MONSTER HUNTER EX 第16話

作者:結城


第16話「護りたい人」



父が知らない男と戦っている・・・

俺は母の腕の中でただ見ていることしか出来なかった

俺は冷たくなる母の腕の中、大切な人を、両親を護る事が出来なかった



    ………………



いけない!こんな事を考えている場合じゃない!

俺は無理やりその記憶を忘れようと努力する・・・

しかし、今の現状が忘れさせてはくれなかった

…オレハタイセツナヒトヲマモレナイサイテイノオトコ…

その言葉が、機械的に頭の中でグルグルとまわっていた





一方、外では紅い龍と焔雷との激しい戦いが続いていた

「くそっ!全然効いていない」

「あせるな!あせりは隙を生む!」

オスキーにそういったものの、ライもかなり焦っていた

すでに貫通弾、拡散弾もつき、残る攻撃弾は通常弾のみ

そして、片手剣はもちろん、大剣もランスもまだ一撃も与えられていない

そして、こちらは無傷というわけにはいかなかった

劣勢である事は目に見えて理解できた・・・

(くっそ!勝てるのか?、こんな時、隊長さえいてくれれば……)

ライの脳裏に一人の男が浮かぶ

しかし、その思いはむなしくかき消された・・・





直撃・・・





紅い龍の放った火球がライに直撃した

続けて本部にも一発直撃する

薄れる意識の中、一人の男の人影が見えた・・・気がした・・・





見つからない・・・

もう手遅れ・・・いや、違う!

まだ生きている、手遅れじゃない!

「アキーーー、アキーーーーー!」

必死に叫ぶユウキ

すると、いままで何の返事もなかったのが嘘だったかのように

どこからか声が聞こえる

その声を頼りに捜索をするユウキ

そして、一つのドアで足が止まる・・・

ここだ・・・絶対に・・・

声の主はここにいると確信しドアを蹴破り中に飛び込む

「ユウキ君!?」

「アキ!?アキなのか!?」

アキの声、しかしその姿は煙のせいでよく見えない・・・

先ほど本部に紅い龍から火球が放たれたのだ・・・まさかとは思ったがここに直撃していたとは・・・

「大丈夫だった?」

「うん・・・」

しかしよく見るとアキは足を引きずっていた・・・

「!? 怪我してるじゃないか、はやく応急処置をしなきゃ」

そういった直後本部が揺れる・・・

すぐに応急処置をすました

もう倒壊まで時間がない・・・

「もう時間がない・・・乗れる?」

そういい背中を向ける

アキはうなずきユウキの背に体を預けた

軽いけど…俺にとってはすごく重いな……

そう思っていたときアキが口を開いた

「わたしね、絶対、絶対ユウキ君が助けに来てくれる……そう信じてた」

突然の言葉にユウキは照れ、前を向きアキを背負ったまま歩き出した・・・





俺が今、護りたい人は・・・









「副隊長、副隊長!!」

必死で叫ぶオスキーの声も副隊長「ライ」には届かなかった・・・

紅い龍のブレスに直撃したライはそのままたかく飛ばされ地面にたたきつけられた

「わたしが見ていますので皆さんは戦いに集中してください!」

ナベが声を振り絞り叫ぶ・・・

と、そのとき本部が倒壊した・・・

物凄い轟音と共に崩れ落ちる巨大な建造物・・・

だれもがユウキ、そしてアキの死を覚悟した・・・

しかし、そのとき砂煙の向こうに誰かを背負った一人の少年の姿が確認できた

そのまま、みんなは話しかけることも出来ず、ただただ驚いていた

そして少年は背負っていた少女を預けると

頭上にいる紅き龍を見据え、走り出した・・・






護りたい人はここにいる!
2006年04月07日(金) 22:00:07 Modified by funnybunny




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