草木も眠る丑三つ時――全体的に古びて湿った埃と黴の臭いが漂う商店街を若干不似合いな少女三人が歩いてゆく。
 先頭を行くのは日向葵。そのすぐ後ろをウェヌス・ドーンと須藤りのんが並び立って歩く。
りのんの足元はと見れば白くてフワフワした小動物がちょこちょこ歩いて続いている。りのんの相方である魔法の妖精的な存在、通称あんみつだ。
「出てこい出てこいゾンビちゃんっ」
 葵は歩みに合わせて右手に持ったヒマワリの花を揺らす。綺麗ではあるもののそれだけの花一輪に見えるが、しかし葵がひとたび念を込めれば鋼鉄をも刺し貫く鋭利な槍となる。
 今回の話は葵が聞き付けてきたものである。今日――厳密には昨日だが、昼食中の世間話の中でクラスメイトが三組の子がこの辺でゾンビに追いかけられたらしいと教えてくれたのだ。そのような経緯もあって葵は俄然やる気を見せている。
「はぁゾンビですか」
 張り切る葵に対して目に見えてやる気がないのがウェヌスである。極星帝国はレムリアの彼女はアンデッドなど見飽きるほど見てきて珍しくもない。むしろあまり好きではなかった。ウェヌスが若い生命力に溢れているからかも知れないが、命というものは一度限りだから尊いものなのだと思う。それにアンデッド化すると魔力の影響や肉体損傷を防ぐ為に全力を出さないよう抑制する自己防御機能が解除される事で肉体能力が強化されるが、それもまた気に食わない。
「せめてジュバ将軍くらいのものだといいけれど」
「ジュバ? グァバ? おいしいよねあれ」
「ジュバ」
 極星帝国十将軍の一人ジュバは極星皇帝マクシミリアン・レムリアース・ベアリスが王太子時代から仕え、彼が王位を姉一派と争った内戦での活躍からその名を賜ったレムリアきっての勇士だった。その後の極星帝国統一戦争で命を落としたがアンデッドロードとして復活し引き続きマクシミリアンの懐刀として仕えてきたが、こちら側の地球の敵対勢力重鎮厳島美鈴と藤宮真由美の二名と戦って死霊術を解呪されてついに散ったのだという事だ。
 ウェヌスも何度か会った事があるが、初めて出会った時の事はよく覚えている。
 パーティーが催された折、皇帝自らもっとも信頼する部下の一人だと言って紹介してくれたのだ。無論ウェヌスもジュバの事は話で聞いて知っていた。彼はその時すでにアンデッドだったが、生前の逸話は彼女の乙女心を刺激するには充分過ぎる程で、引き合わされた時は不覚にも胸がときめいた。
 さてジュバという男は銀髪のなかなかの美形だったが、アンデッド化のおり右顔面が腐り落ちて髑髏がむき出しになってしまった。それを仮面で隠していたのだが歓談中何気ないふりで外して髑髏を晒してみせたのである。なまじ美しい顔立ちだった分、半面の異相が不気味だった。なんとか驚きの声は喉元で堪えたが、ぎょっとした表情までは隠しきれなかったのだろう。ウェヌスの様子を見ていかにもおかしそうに笑っていた皇帝の顔は忘れられない。思えば皇帝自ら引き合わせた事に疑問を抱くべきだったのだが、あの頃の彼女には皇帝が十将軍の一人を紹介に来るのも当然と思える程度の自信があった。
 かくして彼女の幼い憧れは儚く消えたが、しかし実際に知ったジュバの強さは改めて彼女を驚嘆させた。あれがアンデッドというものなのだ。生前より更に増しているというその戦闘能力は目を瞠る程で、ウェヌスが努力の末壁にぶつかった時に彼女の心をよぎっては反発心から更なる努力の種となった。
 こうして、ジュバという男はアンデッドの判断基準の一つになる程度にはウェヌスの人生に影響を与えたのである。
「ふーん、そりゃまたびっくりだね。私だったらきっと悲鳴上げてたな」
 こういった内容を歩きながらかいつまんで話したが、葵にはどうもほろ苦く少し胸に棘を残したエピソードよりもどっきりの方がお気に召したようである。
「でもりのんちゃんに種植え付けられて、発芽してるのを見た時は私もびっくりしたよー」
「それを言ったらわたくしは輪をかけて更に酷かったですけど。わたくしにあのような事をして……手討ちにされても文句は言えませんわよ?」
 肩を竦めるが、ウェヌスの顔は笑顔である。思うに辛ければ辛いほど乗り越えた時は良い思い出になるのではあるまいか。
 三人はりのんと葵の通う学校の高等部生徒会長秋月俊平によって支配虫なるものを植え付けられ覚醒した水晶の巫女である。 呼称の由来ともなった証として乳首とクリトリスに水晶のピアスがあり、その水晶の中には目を凝らせば模様が見える。
 実は人類の歴史の裏では影の覇権をかけて異能者達がとめどない闘いを繰り広げてきたのであるが、彼らは今では六つの勢力に分かれている。りのん達も意識的に所属していたか否かは別として質的にはそれらのうちいずれかに属しているのだが、水晶の中に輝く模様はその勢力を象徴するものなのだ。ウェヌスのものはもっともわかりやすく、彼女が属していた極星帝国の統一国旗に描かれた紋章であるし、西洋魔術結社に連なるりのんは五芒星だ。
 子宮に植え付けられた支配虫は肉体と同化し触手として種々の用途に使用出来るようになってなかなか便利なのだが、もうひとつ重要な役割として巫女の素質がある者に植え付けて覚醒させるという事がある。俊平の目的は六つの勢力の巫女をすべて揃える事であり、そのためには素質を持つ者に先任者である巫女が自らの支配虫を分け与える必要があるのだ。りのん達がこうして夜の街を歩いているのも、一つは覚醒前にりのんがあんみつに託された街の平和を守るボランティア的な使命の為だが、同時に街の平和を乱す程の異能者は巫女の素質を持っている可能性があるという事でもある。ウェヌスがその例で、脱走した天使を誅殺しようと追いかけているところをりのんに見つかって覚醒させられ、彼女自身が脱走した形になっている。

「あうあうあー」
「!?」
 呻くような声がした方向を向くと、見るからに生気のない髪の毛まで青白い少女が立っていた。中学校か高校のものだろう、制服を身に着けているがだいぶくたびれている。
 そして、その口から出てきた言葉は須藤りのんを困惑させるのに充分なものであった。
「西船橋……西船橋……行きたい」
「にしふなば……ど、どこっ?」
 実年齢では幼いりのんの世界は基本的に通学圏内を出るものではない。千葉県の駅名など知る由もない。
「あ、葵ちゃん……」
 りのん自身が迷子であるかのように葵に助けを求める。アンデッド退治の先頭に立ち今日の葵は頼りになって見える。
「んーと……とりあえず新宿に出て……」
 りのんに対して日向葵は西船橋という駅を知っているが、しかし知悉しているわけでもなかった。とりあえず新宿に出ておけば大丈夫だろうと適当に答える。――が、すぐに思い直す。
「あ、と、東京のほうがいいかな? 東京わかる? あっここも東京だけどそうじゃなくて東京駅」
 言葉を重ねる毎に声から自身の色が失せていく。やはり、とりあえず新宿という方針を堅持したほうが良かったか。
 それにしてもとりあえず新宿って居酒屋に入ってとりあえずビールでもあるまいし。自分も大学に行ったら飲み会とかでとりあえずビールって言うんだろうか?
