最終更新: isotope_manager 2012年06月27日(水) 23:59:20履歴
人体が受ける放射線には自然放射線と人工放射線があります。これらの放射線からの影響としては、RIからの放射線による外部被ばくとRIの体内摂取による内部被ばくの両方を考慮しなければなりません。とくに、内部被ばくについては、取り込みがどのように行われるか、取り込まれたRIが主にどの組織に影響を与えるか、などについて知っておく必要があります。
また、これらを取り扱う際には法令上の規制を受けますが、それらの規制値はどのような考えに基づいているかについて知っていることも放射線防護上重要です。
ここでは、放射線防護を考えるうえでの基本的な事項について記述します。
また、これらを取り扱う際には法令上の規制を受けますが、それらの規制値はどのような考えに基づいているかについて知っていることも放射線防護上重要です。
ここでは、放射線防護を考えるうえでの基本的な事項について記述します。
自然放射線には、宇宙線、地殻放射線、体内に存在する放射能からの放射線があります。宇宙線の強度は緯度や高度により異なっており、大地放射線も地域により大きく異なっていることが知られています。
国際科学委員会(UNSCEAR : United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)の1993年報告によると、自然放射線源からの世界的な平均年実効線量は2.4 mSvであると推定され、そのうち約1.1 mSvは基本的なバックグランド放射線によるもので、1.3 mSvはラドン被ばくによるものです。
自然放射線源から成人が受ける年平均実効線量
RIの利用拡大に伴って、人工放射線の種類が増すとともに、放射線による被ばくの可能性も増大しています。最近はその影響が減少してきたとはいえ、不特定多数の人々に影響を与えてきたものの代表に、核実験による放射性降下物(フォールアウト)があります。また、原子力発電等大規模施設の増加に伴って、放射性廃棄物などによる環境放射能レベルの増加が予想されます。
そのほか、人が被ばくする人工放射線として最も身近なものは、放射線または放射性医薬品による診断・治療などによる医療被ばくがあります。
環境に放出された放射性物質は、種々の経路を経て人体に取り込まれる場合があります。さらに、環境中に放出された時点で濃度が低い場合であっても、種々の経路を経て濃度が高くなる場合があります。このような現象を濃縮といいます。
国際科学委員会(UNSCEAR : United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiation)の1993年報告によると、自然放射線源からの世界的な平均年実効線量は2.4 mSvであると推定され、そのうち約1.1 mSvは基本的なバックグランド放射線によるもので、1.3 mSvはラドン被ばくによるものです。
自然放射線源から成人が受ける年平均実効線量
被ばく源 | 年実効線量(mSv) |
通常のバックグラウンド地域 | |
宇宙線 | 0.38 |
宇宙線生成放射性核種 | 0.01 |
地球起源の放射線:外部被ばく | 0.46 |
地球起源の放射線:内部被ばく(ラドンを除く) | 0.23 |
地球起源の放射線:ラドンとその壊変生成物による内部被ばく | |
222Rn吸入 | 1.2 |
220Rn吸入 | 0.07 |
222Rn経口摂取 | 0.005 |
合計 | 2.4 |
RIの利用拡大に伴って、人工放射線の種類が増すとともに、放射線による被ばくの可能性も増大しています。最近はその影響が減少してきたとはいえ、不特定多数の人々に影響を与えてきたものの代表に、核実験による放射性降下物(フォールアウト)があります。また、原子力発電等大規模施設の増加に伴って、放射性廃棄物などによる環境放射能レベルの増加が予想されます。
そのほか、人が被ばくする人工放射線として最も身近なものは、放射線または放射性医薬品による診断・治療などによる医療被ばくがあります。
環境に放出された放射性物質は、種々の経路を経て人体に取り込まれる場合があります。さらに、環境中に放出された時点で濃度が低い場合であっても、種々の経路を経て濃度が高くなる場合があります。このような現象を濃縮といいます。
RIを取り扱う場合、放射線による人体への影響をより少なくするように種々の対策を立てる必要があります。そのためには取り扱う方法についても一定の基準を決め、それを遵守しなければなりません。
そのようなRIを取り扱う場合の放射線防護についての考え方を韓国の形で示してきたのが国際放射線防護委員会(ICRP : International Commission on Radiological Protection)です。
