The Unbalanced Hunters ―戦士二人― 第一章:第六幕

ランドール




第一章〜炎が舞い降りた日〜


第六幕〜時には背伸びの許される日も〜


「何ということだ……何ということだ」
消えた、爆薬の使い道。
自分の役目です、という言葉。
そこから導かれる、ひときわ大きな爆発の意味を、マックス爺さんは今さらながらに悟りました。
「いいや……まだ、諦めるものか。無事でさえあるなら、私が、治してみせる!」
矢も盾も堪りません。
もう消えかけている白い煙めがけて、全力疾走です。
「う……!?」
外から見れば白のけむりは、足を踏み入れるや否や、全く別の顔をみせたのでした。
血煙。
他に表現のしようが無いほど赤く染まったけむりに、ぷん、と漂う鉄錆びの匂い。
それは、中心に向けて段々と、赤く、赤く、赤く。
「くぅぅぅ!」
最悪が、背筋をうぞうぞと這い上がってくるようでした。
鼓動は狂ったようなテンポを刻んでいるというのに、かく汗は、ぞっとするほど冷たいのです。
この血煙に、少女が飲み干されてしまったような錯覚さえ受けます。
ともすれば、もう……という予感を、必死に振り払いながら、走り。
そして。
『それ』を発見したのは、時間にして、10秒ほど後でしょうか。
血煙が、もっとも赤に染まった場所で。
足元に、頭の無い蒼い獣を転がしながら。
その場に立ち尽くしている、小さなシルエットを。
「お嬢さ……」
すぐにでも駆け寄ろうと。
言われなくても治療をしようと。
とんでもない無茶を叱ってやろうと。
――そんな考えは、頭をすり抜けて、血煙に溶け消えてしまったようでした。
呆けたように……実際、呆けてしまっているのでしょうけれど。
マックス爺さんは、ただただ、魅入られたように足を止めたのでした。
返り血を受けた頬。
ざわりと揺れる黒髪。
破れほつれしている服。
それらは本来、心配、あるいは恐怖を呼び起こす要素です。
なのに。
鋭く光る黒曜の瞳が。
口元に湛えられた微笑が。
全身から立ち上る雄々しさが。
我憚るもの何一つ無し、と言わんばかりの、凛とした佇まいに変えてしまっているのでした。
そして、決して看過できない要素が、もう1つ。
少女の体に、まるで不釣合いな。
そこだけが別のイキモノのような大きさの、左手。
ともすれば、飛竜の足を連想させる、鍵爪じみた禍々しいシルエット。
けれど、血煙の中にあっても、独特の薄桃色の光沢を放つそれは。
優しげに燻る、その存在は。
「あの左手……守るように、舞い降りたように、包み込んでいるあれは……炎、なのか?」
少女と、戦場と、炎と。
水と油よりなお混ざるはずのない三者が、矛盾無く同居している様は。
果て無く不可思議で、底無く歪で。
一種異様な……そしてそれゆえに、決して目を離せない。
そんな、鮮烈な輝きを放っているのでした。
例えばそう――命がそこで、燃え盛っているような。