 葵の心中を知っているのかいないのか、道を訊ねてきた少女は相変わらず焦点の定まらない瞳でりのんの方向を見ている。
「えーとあーユーゴートーキオセントラルステーション、アンダスタン? ユーノーオーケー? チュウオウライン!」
 苦し紛れに動かした手は東京駅の赤煉瓦駅舎を模したつもりである。
 しかし彷徨えるアンデッドが葵の問いに答える事はなかった。
 実のところ生前は日本人だった彼女は東京駅を利用した事があった。それどころか非業の死を迎える直前に立ち寄って、ああ修学旅行客なんと邪魔で目障りな存在である事かと通行人の顰蹙を大安売りで買っていたのだが、
死亡とネクロマンシーによる復活を経てそれらの知識経験が残っていたか否かは明かされないまま再び眠りにつく事になったのである。
 なにか言葉を発しようとしたのか、それとも意味のない呻き声だったのか―― 口が動いたかと思ったその時、飛来したコンクリート塊がアンデッドの頭を直撃し鈍い音と共にその中身をぶちまけた。
「……ふたりともいちいち律儀に答えなくてもよろしい。だいたいアンデッドが電車に乗ったら隣の人は大迷惑でしょう」
 ウェヌスが半分呆れながらも一生懸命さを好ましく思いつつ、手近なところに転がっていた錆が浮いたバス停留所表示板の土台を投げつけたのだ。
「あー……」
 りのんが言葉にならない声を発する中ウェヌスはしみじみとつぶやいた。
「ふむ、やはり物足りない…… ああ、モーニングスターで叩き潰したい」
 ウェヌスの得物であるモーニングスターは大きくて重い金属の塊である。都市環境に於いて人間が持ち歩くには異常な物体で、重量センサーに金属探知機あるいは商品管理システムと、どこでトラブルの種になるかわかったものではないので持ち歩きを自粛するよう要請されている。
 そこで代わりにナイフをはじめとした携帯に便利な武器を持ち歩いているのだが。相手がアンデッドとなると至近距離で斬りつけるナイフを使うのは気後れした。そこで辺りを見回したらモーニングスターを思わせるちょうどいいもののがありまさに僥倖である。
「んー……そうなんだ」
 ウェヌスのモーニングスターへの熱い思いを耳にして、実際に叩き潰された経験のあるりのんはまたも微妙な声を上げる。りのんの感覚としては剣とか銃の方がかっこよくてウェヌスにも似合っているだろうに、どうしてこんなにあのトゲトゲボールが好きなのだろう。今でこそ十代の日本の少女らしい服装だが、あの時は真っ白でお姫さまみたいなドレスを着ていたのにトゲトゲボールでせっかくの可愛い印象が台無しになっていた。
 疑問に思いつつ、杖で空中に魔法陣を描いて動かなくなったアンデッドに向かって飛ばす。魔法陣が拡大しながら包み込むとアンデッドは淡い光とともに灰になり、続きりのんが巻き起こした風に吹かれてどこへともなく飛んでいった。WIZ-DOMに属する彼女はあんみつを通してターンアンデッドの魔法を習得したのである。
「西船橋に行けるといいね」
「うん」
 葵がぽつりと呟いた言葉にりのんは小さく頷いた。
 ウェヌスはそれには答えずあんみつに呟く。
「……さて、運の良い事にはずれでしたわね」
(極星帝国の巫女は君がすでにいるからね。席が埋まっている以上他の娘が覚醒する蓋然性はゼロだ)
「極星帝国……はあ、アンデッドならWIZ-DOMの魔術師共も作るし野良のもいるでしょうに、これではアンデッドばかりが極星帝国のようだわ」
(忘れたのかい? りのんがWIZ-DOMなんだよ)
「野良の可能性はまだありますわ。ダークロアにだって共食いする屍食鬼が……」
(語るね。まるでアンデッドを巫女に引き込みたいみたいな口ぶりだ)
 あんみつの声に出さない言葉に、こちらも音を立てずに気分だけ鼻を鳴らす。
「まさか。腐りかけの生ゴミに神聖なわたくしの触手を突っ込むなんて御免被りますわ。確かにそろそろりのんや葵以外にも挿れたいですけど」
(僕に突っ込んでみるかい? 前の穴はないけど、アヌスと口はオッケーだよ。ちょっとキツめかも知れないけど、きついのを強引に犯すのが気持ちいいという説もあるし……)
「ご冗談。それとも――」
 モーニングスターで叩き潰されて死んでみるかと言おうとしたウェヌスの言葉は途中で途切れた。クリトリスと乳首の黄水晶のピアスが鈍く輝き、同時に全身の触手が性的快感に似た感覚に打ち震える。
「! これは……陰獣」
「あんみつ!」
 ウェヌスとりのんがあんみつに声をかけたのはほぼ同時だった。
(りのんも感じたようだね。カラーヒヨコも反応している)
「私には全然わかんない……」
 あんみつが宙返りをして描いた円からヒヨコが飛び出し、反応の主を求めてよちよちと歩き始める。暗がりで色がよく見えなかったが、りのんが魔法で光球を作り出してやるとその色が明々と照らされた。
「赤だね」
「阿羅耶識……」
 ウェヌスは微妙な顔をした。極星帝国にはかつて阿羅耶識にいた巫女がいる。これまたもともとはイレイザーにいた天使のサリエルがヴァンパイア化させて引き込んだセツイ・アラ=ニエミといってなかなか強力かつ凶悪な呪術を使うらしいが、ウェヌスはアンデッドよりもヴァンパイアの方が更に嫌いだ。理由はセツイがその最たる例であるがアンデッド化よりもヴァンパイア化の方が肉体の強化率と精神に来す影響が大きい事と、感染被害の大きさである。
 しかし阿羅耶識の巫女を堕とすとなればサリエルやらセツイと同じなのではないかと思うと心の奥底の部分で嫌悪感が疼いた。
「どうしたの? ウェヌスちゃん?」
 不思議そうに見つめるりのん、その後ろに葵。二人の笑みに心にわだかまっていたものが雲散霧消する。そうだ、これはあの血まみれハネつきやその食べかすとはまるで違う、素敵で崇高な事なのだ。
「行こう、ウェヌスどん。私にはぜんぜんよくわかんないけど!」
「……いえ、なんでもないわ。ええ、急ぎましょう」
 駈け出したウェヌスの顔にはもはや迷いの影は欠片もなかった。

「あなたの邪魔をする事をお許し下さい。ちょっと道をお訊ねしたいのですが、人間一般はどのようにして東向島駅に行く事が可能ですか?」
 りのん達が魔力を感知した数分前、彼女達が繰り広げたのと同じような会話が繰り広げられていた。
 西の次は東である。実のところ、りのん達が退治したアンデッドと彼女は修学旅行で同じ班なのであった。新幹線で東京にやってきて初日は官公庁などを見学し、二日目の自由行動中に死んでしまったところをレムリアの死霊術士に拾われてアンデッド化されたのだが、手違いからこうして彷徨っているのだ。
 今や彼女達を動かしているのは断片的に記憶に刻み込まれた自由行動計画を実行しなければならないという使命感のみだった。
 よもや知る由もない、東西線の東端である西船橋が実は東京都ではないなどと。
「知らぬ!」
 声をかけられた、学校指定のださいジャージ上下に身を包んだ少女はきっぱりと、どこか自信すら漂わせて即答した。
