本当に可愛いよな、と隣の女に視線を向けながら、佐々木ミツルは安いビールを口にした。
 栗色のショートヘアに茶色がかった円らな瞳が魅力的な、いわゆるロリータフェイスをしている。
これで制服でも着れば高校生か……下手をすれば中学生くらいに見えるだろう。幼いルックスに加
えて華奢な体つきをしているが、胸元はボリュームたっぷりに膨らんでいた。
 菅野悠美(かんの・ゆみ)。今年、更級(さらしな)大学に入ったばかりの新入生だ。
 今日は彼が所属しているサークルの、新入生歓迎会だった。
 いわゆるイベントサークルで、その時々に応じてスポーツを楽しんだり、ボーリングやカラオケ
などの娯楽に講じたり、今日のように飲み会を開いたりもする。
 佐々木は今年で三年生になる。冴えない容貌のせいか、こういった類の飲み会では例外なく端の
席に座らされる。女が集まっている席に座ることができるのは、モテそうな一部の男子学生だけだ
った。一方の佐々木はといえば、女がロクに寄ってくることもなく、会を終えるのがお決まりのパ
ターンだ。
 だが今日は珍しく、隣が女──それも飛び切りの美少女だ。神を信じない主義だが、今日ばかり
は望外の幸運を天に感謝する。
 と、
「今日は一年生の歓迎会なんだから、悠美も飲みなさいよ」
 悠美のもうひとつ隣の席に座っている女が酒を勧めた。
 彼と同じ三年生の沢木美緒(さわき・みお)。明るい亜麻色の髪をセミロングに伸ばしていて、溌
剌とした印象を受ける。すらりと伸びきった四肢が健康的な魅力を放っていた。
「うう、苦い」
 ビールを口にした悠美が顔をしかめた。その様子がいかにも初々しくて、どきり、としてしまう。
「なに、もしかして飲んだの、初めて?」
「苦いです……」
 泣きそうな顔で悠美が告げる。仕草の一つ一つがいちいち可愛らしい。美緒はよしよし、と彼女
の頭を撫でていた。
「もう、子供じゃありませんよ、あたし」
「ビールが苦いようじゃ、まだまだお子様ね」
「ひどい、美緒さん」
 二人は和気あいあいといった雰囲気で歓談している。同じサークルの男子学生がその会話に混じ
り、悠美に話しかける。今年の新入生の中でも、悠美は飛びぬけて美人なのだ。さっそく目をつけ
た男も多いだろう。
(くそ、俺もあの輪に混じりたい)
 もどかしい思いが込み上げた。せっかく隣の席になったというのに、悠美とはまだ挨拶程度の会
話しかしていない。その後の悠美は美緒や他の男子学生とばかりしゃべり、彼は完全に蚊帳の外だ
った。
(結局いつもどおり、ロクに女と喋れないままコンパ終了かよ)
 苦い思いが込み上げる。




 佐々木はいわゆる素人童貞だった。バイトで貯めた金でソープに行ったことはあるが、女性との
交際経験はゼロだった。悠美は、モロに彼の好みなのだが、どうやってアプローチしたらいいのか
分からない。
(くそ、せっかく隣の席になったんだ。色々話しかけて仲良くなりたいけど──)
 話題はどうすればいいのだろう? どんな話題が好みなんだろう? どうやってその話題を膨ら
ませばいいのだろう? こちらに背を向け、美緒と仲良く話している彼女に、どうやってこちらを
向かせればいいのだろう?
 考えれば考えるほど、頭の中に疑問符が並んでいく。
 結局のところ、何一つできずに寂しく酒を飲むことしかできなかった。せいぜい悠美の情報を探
るため、彼女たちの会話に必死で聞き耳を立てるくらいだ。
「で、悠美って彼氏いるの?」
 美緒がたずねる。
(よくぞ聞いてくれた!)
 佐々木は心の中で美緒に向かって手を合わせた。
 今日、もっとも知りたかった質問だ。
 どくん、どくん、と心臓を高鳴らせて、悠美の答えを待った。
「……いないです」
 悠美は恥ずかしそうにうつむいた。
(よしっ!)
 期待通りの言葉に思わず心の中でガッツポーズを作る。
 もちろん冷静に考えれば、彼のような冴えない男に悠美がなびく可能性はゼロに近い。だがそれ
でも可愛い女の子に『彼氏がいない』と知るだけで、色々と勇気がわいてくるのだ。
「美緒さんはいるんですか」
「あたし? あたしは──今はいないよ」
「今は、って、昔は?」
「そりゃあ、高校生のころは付き合ってる人がいたけどね。野球部のマネージャーやってて、底の
キャプテンと」
 美緒が遠くを見つめるような目で告げる。
「色々あって、別れちゃったの」
「へえ」
「ん、もしかして、悠美って付き合ったことないの?」
 悠美は恥ずかしそうに頬を染めた。
「あ、はい……あたし、中学高校と女子高だったので、そういう機会が……」
 今どき珍しい清純派なのかもしれない。
「勿体ない。悠美、可愛いのにな」
「そ、そんな……あたし、別に」
「ま、これからは男のほうから寄ってくるよ。うん、あたしが保障する」
 美緒が力強く宣言した。




