放射性物質からの放射線を防護するには、外部からの放射線を受けないことと、放射性物質そのものを体内に取り込まないことです。
放射線防護の観点から見ると、密封RIの安全取扱は外部被ばくの防護がもっとも重要です。
密封RIの定義
密封RIの種類と特徴
β線源
γ（X）線源
中性子源
外部放射線に対する防護
防護の３原則
遮へい
距離
時間
密封RIの貯蔵・保管
密封RIの運搬
照射装置の安全取扱
放射線発生装置の安全取扱
発生装置からの放射線
放射線防護の観点から見ると、密封RIの安全取扱は外部被ばくの防護がもっとも重要です。
密封RIの定義 
法令上では、密封されたRIとは正常の使用状態において密封の状態が破られることがなく、またRIが漏洩や浸透などによりカプセルなどの収納容器から散逸して、周辺を汚染するおそれのない状態を担保できる線源となっています。
実用化されている密封RIには、国際規格であるISO規格や、ISOに準じて制定されたJIS規格に密封性能に関する試験基準が定められており、わが国で使用されている密封RIの大部分にはこの試験が実施されています。
実用化されている密封RIには、国際規格であるISO規格や、ISOに準じて制定されたJIS規格に密封性能に関する試験基準が定められており、わが国で使用されている密封RIの大部分にはこの試験が実施されています。
密封RIの種類と特徴
密封RIといっても、α線源やβ線源のように金属、雲母などの薄い膜で放射性同位元素の表面を覆っているものから、γ線源のように耐久性のある金属製のカプセルに密封されているものまであります。
α線源
密封RIとして使用されているα線源のひとつに241Amがあります。線源の表面は、α線を透過させるため非常に薄くできており、わずかな力で密封が破れ汚染する可能性が大きいので、取扱には十分注意しなければなりません。
β線源
63Ni線源や147Pm線源などの低エネルギーβ線源は、線源表面の窓が薄いので、取扱に注意しなければなりません。一方、85Kr線源や90Sr-90Y線源などの比較的高いエネルギーのβ線源の場合は、薄いステンレス鋼製などの窓がついているが、γ線源の場合ほど機械的強度はない。
γ（X）線源
57Co線源や241Am線源など比較的低エネルギーのγ線を放出するもの、60Co線源や137Cs線源など比較的高エネルギーのγ線を放出するものがあります。
それらのほとんどが、ステンレス鋼製カプセルに封入されており、β線源などに比べて機械的衝撃に強く耐熱性も優れています。
それらのほとんどが、ステンレス鋼製カプセルに封入されており、β線源などに比べて機械的衝撃に強く耐熱性も優れています。
中性子源
中性子源として知られているものは、主として241Am-Be線源です。これは、241Amをα線源として用い、9Be(α,n)13C反応を利用するものです。発生する中性子のエネルギーは平均 4.5MeVと高く、高速中性子源です。
近年、よく使用される中性子源として252Cfがあります。252Cfは自発核分裂性核種であり、１個の自発核分裂によって平均3.76個の中性子を出します。その平均エネルギーは2.4MeVです。
近年、よく使用される中性子源として252Cfがあります。252Cfは自発核分裂性核種であり、１個の自発核分裂によって平均3.76個の中性子を出します。その平均エネルギーは2.4MeVです。
外部放射線に対する防護
防護の３原則
外部放射線被ばくの防護は、時間、距離および遮へいの３つの方法があります。これを外部放射線被ばく防護の３原則といいます。
その中で、まず、適切な遮へいを行うことが重要です。線源の遮へいは状況等で効果がかなり異なってくるので注意が必要です。そして、線源からの距離をとるために用具を用いるなどの工夫をし、効率的な作業手順等により被ばく時間を極力短くします。これらの防護手段は、それぞれ被ばく低減効果の現れ方が異なるので、対策となる線源の特徴、作業状況などを勘案して措置することが大切です。
その中で、まず、適切な遮へいを行うことが重要です。線源の遮へいは状況等で効果がかなり異なってくるので注意が必要です。そして、線源からの距離をとるために用具を用いるなどの工夫をし、効率的な作業手順等により被ばく時間を極力短くします。これらの防護手段は、それぞれ被ばく低減効果の現れ方が異なるので、対策となる線源の特徴、作業状況などを勘案して措置することが大切です。
遮へい
外部放射線の防護の主な対策はγ(X)線、β線および中性子線です。α線は皮膚を透過できないので、ふつう対策を考えません。
a) α線
α線の空気中における飛程はエネルギーをE[MeV]としたとき、0.318 x E3/2 [cm]で表すことができます。例えば、4 MeVのα線の場合、空気中の飛程は2.5 cmとなります。
