作者：３３３ 
あれは、30年以上も前のことだったと思う。はっきりと覚えている。
今はもう崩壊した集落での出来事だった。その山間の群れは、妖精も人型もまぜこぜになって、平和に暮らしていた。牧歌的で典型的な風景だった。一昨日も昨日も今日も、集落の中心、小川沿いの枝豆農場を取り囲んで、ずんだもん達はあれこれ語り合い、はしゃぎ合い、ずんだを分け合い、過ごしていた。僕もその中で、毎日来る同じ楽しさを享受していた。明日からもきっと同じような楽しさを味わうのだろう。なんとなくそう期待を寄せ続け、毎日のようにそれが叶っていた。
転機はいつの間にか訪れていた。ある春の日、枝豆農場の縁に妙な石像が忽然と現れたのだ。いつ誰が置いたのかも分からない。尋ねてみても揃いも揃って首を横に振る。まぁきっと僕達の知らない誰かが勝手に置いたのだろう。尋ねたずんは皆そんな推測を立てて、勝手に満足して、そのままどこかに去った。あまり気にも留めていないようだった。しかしそれが、僕の興味を擽った。
大きさは僕達人型の背より小さく、妖精の背よりは大きいくらいだったと覚えている。表面は風化と苔でくすんでおり、最近彫られたとは到底思えない。だが、全体を見れば神仏か人か何かを模した立像であることは分かった。目じりをぐいと下げ、対して口角はにやりと持ち上がっていて、摩耗で良く分からなかったが、複雑な構造をしているらしい服を着ていた。そして、台座には「まめがみさま」とはっきり深く刻まれていた。僕は「まめがみさま」の笑顔に不思議な安心感を感じると共に、どうも心の底に硬い何かが残るような不安も抱いていた。
僕が像に気づいてから何日か経過したころ、ある一団がしきりに「まめがみさま」を囲んでいるのに気づいた。初め、彼らの数は4、5ずん程度だったと思う。彼らは綺麗とは言えない像を撫でながら、優しい声をかけていた。僕がなぜかと問うと、「それはもちろん『まめがみさま』がすごいからなのだ」と口々に答えた。曰く、「まめがみさま」は枝豆の神で、村の畑を豊かにしてくれるらしい。僕は小さい頃からひねくれものだったから、そんなのはまやかしの類だろうと考えて、信じることはしなかった。
しかし、殆どのずんだもんは純粋無垢だ。他ずんの話は全て本当だと心の底から信じきってしまう。どこからともなく生まれた「まめがみさま」への信仰は日に日に拡大していくのも当然である。集落の各地に散らばっていたずんだもん達は、1ずん、また1ずんと「まめがみさま」に吸い寄せられ、その像を撫で始める。次の週には10ずん。取り囲むずんだもん達がしきりに動き回るので、その次の週は人数が数えられなかった。
集落の流行に敏感なずんだもんが、ほぼ全員「まめがみさま」に集うようになってからは、過半を占める一般層に浸透するほかないので、勢いが加速度的に上昇した。一種のブームが起きたようだった。あっちもこっちも「まめがみさま」。挨拶は勿論のこと、「まめがみさま」の魅力を語り合ったり、「まめがみさま」の隣で固まって食事をしたり、日常のありとあらゆる瞬間に「まめがみさま」が絡んでいく。これほどの流行は、近辺の集落も考慮に入れても稀有であったに違いない。
無論、集落の隅でコソコソ少人数で何かやってた僕には、あまり「まめがみさま」の噂を直接耳にする機会は無かったけどね。大きな集団は苦手なので、山の高い所から枝豆畑を見下ろして、何かやってる様子を遠くから眺めるくらいしか出来なかったと思う。
いつしか、「まめがみさまのうた」や「まめがみさまのおどり」が作られ、何やら特殊な調理法の「まめがみさまのずんだ」なるものも生まれた。大きいとは言えない立像を取り囲んで歌ったり踊ったりする様子はさながら祭りのようだった。毎日が祭りだった。梅雨頃であるにもかかわらず、朝、昼、晩と、しとしと雨に打たれながら、村民は「まめがみさま」の元に集い、そこで「まめがみさま」に様々な奉納をするのだった。
梅雨が過ぎれば、枝豆の収穫時だ。「まめがみさま」と中心メンバーが「話し合って」決めた日に収穫が実施された。風の噂によると、「まめがみさま」が提案したらしい。そうということもあって、ずんだもん達は作業に大いに張り切った。毎年の恒例により、僕も含めた全ずんが参加した。
