第1種放射線取扱主任者が放射能とは何か、人体に対する影響は、法令はどのようになっているのか、についてわかりやすく解説します。マスコミやネット上の間違ったり、偏った情報に流されまくっている状況に憂慮しています。何か質問がある場合、掲示板を利用してください。気づいたら分かる範囲内でご解答します。

照射線量の測定

照射線量は、単位質量の空気中で、γ線あるいはX線から生ずる二次電子が、その飛程の全長にわたって空気を電離して作る陽イオンおよび電子からなるイオン対の電荷で定義されています。
すなわち、γ(X)線で照射されたA[kg]の標準状態の空気からQ[C]の電荷(正または負のいずれか一方)が生じたとすると、照射線量Xは、
X [C • kg-1] = Q / A
となります。
照射線量の測定に最も適しているのは、空気を充填ガスとする電流型電離箱です。
コリメータを通して入射するγ線による照射線量を求めるには、γ(X)線の照射により一定体積の空気から放出された二次電子によって生じる電離すべてを考慮しなければなりません。しかし、これを忠実に行うことは難しいので、対象体積内で生じた二次電子が対象体積外でつくる電離を、他の体積で生じた二次電子が対象体積内でつくる電離により補償する方法をとります。
有効体積V (m3)、空気密度a (kg • m-3)をもつ空気電離箱による測定で、I (A = C • s-1)の電流が流れたとすると、照射線量Xは、測定時間をT (s)として、
X [C • kg-1] = IT / aV
となります、
なお、0°C、1気圧における空気密度をa0 (kg • m-3)とすると、温度t°C、圧力p [Pa]の場合には、
空気密度=ao • (273/(273+t) • (p/(1.013 x 105)
となります、この型の開放系の電離箱は自由電気電離箱と呼ばれます。
自由空気電離箱ではγ線のエネルギーが大きくなると、電荷補償を行うために電離箱が極めて大掛かりになります。このために考案されたのが、電離箱の壁面を空気に近い原子番号をもつ物質で構成した空気等価壁電離箱です。
すなわち、γ線による二次電子の発生は空気を構成する原子との相互作用によるものですから、仮に、電離箱の壁面を圧縮した空気で作ることができれば、これをγ線の照射領域(電離箱より広い)に置いた場合、対象体積から失われる電荷は対象体積外の圧縮空気内で生じる二次電子により対象体積内で発生する電荷で補償されます。ただし、この場合、壁は二次電子の最大飛程より厚くなければなりません。また、実用上は圧縮空気を用いることができないので、空気に近い原子番号をもつプラスチック等で壁を構成します。

吸収線量の測定

物質がどの程度放射線エネルギーを吸収したかを表すために吸収線量があり、単位質量(kg)あたり1 Jのエネルギー吸収があるとき1 Gyとします。
吸収線量を求める最も一般的な方法は、ブラッグ・グレイの空洞原理に基づいています。
いま、ある物質中に小さな空洞を作り、その中をガスで充たします。これにγ(X)線を照射した場合、二次電子の状態(数、角度分布、エネルギー分布)が空洞の存在によって乱されないときには、その物質の吸収線量Dは
D [Gy] = PIW
で求められます。ここで
I:ガス中で生じる単位質量あたりのイオン対数(kg-1
W:ガス中で1イオン対を作るのに必要な電子のエネルギー損失(J)
P:物質の平均質量阻止能 Sm / 空洞ガスの平均質量阻止能 Sg
すなわち、ブラッグ・グレイの空洞原理が成立する条件においては、吸収線量を求めたい物質で電流型電離箱の壁面を構成することにより、種々の物質の吸収線量を決定できます。
ブラッグ・グレイの原理は以下のような条件が満たされる場合に成立します。
  • 電離箱の壁厚が二次粒子(電子)の最大飛程より厚く、一次放射線が乱されない程度に十分に薄い
  • 空洞の大きさが充填ガス中での二次粒子の飛程と比べて小さい

線量当量の測定

人に対する放射線影響は確率的影響と確定的影響に分けられます。
このうち、確率的影響を評価するための被ばく線量として実効線量当量という概念がICRP 1977年勧告により導入されました。
しかし、実効線量当量は日常の放射線管理に浮いて評価することが困難なであるため、これに代わるものとして、人体を直径 30 cmの組織等価物質に置き換えて、この球(ICRU球)の表面から1 cmの深さにおける線量当量で実効線量当量を表現することとしました。これを、1 cm線量当量(単位、Sv)と呼びます。
1 cm線量当量もまた通常の方法では実測が困難であり、一般的には、自遊空間中での空気吸収線量D(Gy)に1 cm線量当量への換算係数fx(Sv/Gy)をかけて算出します。

一方、放射線障害の確定的影響を評価するために導入された組織線量当量に対応する1 cm、3 mmおよび10μm線量当量の評価もこれに準じて行います。すなわち、自由空間中の空気吸収線量にそれぞれの換算係数をかけて算出します。

β線については、身体表層部の線量当量が重要です。このため、身体表面における自由空間中のβ線吸収線量から、70μm線量当量への換算係数を用いて70μm線量当量を評価することになりますが、実用上は、薄いプラスチックシンチレータを検出器とするサーベイメータ、あるいは、薄膜状の熱ルミネセンス線量計を、70μmのプラスチック窓をもった外装電離箱で校正して用います。

中性子線に対する1 cm、3 mmおよび70μm線量当量の評価は、中性子線用サーベイメータを用いて、その場における自由空間中での中性子フルエンスφ(cm-2)を測定し、これに中性子エネルギーに応じた換算係数fn (Sv/cm-2)を乗じて求めます。
なお、この場合も、中性子エネルギー分布の決定が困難なので、中性子検出器を減速材・吸収材で囲むことによって、エネルギー特性を換算係数曲線に近づけた、いわゆる、レムメータが開発されています。

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