MONSTER HUNTER EX 第17話

作者:結城


第17話「決意の先にある覚悟」



頭上に見える紅き龍・・・その姿には見覚えがある気がする・・・

ユウキは背負っていた大剣「ジークムント」を手に走り出した

次第に距離が縮まる・・・

20メートル、15メートル、10メートル、5、4、3、2、1、

紅き龍との距離が零に変わる・・・

跳躍し、紅き龍の左胸にジークムントが斬撃を与える

「あいつ・・・やりやがった・・・」

オスキーが呟く

焔雷の誰もが成し得なかった事をあの新人のユウキが・・・

それをきっかけに全員の闘志に火がついた

初めての攻撃に驚いたのか、形成を崩し、ついにその龍が地面に降り立った

体の随所に見える鋭い棘、そしてまるで大剣を思わせる印象的な黒い尾・・・

龍は大地に降りるとすぐさま灼熱のブレスを放った

しかし、それは真っ二つに切り離された

ユウキの手によりブレスは切り裂かれる・・・

「もう、誰も失うわけにはいかないんだあぁぁぁ!」

そう叫ぶと再び剣を構えなおし龍めがけて走る

ズバッ!!!

鋭い刃が龍の腹を斬る。雄叫びを上げのけぞる龍

その隙を逃す焔雷の団員ではない

ボウガンからいっせいに矢が放たれる

しかし、降り注ぐ矢の雨を灼熱の炎が全てを焼き尽くす・・・

そしてそのまま物凄い勢いで鋭い尾を振り攻撃を仕掛ける

しかし、巨大なハンマーがそれを受け止めた

ヒコマルだ

蒼い髪、そして整えられた容姿からは信じられないほどの力が発揮される

こめかみには血管が浮き出ていた

そして黒い尾もハンマーも弾き飛ばされる

かなりの重量がある尾を受け止めるほどの力である・・・

弾かれたハンマーは行き場を失い地面にめり込む

それを拾い上げみんなに呼びかけた

「みんな、集中しよう!勝機が無いわけじゃない!」

その言葉に勇気付けられ再びボウガンを構える・・・





一進一退の攻防が繰り広げられる

それはまるで打ち寄せては引く、波のようである

ユウキと龍で一対一の死闘が繰り広げられる

ボウガンの弾は切れてしまいすでに戦える者はユウキひとりとなった

さっきからすでに十斬以上は与えていた。

しかし龍は一向にやられる気配を見せない

ヒコマルが口を開いた

「あいつ・・・凄い・・・俺にはついていけない・・・

あんな龍に互角の勝負を見せてる・・・」

「いや、互角とは言い切れない・・・

わずか、わずかだがユウキの方が不利・・・」

「なんだって!?」

二人の心配をよそにユウキが翼に切りかかった!

しかし龍は飛び上がる

そしてその口には地獄の業火にも見える炎が浮かんでいた・・・

体制を崩しているユウキにはこの攻撃は避けられない・・・

とっさに大剣で防御をする・・・しかし無残にもジークムントはくだけ散り

炎はユウキに直撃した

あっけない幕切れ・・・そして焔雷の者全ての顔が絶望に歪んだ

勝利の雄叫びのごとく凄まじい咆哮が辺りを揺るがす・・・

そして龍はゆっくりと侵攻方向を変え飛び始めた・・・

「ユウキ君!!!」

アキはすぐにユウキの元へと駆け寄って行った・・・

「ユウキ君・・・何してるのよ・・・起きてよ・・・ねぇ・・・」

しかし、その声は届かない・・・

アキの目には溢れんばかりの涙が溜まっていた・・・











(ここは・・・どこだ・・・)

(おれは・・・どうなったんだ・・・)

目を覚ますと辺りには何も無い真っ白い空間が広がっていた

(そうか・・・おれは・・・死んだのか)

(だけど・・・やっと・・・ゆっくりできるな・・・)

いままで普通に狩りをしてきたといえど焔雷での狩りは今まで以上に負担が大きかった

(もう、いい・・・やっと全てから解放され自由になれたんだ・・・)

しかしそう思った瞬間にさまざまなことが頭をよぎる

焔雷のみんなのこと・・・

リョウの事・・・

失ってしまった両親の事・・・

黒翼のこと・・・

そして、大事な人のこと・・・

そのとき、ユウキの頬を涙が伝った・・・

とめどなく流れる涙はユウキにはどうしても止める事が出来なかった

(もう一度・・・もう一度だけでいい・・・おれに、おれに大事な人を・・・アキを守る力をくれ!)