殻国の法令の基本となっているのが、一般勧告といわれている報告書ですが、現在まで6回公刊されています。それぞれの一般勧告は、声明という形で修正、拡張、明確化などがされています。
そのようなRIを取り扱う場合の放射線防護についての考え方を韓国の形で示してきたのが国際放射線防護委員会(ICRP : International Commission on Radiological Protection)です。
殻国の法令の基本となっているのが、一般勧告といわれている報告書ですが、現在まで6回公刊されています。それぞれの一般勧告は、声明という形で修正、拡張、明確化などがされています。
放射線の影響は、確定的影響と確率的影響に区分されます。
確定的影響(deterministic effect)とは、被ばくの線量があるレベルを超えると、障害の発生の確率が急速に1にまで増加するような影響です。すなわち、確定的影響はしきい値を超えなければその発生を防ぐことができます。
確定的影響には、生殖腺が被ばくした場合の受胎能力の低下、骨髄が被ばくした場合の造血機能の障害、水晶体が被ばくした場合の白内障の発生、皮膚の急性障害などがあります。
確率的影響とは、そのような限度値がないと仮定する影響であり、どのような低線量被ばくであっても影響はゼロとは言えない、という考え方です。
確率的影響には、発がんや遺伝的影響などがあります。
確定的影響(deterministic effect)とは、被ばくの線量があるレベルを超えると、障害の発生の確率が急速に1にまで増加するような影響です。すなわち、確定的影響はしきい値を超えなければその発生を防ぐことができます。
確定的影響には、生殖腺が被ばくした場合の受胎能力の低下、骨髄が被ばくした場合の造血機能の障害、水晶体が被ばくした場合の白内障の発生、皮膚の急性障害などがあります。
確率的影響とは、そのような限度値がないと仮定する影響であり、どのような低線量被ばくであっても影響はゼロとは言えない、という考え方です。
確率的影響には、発がんや遺伝的影響などがあります。
放射線防護における基本的な線量計測量は吸収線量です。これは単位質量あたりに吸収されるエネルギーであり、その単位はJkg-1で、特別な単位としてGy(グレイ)を用います。ここでは、一つの組織・臓器内の平均線量を用います。
吸収線量の単位はJkg-1であることからわかるように、同じエネルギー吸収量であっても対象となる臓器の重量が異なれば吸収線量は異なることに注意すべきです。
1) 等価線量
確率的影響の確率は、吸収線量のみでなく線量の原因となる放射線の種類とエネルギーすなわち線質にも依存することがわかっています。線質に関係づけられた係数で荷重された吸収線量を組織・臓器の等価線量(equivalent dose)といいます(1977年勧告の組織線量当量に当たります)。この目的のための荷重係数を放射線荷重係数ωR(1977年勧告では、線質係数Q)といいます。
放射線荷重係数(radiation weighting factor)を以下に示します。
2007年勧告では、中性子エネルギーについてより詳細に変更されています。以下に2007年勧告における放射線荷重係数の値を示します。
放射線Rによる、組織・臓器Tの等価線量HT,Rは、次式で与えられます。
HT,R = ωRDT,R
ここで、DT,Rは組織・臓器Tについて平均された、放射線Rに起因する吸収線量です。また、等価線量の単位はJkg-1であり、特別な単位の名前はSv(シーベルト)です。
2) 実効線量
確率的影響の起こる確率と等価線量との関係は、照射された組織・臓器によって変わります。この目的のため、組織・臓器Tの等価線量を荷重する計数を組織荷重係数ωTとします。組織荷重係数ωTの値は、全身にわたって等価線量が均一であるとき、それと数値的に等しい線量が得られるよう選ばれています。したがって、組織荷重係数の和は1に規格化されています。
この組織荷重係数は、荷重された組織等価線量が等しければ、対象となっている組織・臓器に関係なく、大体同程度の損害をもたらすことが確実であるように定められています。
組織荷重係数を以下に示します。最新の化学的、物理的知見により2007年勧告で組織荷重係数が変更されています。
この荷重された等価線量(放射線荷重係数および組織荷重係数という、二重に荷重された吸収線量)を実効線量(effective dose)といいます(1977年勧告の実効線量当量にあたります)。
実効線量の単位はJkg-1であり、特別な単位の名前はSv(シーベルト)です。
吸収線量の単位はJkg-1であることからわかるように、同じエネルギー吸収量であっても対象となる臓器の重量が異なれば吸収線量は異なることに注意すべきです。