気づいたのは、「まめがみさま」の影響をあまり受けていなかった僕達友人グループと「まめがみさま」を信仰している大勢の目が違うことだった。彼らは、目を大きく見開き、瞬きをほとんどせず、一心不乱に枝豆の株を引き抜いていく。そのあとは莢を目にも止まらぬ速さでプチプチ採っていく。昨年とは比べ物にならないくらいだ。暑くてたまらないのに、「まめがみさま」への信仰心がずんだもん達にこんな変化をもたらすとは、と驚くばかりであった。早く手を動かせられる秘訣を教えてくれないか、と彼らの1ずんに尋ねようとしてみたが、その殺気立ったような瞳孔に怖気づいてしまい、訊けずじまいに終わってしまう。
その年は豊作に豊作だった。今までにない量の枝豆が採れ、集落の倉庫が豆で溢れかえった。だが、収穫作業に要した期間は記憶にある中では最も短かった。他のずんだもんもそのことに狂喜乱舞だ。僕は思い切って「まめがみさま」周辺の雑踏に潜り込んでみると、豊作も作業の速さも「まめがみさま」のおかげだと称賛する声が全方位から響いてきた。新鮮な豆を叩いて「まめがみさまのずんだ」を拵えて、「まめがみさま」に恭しく跪き献上する者がいて、その周囲を何重もの輪になって「まめがみさまのおどり」を踊る者もいて、「まめがみさまのうた」と大太鼓で囃し立てる者がいた。僕は、夏の熱気と群衆の狂乱で脳がのぼせてしまいそうだったので、慌てて祭りから逃げ帰った。
それからというもの、僕は「まめがみさま」から距離を取るようになってしまっていた。何より怖かった。ほんの何か月か前は長閑な日々が延々と続いていたのに、今や皆が「まめがみさま」を半狂乱になって崇め奉っている。気がおかしくなったかのように毎日が祭り、祭り、祭り。騒ぎの声が谷間を木霊し続ける。数少ない友人も遂に、寂れた石像に惹かれて向こうに行ってしまった。もしかしたら僕は陰で変な奴だと罵られていたかもしれない。馬鹿にされていたかもしれない。でも全て後の祭りにすぎないのだ。
あれは盛夏の只中の只中だったはずだ。熱気が肌に纏わりついて離さない嫌な日。昔からの友人はとっくに汚い石像の傍に飛んで行ってしまったので、僕は一人で、山の北側斜面の薄暗くて涼しい小屋でずんだを頬張っていた。ここからだと集落の中心 ――いつものように耳を焼かれるような音声を出している忌まわしき場所―― がよく見える。目を凝らすと、「まめがみさま」の傍で恐らくは集落の中心人物が何か声を張り上げていた。辺りには数々のずんだもんが座して、その金言っぽいのを真剣に聞いていた。普段と違う様子だ。叫んでいる人型ずんだもんの隣には、子ずんらしき影が見える。僕は気になって斜面を下り、近くで見てみることにした。
上から見下ろせて、且つ声が聞き取れるくらいの丁度良い所を発見した。子ずんらしき影は確かに子ずんだった。泣き叫ぶ妖精の子供。そして、人型は、案の定「まめがみさま」への賛辞をつらつらと語っていた。手にはキラリと輝く何か・・・刃物だった。料理包丁だろうか。人間製の物品はここでは貴重なので、倉庫の奥の奥で大事にしまわれている。それをほじくりだしてきたのだろう。
これから何が起こるか、予想は容易につく。鳥肌が暴れだした。しかし僕は、子ずんを助けようと駆け入ることは出来なかった。自分の命が惜しい僕には到底無理だ。狂信者どもに何をされるか知れたものではない。大切な儀式を蔑ろにされた怒りで、僕を殴打し、引きずり回し、土を口に押し込まれ、重しを付けられた状態で小川に捨てられるかもしれない。もしかしたら、止めに入れば皆が目を覚ましてくれるかもしれないが、僕にはリスクが非常に重く感じられた。
あと一つ、もっともっと大きな理由があった。好奇心だ。僕は今までに体の中を見たことが無い。僕達がどんな構造をしているのか。中に何が入ってるのか。怖いながらも気になってしまった。あの子ずんは哀れにも刃物に切り刻まれ、緑の体液で土を汚すのだろう。その傷口が見たい。四肢を切断するのだろうか。その断面が見たい。内臓を取り出すのだろうか。その造形が見たい。華奢な身体の中には、人生で初めて目にするかもしれない光景が広がっているのだ。僕にはその残酷なときめきを止めることが出来なかった。
今か今かと待った。葛藤を押さえつけて待ち侘びた。ボロボロの石像の隣に立つやかましい人型にはさぁ今すぐ鋭い刃を子ずんに突き立ててほしい・・・。
遂に始まった。語感の良い堅い言葉を決め台詞に、人型が子ずんを地面に置き、喉元に刃を当てて擦る。子ずんからは大きな悲鳴と、予想通り、いや予想以上に大量の緑が威勢よく溢れだした。今までに聞いたことの無いような鋭い絶叫が谷間を埋め尽くす。取り囲んでいるずんだもんは真剣な眼差しで見つめている。勿論僕自身も口をぽかんと開けながら視線を硬直させていた。ありとあらゆる関節を曲直させて苦しみを表現する子ずん。ぐいと首に食い込む包丁は無慈悲にも前後に動いて、救済が得られないことを知らしめる。ほどなくして子ずんは痙攣を始め、静かになった。血だまりが包丁の持ち主を汚す。断面の摩擦によって小さな胴体も一緒に揺れていた。