「そ、そうですか……わかりましたグリーンオブウィンドウマウスで聞いてみます」
 この時間、実際にはみどりの窓口は開いていないだろうが、アンデッドの記憶からはそのあたりの認識は失われていた。ただただ誰に聞かされたものやらもはや定かではないが電車で困った事があった時はみどりの窓口に行くのだという意識が強迫観念となって意識にこびりついていた。
 彷徨えるアンデッドは悄然と立ち去ろうとしたが、しかし少女はやはり自信ありげな語調で呼び止める。
「待つのじゃお主、ゾンビじゃな。そのような不浄なものを生かしておくわけには行かぬ!」
「えっ」
 彷徨えるアンデッド嬢に生前の記憶や判断力が残っていたのなら、ゾンビならもう死んでいるのではないかと言い返したところであろう。しかし今の彼女にそれは叶わない。
「……!?」
 目の前の少女は手にしていた布袋(ぬのぶくろ)から中身を取り出した。ジャージ姿も相俟って何かの部活用品とも見えるそれは、頼りない切れかけの街灯の光の下でもなお燦然と煌く黄金の鞘とそれに収められた一振りの剣であった。
 少女は剣を左手に持ち替え、布袋を右手でくしゃくしゃに丸めてズボンのポケットにねじ込んでからいかにももったいぶるように抜剣する。鞘の見事さに負けず劣らず素晴らしい刀身だが、アンデッドにはその見事さに見とれる余裕など無い。
 剣の鋭さ以前に、少女が全身から放ちはじめた綯い交ぜの剣気と霊気に気圧されていた。逃げる事も叶わず、否、逃走を考える余裕が無い程に圧倒されていた。
「成敗!」
 幼い声に似合わぬ裂帛の気合とともに断罪の剣が振り下ろされる。
「うぐっ……ひ、東向島に……行きた……」
 こうして彷徨えるアンデッドは東向島に行く事なく、見知らぬ少女によって真っ二つ袈裟斬りにされたのであった。それは、彼女達の班がついに全滅した事も意味していたのだが、彼女自身それを意識する事はなかった。

 さて、少女が彷徨えるアンデッドを斬り伏せたところは三人娘も間に合ってしっかり目にしていた。物陰に隠れつつ、まずは思い思いの素直な感想を述べ合う。
「うーん、あの子かなあ?」
「りのんちゃんとおんなじくらいだね」
「えへへっ」
「けれどなかなかの剣捌きだわ。見事なものよ」
「すぐ終わっちゃったからよく……あれ? さっきまであんなにすごかったのに……」
(剣を納めたからか。剣を抜いている間だけ霊力が発動するみたいだね)
「蓄積した霊力を抜剣と同時に解放する居合のようなものという事かしら? 何にせよ……抜かせなければ問題はない」
「抜くって……エロいなあ」
 かく言う葵はかつて触手管の中の種をりのんに抜いてもらった事がある。
(あれはすっごく気持ちよかったなあ)
 雑草を抜くのは園芸部とは切り離せない作業だが面倒で仕方がない、しかしああいう抜くなら大歓迎だ。
「さて……わたくしに腹案があるのだけれど、協力してくれるかしら?」
 スカートを脱ぎながら、ウェヌスは艶然と微笑んだ。

 今日も今日とて八剣うめは拾った剣で悪い怪物を切り捨ててやっつけた。達成感に胸が心が満たされる。
 来歴の知れない拾ったものとはいえこの剣は本当に素晴らしい。拾ってからというものうめは幸運続きである。 まず拾った日は夕食にプリンが付いてきたし、担任が朝の会の時間に気まぐれで行ったテストでも百点がとれた。 何よりも、これまではかけらもなかった霊力が一挙に覚醒し、今では熟練の巫女以上もかくやという程だ。
 いつだったか梨狩りに行った下の姉が得意満面で話してくれたが、二十世紀梨はゴミ捨て場で拾われたものなのだという。それがあんなに美味しいのだ。この剣は拾った場所がゴミ捨て場ではないだけ上等だ。
 ――もっとも、うめも、友達から聞いた事をそのまま姉妹に伝え聞かせたうめの姉も知らなかった事だが、あの日もぎ取って食べたりおみやげに持って帰った梨は二十世紀ではなく豊水であった。
 更に談だが下の姉の時は梨狩りだった農業体験学習はうめの時代には芋掘りになってしまった。芋は芋で美味しいのだが泥まみれになるし食べるとおならが出るのでうめは梨狩りの方がよかった。
 なにはともあれ、自分の強さににやついているうめの耳に、かすれた叫びが聞こえてきた。どうやら女の声だが、その声は必死さの色を帯びている。
「た、助けてーっ!」
「む? なんじゃなんじゃ……? う、むむっ!」
 きょろきょろと辺りを見回し音を頼りに探してみると、果たして女が走っているのが見えた。
うめが声の主を発見したと同時に彼女もまたうめに気付いたらしく、逃げていた少女は方向を微修正してうめの方に駆けてくる。
 驚いた事には、長い金髪を振り乱して疾駆する少女はなんと下着姿であった。これはもう見るからにただごとではない。
 金髪の少女の後ろには、うめはレオタードを知らなかったのでそう思ったのだがスクール水着の露出度を更にげたっぽい格好の悪魔のような女と――よくわからないが植物の塊のようなものが追ってきている。
「な、なんじゃあありゃ」
 植物が走っている。うめも名前が名前だけに植物女とからかわれた事がないわけではないし、野菜の切れ端が水に流れていくのは見た事があるが、本物の植物が地上を走っているのを見たのはうめも初めてだ。うめが驚愕の眼差しで追跡者を眺めている間に、金髪の少女は彼女のもとにたどり着く。
「あのっ、わたっ……急に襲われて、服……」
 怯えて呂律が回らない少女を落ち着かせるように、うめは頷いて見せる。
「もう大丈夫じゃ! 私に任せよ!」
「あ、あなたは……」
 訊ねる少女にきっぱりと言ってやる。
「名乗るほどのものではない!」
 力強く言ってやって来る化け物どもに向かう自分の背中はさぞや力強いのだろう。半ば自惚れじみた確信を胸にうめは剣を構えた。
「かかってこい化物! この八剣うめが相手じゃ!」
 金髪少女にちゃんと名前が聞こえるように名前を言う。さっき名乗るほどではないといったばかりだが、直接彼女に対して名乗っているわけではないのでもし偶然聞かれてしまっても何の問題もない。
「木っ樹っ木ー(きっきっきー)!」
 少女が息を呑んで見つめる中、うめの一閃がまずはよくわからない植物っぽいものを切り捨てた。
植物だけあって動きも緩慢で至極あっさりと剣の錆になる。うめも剣を拾ったばかりの頃は巻き藁よろしくその辺の草木を切っては練習したものだ。
「く……ばさな! くーもゅーじー!」
 世にも奇っ怪な断末魔を残し、うめが驚くほどの血だかなんだかを噴き上げて植物っぽいものは崩れ落ちた。動かなくなったのでやっつけたのだろう。そもそも、植物が動くという時点で奇妙なのだが。
 しかし、もう片方はどうか。いかにも悪魔っぽい女である。もしかしたらこの植物っぽいものはこいつが召喚した使い魔だったのかも知れない。使い魔とはいかにもボスっぽい。これまでやっつけてきた奴らは手応えがなかったので望むところである