一般に、α線の空気中の飛程は数cmにすぎません。また、水中または組織中での飛程は空気中に比べてはるかに小さく、皮膚表面の不感層でα線はほおｔんど吸収され、体内に影響を与えません。
b) β線
通常β線源を取り扱う作業では、厚さ1〜1.5cmの透明なアクリル板が遮蔽用として用いられます。
β線の遮へいで重要なのは、エネルギーが高くなると遮へい物による減速の際、制動放射線が発生することです。制動放射線の放出割合は、β線のエネルギーおよび、遮へい物の原子番号が大きくなるにつれて増加することが知られています。
したがって、高エネルギーのβ線放出核種を大量に扱うときは、まず、アクリル板等の低原子番号の物質で遮へいすることによりβ線を遮へいし、さらに、外側をコンクリート、鉛等の高原子番号の物質で覆うことにより制動放射線を遮へいする必要があります。
c) γ(X)線
γ線の物質との相互作用として、光電効果、コンプトン効果および電子対生成がありますが、それらによりγ線は物質中で減弱します。その強さは指数関数的に弱くなります。
γ線の遮へいには密度が大きく原子番号が高い物質が有効です。しかし実際には、遮へい物質に入射するγ線は、コリメートされていない広い線束であることが大部分なので、物質内でのコンプトン散乱によりエネルギーが低下したγ線の寄与が入射γ線に加わります。この影響を考慮したビルドアップ係数（再生係数）Bを用いて補正する必要があります。
遮へい物質によるγ線の減弱効果を求めるもっとも実用的な方法は、ビルドアップ係数を考慮した1cm線量当量透過率曲線を利用するものです。
γ線源には鉛、鉄、コンクリートが遮へい材として有効です。鉛ブロックは、簡便にいろいろの目的に用いることが可能な「レンガ」型が一般ですが、崩れにくく、隙間から放射線の漏れない「くさび」形などがあります。コンクリートブロックには、普通コンクリート（比重 2.3）と重コンクリート（比重約 3.5）があります。鉛ガラス（比重約 2.6〜6.2）は透明なので、「目視用ののぞき窓」として使用されています。
d) 中性子
中性子の遮へいには、弾性散乱を利用する方法と中性子捕獲を利用する方法があります。水素などの軽い元素は弾性散乱によって中性子の速度を遅くするのに適しており、ポリエチレン、水、コンクリートなどが遮へいに用いられます。
中性子捕獲でよく知られている反応は、10B(n,α)7Liです。すなわち10Bを遮へい材に混合すると、熱中性子がα線に変わり、熱中性子の除去に有効です。
したがって、中性子の遮へいには、水素などを多く含む材料に10Bを含むホウ素のような熱中性子吸収材料を併用し、さらに、中性子のエネルギーが低い場合(n,γ)反応が起こりやすいので、γ線の遮へいのために密度の大きい材料を追加することが効果的です。
a) α線
α線の空気中における飛程はエネルギーをE[MeV]としたとき、0.318 x E3/2 [cm]で表すことができます。例えば、4 MeVのα線の場合、空気中の飛程は2.5 cmとなります。
一般に、α線の空気中の飛程は数cmにすぎません。また、水中または組織中での飛程は空気中に比べてはるかに小さく、皮膚表面の不感層でα線はほおｔんど吸収され、体内に影響を与えません。
b) β線
通常β線源を取り扱う作業では、厚さ1〜1.5cmの透明なアクリル板が遮蔽用として用いられます。
β線の遮へいで重要なのは、エネルギーが高くなると遮へい物による減速の際、制動放射線が発生することです。制動放射線の放出割合は、β線のエネルギーおよび、遮へい物の原子番号が大きくなるにつれて増加することが知られています。
したがって、高エネルギーのβ線放出核種を大量に扱うときは、まず、アクリル板等の低原子番号の物質で遮へいすることによりβ線を遮へいし、さらに、外側をコンクリート、鉛等の高原子番号の物質で覆うことにより制動放射線を遮へいする必要があります。
c) γ(X)線
γ線の物質との相互作用として、光電効果、コンプトン効果および電子対生成がありますが、それらによりγ線は物質中で減弱します。その強さは指数関数的に弱くなります。
γ線の遮へいには密度が大きく原子番号が高い物質が有効です。しかし実際には、遮へい物質に入射するγ線は、コリメートされていない広い線束であることが大部分なので、物質内でのコンプトン散乱によりエネルギーが低下したγ線の寄与が入射γ線に加わります。この影響を考慮したビルドアップ係数（再生係数）Bを用いて補正する必要があります。
遮へい物質によるγ線の減弱効果を求めるもっとも実用的な方法は、ビルドアップ係数を考慮した1cm線量当量透過率曲線を利用するものです。