高々と持ち上げられたそれは、目を静かに閉じて、体液に汚染された醜い頭部だった。はっきり言って汚い代物。ポタポタと汁を垂らすものだから余計だ。それにも関わらず、観衆から拍手がどこからともなく響きはじめ、それが全体に行き渡る。僕もつい手を叩きそうになり手を動かす。だが、寸前のところでやめた。僕は「まめがみさま」が嫌いだからだ。あいにく、生贄の儀式に一度呑まれてしまったのだが、間一髪で「まめがみさま」に全身が染まってしまうのを防ぐことが出来た。危なかった。
それと同時にどっと暑さが体に戻って来る。そうだ。今日はむさ苦しい日。思い出した。逆に肝がズンズン冷える。あの光景は確かに異常だったと僕の体が教えてくれた。死骸を片づける集団を尻目に、僕は集落外れの小屋に逃げ帰った。
あれからというもの、僕は小屋に引きこもってしまった。他のずんだもんが得体の知れない妖怪に見えてしまうのだ。今まで同胞を殺すことさえしなかった、あの時のずんだもんと、「まめがみさま」以後のずんだもんは本当に同一人物なのか？ 知らず知らずのうちに、同じような見た目をしたずんだもんじゃない別の「何か」に入れ替わってしまったのではないか？ そう疑問を投げかけてしまいたくなる。しかし、答えを探す術はどこにも無かった。
食事は夜な夜な、「まめがみさま」の周りで雑魚寝しているずんだもんを避けて、倉庫から枝豆を盗めばよかった。水は小川から汲めばいい。案外一人でもなんとかなるもんだ。ただ、寂しさと退屈さは埋め合わしにくい。なので、普段行かないような遠くの山に出かけたりもした。だが、ある時ガサガサと茂みがひとりでに音を鳴らしていたのが怖くて、辞めてしまった。
初秋。夏の暑さが和らぐような和らがないような時期。生贄の儀式が何度も何度も行われた。正直なところ、本当はまだあの好奇心があるのは認める。しかしながら、「まめがみさま」には絶対に近づきたくないのだ。なのであの時からは一度も儀式を見てはいない。
晴れ渡る空から曇天、雨天へと天気が次第に表情を変えた。それに伴って、風が強くなっていく。毎年恒例の台風だ。しかし、恒例とはいってもこの時は特段強かった。僕の小屋をバチバチと打ち付ける大きな雨粒と、木々を無駄に騒がせる突風の群れが未だに印象に残っている。集落の中心に目をやると、やはり、というべきか、何故か、というべきか、案の定「まめがみさま」の取り巻きが居た。さも当然の行いをしているかのように、「まめがみさま」に傘をかぶせ、必死になって励ましの言葉を訴えているようだった。
冷め切った僕の心には荒唐無稽に映った。そんなに心配なら安全な場所に動かせばいいのにと思ったが、彼らにはそこまで考える余力が無いのか、もしくはその場所に小汚い石くれが佇んでいることに意味があるのだろうか。考えを巡らせてもあまり意味はない。暇潰しに眺めてみることにした。
村民・・・だったような何か達は、入れ代わり立ち代わり、「まめがみさま」の「苦痛」を抑えるような行動ばかりしていた。ある者は疲れか服がびしょ濡れになったかで家に戻ったり、またある者は人間から手に入れたレインコートを「まめがみさま」に着せようとしたり。しばらくしてから気づいたが、小屋の窓から心配そうに眺めている者もいた。
突如、川の上流の方から轟音が鳴り響いた。見る見るうちに川の水位が上がる。洪水だった。（後から聞けば、老朽化したダムが決壊したらしい。）山が底から唸っているかのように揺れる。僕が雨宿りしていたお気に入りの小屋も軋みだす。雨と泥の塊が川を駆け降りるその先は・・・、枝豆畑だ。そして、「まめがみさま」だ。
あれよあれよという間に茶色の波に沈んでいく畑。川沿いの家も流れにもぎ取られていく。背丈の低い「まめがみさま」も取り巻きも一瞬にして水面の底だ。どこからから悲鳴が聞こえる。家から飛び出す人型たち。空を飛び回る妖精たち。幸い、標高の高い所にある僕の小屋は大丈夫そうだった。