「がおーがおーたべちゃうぞー」
 悪魔女(あくまおんな)は頭上に振り上げたフォークのお化けのような得物を振り回してうめを威嚇する。
「おまえもくっちゃうぞーもぐもぐー」
「この者は渡さぬ! 私もお前になど食われぬ!」
 うめは振り返り、不安そうに見つめる金髪少女に力強く頷く。
「うめさん」
 少女は不安そうな顔だったが、うめが頷くと少し安堵したような顔を見せた。その顔が、うめに力をくれる。
「大丈夫じゃ、お主は私が守る! しかし不思議じゃなー、なんでお主、私の名前を知っておるのじゃ」
 少女は目を泳がせたが、幸か不幸かうめの視線は悪魔女に釘付けだった。
「おまえからーたーべちゃーうのだー」
「黙れっ!」
 振り払ったうめの剣が、悪魔の手にした武器を弾き飛ばす。
「うーっ、よくもやったなー」
「八本の剣と書いて八剣うめじゃ、うめはひらがなじゃな。そこのそいつのように八つ裂きになりたくなければ早々に立ち去れ!」
「えっやつざき? だれがどこが?」
 悪魔は一瞬きょとんとした表情になったが、すぐに元の調子に戻る。
「や、やつざきなんていやだぞー、がおがおーくっちまうぞー」
「聞く耳持たぬか! 全く化け物は人の話を聞かぬな! ええい死ねい」
 うめは全体重を剣に託して体当りした。果たして剣は女悪魔の胴体に深々と突き刺さる。
「うぐ……かはっ……」
 女悪魔は血を吐いた。悪魔の血もやはり人間と同じで赤いのかと思った。マンガだと青とかだったような気もするが、まあ悪魔にもいろいろいるという事だろう。貫通するほど深く突き刺さっていたので悪魔に足をかけて蹴飛ばすようにして剣を抜くと滾々と血が流れ出て水たまりを作った。
「く……うっ」
 うめに蹴飛ばされるまま悪魔女は地面に転がりすぐに動かなくなる。
「正義は勝つのじゃ! わははのはー」
 うめは誇らしげに剣をぶんぶん振り回し、かっこよい決めポーズを取ってからかっこよく納刀した。
「もう大丈夫じゃ!」
「やっつけた……の……?」
「うむ、悪は滅びたぞ。お主を襲う化物は剣の錆となった。はははっ、私の剣には錆も汚れもないがな、言葉の綾じゃ!」
 ポケットから取り出した布袋を広げて剣を仕舞いながら、うめはいまだ怯えている様子の少女を安心させるように声をかけた。
「ありがとうございます、ありがとうございます」
 少女は恐る恐る二匹の様子を確認し、動いていないのを見て漸く安心したのか表情を緩めぺこぺこと頭を下げる。
「礼には及ばぬ!」
 そう言いながらも誇らしげに胸を張るうめに、金髪少女は下げた頭を上げ、うめの誇らしげな顔を見つめながらさらに礼を重ねた。
「私、なんであんな化け物に……あっ本当にありがとうございます。あなたは命の恩人です。何とお礼を申し上げて良いか……」
「そんなに褒めるではない、照れるではないか!」
「私、うめ様の事は一生忘れません…… 毎朝起きたらうめさんに感謝して寝る時はうめさんに祈ります」
「いやーははははは。そうかのう! おっと、お主身体がベタベタじゃぞ?」
「あっ……あの、何か変な液体をかけられて…… どろっとしてべたべたしてて」
「奴らにかけられたのか? それは大変じゃ。私のハンカチで拭くといい」
「何から何までありがとうございます……」
「気にするな!」
 うめがポケットをまさぐって取り出したハンカチを差し出し、少女もおずおずと手を出した。
「ほんとうに……ありがとう」
 ハンカチを受け取ろうとした少女の指がうめのそれに触れる。
 その刹那、うめは少女に触れた指の先に鈍い痛みを感じた。しかしそれも束の間、痛みはすぐに消える。
 その代わり、全身に違和感が走り、うめのからだは急速に脱力して地に倒れた。
「な……? なん……」
 少女にかかっていた妙な液体のせいだろうか?考えるうめの目で、少女の指先に何か蛇のようなものが絡み付いているのが見えた。そして、それの先端から針のようなものがのぞいているのも。
 ムー王国の近海にはイモガイという巻貝が棲んでいる。食用にはならないものの大変美しい殻を持つ一方で人間をも死に至らしめる程の猛毒も有する。彼らは歯舌が変化した槍を持っており獲物を見つけるや槍内部の空洞に毒液を満たし撃ち出して突き刺すのである。おそらくはリリア・ベテルギウスのコレクションに貝殻があって自慢ついでに聞かされたのだろうがウェヌスはその話をどこかで聞いて覚えており、獲得した触手が軟体動物に類似していると気付いた時から研究を重ねイモガイ様の能力を獲得したのである。
「ゆっくりとお礼させて頂きますわ」
 少女の笑みは可憐で本当に感謝の念に満ちていたが、だからこそうめの目には不気味に映る。
「お主……いったい……?」
 少女はそれには答えず、うめが切り捨てた二匹の方に歩いて行って愛情に満ちた声をかけた。
「ふふん。三文芝居に見事に嵌まってくれましたわね。……りのん、葵、もういいわよ」
 その声に応じて先に立ち上がったのは植物の塊こと日向葵である。地面に倒れていた様は除草作業で抜き取った草を積み重ねた山に似ていた。
 可愛い容姿とみんなに好かれる性格から初等部の演劇ではシンデレラ役を演った日向葵だが、当時から植物が大好きだったのでむしろ木を演じたかったくらいだ。全身に木の衣装を着て、更に手に枝を持つのだ。こうして時を経て木役を演じる事が出来たわけだが、いざ演ってみるとやはり奥深く難しい。
「あいててて、死ぬかと思ったよー」
「葵、あなた斬られてないでしょう」
 大袈裟に腹を押さえる葵の頭を拳骨で軽く小突く。
「うん、ギリギリで届かなかったみたい。……てて、ウェヌスどんに殴られた方がよっぽど痛いな」
 葵は全身にまとった植物の鎧装で刃を防ぎつつ、一撃目を食らった時点で派手に樹液を撒き散らして倒れてみせたのでうめの目を誤魔化せたのである。べりべりと剥がし落としながらぺろりと舌を出し、小突かれたところを大袈裟に撫でさする。
「わたしなんか本当に刺されちゃったから痛かったよ」
 りのんの方は血の付いた腹部を撫でながら、風俗嬢めいた顔に実年齢相応の笑みを濫かべた。悪役を演じるにはいまだ世の悪を知らな過ぎる齢である。
「葵ちゃんのヒマワリがなかったら死んじゃってたかもね。葵ちゃんありがとう。ウェヌスちゃんも」
 りのんの手にウェヌスの触手が絡みつき、強靭な伸縮力でりのんが立ち上がるのを手助けする。
「えへへへへっ…… 礼には及ばぬぞー」
 倒れながら聞いたうめの言葉を真似してみてにやりと笑い、立ち上がったりのんを受け止めた葵は手に感じる感触に気付く。
「あれっりのんちゃんそれもしかして服じゃなくてはだか?」
 手に触れる毛皮は着ているにしてはあまりにからだに密着しており、そして生の体温も感じられる。
「うん、そうだよー。いっけん服に見えるけどたいもうなんだー。毛皮ー。ウール百二十パーセント」
「ふむふむ。全裸なんていやらしいですなあ」