γ線源には鉛、鉄、コンクリートが遮へい材として有効です。鉛ブロックは、簡便にいろいろの目的に用いることが可能な「レンガ」型が一般ですが、崩れにくく、隙間から放射線の漏れない「くさび」形などがあります。コンクリートブロックには、普通コンクリート（比重 2.3）と重コンクリート（比重約 3.5）があります。鉛ガラス（比重約 2.6〜6.2）は透明なので、「目視用ののぞき窓」として使用されています。
d) 中性子
中性子の遮へいには、弾性散乱を利用する方法と中性子捕獲を利用する方法があります。水素などの軽い元素は弾性散乱によって中性子の速度を遅くするのに適しており、ポリエチレン、水、コンクリートなどが遮へいに用いられます。
中性子捕獲でよく知られている反応は、10B(n,α)7Liです。すなわち10Bを遮へい材に混合すると、熱中性子がα線に変わり、熱中性子の除去に有効です。
したがって、中性子の遮へいには、水素などを多く含む材料に10Bを含むホウ素のような熱中性子吸収材料を併用し、さらに、中性子のエネルギーが低い場合(n,γ)反応が起こりやすいので、γ線の遮へいのために密度の大きい材料を追加することが効果的です。
距離
距離による減衰効果は点線源からの放射線の線束が距離の２乗に反比例（逆２乗の法則）することからも明らかなように、放射線の線量当量率も同様に逆２乗の法則が適用できます。
密封RIの安全取扱には、放射線の遮へい対策が重要でありますが、遮へいを介して作業するためにの遠隔操作用具や作業が、安全にまた能率的なことも多い。距離をとるための器具類として代表的なものに、ピンセット類とトング類があります。
ピンセット類は、弱い線源やそれを入れた容器を挟むときに使用します。これらの先にはポリエチレンチューブなどの滑り止めをつけて使用する場合があります。
トング類は、長さ1m前後であり、ピンセットより遠く離れてRIを扱うことができます。取り扱うものの形状によって先端部を交換して使用します。
マニピュレータは、本格的な遠隔操作用具の一つです。水槽内に設置している照射用大線源に対して使用する場合があります。
密封RIの安全取扱には、放射線の遮へい対策が重要でありますが、遮へいを介して作業するためにの遠隔操作用具や作業が、安全にまた能率的なことも多い。距離をとるための器具類として代表的なものに、ピンセット類とトング類があります。
ピンセット類は、弱い線源やそれを入れた容器を挟むときに使用します。これらの先にはポリエチレンチューブなどの滑り止めをつけて使用する場合があります。
トング類は、長さ1m前後であり、ピンセットより遠く離れてRIを扱うことができます。取り扱うものの形状によって先端部を交換して使用します。
マニピュレータは、本格的な遠隔操作用具の一つです。水槽内に設置している照射用大線源に対して使用する場合があります。
時間
時間による被ばく低減は、時間の短縮に比例しています。そこで、計画的な作業の実施が求められます。
防護の３原則の適用にあたってはそれぞれの措置のバランスを考慮した作業計画を立ててから実施すべきです。
防護の３原則の適用にあたってはそれぞれの措置のバランスを考慮した作業計画を立ててから実施すべきです。
密封RIの貯蔵・保管
密封RIによる事故のうち、線源の紛失が約35%、過剰被ばくが約25%を占めています。
線源は通常、まとめて保管することが望ましいが、複数の貯蔵箱を別々の場所で保管する場合も多い。その場合、貯蔵箱ごとに、測定器を使用して、各線源の漏洩等異常の有無および紛失の有無を確認することが必要になります。
密封RIの貯蔵・保管における注意事項および対応例
密封RI自体の具体的な汚染検査の方法としては、スミア法（ふき取り試験法）が一般的であるが、放射能が大きい場合には、被ばく低減措置をして実施しなければなりません。
線源は通常、まとめて保管することが望ましいが、複数の貯蔵箱を別々の場所で保管する場合も多い。その場合、貯蔵箱ごとに、測定器を使用して、各線源の漏洩等異常の有無および紛失の有無を確認することが必要になります。
密封RIの貯蔵・保管における注意事項および対応例
| 注意事項 | 対応例 |
| �‥霪駛瓢� | 貯蔵箱の施錠および貯蔵箱固定もしくは設置場所の施錠 |
| �∧脅宰瓢� | 各線源の容器ごとおよび貯蔵箱ごとに、線源の核種・数量等を明示するとともに、使用の都度線源確認 |
| �Ｈ錣个�低減 | 多くの線源が貯蔵されている保管場所における鉛ブロックなどによる効率的な遮へい措置 |
| �ぬ�封性維持 | 湿気が多い場所での保管は、放射能が強い場合には線源カプセルに金属の発錆が起こるので注意 |
| �ヌ�封性確認 | 線源は容器に収納されていることが多いので、汚染検査は線源自体だけでなく保管容器も実施 |
