ハンターサポーター 第一部

作者:そけ



今、僕が生きているこの世の中にはモンスターハンター(以後ハンター)と呼ばれる職業が存在している。
医者が病気を診断して治療し、服屋が服を仕立てて売るようにハンターはモンスターを狩る。
しかし、その仕事は医者や服屋とはかけ離れている一面がある。それは「命」をかけている事。
つまりは死を常に隣に置いて、時には死をも乗り越えて仕事をしている所である。
服屋が仕事を失敗し、仕立てを間違い糸をほどいて縫い直せば終わりであるが、ハンターはそぉはいかない。
ハンターの失敗は自分の死、はたまた依頼者の切なる願いを潰し、大切な仲間の悲しみに結びつく。

でもまぁ、このテの話はそんなに僕には関係の無い話で、、、、
そんな今、世の中はハンターを受け入れ、また頼り、時には盛り立て、今や庶民の生活にすら根付いている。
僕が居るこの街はハンターを支え、ハンターに支えられ、小さな村から巨大な街へと変貌した。
ハンターの合同キャンプ場だった、狩猟場各方面のど真ん中に位置する立地条件◎の街!!
「ドンドルマ」と言う、ここ最近急発展をしている街である。この街ではハンター中心に世界は回っている。
かく言う僕もこの町に住み、仕事をしながら暮らしている。ハンターに回されている一人だ。
そんなに街を作らせるほど世界を回しているハンターは「どぉやって」仕事をしてい
るのか??
実はハンターをサポートしている機関はたくさんある。逆に言えばサポート無しではハンターは狩りは出来ない。
例えば武器工房。あそこは膨大な加工費と高価な素材を使って武器や防具を加工してハンターに提供してる。
武器工房が無いとハンターもただの青少年野外活動クラブにでもなるんじゃないか、、、、、、、?
そしてギルド!ここが色々な場所、色々な人からクエストの依頼を受けてハンターに仕事を与えている。
時には国から直接依頼される事もあるらしい。ハンターはクエストを選びクエストを受けて仕事=狩りに行く。
そして他にも色々サポート!食材屋の豪快なおばちゃん、ずっと座って果物かじってばっかの道具屋のおっさん、
調合のプロで時々山間部や野原に行っては調合素材を採って来て販売してるじじぃ!

そしてなんと言っても僕一押し!酒場を切り盛りして酒と食い物を笑顔で出し、ギルドじじいにも嫌な顔一つせず
いかついハンター共にひるまずクエストまでも切り盛りしちゃう、あのお姉さん方々♪

僕だってこの街で生活している限りハンターをサポートする仕事をしている。でも、それはかなり地味な仕事。
その割に、それなりに危険で、どの街にも居ないと困る組織、僕の仕事場は「先物隊」と呼ばれている。
武器工房がサポートの舞台の花形なら、先物隊は最初から動かない岩の役ぐらいのもんだろう。
本来の名前は「先遣物資輸送機動隊」だが長すぎて舌をかむ前に誰も言わない。で、略称にされている。
先物隊の仕事の主な働きは、ハンターが仕事を受け、狩りの準備をし、狩猟場に到着するまでに
クエストに応じた支給品を支給品ボックスに納品し、ベースキャンプ区域の安全を確保する事。
これが主な仕事内容である。細かい仕事はたくさんあるがそれはまた、おいおい話していくことになるだろう。
そしてドンドルマは非常に広く、方位ごとに区画整備をされ、各、名前が付けられている。
僕はその中でも西南西に位置するリベラルと言うランドの中の自由区画で先物隊をしている。
名前はヨシと言う名だ。親父と母親の名前の頭文字の2文字をくっつけたらしい。この名前は気に入っている。

先物隊も慈善事業では無いのでもちろんゼニーを頂戴している。
僕らの収入源はもちろんハンターからいただいている。契約金と言うのが僕らの手間賃&支給品の値段。
地図や携帯何々とつくのは全て貸し出している。使わなければ返してもらっている。