外に出たずんだもんが向かう先は、「まめがみさま」だった。自らの命を顧みずに「まめがみさま」を助けようと、引き揚げようと、次々に泥水に飛び込む。勇敢にも率先して波に飛び込む者。慄いているのか、他ずんと一緒に入水しようとする者。様々だ。何十ずんもが続々と岸辺に集い、次々と川底の「まめがみさま」に向かう。時たま、下流の方では、救出に失敗したずんだもんの体の一部が、水から顔を出したり引っ込めたりする。遠くから見たら皆の試みが不発に終わっていることは火を見るよりも明らかなのだが、当事者たちはそのことに最期まで気づかなかったようだ。狂信者たちはそのまま川底に消えてしまった。
次の日は晴れていた。正確には、台風に取り残された風がヒュウヒュウ吹いて、厚めの雲の群れを飛ばしていた。下を見やると、川はすっかり大人しく澄ました顔をしていたので、僕は一歩一歩、濡れた石の表面に気を配りながら、少しづつ山を下り、様子を確認することにした。
しんと静まり返った集落。無事だった小屋からは未だに滴がポタポタ落ちている。畑の土はえぐれており、置いてあった農具ごと川が吹き飛ばしたようだ。「まめがみさま」のあった場所には、ただ、やや凹んだ穴があるのみだった。ここに刺さっていたのだろう。川岸の小屋が建っていた土地は、元からそこには何も無かったかのような姿を見せていた。
それにしても、朝なのに誰もいない。「まめがみさま」との別れを惜しむ集団が居てもおかしくはないような気がする。残っている家々の扉をコンコン叩いてみる。返事はない。失礼を承知で開けてみれば、さっきまで誰かが居たような生活感に満ちていた空間が広がっていた。だが、住民はいない。隣の小屋の扉を開けてもそうだ。その隣もそうだった。その隣も・・・。結局、この集落には僕しか生き残っていなかったようだ。
何故だ。何が彼らを此処まで狂わせたのだ。一人残された僕はどうしたらいいのだ。僕はこれからどうやって生きていけばいい。最後の一軒の前で僕はへたり込んでしまった。こんな常識はずれな出来事があっていいものか。絶対夢だ。夢に違いない。しかし、頬を叩けば普通に痛かった。膝を殴っても痛かった。何だよ。どうしてだよ。全てがあいつのせいだ。「まめがみさま」のせいだ。こうなるならあの時友人を止めるべきだった。生贄の儀式に割り込むべきだった。なぜあの時何もしなかった。僕は、僕は・・・。
あの凹んだ穴に急行し、斜面を思いっ切り蹴ってみた。何も起きるはずがない。ただ湿った泥が、靴にねっとり付着しただけだった。
日が高くなったころ、僕は倉庫の食糧を見繕って、泥が付いていない清潔そうな枝豆をちまちま摘んだ。涙の味がした。そのまま僕は膝を震わせながら自分の小屋に帰り、集落だったものを背にして寝てしまった。
夕方、声がした。僕に話しかける声だ。もしや偶然見つけられなかっただけで、生残者が他にもいるのか。衝撃ともいえるその音波に応じて勢いよく振り向くと、隣の集落のずんだもんだった。昨晩の轟音を心配してこちらに来たら、誰もおらず非常に恐慌していたところ、木々に隠れ気味だった僕の小屋を見つけて駆け付けたそうだ。何があったのかと早口で問う。僕はまだ落ち着かない頭で、ゆっくりと、たどたどしく事の顛末を話した。唐突に出現した「まめがみさま」への厚い信仰、その石像のために執り行われた生贄の儀式、そして洪水・・・。
隣村のずんだもんは意味の分からない様子で居た。「まめがみさま」そのものを知らなかったらしい。僕の集落はそこまで孤立はしていないはずで、適度に他との交流はある。しかも、この村の誰もが「まめがみさま」を隠そうとはしていなかった。それなのにどうしてか、「まめがみさま」の存在はここから漏れ出ることは無かったようだ。
隣は僕を保護してくれた。今でも感謝している。それからは、僕は隣の谷で暮らすことになった。そこのずんだもん達は、僕の話を聞いて、山を挟んで狂乱が存在していたことにひどく狼狽し、力のある者が少し調査したあとは、僕の住んでいた土地を禁足地とした。立ち入ったものは重い罰を受けるとも決められた。
30年がたった今ではすっかり、何もかもが森の中にうずもれている。もはやあそこで何があったのかは、分からずじまいだろう。「まめがみさま」って、一体何だったんだろうか。
今はもう崩壊した集落での出来事だった。その山間の群れは、妖精も人型もまぜこぜになって、平和に暮らしていた。牧歌的で典型的な風景だった。一昨日も昨日も今日も、集落の中心、小川沿いの枝豆農場を取り囲んで、ずんだもん達はあれこれ語り合い、はしゃぎ合い、ずんだを分け合い、過ごしていた。僕もその中で、毎日来る同じ楽しさを享受していた。明日からもきっと同じような楽しさを味わうのだろう。なんとなくそう期待を寄せ続け、毎日のようにそれが叶っていた。