 胸の部分を撫でさすって探すと毛の奥に乳首とそこに施された青水晶のピアスが見つかった。
「いやだーあおいちゃんのえっち」
「毛深いねー。もじゃもじゃもじゃ子だね」
「もじゃ子じゃないよー。まだ変身前はいんもうはえてないもん」
 わざとらしく頬を膨らませた顔は風俗嬢めいた顔に不釣り合いでそれが葵の性欲を刺激する。
「魔法少女になるとふっさふさだけどね。私はちゃんと剃ってるよ! ほーらパイパン」
 別に服の上から植物を付けられないわけではない。胸元や髪に花をつけるなどはなかなか素敵だ。しかし今日はなんとなく嫌な予感がしたので服を脱いでから纏っていた。超能力修行が実を結んで未来予知でも出来たのだろうか。おかげで服を斬られて台無しにされる事もなかった。ともかく植物の下は全裸だったので、露わになった性器を自慢げにりのんに見せ付ける。成熟した性器があるべき陰毛に覆われていないというのは一種異様な淫靡さがある。興奮により愛液を滴らせていれば尚更だ。
「ふたりともお疲れ様。わたくしの財布で飲み物でも買っていらっしゃい」
 二人のやり取りに目を細めた武装戦姫が労を労うが、自分の服などと一緒に彼女の財布を実に詰め込んで預かっていた花姫は緩やかに首を横に振った。
「私はウェヌスどんがその子を堕とすのちゃんと見学するよ」
「もちろんわたしも! お行儀よくね!」
(りのん、僕はそこの自販機の――)
 多数決で淫獣の意見は黙殺された、
「そう。ではわたくしもご期待に添えるよう頑張らないとね」
 茶目っ気を見せてウィンクしてみせる。このような軽薄めいた仕草など、極星帝国にいた頃はした事がなかった。
「さて、それでは……と。そこでいいかしら」
 触手で指したのは先程三人が隠れてうめの様子をうかがっていた場所である。ちょうどよく物陰になっており手頃な感じだ。
無論ジャミングで人払いする事は可能だが、強い目的意識を持った者は耐えてやって来る事がある。無粋な輩にお楽しみを邪魔されたくはない。
「そうだね。わたしが運ぶからウェヌスちゃんはよういしてて」
「ありがとう、りのん」
「どういたしましてっ」
 微笑んで一足先に向かったウェヌスの背中に声を投げる。非力なりのんも変身すれば少女一人持ち運ぶのは訳もない。そもそも、公園で眠らせたウェヌスとモーニングスターを学校まで運んだのは宅配業者に変身したりのんである。あの時に比べればこの少女は軽いものだ。武器もモーニングスターではなく剣というのが気が利いている。
 その剣は少女から半ば奪うようにひったくって葵が持ってついてきたのでりのんは少女を運ぶ事に専念できたのだった。
「ところでウールって羊の毛じゃなかったっけ?」
「それをいったら百二十パーセントもへんだよう」
(ああ、ジュース飲みたかったなあ)
 近づいてくる二人の声も今のウェヌスには聞こえない。あんみつのテレパシーすら精神集中の前に遮断されている。
「んっ……」
 かつて習得した拳法の練気法も使い、全身の力を集中してとっておきの触手を練り上げる。あたかも肉体のすべてが触手を生み出す装置であるかのようだ。彼女の高まりに呼応するように、左右の乳首と陰核で黄水晶が光を増していく。それに伴って白い肌が桜色に染まり、息遣いも次第に荒くなる。
 ウェヌスは支配虫を操る事に関しては三人の中でもっとも秀でており餅を捏ねたりティーポットから飲み物を注いだりする事が出来るが反面その総量に関しては大きく水を開けられており、ウェヌスを三とすればりのんは四、葵に至っては五にも及ぶ。
 この許容量は堕ちるまでの間は入れられても耐えられる量でもあり、体内の支配虫が閾値を越えいわば溢れた時に少女は淫欲に堕ち、水晶の巫女として覚醒する。りのんが葵を堕とした時には植え付けた支配虫が体内で増殖するのを待たなければならなかったのは葵の容量がりのんのそれを上回っていたからだった。
 ウェヌスが見たところうめの容量は恐らくりのん以上。葵に匹敵するやも知れない。持てる支配虫をすべて注ぎ込んでも一度に満たす事は出来ないだろう。りのんや葵の力を借りればそれも可能だろうが、今回は自分がやると言ってしまった手前意地もあり、ひとりでやりたい。即堕ちは諦めるほかないだろう。しかし、それならそれで構わない。すぐ堕とせないのならそれなりのしようがあるものだ。
 彼女達の本拠地には六勢力の紋章を結んで描いた六芒星魔法陣が存在するが、偶然にも現在奇数番目の勢力だけが揃っている事で正三角形を描き、不完全ながらも増幅効果をもたらしている。
 それに伴う確かな手応えを膣内に感じながら、武装戦姫は琥珀色の瞳に嗜虐的かつ情欲に塗れた色を濫かべ気丈にも睨みつける少女に向けた。気丈……きじょうと騎乗位もいいかもしれない。
「それにしてもわたくしも人の事は言えませんが貴女も詰めが甘いですわね。わざわざ油断して剣を納めてくれて……叩き落とそうか触手で絡め取ろうか考えていたのに拍子抜けですわ」
 剣を持っていないうめからはまるで霊力を感じない。今目の前で呻いているのはただの小娘だった。
「さて……お待たせ致しましたわね」
「待ってました!」
「まちくたびれちゃったよ!」
「誰も待っておらんわ!」
 親切げに差し出した手には先程の蛇のようなものが絡み付いて蠢いており、うめは顔をしかめた。
「貴女はどんな触手を見せてくれるのかしら……?」
 一糸まとわぬ姿になったウェヌスがうめににじり寄る。下着姿になったのはりのんの女悪魔に脱がされた危機感を演出するためだったが、同時にうめを犯す際に前もって脱いでおくためでもあった。
 うめは葵が召喚した植物の上に転がされている。アスファルトの上で交合するのはいかにも痛いだろうという気遣いだ。ウェヌスとしても、植物の愛の巣での愛の語らいはミンネザングで親しんでいる。
「あら、まだ脱がせてないのね」
「お楽しみを奪っちゃ悪いと思って」
「敷物といい気を遣ってもらって悪いわね。脱がせる楽しみくらいは譲ってあげてもよかったのに」
「私はウェヌスどんが脱がせるのを見るのも楽しいから」
「わたしはちょっと脱がせてみたかったかなー。悪魔らしくねっ!」
 悪魔姿のりのんは少し残念そうに巨大なフォークっぽい武器を振り回した。先程うめに弾き飛ばされてしまったが、ちゃんと拾ってきたのだ。
「あっ、でもウェヌスちゃんが脱がせていいよ」
「ではお言葉に甘えようかしら。実際のところかなり高まっていて今更譲りたくはないのよ……」
 ほほえみと共に肛門から伸ばした触手で器用にうめの服を脱がせていく。爪のように硬くなった先端でつまみジャージのファスナーを下ろすなど流石である。
「あら……ブルマではありませんのね」
 うめがジャージの下に着用していたのは学校指定の体操服だったが、下半身に穿いているのは同色のハーフパンツだった。
「ブルマの方が可愛いのに……」
 裾から触手を突っ込んで上まで通して脱がせてみせる。
