「ねぇ、どうかな」
「おお、良く似合ってるな。予想以上だ」
思わず声に出てしまう感嘆。普段の遙と同じ緋袴に、普段と違う喋り方。
「ふふ、ありがと」
普段とは違う艶然とした微笑を浮かべ、目の前でゆったりと、くるりとまわる。
う〜む、これは正直言って予想以上だ。
当初の予定では、俺が『ペルソナ』と呼んでいる一時的な性格変更系の精神支配、
そしてソレを用いた余興だったのだが。だった筈なのだが。
「…どうしたの?あ、ひょっとしてドキドキしちゃってるとか?」
「いや、そんな事は無い、断じて無い…ぞ?」
「そう?まぁいいけど。それじゃ…」
クスクスと笑って、俺に近づいてきた。手を取り、トン、と足払いをかけられ、
次の瞬間には絶妙な体捌きと力加減で勢いを殺され、畳の上に尻餅―――否、あぐらをかかされた。
そのまま俺の後ろに回ると膝立ちになり、背中に手を這わせて、
「おっ、おおふっ…」
白い繊手が這い回り、思わず声が漏れる。
ぐっ、っと力を込め、かと思うとやんわりと揉みこまれ、敏感な場所を探り当ててはそこを刺激される。
「くぁっ…おぉ、そこ…」
「まだまだ……」
まさに天国にも昇る心地。気付けば俺はうつ伏せに寝転がっており、
その上では若干サディスティックな笑みを浮かべたまま、手を動かし続けている。
「まさか、もう終わりだなんて言わないだろうね?」
それは彼女が敵に対して言う台詞であり、また俺から搾り取る際(主に12R目あたり)に言う台詞でもあるのだが。
流石に今日は勝手が違った。
「まぁまぁ、ちょっと待て…っこれ以上されたら俺死ぬ、気持ちよすぎて死ぬっ」
いや確かに気持ちいいんだけどね?これ以上やると戻ってこれなくなりそうで―――
そんな意思をもって首だけで振り仰ぐと、ニンマリと―――しかしどこか艶然と―――した口の端が見えた。
「祓魔の秘文、天切る、地切る、八方切る。天に八違い、地に十の文字。降魔の利剣、七支太刀」
アッー!
身体の芯に同時に響く7つの衝撃。
別に尻をやられたわけではないが、このとっておきの一撃に対する悲鳴はまさにアッー!に相応しかろう。
「おおふっ…」
あまりの気持ちよさにビクンビクン。その様を見てまた、ニンマリ。
「ふふ、元気だね、何度も何度も。そういうの、キライじゃないけどね」
どうやら向こうはまだまだヤル気らしい。
動いているうちに乱れたのか、はだけて露になった首筋と鎖骨がなんともエロティックだった。
流石にこりゃーマインドブレイカーとして新たな扉を開いちゃうんじゃねーかなー、なんて思考が頭をよぎる。
と。
勢い良くスパーーーーーン!と障子が開かれた。鬼気迫る般若がいた。
「あんた達…一体何やってんのよ…」
ゴゴゴゴゴ、或いはズズズズ、と表現しるようなドス黒いオーラをまとって。
弓削遙。禊巫女にして軍巫女、一部においては凶巫女、禍巫女とも呼ばれる阿頼耶識最高峰の1人が。
「げ」
そしてそんな阿修羅すら凌駕する存在を目の当たりにしてうめく、彼女とほぼ瓜二つの巫女姿。
違うのはペルソナが解けて素に戻った表情と、その胸。
扇情的とも思える程その胸元を押し上げる巨乳の遙に対し後者はそれがまったく無い。
「か〜な〜た〜…?なにやってるのかしらぁ〜?」
ゆらり、と遙が弟の名を呼んだ。
「つまり、アンタのペルソナで彼方を私っぽくしてみた、と」
「まぁ、そゆこと」
「…アンタ達、ホモ?」
「ちゃうわ!」「違うよ!」
同時に答える俺と彼方。その頭にはドでかいたんこぶが拵えられていた。
「識兄さんが最近肩こりがヒドイっていうから普段のお礼を兼ねてマッサージしてたんだよ」
「彼方が遙みたいになりたいっていうからな。阿頼耶識のマインドブレイカーとして一肌脱いでみたんだ」
キリッ。
「識兄さん脱ぎ方がだいぶ違うと思うんだけどなぁ…」
どうでもいいことだが、俺はこの姉弟に名前を教えていない。
単に阿頼耶識のマインドブレイカーだとしか言わないので暫定的に「アラヤ・シキノor荒谷・識乃」と呼ばれているのだ。
戦闘介入の度に「通りすがりの阿頼耶識の、マインドブレイカーだ。覚えておけ」て言ってたらいつのまにかこう呼ばれた。
別にダークロアやWIZ-DOM、EGOにも協力はするが。
まぁそれはどうでもいい。
「俺も今回は間違ったと思ったな。あのままだったら彼方を襲って新たな扉が開かれる所だった」
ゴスッ!と俺のたんこぶに七支太刀―――遙の愛刀だ―――が刺さった。
「HAHAHA痛いじゃないかハニー」
「うっさい。いっぺん死になさい。どーせ確率操作で切れないでしょうが」
その通りだが痛い物は痛い。
「はぁ、もういいわ…彼方、ちょっと境内の掃除でもしてなさい」
はいはい、と察したような笑い顔で彼方が立ち上がり、部屋から出て行く。
「出来た弟だよなぁ」
「否定はしないわ。でも」
正座したままの俺の前で遥が膝立ちになった。
そのままするり、と俺の背中に手を回し、耳元で囁く。
先ほどの彼方よりも艶然とした声で。強く。甘く。
「我らの間には、なんびとたりとも入りこめはしない……私以外に手出したら、」

殺すわよ。その子も、貴方も、私、自身も。

・・
俺の遙は、結構ヤンデレだ。

後日。
「どう?識兄さん、姉さん。似合うかな?」
そういって彼方が緋袴に白襦袢という巫女スタイルではにかんだ。
下手な巫女よりも可愛らしく、こうなんというか…押し倒したく、汚したくなるようなそんな巫女姿だった。
「ちょっと!彼方が男の娘になってるんだけど何したの!?」
「何もしてねぇぇぇぇ!?あと今はまだ女装男子だ男の娘じゃねぇぇぇ!」
弓削さんちは今日も概ね平和。


寝る前にネタが振ってきたので起きてから書いてみた。
最初に微BL風味注意とか入れようとも思ったけどそうしたら即ネタバレになると気付いた。
BL風味とか女装とか苦手な人ゴメンナサイ。

あと最後の『俺の遙は〜』、上の行の点がズレた…

姉弟ネタなのでイメージは無印時代のかなん(現大槻ゆゆ子)絵。

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