最終更新: isotope_manager 2012年06月18日(月) 04:50:41履歴
妊娠中に母体とともに胎児が放射線照射を受けた場合、これを胎内被ばくといいます。
胎児の細胞は分裂・分化が盛んであり、放射線感受性が極めて高くなっています。また、発生のどの時期に被ばくしたかによって影響の発現する組織や器官が異なり、その影響も異なってきます。
胎児の発生に及ぼす放射線の影響は、着床前期(胞胚期)、器官形成期、および胎児期の3つの時期に分けて考察されています。
胎児の細胞は分裂・分化が盛んであり、放射線感受性が極めて高くなっています。また、発生のどの時期に被ばくしたかによって影響の発現する組織や器官が異なり、その影響も異なってきます。
胎児の発生に及ぼす放射線の影響は、着床前期(胞胚期)、器官形成期、および胎児期の3つの時期に分けて考察されています。
精子と受精する前の卵に照射を行うと、受精後早期に死ぬことが多くなります。
受精から胚が子宮壁に着床する前までの期間(〜受精後8日)を着床前期と呼び、この時期の被ばくでは、胚の死亡(胚死亡)が起こります。
死亡した胚はやがて子宮内で自然に吸収され、母親にもわからない場合がほとんどです。
このように、着床前の被ばくでは胚死亡すなわち流産(出生前死亡)が主な影響です。
胚死亡は確定的影響で、しきい値は0.1 Gyと低い値です。この時期の影響は死亡か正常化の'all or none'であり、出生した子供には奇形などの障害はありません。
受精から胚が子宮壁に着床する前までの期間(〜受精後8日)を着床前期と呼び、この時期の被ばくでは、胚の死亡(胚死亡)が起こります。
死亡した胚はやがて子宮内で自然に吸収され、母親にもわからない場合がほとんどです。
このように、着床前の被ばくでは胚死亡すなわち流産(出生前死亡)が主な影響です。
胚死亡は確定的影響で、しきい値は0.1 Gyと低い値です。この時期の影響は死亡か正常化の'all or none'であり、出生した子供には奇形などの障害はありません。
着床後の器官形成期の胚では個々の組織・器官への分化が行われており、この時期の被ばくでは奇形が発生することが多くなります。
重症の奇形の場合、出生後に死亡することも多くなります(新生児死亡)。
胎内被ばくを受けた子供については、しばしば小頭症、無脳症、小眼症、四肢異常(四肢・指などの異常や欠損)といった奇形や発育不全が見られます。
これらの奇形は放射線以外の原因でも起こりうります。
奇形も確定的影響で、しきい値は0.25 Gyとなっています。器官形成期以外の被ばくでは奇形は発生しません。
重症の奇形の場合、出生後に死亡することも多くなります(新生児死亡)。
胎内被ばくを受けた子供については、しばしば小頭症、無脳症、小眼症、四肢異常(四肢・指などの異常や欠損)といった奇形や発育不全が見られます。
これらの奇形は放射線以外の原因でも起こりうります。
奇形も確定的影響で、しきい値は0.25 Gyとなっています。器官形成期以外の被ばくでは奇形は発生しません。
受精から出生までの全期間を通じての放射線影響としては、発がん、遺伝的影響、発育遅延などがあります。全期間で起こる可能性はありますが、特に器官形成期以降の胎児期(妊娠8週〜出生)で顕著に見られます。
一般に、胎児は成人に比べて放射線による発がんの感受性がやや高いとされています。胎児期の被ばくによって、出生児の発がんリスクが高まります。
生じるがんとしては白血病が多く、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫なども見られます。
胎内で被ばくした子供たちにおけるがんの発生と、被ばく時の妊娠の時期との間には相関があるといわれています。
とくに出生直前の被ばくでは、出生した際の白血病発生の危険が高くなります。
胎児の生殖腺の放射線感受性も成人のそれよりも高くなっています。胎児期の被ばくが成長した被ばく児に不妊(これは身体的影響)を引き起こすこともあるし、成長後の遺伝的影響を起こすことがあります。
生じるがんとしては白血病が多く、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫なども見られます。
胎内で被ばくした子供たちにおけるがんの発生と、被ばく時の妊娠の時期との間には相関があるといわれています。
とくに出生直前の被ばくでは、出生した際の白血病発生の危険が高くなります。
胎児の生殖腺の放射線感受性も成人のそれよりも高くなっています。胎児期の被ばくが成長した被ばく児に不妊(これは身体的影響)を引き起こすこともあるし、成長後の遺伝的影響を起こすことがあります。
胎児期の被ばくによる発育遅延は確定的影響で、そのしきい値は一般に0.5〜1 Gy程度といわれています。成長後の機能障害としてとくに問題となるのは知能に対する影響であり、これは被ばく時期によってはさらに低線量でも生ずることがあります。
胎児期の大脳は放射線感受性が高く、妊娠8〜25週の被ばくは精神発達の遅滞、つまり精神遅滞を起こしやすくなります。
胎内被ばく者の精神遅滞も確定的影響であり、しきい値は0.2〜0.4 Gyとされています。
ただし、着床前期や器官形成期のみの被ばくでは精神遅滞は起こりません。
胎内被ばくによる影響
胎児期の大脳は放射線感受性が高く、妊娠8〜25週の被ばくは精神発達の遅滞、つまり精神遅滞を起こしやすくなります。
胎内被ばく者の精神遅滞も確定的影響であり、しきい値は0.2〜0.4 Gyとされています。
ただし、着床前期や器官形成期のみの被ばくでは精神遅滞は起こりません。
胎内被ばくによる影響
時期 | 主な影響 | 分類 | しきい値 |
着床前期(〜受精後8日) | 胚死亡 | 確定的影響 | 0.1 Gy |
器官形成期(着床〜妊娠8週) | 奇形 | 〃 | 0.25 Gy |
胎児期(妊娠8週〜出生) | 発がん | 確率的影響 | なし |
遺伝的影響 | 〃 | なし | |
発育遅延 | 確定的影響 | 0.5〜1 Gy | |
精神遅滞 | 〃 | 0.2〜0.4 Gy |
診療で日常使用する少量の放射線量でも種々の損傷を胎児に耐える可能性があるので、妊婦のX線検査には注意が必要となります。
一般に月経開始後10日間だけは妊娠していないことが確実なので、妊娠可能年齢の女子のX線検査は、月経開始後10日以内に行われるべき、という10日ルール(10日制)があります。
一般に月経開始後10日間だけは妊娠していないことが確実なので、妊娠可能年齢の女子のX線検査は、月経開始後10日以内に行われるべき、という10日ルール(10日制)があります。
このページへのコメント
高木氏に同意
100mGy以下ではIQの低下は臨床的に認められていない
単純撮影では胸部X線検査の被曝線量は0.01mGy以下で、腰椎、骨盤部でもそれぞれ1.7、1.1mGyである。CTにおける胎児被曝線量は骨盤部が最も多く25mGyである
10日ルールは1962年のICRP勧告に始まり1983年に廃止されています。
未だに10日ルールを持ち出すのは60年代の知識を晒しているのと同じです。