「脱がせるな!」
「だって、脱がせないとこれを植え付けて差し上げられないのですもの。……ふん、これは期待に違わぬお子様ぱんつ」
 色気のないゴム紐の形も露わなずんぐりむっくりした形に、デフォルメされた動物がプリントされている。ぱんつがひらがななのがポイントだ。背伸びをしたいお年頃である。うめ自身子供っぽいと思っていたので顔を赤らめて言い訳がましい事を言う。
「お姉ちゃんが……買ってきてくれたのじゃ」
 今でこそ全裸だが、目の前で触手を伸ばしている女が身に着けていた下着はうめはおろか姉ですら着ていない凝ったデザインの高級そうなもので、比べてみるといかにも恥ずかしい。うめは知らないがブラジャーとショーツのセットで三千九百九十円、うめの三枚セットパンツ三百九十円の十倍になる。
「そう。では大事にするといいわ」
 何を思ったのか、それとも触手ではそこまでの繊細な動きは出来ないのか、女は触手を引っ込めて自分の手でうめのぱんつを脱がせ、くんくんと嗅いでからジャージとハーフパンツの間に挟んで置いた。
 引き続いて女の指がハーフパンツと同色の裾を掴み、万歳をさせるようにして体操服を脱がされた。小さな頃姉に着替えさせられたのを思い出す。
「これは……」
「これは?」
「これはっ?」
「想像通りと申しますかブラジャーをしていない。キャミソールで片付けてしまっている!」
 うめもそろそろジュニアブラをしたく、それとなく話してみようと思っていたところである。まさかこんなところで脱がされるなら伏し拝んででも買ってもらえばよかった。異性と会う時はいつでも勝負下着を着るようにとはけだし名言だ。
「体操服には名前が書いてあるかと思ったけれど……まあいいわ」
 実際は内側に名前を書くタグがついているのだがウェヌスはそこまで確認しなかった。一方でうめもいちいち指摘してやる事などしない。
 最後に残された女児用キャミソールもあっさりと脱がされてしまい、まとめてりのんに渡される。
「貴女はうめというのよね。わたくしはウェヌス。ウェヌス・ドーンよ、はじめまして。わたくし達『う』で始まる者同士ですわね」
「だからといって! 私はおまえの仲間になどならんぞ! そんなに『う』の字が好きならうどんこでも仲間にしておれ!」
「わたくしもそんな事に縁(よすが)を感じるのは恋に恋する陰毛も生え揃っていない小娘だけで充分だと……失敬。貴女も生えそろっていませんわね」
「う、うるさい!」
 顔を赤くして叫ぶうめをまたなだめる。それほどまでに支配虫の寄生を拒むものか。自分もりのん達に覚醒させてもらうまではこうだったのだろうか。過去の自分を思い出して今更ながらに恥ずかしくなる。もっとも自分は疾うの昔に陰毛は生えていた。
「大丈夫よ、私の仲間にも生えていない子がいるから」
 他校のものは珍しいのか、うめの体操服を眺めていたが、自分の事を言われていると気付き慌てて手を挙げるりのん。
「あっはいはいわたしです。今はこんなだけど元々の姿はうめちゃんと同じくらいなんだよ」
 りのんはサキュバスの格好に似合わない親しげな笑みをうめに向けた。
「葵ちゃんもウェヌスちゃんもいい子だけど、同じくらいのお友達も欲しかったからうれしいなっ」
「友達ならなってやるから解放してくれ」
「それはだめだよー。みもこころも仲間になろうよ」
 ビロード状の毛に覆われて一見レオタードでも着ているように見える性器から触手を伸ばしたりのん。どのその笑顔は変わらず親しい。
「ふふっ、一緒に遊ぶのが今から楽しみね。おままごとでもするのかしら?」
「しないよー。むしろいっしょに宿題をするよ」
「あら、えらいのね。それとも普通なのかしら? マンガでは主人公君がよく宿題を忘れているようだけれど……」
 極星帝国育ちの彼女にとって日本の生活知識はりのん達に聞くかテレビや本で見て獲得したものがほとんどだ。
「零点のテストなんて本当にあるのかしらね。もっとも、描かれていたテストの内容は高等教育レベルだったという事もあるようだけれど」
 軽口を叩きながら、ウェヌスはうめの太腿を掴んで開き、陰部にくちづけた。舌を突き刺すように入れ唾液を塗りたくるようにして舐め上げる。
「ひゃっ!?」
 無論そのような所を舐められるのは初めてであり、うめは嫌悪感とくすぐったさの入り混じった声を上げた。
「舌で舐めるとそれなりに感じますわね」
(口の中に落ちてきた鼻毛みたいなものか)
 ウェヌスの言葉はうめにとっても実感に裏打ちされた説得力があった。
「ふふっ、そのうち素敵な茂みになるわよ。わたくしみたいに」
 考えてみれば今ちゃんと陰毛が茂っているのは自分だけだ。葵の陰毛はウェヌスが自ら剃り落としてしまったのだ。あれからは葵が自分で剃っているようだが、きっかけを作ったのはウェヌスである。
 葵の淫らな恥丘もよいものだが、植物を操る彼女に『茂み』がないのは少々申し訳ない気分にもなる。
マジカルスイートに変身したりのんの陰毛に顔を埋めるのは心地よい。押し出されてきた空気の香りはとても芳しい。葵でもその感触や淫香を味わいたいと思うのは贅沢だろうか。
 少し感傷に浸ってしまったが、その間無心に陰部を舐め続けたのはうめに良い効果をもたらしたようだ。古人曰く終わり良ければそれで良し。
「さあご覧遊ばせ。これが大人の性器というものですわよ」
 ウェヌスはうめの目の前で股を開き更にでも開き己の陰部を見せ付けた。同時にりのんが光球を飛ばして照らし出してやる。
金色の陰毛に縁取られ、外性器は好色そうにいやらしく膨らみ、内側はといえば複雑に波打って奈落への入り口のようである。
 金髪の少女は見たところうめの上の姉と同じ年頃のようだ。という事は、姉たちのあそこもこんなふうになっているのだろうか。
長姉の顔と、目の前の奇怪な器官が下手なコラージュ写真のように結び付く。いやいや、姉の陰毛は髪と同じ黒のはずだ。最近ではその機会も少なくなったし、よく観察しようとすると隠されてしまうが一緒にお風呂に入った時に見た記憶がある。
「そして……これがわたくし達巫女の証」
 姉の像を振り払ううめの目の前で、ウェヌスの陰部がびくびくと震え、陰核が膨らんだかと思うと黄色く輝く宝珠を頂いたピアスが生えるように出てきた。まずは大人の性器をそのまま見せるため黄水晶のピアスは体内に収納していたのだが、小用の後で拭く時や着脱時に引っかかるので通常はこうして引っ込めている。
「巫女……じゃと」
「ええ、水晶の巫女ですわ。貴女達の巫女とは少し異なりますわね。もっとも貴女はその両方になれるのだからとても運がいい」
「なりたくなど……」
「そしてもうひとつ……おわかりですわね」
 わかりたくはないが、予想に違わず秘裂を押し開いて内側からうねうねと蠢く黄色い触手が這い出てくる。先程うめの身体を撫で回し服を脱がせた尻からの触手と同様に、いやそれ以上に奇怪で気色悪い。
 お姉ちゃんにも、こんなものが?