転機はいつの間にか訪れていた。ある春の日、枝豆農場の縁に妙な石像が忽然と現れたのだ。いつ誰が置いたのかも分からない。尋ねてみても揃いも揃って首を横に振る。まぁきっと僕達の知らない誰かが勝手に置いたのだろう。尋ねたずんは皆そんな推測を立てて、勝手に満足して、そのままどこかに去った。あまり気にも留めていないようだった。しかしそれが、僕の興味を擽った。
大きさは僕達人型の背より小さく、妖精の背よりは大きいくらいだったと覚えている。表面は風化と苔でくすんでおり、最近彫られたとは到底思えない。だが、全体を見れば神仏か人か何かを模した立像であることは分かった。目じりをぐいと下げ、対して口角はにやりと持ち上がっていて、摩耗で良く分からなかったが、複雑な構造をしているらしい服を着ていた。そして、台座には「まめがみさま」とはっきり深く刻まれていた。僕は「まめがみさま」の笑顔に不思議な安心感を感じると共に、どうも心の底に硬い何かが残るような不安も抱いていた。
僕が像に気づいてから何日か経過したころ、ある一団がしきりに「まめがみさま」を囲んでいるのに気づいた。初め、彼らの数は4、5ずん程度だったと思う。彼らは綺麗とは言えない像を撫でながら、優しい声をかけていた。僕がなぜかと問うと、「それはもちろん『まめがみさま』がすごいからなのだ」と口々に答えた。曰く、「まめがみさま」は枝豆の神で、村の畑を豊かにしてくれるらしい。僕は小さい頃からひねくれものだったから、そんなのはまやかしの類だろうと考えて、信じることはしなかった。
しかし、殆どのずんだもんは純粋無垢だ。他ずんの話は全て本当だと心の底から信じきってしまう。どこからともなく生まれた「まめがみさま」への信仰は日に日に拡大していくのも当然である。集落の各地に散らばっていたずんだもん達は、1ずん、また1ずんと「まめがみさま」に吸い寄せられ、その像を撫で始める。次の週には10ずん。取り囲むずんだもん達がしきりに動き回るので、その次の週は人数が数えられなかった。
集落の流行に敏感なずんだもんが、ほぼ全員「まめがみさま」に集うようになってからは、過半を占める一般層に浸透するほかないので、勢いが加速度的に上昇した。一種のブームが起きたようだった。あっちもこっちも「まめがみさま」。挨拶は勿論のこと、「まめがみさま」の魅力を語り合ったり、「まめがみさま」の隣で固まって食事をしたり、日常のありとあらゆる瞬間に「まめがみさま」が絡んでいく。これほどの流行は、近辺の集落も考慮に入れても稀有であったに違いない。
無論、集落の隅でコソコソ少人数で何かやってた僕には、あまり「まめがみさま」の噂を直接耳にする機会は無かったけどね。大きな集団は苦手なので、山の高い所から枝豆畑を見下ろして、何かやってる様子を遠くから眺めるくらいしか出来なかったと思う。
いつしか、「まめがみさまのうた」や「まめがみさまのおどり」が作られ、何やら特殊な調理法の「まめがみさまのずんだ」なるものも生まれた。大きいとは言えない立像を取り囲んで歌ったり踊ったりする様子はさながら祭りのようだった。毎日が祭りだった。梅雨頃であるにもかかわらず、朝、昼、晩と、しとしと雨に打たれながら、村民は「まめがみさま」の元に集い、そこで「まめがみさま」に様々な奉納をするのだった。
梅雨が過ぎれば、枝豆の収穫時だ。「まめがみさま」と中心メンバーが「話し合って」決めた日に収穫が実施された。風の噂によると、「まめがみさま」が提案したらしい。そうということもあって、ずんだもん達は作業に大いに張り切った。毎年の恒例により、僕も含めた全ずんが参加した。
気づいたのは、「まめがみさま」の影響をあまり受けていなかった僕達友人グループと「まめがみさま」を信仰している大勢の目が違うことだった。彼らは、目を大きく見開き、瞬きをほとんどせず、一心不乱に枝豆の株を引き抜いていく。そのあとは莢を目にも止まらぬ速さでプチプチ採っていく。昨年とは比べ物にならないくらいだ。暑くてたまらないのに、「まめがみさま」への信仰心がずんだもん達にこんな変化をもたらすとは、と驚くばかりであった。早く手を動かせられる秘訣を教えてくれないか、と彼らの1ずんに尋ねようとしてみたが、その殺気立ったような瞳孔に怖気づいてしまい、訊けずじまいに終わってしまう。
