滝、深い密林があるこの島を好み集まるため、この島での狩猟が盛んになる。他の島では崖だらけ、平野の密林だらけと、モンスターが好む所が無いらしい。

小型船で海図と方位磁石を片手に島へと向かっていると、船の横をイルカが一緒に泳いでくれている。
こう言う時に、この島々の美しさ、海の美しさ、つまり自然美に気づかされる。こんな時が長く続けばいいのに。
そんな事を考えていると、緑に埋もれた遺跡が見えてきた。どうやらもうすぐで猟場に到着だ。

到着地の浜辺に船を着ける。・・・どうやらモンスターはベースキャンプには入ってきていないようだった。
ホッと胸を撫で下ろした。何か肩に乗っていた重りが全部音を立てて落ちていく気分だった。
よいしょと重そうに支給品の荷物を下ろす。そしてサブターゲットの小箱を支給品ボックスに入れる。
そして支給品ボックスに支給品を入れて、サブの鍵も入れる作業をしていると、背後で何か気配を感じた。
ぱっと瞬時に後ろを振り向く。でも、何も居ない。ベースキャンプエリア中を見回しても何も居ない。
なのに僕の心臓と第6感は頭で理解する以上に反応している。自然と背中の武器に手が回っていた。
気配のする方をずっと見ていると地面から砂埃がフっワフっワっと舞い上がっていた。
じっと目をこらしていると、爪がバサっと出てきた。するとノソノソと僕の身の丈程の貝殻が出てきた。
僕は出てくると同時に頭で認識するより早く、目で見た瞬間に大声と共にそのモンスターに切りかかっていた。
僕達の持たされる武器はハンターナイフ改と呼ばれる、さびた塊からよく失敗精製されて余る武器らしい。
僕の体重を乗せ、飛び掛って斬った全力の1撃はそのモンスターの頭を浅く斬るだけだった。
僕はすぐに後ろに飛びのきモンスターを見た。これはヤオザミだ。僕は初めて生きたモンスターと対峙した。
人の大きさほどの貝の甲羅を背負った赤いヤドカリで動きは素早く、その爪は怪力だとカリムが言っていた。
今までの庶民の生活の中では、このヤオザミから採れるザザミソしか見ていなかったので、想像とはかけ離れ、まさかこんな大きく硬く迫力のあるモンスターだとは思ってもみなかった。
ヤオザミはゆっくりだが確実にこっちに歩いてくる。僕は側転で横に回りこみ刀を切り上げ、刃は甲羅に当たった。
今度はさっきの頭に放った1撃より手応えがまったく無かった。これは効かないと思うかいなか、ヤオザミが僕の正面に回り、その大きな爪で僕を横薙ぎに払おうとした、僕は横に転
がりその1撃を避けて目の前のヤオザミの爪を狙い切り上げる。するとヤオザミの関節に刃が入ったらしく、ヤオザミの爪が飛んだ。
ビェ〜と聞いた事も無い声をヤオザミが発して少し動きが止まった。そしてその隙に僕は混乱の中、最初の1撃目に放った頭の傷を狙い全力でハンターナイフ改を振り下ろした。
紫の血が先物隊の真っ黒な制服に大量にかかった。それがヤオザミの絶命を意味しているのが僕にでも判った。
僕は大きなため息と共に足の力が抜けて、その場にへたり込んでしまった。達成感と安心感。それだけだった。
顔についた紫の血を海水で洗い流し、切り落とした爪を小船に乗せ、支給品の納品の最終確認をした。
「ほらな・・・嫌な予感は当たるよな・・・」僕は遠い眼の苦笑いをして、また自慢の独り言が出ていた。
ヤオザミと鉢合わせた時は全身の血が沸騰するようだったが、終わった今、いつもの自分に戻っていた。
人生初のモンスター討伐は嫌な想像ばかりをして悩んでいた割りに、あっさりと終わってしまった。
今の今まで恐れていたものを、案外簡単に乗り越える。今まで怖がっていた自分が恥ずかしくなった。
ただ、今回はヤドカリで良かった。もし肉食のモンスターだったらと思うとまだ少し怖かったが、亡くなった先輩や、ハンターや仲間のためにも今出来る全力を出そうと思えば、想像し怯える毎日は終わり、全力で無心に問題に立ち向かい克服出来るのだと改めて思い知らされた。