契約金はクエストが済むとハンターに返すらしいが、その変はお上の大老殿の方が上手くやりくりしているらしい。
後はハンターが採った清算アイテムを安く買い取り、倍ぐらいの値段をつけて世間に売り出している。
市場なら100ゼニーのザザミソも買い取りは50ゼニーぐらいと聞いた覚えがある。
その差額を僕達の収入源にしている。つまり僕達は大した収入も無く、貧乏暇なしで働いているのだ。
僕達とは少し違うのが酒場やギルドで働く人々。彼らはモンスターの買い取りで収入を得ているらしい。
ハンターには正規の買い取り価格の半分が収入として入っている。のこり半分がギルドの収入だ。
ハンターが剥ぎ取りきれなかった素材などを世間に出している仕組みだが、細かいことはあまり知らない。
簡単に言えば、酒場もギルドも先物隊も、結局はハンターのおこぼれや採取物で生計を立てている訳だ。

先物隊の朝は早く朝6時から仕事が始まる。今日もいつも通り5時には目が覚めた。

「ぶはぁ〜、、、、、、ぶふ、、、、、、、ぶはぁ、、、、、、、ふぁ〜、、、、、、」あくびが止まらない。
「ぬぅ、朝か〜、、、さて仕事の準備でもするか〜」と1人きりの部屋でつぶやいてみる。
そして頑固パンを歯ぐきから血が出そうになりながら噛み千切り、しもふりトマトに塩をかけかぶりついた。
食べ終わり、顔を洗い、歯をみがきをし、上下真っ黒の仕事着に身を包み職場に出かける。
リベラルの先物隊の職場は僕の家から徒歩10分、アプケロスで5分といった所にある。
いつも早朝のこの時間は半分寝かけてるハンターや徹夜でナチュラルハイになってるハンターがちらほらしている。
ハンターも千差万別で先物隊を見ると律儀に「お世話になっています。」と声をかけてくれる人も居れば、
けっ、っとつばを吐いてくる様なヤカラだっている。最近マナーの悪いハンターが増えて社会問題になっている。
僕は慣れたそぶりで徹夜ハンターの横を軽く挨拶しながら急いですり抜けて職場の門をくぐった。
「おぉ!今日も遅刻ギリギリだな!」と2年先輩のセインが僕に向かって満面の笑みで言った。
「その笑顔って油っこいな〜。」と僕が言うと、さらに彼の笑顔が増していた。正直濃くて朝からはキツイ顔だ。
しかし、そんな彼は物資100%の輸送成功率を誇る、我がリベラル自由区の先物隊の隊長だ。
僕は急いでタイムカードを打ち今日のシフトの振り当てを見た。今日は地味な先物隊の中でも地味な仕事。
それは「携帯食料作り」の当番だった。今日は相方がマツ、そしてアイルーのファーだった。
「おはよ〜そして遅刻寸前〜!!」っとテンション高めで言うとマツがふっと鼻で笑ったのが判った。
足元では「にゃ〜!人間なのに仕事なめてるんかにゃ?!15分前に入るのは常識にゃ〜!」と
ファーが小言を大声で言っているのをはいはいと聞き流しながら僕はそそくさと仕事を始めた。
携帯食料は、まず養殖ハリマグロのミンチとレアオニオンを混ぜて、アオキノコの汁に半日漬け込み
こんがりとセンベイほどの大きさの小判型に焼き、落陽草の枯葉で包んでいくと出来上がり!
僕が定位置につく頃にはさばく分のハリマグロが箱の中から出されて並べられていた。
携帯食料は長持ちするので、一気に1週間分ほど製造して氷結晶の倉庫に入れておく。
大体ハリマグロ1匹で20人前程度の携帯食料が出来る。そして僕らは焼く作業以外は3人で全てするのだ。