 いやいや、そんなはずはない。人間にこんなものは生えていない。お姉ちゃんに生えているわけがない。
 少し安心して――そしてすぐに絶望する。
 姉には生えておらずいわば無事だとしても、自分は無事ではない。もうすぐ無事ではなくなりそうだ。
「今からこれを貴女に植え付けて差し上げる。そして貴女は巫女として更に上の段階に達する事が出来る」
 これはうめを犯し堕とし覚醒させるための特製触手である。いつもの触手よりも若干太く、表面は健康サンダルのような突起に覆われている。と、突起のいくつかからとげが伸び得物であるモーニングスターを想像させる形になる。名前からしてそれであり、自分の最高の触手を考えればやはりそこに帰着するのだ。長さがあるのでモーニングスターというより金棒に近いのはご愛嬌といったところか。
「うわあ、素敵だね!」
「私も欲しいな……」
 羨ましそうな声を上げるギャラリー二名の意見は、全くもってうめには同意しかねるものだった。
 太腿を掴んでいた手が離れたかと思うとうめの脚には触手が絡みつき、特製触手を受け入れさせるべく股を開かせていく。絡みつく触手は肛門から伸びている。膣から特製触手を伸ばすため取ったM字開脚の形は、肛門から伸ばすにもちょうどいい態勢なのだった。
「ああ、うめ……これからこれを貴女に挿れますわ」
「いやだ」
「聞き分けのない事を言うものではありません」
 わざと顔を顰めてみせたが、うめには見えない。そんな事をしても目の前で繰り広げられる行為が止まらないのはわかっていたが、しかしそれでもうめは目を閉じずにはいられなかった。
 目を瞑った事で鋭敏になった感覚は、触手が膣口を押し広げ這入ってくる様子を敏感に捉えた。見ないためにまぶたを閉じたはずなのに、うめには毒々しい色の触手が自分の中に侵入して蹂躙していく様子がありありと浮かんでいた。
「ふふ、すっかり入ってしまいましたわ」
 楽しそうな声が絶望に輪をかける。
 突き入れた触手がうめの性器の最奥部に到着したのは、触手自体の鋭敏な触覚でウェヌスにも敏感に捕らえられた。この後で切り離しうめに贈る予定だが、今はまだウェヌスの身体の一部である。名残を惜しむかのようにうめの第二次性徴が始まったばかりの子宮内を蹂躙する。彼女も覚醒してしまえばここは支配虫に満たされてしまうだろう。ただの人間としての性器を味わえるのはこれが最初で最後になる。一生分を味わい尽くすようにウェヌスはうめを犯してゆく。そのアグレッシブな動きは外からもうめの腹部が蠢いて見えるほどだったが、あいにく彼女は目を閉じていて視認する事は出来なかった。
「見たくないのなら見なくても結構よ。ふふっ」
 ぎゅっと目を瞑るうめにあくまでも優しく語りかける。
「そうだわ。目隠ししてしまいましょう。世の中には見なくてもいい雑音が多すぎるもの」
 言ったウェヌスが舌を伸ばし目元を舐め上げる。仮にうっすら目を開けていたとしても、こうすれば反射的に目を閉じるだろう。
「ひっ……」
 悲鳴を発した次の瞬間、うめの目元を生温い何かが覆う。
 無論うめには形も色もわからないが、ナメクジかアメフラシのような青黒く平たい軟体動物のような塊が、アイマスクのようにうめの両目周辺にへばりついたのだ。舌に見えたのは塊の先端部分で、そう見せて油断させるために形を調整したのである。
「よくお似合いですわよ」
 吐き出す際に口元に付いた陰液を指先で拭いウェヌスはほほえんだ。彼女が覚醒した際には葵のヒマワリによって目隠しをされた。江戸の仇を長崎で討つではないが、自分が誰かを覚醒させる時には同じ事をしてあげたいと思っていたのだ。
 目隠し触手は外套膜のような辺縁部の粘液物質でうめの目元にへばりついているだけで、強く吸い付くわけでもなく、うめの体内に侵入しようという様子はない。もっともそこから入るとなると想定されるのは大惨事なのだが、とにかく何もせずくっついているだけだ。しかしやはり触手である。表面から漂わせている香気は淫欲をかきたててならない。それが鼻の真上に貼り付いてむんむんと香っているのだ。うめのつぼみの性欲は弥が上にも刺激され今や花咲こうとしていた。いつしかいまだ未成熟な性器は愛液に濡れ始めている。
 金髪武装戦姫はうめの背中に手を回し抱き寄せた。そして更に足をあぐらのように絡めてくる。
 触手をすっかり排出して腹も元通りになっている。身体を強く密着させられ、クリトリスのピアスが押し付けられた。体温で温められていたのか、それとも通常の宝石とはそもそも異なるのか、予想した無機質な冷たさはなく、固いものが押し付けられる感触があるだけだ。
「ふふ、わたくしの分身がうめの中で動いているわ。膣内をぬめぬめかき回しているのがわかるかしら?