その年は豊作に豊作だった。今までにない量の枝豆が採れ、集落の倉庫が豆で溢れかえった。だが、収穫作業に要した期間は記憶にある中では最も短かった。他のずんだもんもそのことに狂喜乱舞だ。僕は思い切って「まめがみさま」周辺の雑踏に潜り込んでみると、豊作も作業の速さも「まめがみさま」のおかげだと称賛する声が全方位から響いてきた。新鮮な豆を叩いて「まめがみさまのずんだ」を拵えて、「まめがみさま」に恭しく跪き献上する者がいて、その周囲を何重もの輪になって「まめがみさまのおどり」を踊る者もいて、「まめがみさまのうた」と大太鼓で囃し立てる者がいた。僕は、夏の熱気と群衆の狂乱で脳がのぼせてしまいそうだったので、慌てて祭りから逃げ帰った。
それからというもの、僕は「まめがみさま」から距離を取るようになってしまっていた。何より怖かった。ほんの何か月か前は長閑な日々が延々と続いていたのに、今や皆が「まめがみさま」を半狂乱になって崇め奉っている。気がおかしくなったかのように毎日が祭り、祭り、祭り。騒ぎの声が谷間を木霊し続ける。数少ない友人も遂に、寂れた石像に惹かれて向こうに行ってしまった。もしかしたら僕は陰で変な奴だと罵られていたかもしれない。馬鹿にされていたかもしれない。でも全て後の祭りにすぎないのだ。
あれは盛夏の只中の只中だったはずだ。熱気が肌に纏わりついて離さない嫌な日。昔からの友人はとっくに汚い石像の傍に飛んで行ってしまったので、僕は一人で、山の北側斜面の薄暗くて涼しい小屋でずんだを頬張っていた。ここからだと集落の中心 ――いつものように耳を焼かれるような音声を出している忌まわしき場所―― がよく見える。目を凝らすと、「まめがみさま」の傍で恐らくは集落の中心人物が何か声を張り上げていた。辺りには数々のずんだもんが座して、その金言っぽいのを真剣に聞いていた。普段と違う様子だ。叫んでいる人型ずんだもんの隣には、子ずんらしき影が見える。僕は気になって斜面を下り、近くで見てみることにした。
上から見下ろせて、且つ声が聞き取れるくらいの丁度良い所を発見した。子ずんらしき影は確かに子ずんだった。泣き叫ぶ妖精の子供。そして、人型は、案の定「まめがみさま」への賛辞をつらつらと語っていた。手にはキラリと輝く何か・・・刃物だった。料理包丁だろうか。人間製の物品はここでは貴重なので、倉庫の奥の奥で大事にしまわれている。それをほじくりだしてきたのだろう。
これから何が起こるか、予想は容易につく。鳥肌が暴れだした。しかし僕は、子ずんを助けようと駆け入ることは出来なかった。自分の命が惜しい僕には到底無理だ。狂信者どもに何をされるか知れたものではない。大切な儀式を蔑ろにされた怒りで、僕を殴打し、引きずり回し、土を口に押し込まれ、重しを付けられた状態で小川に捨てられるかもしれない。もしかしたら、止めに入れば皆が目を覚ましてくれるかもしれないが、僕にはリスクが非常に重く感じられた。
あと一つ、もっともっと大きな理由があった。好奇心だ。僕は今までに体の中を見たことが無い。僕達がどんな構造をしているのか。中に何が入ってるのか。怖いながらも気になってしまった。あの子ずんは哀れにも刃物に切り刻まれ、緑の体液で土を汚すのだろう。その傷口が見たい。四肢を切断するのだろうか。その断面が見たい。内臓を取り出すのだろうか。その造形が見たい。華奢な身体の中には、人生で初めて目にするかもしれない光景が広がっているのだ。僕にはその残酷なときめきを止めることが出来なかった。
今か今かと待った。葛藤を押さえつけて待ち侘びた。ボロボロの石像の隣に立つやかましい人型にはさぁ今すぐ鋭い刃を子ずんに突き立ててほしい・・・。
遂に始まった。語感の良い堅い言葉を決め台詞に、人型が子ずんを地面に置き、喉元に刃を当てて擦る。子ずんからは大きな悲鳴と、予想通り、いや予想以上に大量の緑が威勢よく溢れだした。今までに聞いたことの無いような鋭い絶叫が谷間を埋め尽くす。取り囲んでいるずんだもんは真剣な眼差しで見つめている。勿論僕自身も口をぽかんと開けながら視線を硬直させていた。ありとあらゆる関節を曲直させて苦しみを表現する子ずん。ぐいと首に食い込む包丁は無慈悲にも前後に動いて、救済が得られないことを知らしめる。ほどなくして子ずんは痙攣を始め、静かになった。血だまりが包丁の持ち主を汚す。断面の摩擦によって小さな胴体も一緒に揺れていた。