密封RI自体の具体的な汚染検査の方法としては、スミア法（ふき取り試験法）が一般的であるが、放射能が大きい場合には、被ばく低減措置をして実施しなければなりません。
密封RIの運搬
密封線源またはそれを装備した機器を安全に運搬するには、線源の破損および線源からの放射線による被ばく防止が重要です。
運搬に関する法的規制は事業所内と事業所外とで異なり、後者については放射能レベル等によって輸送物の試験条件が異なるなど、いろいろな条件が課せられています。
運搬に関する法的規制は事業所内と事業所外とで異なり、後者については放射能レベル等によって輸送物の試験条件が異なるなど、いろいろな条件が課せられています。
照射装置の安全取扱
比較的強度の大きい線源を使用している照射装置の安全取扱は、主に外部被ばくの防止に注意を払うことです。
照射装置には様々な安全対策がなされていることが多いので、これらを維持管理するとともに、これらの設備を十分活用することが重要です。
外部被ばくを防止するための照射装置使用時の注意事項
� ＾汰患々修魏鮟�しない
照射装置は通常複数の安全装置が装備されているが、利用者が実験上の理由などを優先して故意に安全機構を解除する場合がある。
�◆〃拱鸛�置をリセットしない
正常な作動に慣れ、警報の発報時にも原因を確かめずに警報装置をリセットしてしまうことはしてはならない。
�� モニタリング装置等の表示を確認する
思い込みは危険である。表示装置を必ず確認する。
�ぁ‖�定器を携行する
思いがけない被ばくが検出される場合があるので、必ず携行する。原因の究明に不可欠である。
�ァゞ杁淹�の対応を確認しておく
緊急時には冷静に対応する。それには、日ごろから身につくまで十分訓練しておく。
照射装置には様々な安全対策がなされていることが多いので、これらを維持管理するとともに、これらの設備を十分活用することが重要です。
外部被ばくを防止するための照射装置使用時の注意事項
� ＾汰患々修魏鮟�しない
照射装置は通常複数の安全装置が装備されているが、利用者が実験上の理由などを優先して故意に安全機構を解除する場合がある。
�◆〃拱鸛�置をリセットしない
正常な作動に慣れ、警報の発報時にも原因を確かめずに警報装置をリセットしてしまうことはしてはならない。
�� モニタリング装置等の表示を確認する
思い込みは危険である。表示装置を必ず確認する。
�ぁ‖�定器を携行する
思いがけない被ばくが検出される場合があるので、必ず携行する。原因の究明に不可欠である。
�ァゞ杁淹�の対応を確認しておく
緊急時には冷静に対応する。それには、日ごろから身につくまで十分訓練しておく。
放射線発生装置の安全取扱
放射線発生装置は電気的な制御により放射線を発生させるため、特に使用時における放射線管理が重要です。
しかし、高エネルギー荷電粒子の発生を伴う加速装置や中性子発生装置の場合には、稼働中に装置部品および空気中にRIが生成し、停止後もそれらが残留する（残留放射能）こともあります。そのため、それらが減少するか除去されるまで十分な監視が必要です。
放射線発生装置におけるこれまでの放射線被ばく事故の原因は、インターロック機構や警報・表示装置の不良等がかなりの部分を占めています。これらの不良等は、照射室内部の電気回路等の放射線損傷で生じる性能劣化によるものが多いので定期的な点検が必要です。
しかし、高エネルギー荷電粒子の発生を伴う加速装置や中性子発生装置の場合には、稼働中に装置部品および空気中にRIが生成し、停止後もそれらが残留する（残留放射能）こともあります。そのため、それらが減少するか除去されるまで十分な監視が必要です。
放射線発生装置におけるこれまでの放射線被ばく事故の原因は、インターロック機構や警報・表示装置の不良等がかなりの部分を占めています。これらの不良等は、照射室内部の電気回路等の放射線損傷で生じる性能劣化によるものが多いので定期的な点検が必要です。
発生装置からの放射線
電子線照射の場合、制動放射線の発生により、漏洩放射線が大きくなるので十分監視する必要があります。また、10MeVを超えるエネルギーでは、まわりの物質との(γ,n)反応による中性子線にも注意が必要です。
上方に向けて漏洩した放射線が、大気の原子との衝突により再び地上に反射されて戻ってくる現象をスカイシャインといいます。このような現象があると、遮へい体の外においても思わぬ被ばくを受けることになるので、施設設計時に注意が必要です。
上方に向けて漏洩した放射線が、大気の原子との衝突により再び地上に反射されて戻ってくる現象をスカイシャインといいます。このような現象があると、遮へい体の外においても思わぬ被ばくを受けることになるので、施設設計時に注意が必要です。
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