「ふふふ。さすがは最高級鍋つかみの面目躍如、ですかね♪」

出し抜けに、拍子抜けするくらい明るい声がしました。
今までの、凛然とした空気などはどこへやら、です。
それに伴い、マックス爺さん、立ち尽くしていた自分にはたと気づきます。
「お……お嬢さん、無事かい!?」
「あらマックス爺さん、いつの間にここへ?」
こちらを振り返り、軽い調子で、凶悪な感じの左手をぴこぴこと振ってきました。
よくよくその正体を見てみると……
「それ……クックの耳、なのかい!?」
「ええ。火に強いのは知っていましたけれど、
こうまで衝撃に強いのは嬉しい誤算でした。ちょっと、形が崩れましたけれど、ね」
手をぐるりと巻く形のクックの耳は、ネンチャク草でしっかりくっつけられておりました。
……渡した覚えはこれっぱかしもありませんから、爆薬と一緒に抜き取られていたのでしょう。
「全く……本当に、君って子は……」
てへへ、とはにかんで見せられると、もう、笑っていいのか哀しんでいいのかさえ、わかりませんでした。とりあえず、怒る気を無くさせる手段としては、相当以上に効果的でしたけれど。
「ああ……もう、言いたいことはたくさんあったのに、すっかり忘れてしまったじゃあないか!」
仕方ないので、やっぱり、笑うことにしました。
少女も、それに応えてくれました。
「私たちの勝利、ですね」
「ああ……最高の土産話が出来たよ」
そうしてにっこりと笑顔を交わし。
さて、ドーガは無事かなあとか考えるだけの余裕が、マックス爺さんに生まれてきた最中でした。
「あ……貧血」
「うわわわわ!?」
ぽて、と地面に倒れこみそうな体を、すんでのところで抱きとめます。
当たり前ですが、片手で十二分なくらいの軽さです。
「ちょっと、頑張りすぎました」
「……いや、それは全くもって、そのとおりなんだろうけれど、さ」
全くもう。
なんて、最後まで気の休まる暇を与えてくれない、厄介なお嬢さんなのでしょうか。
自分もランポスたちも、誰も彼も。
結局、この少女に振り回され続けて、ここに至ったような気がしてならないのでした。
「まったく、ユウ君の苦労がしのばれるよ」
「逆ではありませんか?朴念仁の年上って、一番厄介なタイプですよ」
「ははは、そんなこと言っていいのかな?噂をすれば影が差すってね」
「そうですね。案外、その辺にまで来ているのかもしれません」
来てました。
それはもう、疾風のように馬を駆って。
コルック村まで轟きかねない怒号を上げながら。

「鬼畜どもめぇぇぇぇぇ!ソナタに万一のことがあってみろぉぉぉぉぉ!
その魂魄滅するまでぇぇぇ、幾百幾千幾万と斬り刻んでくれるわぁぁぁぁ!」

ほとんど人とは思えない、凄まじい形相でした。
あんなのを背に乗せた馬こそ、気の毒の極みです。やけくそ気味の速度を出している理由が、しみじみとわかります。
「おやおや……私のことは、すっかり忘れられているみたいだねえ。
朴念仁、だったかい?それにしては随分と、愛されているじゃあないか」
「もう……あの、馬鹿っ!」
少女は、クック色に頬を染めて、憤然と言い放ったものでした。
「どう考えたって、ナイトは白馬にまたがって登場するのが筋でしょう!
レディの永遠の夢を、何だと思っているのですか!」
ユウも馬も、あまりに報われないその物言いに。
マックス爺さん、心から愉快そうに大爆笑です。
その声を頼りにユウが飛び込んできたのは、間もなくのことなのでした。