高々と持ち上げられたそれは、目を静かに閉じて、体液に汚染された醜い頭部だった。はっきり言って汚い代物。ポタポタと汁を垂らすものだから余計だ。それにも関わらず、観衆から拍手がどこからともなく響きはじめ、それが全体に行き渡る。僕もつい手を叩きそうになり手を動かす。だが、寸前のところでやめた。僕は「まめがみさま」が嫌いだからだ。あいにく、生贄の儀式に一度呑まれてしまったのだが、間一髪で「まめがみさま」に全身が染まってしまうのを防ぐことが出来た。危なかった。
それと同時にどっと暑さが体に戻って来る。そうだ。今日はむさ苦しい日。思い出した。逆に肝がズンズン冷える。あの光景は確かに異常だったと僕の体が教えてくれた。死骸を片づける集団を尻目に、僕は集落外れの小屋に逃げ帰った。
あれからというもの、僕は小屋に引きこもってしまった。他のずんだもんが得体の知れない妖怪に見えてしまうのだ。今まで同胞を殺すことさえしなかった、あの時のずんだもんと、「まめがみさま」以後のずんだもんは本当に同一人物なのか？ 知らず知らずのうちに、同じような見た目をしたずんだもんじゃない別の「何か」に入れ替わってしまったのではないか？ そう疑問を投げかけてしまいたくなる。しかし、答えを探す術はどこにも無かった。
食事は夜な夜な、「まめがみさま」の周りで雑魚寝しているずんだもんを避けて、倉庫から枝豆を盗めばよかった。水は小川から汲めばいい。案外一人でもなんとかなるもんだ。ただ、寂しさと退屈さは埋め合わしにくい。なので、普段行かないような遠くの山に出かけたりもした。だが、ある時ガサガサと茂みがひとりでに音を鳴らしていたのが怖くて、辞めてしまった。
初秋。夏の暑さが和らぐような和らがないような時期。生贄の儀式が何度も何度も行われた。正直なところ、本当はまだあの好奇心があるのは認める。しかしながら、「まめがみさま」には絶対に近づきたくないのだ。なのであの時からは一度も儀式を見てはいない。
晴れ渡る空から曇天、雨天へと天気が次第に表情を変えた。それに伴って、風が強くなっていく。毎年恒例の台風だ。しかし、恒例とはいってもこの時は特段強かった。僕の小屋をバチバチと打ち付ける大きな雨粒と、木々を無駄に騒がせる突風の群れが未だに印象に残っている。集落の中心に目をやると、やはり、というべきか、何故か、というべきか、案の定「まめがみさま」の取り巻きが居た。さも当然の行いをしているかのように、「まめがみさま」に傘をかぶせ、必死になって励ましの言葉を訴えているようだった。
冷め切った僕の心には荒唐無稽に映った。そんなに心配なら安全な場所に動かせばいいのにと思ったが、彼らにはそこまで考える余力が無いのか、もしくはその場所に小汚い石くれが佇んでいることに意味があるのだろうか。考えを巡らせてもあまり意味はない。暇潰しに眺めてみることにした。
村民・・・だったような何か達は、入れ代わり立ち代わり、「まめがみさま」の「苦痛」を抑えるような行動ばかりしていた。ある者は疲れか服がびしょ濡れになったかで家に戻ったり、またある者は人間から手に入れたレインコートを「まめがみさま」に着せようとしたり。しばらくしてから気づいたが、小屋の窓から心配そうに眺めている者もいた。
突如、川の上流の方から轟音が鳴り響いた。見る見るうちに川の水位が上がる。洪水だった。（後から聞けば、老朽化したダムが決壊したらしい。）山が底から唸っているかのように揺れる。僕が雨宿りしていたお気に入りの小屋も軋みだす。雨と泥の塊が川を駆け降りるその先は・・・、枝豆畑だ。そして、「まめがみさま」だ。
あれよあれよという間に茶色の波に沈んでいく畑。川沿いの家も流れにもぎ取られていく。背丈の低い「まめがみさま」も取り巻きも一瞬にして水面の底だ。どこからから悲鳴が聞こえる。家から飛び出す人型たち。空を飛び回る妖精たち。幸い、標高の高い所にある僕の小屋は大丈夫そうだった。
外に出たずんだもんが向かう先は、「まめがみさま」だった。自らの命を顧みずに「まめがみさま」を助けようと、引き揚げようと、次々に泥水に飛び込む。勇敢にも率先して波に飛び込む者。慄いているのか、他ずんと一緒に入水しようとする者。様々だ。何十ずんもが続々と岸辺に集い、次々と川底の「まめがみさま」に向かう。時たま、下流の方では、救出に失敗したずんだもんの体の一部が、水から顔を出したり引っ込めたりする。遠くから見たら皆の試みが不発に終わっていることは火を見るよりも明らかなのだが、当事者たちはそのことに最期まで気づかなかったようだ。狂信者たちはそのまま川底に消えてしまった。
