安価スレ「【安価あり】わとしとまことにちいさなくに【内政?】」のデータやこれまでの歩みなどを纏めておくwikiです。

七篠和歌集巻拾壱

女書院正の卯月の二旬巡れる頃にぞ開かれたる歌会にてなり。 職はさるときのものをだに記すなり。

左京亮蘇我馬成、うちに植うる橘の花散りたるおり詠みにけり。
散れる花 見むとおぼへて いでけれど まめなる掃部 つとめとげけり
                  蘇我馬成

昔なれど、大君謗れる歌なれば、詠み人は書かず。 我が案ならざるを聞け
日ノ本の かたち作りし その弓も 今射給ふな 大悪天皇
                  詠み人しらず

阿波権介山岡清佐かへりにければ、阿波にとももたよりもなきを詠むに
阿波の門の 鳴門といへば 我が屋戸を 誰か叩きせば 粟かしきまし
                  山岡清佐
女書院正こころづきて、「これこそもてれば、来め」といひて稲かづきにけり。

御鳥谷帝の蕎麦食み給はせるより、蕎麦くらふこともつねのこととなりて、蕎麦の歌いと詠まれにけり。
右馬大允武内垣世、歌もまねぶべしとてわらべぐして出で来にけり。
蕎麦食らふ 我の背ばぞば そと見らば 十ばかりなる子 側にてそばふ
                  武内垣世
これをききて、大炊助雪白宮越が職にありけるのうれしを詠みて
そばつかえ みかどの御膳 そばならび 臣そば召すは 誇りなりけり
                  雪白宮越

ある人物語りしけるに、「笠かぶれるとき雨など降りてひつれば、
笠柱にかけにけれど、我が山にふれるはやがて乾きて、されば涙はほさずなり」とぞ
笠雲の かかれば雨と 言ひけれど まろき巌は 雨も流れり
                  詠み人しらず

太政大臣殿の若うてわづかなる官にてありけるに、国がためつとめはべらむとのこころざしを詠みて
しろ雪も 坂に逢うても なお退かず 宮より延びし やまとの道や
                  太政大臣野比
などといひけれど、かの歌会あげられたる氏も多くまゐりければ、つれなうしてありけらし。

縫殿助雪白常根が花みるおりに返す返すおもひ出ださるるなつかしきなど詠む
君分かつ 花はいつしか 咲けれども 片待つ虫は 未だ来ざらむ
                  雪白常根

宮内少丞小槻文好、都海に遷したるひさしうなりて船の数いみじきを詠む
矢橋津の 浜に立ちたる 浮島は 沖にいずれば 木の生ゆるなり
                  小槻文好

書院和書所寄人榊談、書院の行く方を詠みにたり。後に止まれたるを見れば、まさに夢のごときにて侍るべし。
望月を 仰ぎ見ること 星の数 されど終わらぬ 和都誌の夢路
                  榊談

散位致仕主果餅逢坂仲雄長命たる九十余二になりてもひちちかなるのあさましきほどに息災たる歌なり。
ほこほこと 炊かるる米の 盛り具合 老いし今こそ 増ゆる不思議よ
                  逢坂仲雄

右京七条坊令清津守、その女の婿に具して下りけるに、文来たれば、そのことなど詠む。
初孫の 歳越えけるを 告ぐ娘や 汝がまめなるも 我はよろこぶ
                  清津守

衛士少志逢坂国近、本朝の永らふを祈りて詠みにけり
欠けて満ち 満ちては欠けて また満ちて つきず千代まで 日の本の国
                  逢坂国近
この歌いとめでたければ、女書院正、かかるうむがしき歌、いと惜しきものかな。おほやけにもみすべき歌なるを、とてあたらしうおぼへたりとなむ

主鷹正野比俟麻呂、帝の葛野に御幸したまひたしとおぼしたまふなりとききて、とく葛野に下りて鳥獣のほど、鷹鷂のほどなどを見にけり。
其のほどのこと詠みて
川下り 葛野の原の 薦狩りて 乱れ飛びぬる 鴨の叢かな 
                  野比俟麻呂

この歌詠みたる人、下りたる方、ぬゑ常にありければ、ぬゑ人の掾とこそきこゑけれ。
地が揺れて 浪間に流さる 我が過去よ 案ずるなかれや 我等は居れり
                  詠み人しらず 

また、左大舎人大属島田墨枝のぬゑ神畏るるもなく詠みにたり。  
泰平を 払う御魂よ 我を見よ かつて直れり 今またさあり
                  島田墨枝

たれにか、児ある人、薄の穂の羽だちたるほどを、児とりたるを詠みて
薄穂を 子等が手渡し 宣うに 父よ此れにて 飛鳥と別れん
                  詠み人しらず

雲消えて暑ければ、つゆなどまほしかるらむ、うづきの頃なれども、はやりかなる人ならし皐月ばかりに詠むべき歌詠めり
五月晴れ 蕎麦ゆで上げて ただ喰らう それにつけても つゆのほしさよ
                  栗太郡少領満憲

田舎よりみつきせむとて来つる歌いみじといはれし人、大つごもりにぞ深う寝ねたりける村人の戯話をぞ歌にしける
時過ぎて 村衆拝めぬ 初日の出 さらばと拝むは 年寄り日の出
                  詠み人知らず

前栽にある石敷きたる道みて、主なる家にはあらぬ人の野比末益なる、吾も一末ながらといひて、詠める
伸びつゆく 道の先々 思ひ遣る 石の堅きを 八隅知るまで
                  野比末益

左京五条坊令路好春、さきのぬゑ思ひ出でて、海にまかりけるときを語りて
地が揺れて 街や田畑は 荒れぬるも やまと淡海も 変わらずにあり
                  路好春

伊予国人の大あきびと、西市佑佐伯雄鷹、昔のいみじう銀作りたることなど物語して、詠める
満ち足りて 戻りし国の 空遠く うだいのまこと ひとり味はふ
                  佐伯雄鷹

こは飛鳥物なれど、わがことに帰り来たるをいましめたる言なり
また髪の 話をしたる お前等は さぞや豊かな 頭ならむぞ
                  詠み人しらず

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