結局、村に戻るまでの道程で話し合った結果。
颯爽と駆けつけたユウがドスランポスを斬り伏せた、ということで口裏を合わせたのでした。
「報酬が先払いで、ドーガの治療に当てられたということですからね。
別の人が倒したとわかったら、余計なゴタゴタが起きるに決まっています」
「お嬢さん本人がそういうなら、私は全然構わないさ。
ただ……例の土産話の件に限っては、見逃してくれるね?」
「ええ、それはもちろん」
ユウが1人で苦りきっていたのは、言うまでもありません。
加えて、到着するや村を上げての英雄扱いを受けたものですから、いっそ腹を切らせてくれ、と言わんばかりの風情でした。
もっとも、その余波は私にも向けられまして。
「いやあ、お嬢さんがあの傷ついたアプトノスを逃がしたんだって?」
「まあ!自分が逃げるより先にですの!?」
「勇気があるなあ!ランポスたちに追い回されるなんて、さぞ恐ろしかったろうに……」
広場に戻ったドーガの姿は大勢に目撃されておりましたので、その部分に限っては、ごまかしようがなかったのです。
仕方ありませんので、私は可憐で無力なレディらしく、いくらか瞳を潤ませて言ったものでした。
「もちろん、心臓が今にも破裂してしまうくらい恐ろしかったです……。
でも、きっと……きっと、ユウが助けに来てくれると、信じていましたから」
大多数がその健気さに感動し、約一名がとどめを刺されたように呻きました。
マックス爺さんは、早々にドーガの様子を見に行ったようでした。
出血がひどかったものの、早期治療の甲斐あって、1週間ほどで全快、とのことです。
問題は、私の方でした。
右肩の傷は、マックス爺さんが道すがら薬を調合してくれたおかげで、何とか事なきを得たのですけれど。
もっと根本的な問題が、幾つか残っていたのでした。
「……体中、痛いです」
「その程度の筋肉痛で済んでいる方が不思議だぞ。
聞けば、ほとんど全力で動き通しだったそうではないか。
痛い痛くない以前に、普通、年齢的にそこまで体が動くはずが無いのだ」
つまり、火事場の何とやらを使い続けた代償、ということのようでした。
「あと、実は左手が一番痛いです」
「……それで何とも無かったら、我は神に常識と良識の返還を請求するぞ。
いくらクックの耳に緩和されたとはいえ、爆発の衝撃だ。突き指と打撲程度ならば御の字よ」
「でも右手も安静ですから、ご飯、食べられません」
「問題無い。手を貸そう」
言いながら林檎を剥いている辺り、案外甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのかもしれません。
ならばと、試しに聞いてみました。
「では、着替えも手伝ってくれますか?」
「断る!」
即答でした。
「見ておくなら今のうちだと思うのですよ?」
「断じて断る!」
強調が付きました。
「じゃあ仕方ありませんか」
「…………うむ」
「ちょっと間が空きましたね」
そんなこんなで時は流れ。
1週間後にマックス爺さんの出立を見送ってから、さらに数日を経て、私はやっと復帰し。
今、武器屋さんの工房の前に立っているのでした。
療養中に注文した『相棒』を受け取るためです。
「世界で1つの最高級鍋つかみ、出来ていますか?」
「……もう少し言葉を選んでやらねば、職人が泣くぞ」
至極もっともな意見でした。