そのとき、白かった空間が色を取り戻した・・・

その景色は美しくまるで天国のようだった・・・

そしてどこからか声がした

「やっと、迷いから抜け出したか・・・」

「誰だ!?」

「おれか?おれは・・・おまえだ!!!」

突然の言葉に戸惑いを隠せないユウキ

「そして、おれは幾度となくおまえの命を救った・・・」

「もしや・・・あんたは・・・」

「そのとうり、おれはおまえ。そして・・・・・」

最後の言葉を残しユウキの意識はまた途絶えた・・・





ピトッ、

肌に冷たい水が落ちた・・・

目を覚ますとアキの姿がユウキの瞳にうつった

アキはそのまま、ただただ泣いている事しか出来なかった・・・

悲しいのではない・・・嬉しさ・・・それが涙へと変わり頬を伝い落ちる

「心配かけたな・・・ゴメン・・・でも、もう二度とアキを泣かせたりしない」

立ち上がりアキに背を向けそう喋る・・・

「うん、お帰り。ユウキ君」

ユウキは振り返り微笑み、うなずいた

「ただいま」

アキも微笑み返す・・・

そしてアキは手に持っていたものをユウキに手渡す

「これを・・・今のユウキ君なら絶対に扱えると思う・・・」

「ああ、ありがとう・・・」

そういい差し出された物「武神装甲」を受け取るとまた背を向け少年は戦地に赴いた





謎の男の声が耳から離れない

「おれはおまえ・・・そして・・・『決意・・・それこそが覚醒のカギ』」

そのとき、再び龍はこちらを向いた

龍は地獄の業火をユウキめがけて放った

神経を研ぎ澄ます・・・

まるで世界の歯車全てがとまったかのような一瞬

世界は止まり、またどこからか声がする

「決意が・・・覚悟が出来たようだな・・・」

静かにうなずく・・・

「ならば、おれの力をおまえに預けよう・・・」

とまってた歯車が動き出す・・・

ユウキの両の瞳には燃え盛る炎が宿っているかのごとく真紅の色に輝いていた

そして、一瞬、光が手を包むとその手には二つの大剣が握られていた

真紅の剣、そして新緑の剣・・・

ユウキの武神装甲

世界にただ一つ存在する一対の剣・・・

ユウキ「行くぞ・・・天空、大地!」

走り出すユウキに情け容赦なく地獄の業火がユウキに直撃する・・・

しかし、高く跳躍しその炎をかわす

そして、持っていた一対の剣を龍めがけて振るう

二つの刃は見事に額を切り裂いた

崩れ落ちる巨体に誰もが歓喜の声を上げた





焔雷の皆が走って駆け寄ってくる

「よくやったなぁ さすがは俺の弟子!」

「誰が弟子だよ?」

オスキーの冗談を一蹴する。

一人の男がナベに肩を借りて近づいてきた

おもわず声がこぼれる

「副隊長!!!」

「よくやったなユウキ、おれはおまえを誇りに思う」

そこには全身傷だらけではあるがしっかりと大地を踏みしめ生きているライがいた

焔雷の者全員から祝福を受ける

一瞬、まばゆい光が辺りを包み込む

目を転じると龍が光に包まれ、だんだんとその光が人の形を成していくのが見えた

そしてついには一人の見覚えある男に変わった

そしてその男はゆっくりとこちらに近づいていたそしてゆっくりと口を開いた

「フン、まさか、貴様らごときに・・・やられるとは・・・」

その額には大きな十字傷があるが間違いなくその男はブラックテイルだった

「な!?どうなってるんだ?」

その場にいる全員がいまここで何がおきているのか理解できなかった

目の前にはあの龍に変わり八大暗黒龍の一人・・・ブラックテイルがいた

信じられない光景に皆、騒然とする

しかし額の傷が全てを物語っていた・・・

あの傷は先刻ユウキがつけたものに間違いはなかった

そして剣を構えるブラックテイル・・・

それに合わせユウキ達も武器をいつでも構えられる姿勢になった

「しかし、このまま終わるわけにはいかないのだよ!」

そう叫ぶと剣を手にユウキ達に斬りかかって来た

しかし、それはユウキ達に届くことなくまるで糸が切れたように動きが止まった

その場に仰向けに倒れると、再び口を開いた

「なぜ・・・なぜだ?我らは同志ではなかったのか?・・・」

突然の言葉に困惑するユウキ

「どういうことだ?説明しろ!」

しかしその質問に答えるものはいなかった

ブラックテイル・・・八大暗黒龍の一人「黒き尾」はその生涯に幕を閉じた・・・
2006年04月07日(金) 22:01:29 Modified by funnybunny




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