最近詠の様子がおかしい。
 おかしいといっても毎朝屋根の上でニワトリの真似をしたり、全裸で肛門にトイレブラシを突っ込んだ状態で逆立ちして登校するのではない。
 家の内外を問わず無視していたのが、朝は部屋まで起こしに来て一緒に登下校し、夜はおやすみのキスをせがみに部屋にやってくる。
 前のように兄の洗濯物を分けて洗わず一緒に洗っているし、干している最中にくっついても何も言わない。
 取り込んだ洗濯物をいとおしそうに眺めているし、洗濯機の前で汗ばんだ兄の下着を嗅いではお兄ちゃんのにおいがすると言ってうっとりした目をしていた。
 一度、風呂に入った時に身に着けていた全てを洗濯籠に放り込んで寝間着に着替えて眠った夜、夢精してしまって替えのパンツを取りに脱衣所に行ったら何気なく覗いた籠の中のパンツがなくなっていた事があった。
 翌日の夜には何事もなかったかのように洗濯されアイロンもかけられてタンスに入れられていたので見間違いかと思ったのだが、今思えば詠が部屋に持ち帰って自慰の種にしていたのだろう。
 味噌汁に雑巾の絞り汁やおしっこを入れるどころか、食卓につくと装い立ての味噌汁を持ってくる。具も兄が好きなものばかりで、豆腐も絹になった。昨日に至っては豚汁だ。
 兄の食器も率先して洗い、目を話せば間接キスをしてみたり食器をベロベロ舐めている。
 風呂だって、兄が入った後は汚いから先に入ると言っていたのが、お兄ちゃんの汗の溶けこんだお風呂がいいのと言い出して真夜中にこっそり飲んでみたり、さらには一緒に入りたいと言ってきてさすがにそれは却下した。

 それらの報告を聞かされた渡来愛花はふむふむと頷いた。
「ふーん、あの詠ちゃんがねえ。変われば変わるもんだね」
「そうなんだよまるで聖女だよ」
 その物言いに苦笑する。
「何よそれ、大げさだなあ。天使みたいでいいじゃない。っていうか変態よねそれ」
 愛花のその言葉が引き金となり、詠はイレイザーの天使として変態を遂げ兄や愛花と袂を分かつ事になるのだが、今の愛花はそれを知る由もない。

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