第1種放射線取扱主任者が放射能とは何か、人体に対する影響は、法令はどのようになっているのか、についてわかりやすく解説します。マスコミやネット上の間違ったり、偏った情報に流されまくっている状況に憂慮しています。何か質問がある場合、掲示板を利用してください。気づいたら分かる範囲内でご解答します。

RIを取り扱う場合には、放射線防護の観点から様々な管理が必要です。安全管理の基本的な考え方は。ICRPの勧告に示された概念にもとづいていますが、実際には法令で定められた限度値を超えないよう管理する必要があります。もちろん、ALARAの精神に従って、実施しなければなりません。
施設・環境の管理を厳重に行っても、実際にRIを作業者が直接取扱う場合には、作業者の被ばくは避けることはできません。そこで、管理者のみならず、作業者も作業によって受ける被ばく状況を把握しておく必要があります。このような管理を個人モニタリングといいます。
個人の被ばく状況の把握はあくまで過去の結果であり、作業環境の改善等事後対策に役立つことではありますが、予防措置にはなりえません。すなわち、個人モニタリングは放射線防護対策の補完をなすものであることを認識しておく必要があります

個人被ばく線量評価

外部被ばく

個人線量計の種類と特徴

内部被ばく

内部被ばくは大型測定装置や面倒な測定・計算が必要なだけでなく、作業環境条件等種々の情報も必要であるので、簡単には算定できません。また、外部被ばくに比べてその算定制度も高くありません。
非密封RIを取り扱っていると汚染事故を起こす場合があります。また、他の作業者が汚染させた場合であっても、汚染が発見されるまでに汚染が拡大し、二次汚染を起こす場合もあります。汚染による被ばくは、外部被ばくよりも内部被ばくによる影響が一般に大きいので、汚染した場合には内部被ばく線量の評価が必要となります。通常、内部被ばく線量の評価が必要なのは、3カ月における内部被ばく線量当量または1回の作業における内部被ばく線量当量が2 mSvを超えると予想される場合とされていますが、汚染事故が起きた場合には、概算であっても評価すべきである、とされています。
預託線量当量
内部被ばくにおいて、組織・臓器の吸収線量を直接求めることは難しいです。また、摂取された放射性物質が、放射性壊変および排泄により減少する間、継続して被ばくを受けることになります。これらの理由から、放射性物質の摂取量を求め、1年間の摂取により、摂取後、50年間における総線量当量を算定することにより線量当量限度と比較する方法が用いられています。この50年間は、職業被ばくの場合により使用する期間です。この総線量当量を預託線量当量といいます。
身体負荷量
内部比なく線量当量の評価は摂取量に基づいて行われますが、それには、まず体内に存在する放射性物質の量(身体負荷量:Bq)を求めることから行います。身体負荷量を求める方法には以下の二つがあります。

a) 体外計測法
全身カウンタ、肺モニタなどの装置を用いて、身体あるいは臓器・組織中に含まれている放射性物質の量を体外から直接測定します。このため直接法とも呼ばれています。
放射性物質の定量以外に、汚染核種の同定、沈着部位の同定も可能です。
この測定法は、体外にある検出器に到達することができる放射線を放出する放射性核種にのみ限定されます。したがって、α線あるいはβ線のみを放出する核種には適用できません。また、対象者の身体表面に汚染があると誤った結果を与えることになります。

b) バイオアッセイ法
排泄物中の放射性物質の分析から、間接的に、身体負荷量を求める方法です。体液(血液あるいはリンパ液)中に取り込まれた放射性物質の場合には、通常尿が分析試料として用いられます。
排泄物中の放射性核種がγ線を放出する場合には、シンチレーション検出器あるいはGe半導体検出器を用いて直接測定できますが、α線あるいはβ線放出核種を分析する場合には、試料に対して種々の化学的処理などの前処理を必要とします。しかし、体外計測法とは異なり、すべての核種に適用できます。
排泄物中の放射性物質の量から放射性核種ごとに排泄率関数を用いて身体負荷量を算定することになりますが、放射性物質の排泄率には個人差があるので正確な値を得ることは難しいです。
摂取量
放射性物質の摂取量の算定は、体外計測法またはバイオアッセイ法より求めた身体負荷量を用いる方法、および空気中放射能濃度から直接求める方法があります。

a) 体外計測法
体外計測法により求めた測定時点での身体負荷量から、放射性核種ごとの残留関数を用いて、摂取時点での全身あるいは肺の放射性物質の量を求めます。この残留関数および前項の排泄率関数等は、ICRPのPubl.54などに示されています。
通常、体外計測は、摂取直後の比較的短時間に体外へ排泄される成分が移行を終了した後に行われるので、長期残留成分を測定していることになります。したがって、ここで求めた放射性物質の量は長期残留成分の初期値です。すなわち、吸入摂取の場合、吸入直後の体内量は摂取量の0.63とします。経口摂取の場合は1ですが、体液への吸収割合が関係してきます。

b) バイオアッセイ法
バイオアッセイ法により求めた試料中の放射性物質の量から、排泄率関数と全排泄に対する、例えば尿中排泄の割合などを用いることにより摂取量を算定することができます。

c) 空気中放射能濃度からの算定
空気中放射能濃度から求めた空気中の放射性物質の量を用い、吸入摂取による放射性物質の摂取量を算定することができます。しかし、実際に人が呼吸する空気(呼吸域)中の濃度測定が困難なため、他の方法に比べて不正確です。
摂取量は作業者が吸入する空気量(通常は毎分0.02 m3とされている)に空気中の放射能濃度を乗じて求めますが、呼吸域の濃度と定置型モニタの測定結果との違いを考慮して、濃度比を実測していない場合は安全側に10を乗じます。
また、防護マスク等を着用している場合にはその効果を考慮して算定する必要があります。

健康診断

放射線業務従事者に対する健康診断は、放射線管理の一環として行われるだけでなく、広く産業衛生の一環としても行われるものです。
この健康診断の目的は二つあります。ひとつは、これから放射線業務に従事しようとする人の健康状況を評価し、放射線業務に従事することが適当であるかどうかを判断することにあり、もうひとつは、事前に、正常な健康状態での医学的所見を求めておき、何らかの身体的変化が生じた場合、それが被ばくによるものかどうかの判定の基礎的資料にするためです。
したがって、定期的な受診が不可欠です。
また、法令上では、健康診断を省略している場合であっても、被ばくが線量限度の10分の3を超えると、ただちに健康診断を行うことになっているのも、このような理由によります。

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