100%オーダーメイドの品ですから、そもそもにおいて職人泣かせなのは間違いありません。
それでも、出来ているよ、とだけ短く答える工房のおじさんは、職人の鑑でした。
「これだね。工房試作品・強襲用手甲」
取り出された品は、奇怪、と言って良い意匠でした。
5つの指が形取られたそれは間違いなく篭手の範疇ですが、指先から真紅の爪が伸びている以上、一介の防具とは思えません。むしろ、というより紛れもなく武器です。
手の甲の側は蒼く、平の側は黒く、それぞれランポスの鱗が色違いで用いられています。しかしようく見てみると、鱗の上から金属が蒸着され、強化されているのでした。
「マカライトをふんだんに用いて、盾としてさえ用いられる強度を持たせた。
もちろん注文にあった通り……特に『手の平』の部分を固めたぜ。徹底的に、な」
差し出されたそれを、私は、胸を躍らせながら左手に付けました。
しっとりとしていながら、確かな弾力。かつ、えも言われぬ滑らかさ。
紛れも無く、クックの耳の感触でした。
「うん……指も自由に動くから、道具だって扱えますね。これなら、バッチリです」
――そう。これは、そういう代物なのです。
クックの耳の耐火性。
爆発の衝撃にも耐え得る強度。
目標を爆心地で捕らえ離さない爪。
すなわち、零を穿つためだけに生まれた存在。
これは、やがて炎の子供の代名詞ともなる左の武器の、プロトタイプなのでした。
「ありがとうございます。とても、良い仕事です」
「なあに、なかなか面白い注文で、こっちも勉強になった。
だがな、嬢ちゃん。間違ってもそれで戦おうなんて思うなよ。怪我するからな?」
「はい」
にっこり答える内心で、まさにその怪我でしばらく寝込んでいましたよ、と舌を出したのでした。
ちなみに、この装備に費やした素材は。
クックの耳×1ドスランポスの爪×2ランポスの鱗×5マカライト鉱石×5。
御代はしめて、3000ゼニー。
本来、素材は最初の3つだけの予定だったのですけれど、斬破刀を作った時の余りとかで、ユウがマカライト鉱石を出してくれたのです。
なんて下手な嘘、と思いました。
私の療養期間の前半、お昼ご飯の世話を終えるなり、体がなまるので鍛錬してくる、とか言ってそそくさと出かけ、夕食前には泥だらけになって帰ってくるのですから、バレバレなのです。
少しでも私の安全を高めようと、汗水流して採掘作業に勤しんでいたのでしょう。
(……可愛い人♪)
けれど、本人は未だに完全犯罪成立のつもりでいるらしく。
工房を後にするなり、仰々しく溜息をついて、ぼやくのでした。
「やれやれ、討伐報酬がそれ1つで飛んだ……か」
「良いではないですか。そもそも、私へのプレゼント資金だったのでしょう?」
「…………」
この場合の沈黙は、どんな言葉より雄弁な肯定なのでした。
「ありがとう。何もかもをひっくるめて、ありがとう、です」
「……おお、そうだ!その手甲、名前を付けねば何かと都合が悪かろうな!」
照れ隠し全開でした。
こうまでわかりやすいと、ほっぺたをつねりたくなる類の可愛さを感じます。
「心配しなくても、名前はちゃんと考えてありますよ」
「……鍋つかみ系以外なのだろうな?」
いかにも胡乱な目を向けるユウでした。
実は、それも候補の1つだっただけに、胸が痛いところですけれど。
でも。
文字通り、私の片腕となるこれには。たくさんの想いが詰まったこれには。
この名前しかないと、そう思うのです。