支給品も納品し、僕は船の電源を入れる。また潮見表を見て、海図と方位磁石を見比べて船を走らせる。
初めての討伐は僕の恐れを吹き飛ばした様な、僕を晴れやかな気分にしてくれた。
10分ほど海上を走っていると大きな帆の船が見えた。その船から4人がこっちを向いて手を振っている。
あの4人が、今、僕が納品した支給品を使う4人だろう。船の上では装備は脱いで、くつろいでいるらしい。
「お疲れ様で〜す!!」と中でも小柄な真っ黒なお下げの少女が大声で挨拶をしてくれていた。
僕はさっきのヤオザミとの死闘も一瞬すっかり忘れて、にやけている。アホヅラだったに違いないが・・・ふと我に帰り、方位磁石と海図に気を向ける頃には、お互いの船は大きく離れていた。

船を全速力で走らせ街の大河に戻ってきた。橋の上にかかっている看板を見ながらリベラルの自由区に向かう。
桟橋に船をくくりつけ、燃石炭を箱の中から1個出して船の燃料入れに補充する。
これを忘れると次使う人に大目玉をくらう事になる。スピード命の職業だから簡単なミスがあってはならない。
僕は討伐の戦利品のとがった爪を自慢げに持って、軽くなったリュックを背負い職場に戻った。
任務完了の報告と戦利品を渡すべく、指令係のセインの所へ向かう。
戦利品は僕達の給料の一部分となる。ま、滅多に無い事なのだが、少しは役にたっているようだ。
するとセインは少し驚いた顔で報告書にサインをして、とがった爪を床に置いた。
「人生初討伐じゃないか!おめでとう!怪我は無いか?」とセインは僕に気を回してくれている。
「あぁ!百聞は一見にしかず!案ずるより生むが安し!ってね!平気だよ」と大喜びしたい本心を隠して答えた「そうか・・・これからも気を抜かずにな・・・ぐっじょぶ!」とセインはまぶしい歯を光らせながら言った。
いつもならうざったいほどの輝く歯がとても新鮮に見えた。
運搬部屋に行くとベルグとカリムが話しながら下準備をしていた。そこに割って入り、僕は初討伐の話をした。
2人ともおめでとうと言ってくれた。が、そんな和気あいあいとしたのも束の間、すぐに指令が入った。
そんなバタバタする中で、僕は討伐の実感を噛み締めながら、次々と入る指令をこなしていくのだった。

そして3回連続の密林への運搬から帰ってくると、僕は終業の時間になっていた。
アカネの耳にも僕の人生初討伐の話が入っていたらしく、運搬係の部屋の外で待ってくれていた。
「ね!今日は君の人生初討伐を祝おうじゃない♪で、夕食は予約したからね♪」と笑顔で話し掛けてくれた。
朝は悪魔の笑顔に見えたアカネの笑顔が、いつものはにかんだ優しい笑顔に見えている。
「そうだね、今日は仕事終わったし、行こうか!」と意気揚揚と大人げも無く喜んでしまった。
「今日は早上がりが、私と君とマツとカリムだから4人だね。私は早目にファーに仕事を任せて上がったのよ〜」
アカネは僕に嬉しそうに話し掛けてくれている。僕が無事に成功し帰ってきた事を喜んでくれている様だ。
大衆酒場に着くと、マツとカリムは席に座って僕を待っていてくれた。そして酒盛りが始まった。
酒場の姉さんが、どんどん酒と料理を持ってきてくれる。普段寡黙なマツでさえ大声でおめでとうと祝ってくれた。
こんなに親身に喜んでくれる仲間を持ったことを僕は今、心から嬉しいと思っている。
そして僕は1つ殻をやぶったのを皮切りに、さらなるまい進と、仲間への絆を再確認させられた。
カリムが「明日の体力を温存しておく」それが解散の言葉となり、みんな帰っていった。
「じゃ、また明日!今日は本当にありがとう!」そうみんなにお礼を言って帰路へと着いた。

温かな気持ちとほろ酔いの僕は家に着くなりシャワーを浴びてベットに横になった。

僕はまだまだ未熟だが、色々と壁を乗り越えて行こう。そして皆で助け合おう、と改めて心に決めた。
亡くなった先輩も「先物隊はみんなのために自分がどう動くかが大切」だと教えてくれたのが最近になって判る。
いつもならジメジメと気持ちの悪い生ぬるい温暖の風が今日はやけに清清しく気持ち良かった。
「明日も頑張ろう。」今晩ははいつもなら嫌な独り言でさえも不思議と心強い。
明日は僕は遅出の物資係だった。明日は明日で忙しいだろう。だが明日もハンターをサポートしよう。
壁があるなら悩むより乗り越えてやる。そして皆のために働こう。僕の熱い気持ちがそう言っていた。

                     〜2部完〜
2007年04月22日(日) 21:22:39 Modified by funnybunny




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