次の日は晴れていた。正確には、台風に取り残された風がヒュウヒュウ吹いて、厚めの雲の群れを飛ばしていた。下を見やると、川はすっかり大人しく澄ました顔をしていたので、僕は一歩一歩、濡れた石の表面に気を配りながら、少しづつ山を下り、様子を確認することにした。
しんと静まり返った集落。無事だった小屋からは未だに滴がポタポタ落ちている。畑の土はえぐれており、置いてあった農具ごと川が吹き飛ばしたようだ。「まめがみさま」のあった場所には、ただ、やや凹んだ穴があるのみだった。ここに刺さっていたのだろう。川岸の小屋が建っていた土地は、元からそこには何も無かったかのような姿を見せていた。
それにしても、朝なのに誰もいない。「まめがみさま」との別れを惜しむ集団が居てもおかしくはないような気がする。残っている家々の扉をコンコン叩いてみる。返事はない。失礼を承知で開けてみれば、さっきまで誰かが居たような生活感に満ちていた空間が広がっていた。だが、住民はいない。隣の小屋の扉を開けてもそうだ。その隣もそうだった。その隣も・・・。結局、この集落には僕しか生き残っていなかったようだ。
何故だ。何が彼らを此処まで狂わせたのだ。一人残された僕はどうしたらいいのだ。僕はこれからどうやって生きていけばいい。最後の一軒の前で僕はへたり込んでしまった。こんな常識はずれな出来事があっていいものか。絶対夢だ。夢に違いない。しかし、頬を叩けば普通に痛かった。膝を殴っても痛かった。何だよ。どうしてだよ。全てがあいつのせいだ。「まめがみさま」のせいだ。こうなるならあの時友人を止めるべきだった。生贄の儀式に割り込むべきだった。なぜあの時何もしなかった。僕は、僕は・・・。
あの凹んだ穴に急行し、斜面を思いっ切り蹴ってみた。何も起きるはずがない。ただ湿った泥が、靴にねっとり付着しただけだった。
日が高くなったころ、僕は倉庫の食糧を見繕って、泥が付いていない清潔そうな枝豆をちまちま摘んだ。涙の味がした。そのまま僕は膝を震わせながら自分の小屋に帰り、集落だったものを背にして寝てしまった。
夕方、声がした。僕に話しかける声だ。もしや偶然見つけられなかっただけで、生残者が他にもいるのか。衝撃ともいえるその音波に応じて勢いよく振り向くと、隣の集落のずんだもんだった。昨晩の轟音を心配してこちらに来たら、誰もおらず非常に恐慌していたところ、木々に隠れ気味だった僕の小屋を見つけて駆け付けたそうだ。何があったのかと早口で問う。僕はまだ落ち着かない頭で、ゆっくりと、たどたどしく事の顛末を話した。唐突に出現した「まめがみさま」への厚い信仰、その石像のために執り行われた生贄の儀式、そして洪水・・・。
隣村のずんだもんは意味の分からない様子で居た。「まめがみさま」そのものを知らなかったらしい。僕の集落はそこまで孤立はしていないはずで、適度に他との交流はある。しかも、この村の誰もが「まめがみさま」を隠そうとはしていなかった。それなのにどうしてか、「まめがみさま」の存在はここから漏れ出ることは無かったようだ。
隣は僕を保護してくれた。今でも感謝している。それからは、僕は隣の谷で暮らすことになった。そこのずんだもん達は、僕の話を聞いて、山を挟んで狂乱が存在していたことにひどく狼狽し、力のある者が少し調査したあとは、僕の住んでいた土地を禁足地とした。立ち入ったものは重い罰を受けるとも決められた。
30年がたった今ではすっかり、何もかもが森の中にうずもれている。もはやあそこで何があったのかは、分からずじまいだろう。「まめがみさま」って、一体何だったんだろうか。
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このページへのコメント
圧巻の超大作
狂気と不気味さがたまりませんね
他の作者の話ではずんだもんは信じやすい性質があるらしいから、誰かが吹き込んだと考えるべきだよな。
その年が不作だったら不作で像は壊されるだけで損害はない。もっとも、天候などを見て豊作になることを見越して自滅するようにやったのだろう。
てっきり人間がずんだもんを駆除するために作った機械だと思った。
最後洪水が襲ったのは、今までの豊作に使ったパワーを溺死した連中の生気で補充するためかな。
山奥で静かに暮らしていた善良で無垢なずんだもん達の村を蝕み狂わせ、そして滅ぼした"狂気"……。
あの生け贄などの凶行は祭りのし過ぎで枝豆が枯渇したのか?結局｢まめがみさま｣はなんだったのか?そして今それは何処に……。
こういう準ホラーで準民話みたいな話大好きなのだ
また読みたいのだ