「マックスビューティー」

見知らぬ人が聞けば、究極美、とでも訳することでしょう。
でも、私たちは、知っているのです。
老人と少女。
その、人々に知られざる戦いを。
そんな土産話が、この武器には詰まっているのだと。
「良い名だ」
言って温和に微笑むユウの顔は、今は遠い空の下にいる、あの老人を思わせるのでした。

それから、しばらくというほどではないけれど、すぐにというのも躊躇われる程度の時が経って。

コルック村をひっそりと後にする影が、2つ、あったそうです。
それは、何とも歪な組み合わせでした。
ちっちゃな少女と長身の男と。
綺麗に揃えられた黒髪と、ざんばらの白髪と。
笑顔と、仏頂面と。
どこをどう取っても、アンバランス、と言うほか無い取り合わせなのです。
けれど、見る人が見れば、それは、わかることなのです。
その両者の間にある、たった1つの共通項を。
曰く。
戦士が、二人、です。
「ヒトは誰しも……意識するせぬに関わらず、望む望まぬなぞ頓着せず、
覚悟するせぬさえ考慮せず、それでも常に何かしらと戦い続けているのだと、そう思うのだ」
無闇に背の高い真っ白な髪の男は、出し抜けにそんなことを話し始めたのでした。
男の名はユウ。渋柿をわしゃわしゃと頬張ったような顔をしておりますが、別段不満があるわけでもなく、これがごくごく普通の表情なのです。
「例えば主婦。それは家族の生命健康を守り抜く戦いであり、武器の名を絆と言う。
例えば百姓。それは大地に糧を芽吹かせ育む戦いであり、武器の名を丹誠と言う。
例えば子供。それは己が小さな世界に腕を伸ばす戦いであり、武器の名を無邪気と言う。
例えば戦士。それは刃で以って望みに臨む戦いであり、武器の名を信念と言う。
これらの間に、優劣は一切、無い。皆一様に、己の戦場で戦い続けているのだから」
そこまで言い置いてから、小さな影に向き直ります。
「だが、圧倒的な脅威に、ともすれば天災の如く、己の戦場以外での戦いを強いられる時がある。
それは往々にして、絶望的な苦境での、命を賭した戦いとなるであろう。
人々は、欲する。打ち勝つための剣を。奪われぬための盾を。
そうした剣となり盾となることを望みとする者、我、それをハンターと呼ぶ」
ハンター。
いつかも聞いたその言葉に、黒髪のちっちゃな少女は、くすりと笑みを浮かべました。
少女の名はソナタ。こちらは、笑顔がごくごく普通の表情なのです。
「それは、偽善かもしれません。自己満足かもわかりません。ただのお仕事ともとれるでしょう。
なのにあなたは、自分は弱き人々の剣であり盾であり続けると、言えるのですか?」
「無論」
白髪の男は、神妙に頷きました。
「良し悪しは、この際問わん。問題は、そうと言えるだけの信念が無ければ、
世界にさえ謳える己がなければ、ハンターなどは到底務まらんと、そう言うことだ」
思わず苦笑が零れました。随分とまあ、持って回った言い方をしてくれたものです。
――ソナタは、何を思いハンターとなるのか?
そんな問いを放つのと同時に、
――武器を持っただけで、自分はハンターなどと自惚れるな。
と、誡めてもいるのでした。
これから踏み入れる世界に、先に身を置く者として。
あくまでも、対等の存在として扱うために、です。
ああ、もう。
なんて不器用で、愛想が無くて、回りくどくて、そのくせに底抜けな優しさなのでしょう。
――いいでしょう、そちらがその気なら、こちらもこの気です。
「私は、あなたの言う意味でのハンターになる気は、これっぽっちもありません」
直球勝負。
そうして、ユウが目を白黒しだす前に、でもね、と続けます。
「私はあなたを守りたい。あなたが守りたいと願うモノ全てを守りたい。
例え今は無理だとしても、肩を並べられる日がそう遠くないと信じて。
私はあなたを譲らない。あなたを取り巻くモノ全てに譲らない。
例えそれが、死へと誘う顎であっても。誘惑する美女だとしても。他のナニモノであったとしても」
足を、止めて。
同じく足を止めて、何事かと顔を覗き込んできたユウと、向かい合い。
――これでも、まだ高さが足りないのね。
なんて思いながら、目一杯背伸びして、何とかユウの頬に両手を添え。

「私は、あなたと一緒に歩いていくと決めました。もう二度と、置いて行かせなんかしません」

聞き様によっては、果てしなく物騒な言葉でした。
『あなたがいないとダメなの…』よりは、確実に『責任取って下さいね♪』に近い響きです。
実際、そのダメージは計り知れないようでした。
渋柿の顔が熟したトマトに様変わりし、時折何か口にしようと試みているようですが、言葉にはほど遠い呻きが上がるだけ。
ユウは、動けず、沈黙し。
私は、ゆるりと、反応を待ちました。
体格差からすれば、リオレウスとアプトノスみたいなものですけれど。
立場的には、完全にその逆を行っているのでした。
自然、そのままの形で見つめ合うことになり。
1分、2分、3分まで残り10秒を切ったくらいで。
「……勝手に、するが、良い」
何とかそれだけを言うと、突然にがばっと体を起こして、さあいくぞ先を急ぐぞさあ早く、とまくし立てて、ずんずかざんざかと歩き始めてしまったのでした。
その耳が、まだ、トマトになったままだとも気づかずに。
「はい、もちろん勝手にします」
――思えば、出会った一ヶ月前の日にも、こんな会話を交わしていたでしょうか。
「変わっていく私、変わらない私……どちらも、大切な私」
覚えず、笑みが浮かびます。
私はすぐ前を行くユウに追いつき、すぅ、と手を差し出すのでした。
少し間が空いてから、そこに温かな手が添えられて。
笑顔が、2つ。
寄り添いながら進んでいくのでした。
1歩1歩、確実に。
どこまでも、どこまでも。
いつか肩が並ぶ日を夢見ながら。
今はまだ、アンバランスな二人として。

街のハンターギルドにて、最年少ハンターが登録されちょっとした話題を呼んだのは、それから数週間後のことなのでした。
2005年08月22日(月) 20:42:51 Modified by funnybunny




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