1) 等価線量
確率的影響の確率は、吸収線量のみでなく線量の原因となる放射線の種類とエネルギーすなわち線質にも依存することがわかっています。線質に関係づけられた係数で荷重された吸収線量を組織・臓器の等価線量(equivalent dose)といいます(1977年勧告の組織線量当量に当たります)。この目的のための荷重係数を放射線荷重係数ωR(1977年勧告では、線質係数Q)といいます。
放射線荷重係数(radiation weighting factor)を以下に示します。
放射線の種類 | エネルギー範囲 | 放射線荷重係数ωR |
X線・γ線 | 1 | |
電子・μ粒子 | 1 | |
中性子 | < 10 keV | 5 |
≧ 10 keV ~ ≦ 100 keV | 10 | |
> 100 keV ~ ≦ 2 MeV | 20 | |
> 2 MeV ~ ≦ 20 MeV | 10 | |
> 20 MeV | 5 | |
陽子 | > 2 MeV | 5 |
α粒子・核分裂片・重粒子 | 20 |
2007年勧告では、中性子エネルギーについてより詳細に変更されています。以下に2007年勧告における放射線荷重係数の値を示します。
放射線の種類 | エネルギー範囲 | 放射線荷重係数ωR |
X線・γ線 | 1 | |
電子・μ粒子 | 1 | |
中性子 | < 1 MeV | 2.5 + 18.2e-[lnE]2/6 |
≧ 1 MeV ~ ≦ 50 MeV | 5.0 + 17.0e-[ln2E]2/6 | |
> 50 MeV | 2.5 + 3.25e-[ln0.04E]2/6 | |
陽子および荷電パイオン | 2 | |
α粒子・核分裂片・重粒子 | 20 |
放射線Rによる、組織・臓器Tの等価線量HT,Rは、次式で与えられます。
HT,R = ωRDT,R
ここで、DT,Rは組織・臓器Tについて平均された、放射線Rに起因する吸収線量です。また、等価線量の単位はJkg-1であり、特別な単位の名前はSv(シーベルト)です。
2) 実効線量
確率的影響の起こる確率と等価線量との関係は、照射された組織・臓器によって変わります。この目的のため、組織・臓器Tの等価線量を荷重する計数を組織荷重係数ωTとします。組織荷重係数ωTの値は、全身にわたって等価線量が均一であるとき、それと数値的に等しい線量が得られるよう選ばれています。したがって、組織荷重係数の和は1に規格化されています。
この組織荷重係数は、荷重された組織等価線量が等しければ、対象となっている組織・臓器に関係なく、大体同程度の損害をもたらすことが確実であるように定められています。
組織荷重係数を以下に示します。最新の化学的、物理的知見により2007年勧告で組織荷重係数が変更されています。
組織・臓器 | 1990年勧告 | 1977年勧告 | 2007年勧告 |
生殖腺 | 0.20 | 0.25 | 0.08 |
骨髄(赤色) | 0.12 | 0.12 | 0.12 |
結腸 | 0.12 | - | 0.12 |
肺 | 0.12 | 0.12 | 0.12 |
胃 | 0.12 | - | 0.08 |
膀胱 | 0.05 | - | 0.04 |
乳房 | 0.05 | 0.15 | 0.12 |
肝臓 | 0.05 | - | 0.04 |
食道 | 0.05 | - | 0.04 |
甲状腺 | 0.05 | 0.03 | 0.04 |
残りの組織・臓器 | 0.05 | 0.30 | 0.12 |
皮膚 | 0.01 | - | 0.01 |
骨表面 | 0.01 | 0.03 | 0.01 |
脳 | - | - | 0.01 |
唾液腺 | - | - | 0.01 |
合計 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
この荷重された等価線量(放射線荷重係数および組織荷重係数という、二重に荷重された吸収線量)を実効線量(effective dose)といいます(1977年勧告の実効線量当量にあたります)。
実効線量の単位はJkg-1であり、特別な単位の名前はSv(シーベルト)です。
1990年勧告では、人間活動を、総放射線被ばくを増加させるものと、現在ある被ばくの原因に影響を与えて総被ばくを減少させるものに分け、前者を「行為」、後者を「介入」と呼んでいます。
「行為」における放射線防護の体系は、次の一般原則に基づいています。
これらは、次の3項目なっています。
1) 行為の正当化
放射線被ばくを伴うどんな行為も、その行為によって、被ばくする個人または社会に対して、それが引き起こす放射線障害を相殺するのに十分な便益を生むのでなければ、採用すべきではありません。