「ふぅ。」とまつがため息をついたのは26匹分をキノコ汁に漬け込んだ頃だった。腰をたたきながら僕が言う。
「12時になったし、そろそろ休憩しよっか!」するとマツは「ふむ。」と言って酒場に向かった。
アイルーのファーは「にゃにゃ!」と言うとすでに姿が無かった。いつもの釣り場の友達と一緒にランチするらしい。
僕はと言うと。。。酒場であの姉さんの顔を見ないと落ち着かない!って訳でマツの後を追いかけた。
昼時になると若いハンター達がワイワイと射的をして盛り上がっていた。僕たちがいつもの赤鬼の隣の席に着くとハンターズストアの娘が走って注文を取りにくる。マツが小声で「ギンギラーメン。」と言ったのですかさず「僕も同じやつ!」と注文した。この温暖期の暑い時に、熱いギンギラーメンを食べるとなかなか味がある。
射的で盛り上がっているハンターの若者達を「若いな〜。。。」と、つぶやきながら見ていると「お待たせしました〜!」と元気な声と一緒に湯気ムンムンのラーメンが来た。
それを汗だくになって食べ尽くし、さらに汗だくになりながら僕たちは勘定を済ませ外に出た。
少し後ろのほうで「まいどあり〜!」と元気な声が聞こえた。僕も元気が湧いてきた様な気分になる。
休憩時間はファーの友達の居る釣り場に行き、夕食の魚を釣りながらぼ〜っとするのが僕の日課だった。
無口なマツはそれをまた、ぼ〜っと見ている。そしてファーとその友達はヨダレだらだらでウキ先を見ている。
そんな休憩時間はあっと言う間に過ぎ、昼からは携帯食料作りの本番、焼き作業だった。
今日の釣果はサシミウオが4匹だったので、1匹づつファーと友達に譲って残り2匹を持って帰る事にした。
マツは魚が大嫌いで、最後に食べたのが1歳なってない頃だと以前に言っていた。記憶ってすごい。

巨大魚焼きでコロコロ焼いていったが温暖期の暑さと巨大魚焼きの炎のあまりの熱さにふらふらした。
魚が焼き終わり、落陽草の枯葉に包み終えたのは6時を回ってからだった。完成した1週間分の携帯食料をファーが氷結晶の倉庫に運んで納品してる間に僕とマツは後片付けをぱっぱと終わらせた。
3人顔を合わせて「お〜疲れさ〜ん!!」と僕が大声を出すとマツがふっと笑い、ファーも大あくびをしていた。
タイムカードを切ろうとすると、入り門からアカネが走って帰ってきた。彼女は今日、支給品の運搬係だった。
彼女に足の速さで勝てるのはこの区画の先物隊にはいない。彼女は俊足が武器なのだ。
「今日は疲れた〜!」そぉ言うアカネに聞き返した。「今日は何処に行ってたん?」
するとアカネは
「今日は沼地に3回届けて、密林と火山にも1回づつ行かされえてた〜」っとため息交じりに言ったので、
その言葉を聞いて、自分がもし今日の当番だったらと、想像すると、さらに疲れがどっと出たのが確かに判った。
「明日の運搬係の5人は誰なんでしょうね〜?」とアカネが悪そうな笑顔で僕とマツの顔を覗き込んだ。
「まだシフト表見てねぇよ〜。」と答えると共に何だか寒気にも似た嫌な予感がした。
また明日〜とアカネとマツとファーに手を振って挨拶をして、僕は帰路についた。
僕は帰り道の食材屋でホピ酒を買って帰った。この季節の冷えたホピ酒は最高〜!なのだ!!
家に着くと昼に釣ったサシミウオを軽く炙ってホピ酒のあてにし、軽く夕食を済ませ、自分の趣味を満喫する。
僕の趣味は、角笛に穴を空けて音程をつけれるようにした自作の笛を吹き、自分で作曲するのが大好きだ。
ある程度作曲が進むと、僕もまどろんで眠たくなってきた。「さて、今日も寝るとするか。」と朝のように
誰も居ない1人の部屋で独り言をつぶやく。最近独り言が多いのが自分でも注意している所だ。
シャワーを浴びて服を寝巻きに着替え明日のシフトを見る。明日はやっぱり支給品の運搬係だった。
「嫌な予感だけは当たるな〜」とつぶやいた僕の横を生ぬるい温暖期の風が家の中を通り抜けた。
明日も無事に仕事から帰って来れます様にと軽くお祈りをしてその日は床に着いた。
明日は忙しくなる。
2007年04月22日(日) 21:23:01 Modified by funnybunny




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