或ガンナーの一生5

ベアが作戦の内容を話し、3本目の煙草の吸殻を捨てる。
「で?どうよ?やってみるか?」
4本目の煙草に火をつけながら、ベアが問いかける。
既に辺り一帯は闇に包まれていて、
少し前に起こした焚き火と、ベアの口にある煙草の火以外には、
全く明かりが無い。
「・・・・・・本当にそれしか方法が・・・・・・?」
ディンが暗い顔で聞き返す。
その声は微かにだが震えている。
それはとんでもなく突飛な作戦を考え出したベアに対してではなく、
作戦の中での危険度が明らかにディンに偏っているからなのだが、
ベアはそんなことお構い無しに
「あ?じゃあテメーなんか案があるのか?ねぇだろ?」
で片付けてしまった。
「まあどっちにせよこんなザアザア降りじゃあ作戦は決行できねぇ。
やるかどうかは明日の朝に聞くよ」
まだ渋った顔をしているディンにニヤリと笑い、
さらに口を真横に結んでいるラビを一瞥し、
ベアは先に布団の中に入ってしまった。
「・・・・・・どうするの?」
ベアの寝息が聞こえるようになった頃、
ラビが質問した。
狩りの最初に抱いていた考えは既に完全になくなっている。
今までにないタイプの最強の敵を見て、
自分の愚かさと浅ましさを痛感したからだった。
「どうするって言われても・・・・・・やるしかないでしょう。
これしか方法がないし、第一、やらないと言った所であの人の性格からして
無理やりにでも決行するでしょう」
ディンは半日一緒にいただけではあったが、
ベアに対する評価をほぼ固めていた。
――気まぐれでつかみ所の無い横暴な人間――
こんな人間とパーティーを組んでしまったことに対しての後悔はあった。
出来ればこのままリタイアして帰りたかったが、
そうするとあの男はまた絡んでくるだろうし、それ以前にプライドが許さなかった。
「・・・・・・やるだけやってみますよ。死んだらあの人を呪い殺しますけどね」
まあ、呪った程度で死んでくれるかどうかはわかりませんが、とディンはクスクス笑った。
「そう・・・・・・」
ラビはそれだけ言うと、ため息をついて布団の隅っこの方にうずくまった。









翌日、
天気は雲ひとつない晴天。海は太陽の光に照らされてエメラルドブルーに輝いている。木々たちは太陽の日光を受けて緑の葉を広げている。
しかしこんなに綺麗な場所でも、一歩足を踏み入れればそこは弱肉強食の世界。
ハンターにとって、それは絶対に忘れてはいけない掟である。
人間として最強の力を手に入れたハンターと言えども、狩られる側にまわることは少なからずある。前回は狩られる側に回った3人も、今回は負ける気は無い。
「・・・・・・さて、いきますか。暴君ディオニスを狩りに、ね」
準備運動を終えた3人は、一斉に密林に足を踏み入れた。
2006年09月03日(日) 01:00:24 Modified by crushout




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