2) 防護の最適化
放射線の防護は際限なく行わなければならないのではなく、最適な方法・程度があります。ある行為内のどんな特定の線源に関しても、個人線量の大きさ、被ばくする人の数、および、受けることが確かでない被ばくの起こる可能性、の3つすべてを、経済的および社会的要因を考慮に加えたうえ、合理的に達成できる限り低く保つ(as low as reasonably achievable, ALARAの原則)べきです。
3) 個人線量限度および個人リスク限度
関連する行為すべての複合の結果生ずる個人の被ばくは線量限度に従うべきであり、また、洗剤被ばくの場合にはリスクのなんらかの管理に従うべきです。これらは、通常の状況ではいつも、どの個人も、これらの行為から容認不可と判断されるような放射線リスクを受けることが確実にないようにすることを目的としています。
被ばくの制限はこの3つの項目により行うべきであり、その適用は、1) 行為の正当化、2) 防護の最適化、3) 個人線量限度および個人リスク限度の順と考えます。
「行為」における放射線防護の体系は、次の一般原則に基づいています。
これらは、次の3項目なっています。
1) 行為の正当化
放射線被ばくを伴うどんな行為も、その行為によって、被ばくする個人または社会に対して、それが引き起こす放射線障害を相殺するのに十分な便益を生むのでなければ、採用すべきではありません。
2) 防護の最適化
放射線の防護は際限なく行わなければならないのではなく、最適な方法・程度があります。ある行為内のどんな特定の線源に関しても、個人線量の大きさ、被ばくする人の数、および、受けることが確かでない被ばくの起こる可能性、の3つすべてを、経済的および社会的要因を考慮に加えたうえ、合理的に達成できる限り低く保つ(as low as reasonably achievable, ALARAの原則)べきです。
3) 個人線量限度および個人リスク限度
関連する行為すべての複合の結果生ずる個人の被ばくは線量限度に従うべきであり、また、洗剤被ばくの場合にはリスクのなんらかの管理に従うべきです。これらは、通常の状況ではいつも、どの個人も、これらの行為から容認不可と判断されるような放射線リスクを受けることが確実にないようにすることを目的としています。
被ばくの制限はこの3つの項目により行うべきであり、その適用は、1) 行為の正当化、2) 防護の最適化、3) 個人線量限度および個人リスク限度の順と考えます。
1990年勧告では、被ばくを、職業被ばく、医療被ばくおよび公衆被ばくの3種類に分けています。ここでは、職業被ばくに適用される線量限度について述べます。
線量限度を決めるにあたって、確率的影響が発生する確率を容認できると思われるレベルまで制限することが必要でありますが、1990年勧告で、「容認できるリスク」に対する考え方を次のように改めました。
通常の社会において、職業上の死亡の確率10-2が毎年継続することは到底容認できません。しかし、10-3では状況はそれほどはっきりしなくなります。もし、リスクを被る個人がその事情を知り、相応した利益があると判断し、かつリスクを減らすための合理的な措置がすべてとられていることを理解したならば、年あたり10-3のリスクは全く容認できないとは言えません。
このような考え方に立って、毎年ほぼ均等に被ばくしたとして、全就労期間中に受ける総実効線量が約1 Svを超えないように、そしてそのようなレベルに線量限度を定めるべきであるとして、線量限度を勧告しました。また、放射線防護体系の適用によってこの値に近づくことはまれにしかないようにすべきであるという判断に達しました。
線量限度を決めるにあたって、確率的影響が発生する確率を容認できると思われるレベルまで制限することが必要でありますが、1990年勧告で、「容認できるリスク」に対する考え方を次のように改めました。
通常の社会において、職業上の死亡の確率10-2が毎年継続することは到底容認できません。しかし、10-3では状況はそれほどはっきりしなくなります。もし、リスクを被る個人がその事情を知り、相応した利益があると判断し、かつリスクを減らすための合理的な措置がすべてとられていることを理解したならば、年あたり10-3のリスクは全く容認できないとは言えません。
このような考え方に立って、毎年ほぼ均等に被ばくしたとして、全就労期間中に受ける総実効線量が約1 Svを超えないように、そしてそのようなレベルに線量限度を定めるべきであるとして、線量限度を勧告しました。また、放射線防護体系の適用によってこの値に近づくことはまれにしかないようにすべきであるという判断に達しました。
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