 わたくしの分泌液と貴女の愛液がぐちょぐちょと交じり合ってぶくぶくと泡立っているのよ」
「やめ……やめろ……」
「抜いたらいやらしい液体がたくさん漏れてしまいますわね。でも大丈夫ですわよ、抜かないのだから。
……うふふ、抜かずに貴女の中に入っていって、貴女の一部になって貴女を作り変えるのよ」
 ウェヌスの言葉に見守っているりのんと葵は感動の微笑みを濫かべたが、目を瞑っている上に目隠しもされたうめにはそれはわからない。
「それでは仕上げと参りましょう」
 うめの口の中に何か生暖かいものが入ってきて舌に絡みつく。
 もちろんファーストキスである。そもそも、キスというのは唇を触れ合わすものだとしか思っていなかった彼女は舌を絡めるなど想定していなかった。しかし入れられたのは舌だけではなく触手もだった。伝わって入ってきた触手は舌よりも更に自在な動きでうめの舌に絡みつき、吸盤で吸い付く。
 淫液の糸を引きながら舌を抜き出すと、後に残った触手がうめの口に詰まった形になった。
「んーっ! んんー!」
 叫ぼうとしてもくぐもった声しか出てこない。効果にウェヌスは満足した。指先で淫液を拭い、うめのからだになすりつけてやる。
 続けて右手を股間にやって、自分の膣から触手を引っ張り出した。
生みの親から引き出された触手はしばらくうめの股間にぶら下がる形で蠢いていたがすぐに前張りのように形を変えてうめの性器に張り付いた。
「さて……それでは御覧遊ばせ」
 触手が張り付いた――蓋をした理由はりのんと葵にもすぐにわかった。
 表面を覆っていた鈍い棘が、一挙に鋭く伸長してうめを中から刺し貫いたのである。その鋭さは子宮どころか肉と皮を突き破って体外まで達する程だった。
「う、うわあ……」
「すっごい……」
 りのんも葵も思わず自分の性器を手で覆い隠した。
 うめの下腹部には当然激痛が走った。きっと口に封をされていなければ凄まじい叫び声を上げていただろう。そして、膣口に蓋をされていなければ鮮血が溢れ出てきていたに違いない。
 しかし、同時にほとばしる淫液によって快感ももたらされる。激痛と快感に同時に襲われてうめの心は千々に乱れた。
 うめを刺し貫いた棘は支配虫としての本分に立ち返り、突き刺さったまま肉体に同化して傷を癒していく。傷がふさがると同時に痛みもおさまり、後には痛みを中和して余りある快感がそのまま残った。中の部分が同化するに従い前張になっていた部分も徐々に中に侵入していくと、散々犯された後かのように血と混じった愛液がぼたぼたと草の褥に滴った。
 快感も引いて落ち着いてきたところで、口に詰まり目に貼り付いていた触手が取り去られた。
 口に詰められた触手を取り除かれると溜まっていたよだれが一挙に漏れ出た。目隠しの方は涙と汗が混ざっていて、生温い温度で髪に流れていった。
 気がつけば手足も解放されていて、うめは草のベッドの上に力なく横たわり三人の視線を浴びている。
「さて……おめでとう。これで貴女もわたくし達の仲間ですわね」
 葵に預けていた服を再び身に着けた武装戦姫が叙勲めいた口調で言うと、横にいた女の子が親しげな笑みを向けてくる。
「よろしくねっ、うめちゃん」
 うめと同じ年頃の彼女は、消去法で行くと先程の悪魔なのだろう。口調や声が似ていた。
 続いて三人目の少女が数本束ねたヒマワリを差し出してきた。
「まずはこれ、私のヒマワリっ! お祝いの花束だよ」
 しかしうめは葵が差し出した花束を弱々しく払いのけた。
「……お主らの仲間になど、なりたくないわ……」
 続けてヒマワリを地に叩き落とそうとするが、その前に柔らかいてのひらがそっとうめの手を包んだ。
「そう、それでは仕方ありませんわね」
 てのひらの主――ウェヌスは至極あっさりと頷いた。
「わたくしが心を込めて精魂を尽くして植え付けて差し上げたのに勿体ないですし残念ですけれど、裏を返せばそれだけのことをしても貴女には受け容れてもらえなかったという事ですものね……諦めましょう」
 武装戦姫はりのんと葵の目を諭すように覗きながら言い、最後にうめにほほえみかけた。
「でも、もし気が変わったらいつでも歓迎しますからね」
 予想外の答えにうめは目を伏せたが、ウェヌスは構わず続ける。
「りのん、タクシー運転手に変身してもらえるかしら?」
「え……うん」
「お詫びにお送りしますわ。もうこんな時間だもの、早く帰った方がいいのでは?」
「大丈夫じゃ、自分で帰れる……」
「あら、そう…… それでは服も自分で?」
「当然じゃ…… 早く失せろ化け物ども! 地獄に落ちろ」
「あらあら、嫌われたものですわね…… まあいいでしょう。りのん、自分で着られるって」
「うん……」
 りのんがおずおずと差し出した着衣一式をうめはひったくり、三人を無視して着始める。
「それではわたくし達は消えるとしましょう。葵……」
「ちょっといいかな、その草消えるから」
 無視していた割に素直に従ったうめが退くと敷き詰められていた草がみるみる縮んで小さな種に戻る。葵がつまみ上げるとそこには元通りの荒れた路面があるだけだ。
「またわたくし達に会いたくなったら学校にいらっしゃい。そうそう中学校からの編入も受け付けているから、その気があるならご両親に転入を相談してみてくださいな」
 親切な声で語るがやはりうめからの返事はなかった。
 少し寂しそうに笑って歩き出したウェヌスに二人が続き、後には黙々と着替えるうめが残された。
「……ねえ、よかったの?」
 行き場を失くしたヒマワリを弄ぶ葵に尋ねられたウェヌスは泰然自若と目を細める。
「ふふ、細工は流々、仕上げを御覧じろ……」
「あ、やっぱり何か企んでるんだ?」
 芝居がかった言い回しの意味はよくわからなかったが、何かしらの計略がある事は理解して葵の表情が明るくなる。
「八剣うめ、いい名前ではないですか」
「うん、ちょっと古臭いけど私は好きだな」
「あ、植物つながりなんだ! 葵ちゃんのあれでしょ? 水戸黄門の」
「そうそうそれそれ。出来れば苗字とつなげて読んで欲しいけどねー、私は」
 日向葵、名字は倒立しているがヒマワリで、名前だけならアオイである。
「りのん、貴女が言っていたとおりよ。一度寄生してしまえば身体はもう元に戻る事はない」
「うん、そうだよね」
「今は表立って活動しないように抑えて人間のままのふりをさせているだけで実際には徐々に変化しているはずよ。確実にね」
「あ、そっか。普通の人間ならあんなにすぐ回復しないもんね」
 合点がいったように葵は一人頷き、その様子からりのんも自分が思い違いをしていた事に気付く。
「あの子も葵ちゃんのヒマワリで回復したんじゃなかったんだ」
 膣の中をめちゃくちゃにされたのだ。それが立って歩けるまでに回復していたのだから当然葵のヒマワリを使ったものと思い込んでいた。
「あの傷を全部埋めたって事は……それに更に増えていくから……なるほどなるほど」
「そして八回オナニーすれば一挙に発動するわ。ふふふ。八剣うめ、本当にいい名前」
「ウェヌスどん悪いなあ」
「ウェヌスちゃんやっるぅ」
(邪悪の極みだね)
 三人は顔を見合わせて笑った。気のおけない仲間の笑みが肴になってとても気持ち良く笑える。それを下からあんみつも見上げている。
「一回でもオナニーすればもう快感の虜でしょうね。最初の一回を越えればあとはもう……ふふっ」
「それをきいて安心したよ。早くうめちゃん仲間になってくれないかなあ」
「もうすぐよ。大丈夫」
 娼婦めいたサキュバスに変身している顔で子供っぽく待ち遠しい顔のりのんに、ウェヌスと葵は姉のように優しくほほえみかけた。
「えへへ、それじゃ……タクシーうんてんしゅさんにへーんしーん! うめちゃんは送っていけなかったけど、ふたりはちゃんと送っていくからね!」
 りのんもそれに応えて満面の笑みを濫かべた。
 これから二人を乗せて夜の道路をドライブするのもなかなかに楽しそうで胸が躍っていた。
(僕は助手席だからね)
「トランクにでも詰め込んでおしまい」

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