 ──やがて飲み会は二次会、そして三次会へと移行していく。二次会が終わったところで、悠美
は三次会の参加を辞退し、帰路に着いた。
 周囲に彼女と一緒に帰るものはいない。男子学生たちがお互いにけん制するような視線を放っている。
『抜け駆けするなよ』
『お前こそ』
『くそ、お持ち帰りしてえ』
『今なら絶対ホテルまで連れ込めるよな』
 互いの目線がそう会話している。
 と、
「お、俺……」
 佐々木が前に出た。
 ごくり、とつばを飲み込み、告げる。
「俺が送るよ」
 佐々木にとって、精一杯の勇気だった。
 深く考えたわけではない。だが彼らがけん制しあっている今の状況なら、自分がその役目を担え
るのでは、と思ったのだ。
 男子学生たちは、ふん、と鼻を鳴らして、了承してくれた。佐々木なら悠美に手出しする勇気も
ないだろう、という判断なのかもしれない。
 要するに舐められているのだが、今はそんな評価がありがたかった。おかげで悠美と二人きりに
なれる。
「ちゃんと送れよ。悠美ちゃんにヘンなことするんじゃねーぞ」
 誰かが冗談めかして言った。
「ばーか、佐々木にそんな度胸あるかよ」
「風俗嬢としかまともに会話できないからな、佐々木は」
(くそ、何もこんなところで言わなくても──)
 仲間たちの心無い言葉に苛立ちながらも、佐々木は悠美と共に帰路へ着いた。
 ──二人きりの夜道は、緊張でロクに口もきけなかった。
 悠美は悠美で、全く喋らない。
「うう……」
 初めて飲んだ酒に相当酔っ払っているようだ。先ほどからしきりに口元を押さえているし、幼い
童顔が真っ赤に染まっている。
「あ、あの、大丈夫か」
 佐々木は心配になって声をかけた。
「う……気持ち悪い……」
 悠美は青ざめた顔でうめいた。今にも吐きそうな顔をしている。
「そんなんじゃ帰れないだろ」
「その……休んでくか」
 恐る恐るたずねる。




 心の中にドス黒い欲望が湧き上がっていた。
 千載一遇のチャンスだと思った。
 これを逃せば、もしかしたら一生素人童貞かもしれない。そんな極端な考えさえ頭に浮かぶ。
「うう……」
「俺のアパート、この近くだし」
 アパートに来るように誘うと、悠美はぼんやりとした表情でうなずいた。


        *


 佐々木の下宿先は、六畳一間の小さなアパートだ。部屋の中に入っても、悠美はほとんどしゃべ
らなかった。おそらく意識もはっきりとしていないのだろう。
 軽い罪悪感を覚えながらも、それを遥かに上回るムラムラした欲情に抗えなかった。佐々木は女
子大生の柔らかな体を床に横たえる。
「菅野」
 呼びかけてみるが答えはない。泥のように眠っていた。
「文字通りの『泥酔』だな、こりゃ」
 そうつぶやいて、彼女ににじり寄った。
「苦しいだろ。服、脱がせてやるよ」
 悠美はまったくの無抵抗だ。自分が何をされようとしているかも、分かっていないのだろう。
 服を脱がせると、十分に発育しきった裸体が現れる。
 華奢な体とは不釣合いなほど豊かな乳房があらわになっていた。その頂点でピンク色の蕾がひっ
そりと息づいている。細い腰は抱きしめただけで折れてしまいそうだ。
 もう我慢できない。
 佐々木は息遣いも荒く、若い肢体にむしゃぶりついた。可愛らしく膨らんだ乳房を、音を立てて
吸いたてる。
 悠美は軽く眉をしかめ、「んっ……」と声を漏らした。
 それでも目を覚ます気配はない。
 最も、ここまで来れば目を覚ましたところでどうということはない。密室で二人きりなのだ。抵
抗されても、どうとでもなるだろう。
 ちゅ、ちゅっ、と両乳房に思う存分キスの雨を降らせ、たっぷりと吸いつけてから、ようやく顔
を離す。
「さ、そろそろいいか」
 佐々木は痛いほどに勃起した肉棒を剥き出しにすると、細い両足を割り開いた。
 美緒との会話を聞いた限りでは、悠美は男性との交際経験がないらしい。当然、処女だろう。
 ひっそりと閉じた秘唇は、まだ一度も男の侵入を許していない純潔さを感じさせる。以前、通信
販売で買ったまま、ロクに使っていなかったローションを取り出し、股間に塗りつけた。




「バージンとヤるなんて初めてだ……たっぷり塗り付けないと入らないかもな」
 口元がにやにやと緩んでくる。
 ローションのぬるっとした感触に、悠美はかすかに顔をしかめた。
 佐々木はすらりとした両脚を抱えると、腰を割り込ませた。綺麗なピンク色をした膣孔に肉棒を
あてがう。初々しく閉じた秘唇が、ひく、ひく、と蠢いていた。
 いよいよ挿入だ。
 この可愛らしい女子大生の処女を奪えるのだと思うと、狂おしいほどの興奮が駈け巡った。
「へへへ、頂かせてもらうぜ」
 腹に渾身の力をこめて、腰を突き出した。堅く閉じた肉の割れ目を押しひろげ、佐々木のモノが
彼女の中に沈みこんでいく。
 さすがに痛みを感じたのか、悠美が顔をしかめた。
「……たっ……佐々木さん、痛いっ!」
 叫びながらも、まだ意識は半分ほどしか覚醒していないのだろう。
 本格的な抵抗も見せず、ただ眉を寄せているだけだ。
「我慢するんだ、すぐに終わるからな」
 彼女をなだめながら、さらに肉棒を押し進めていく。
 と、途中で弾力のあるゴムのような感触に突き当った。
 処女膜だ、と見当をつけた佐々木は下半身に思いっきり力をこめる。ぶつりっと小気味のいい感
触とともに、佐々木のペニスが彼女の体の最奥まで埋めこまれた。
「い、痛いっ……!」
 悠美が叫んだ。ようやく、自分が何をされているかを知ったようだ。
「嫌っ……何っ? 佐々木さん、あたしに何してるんですかっ?」
 と、ショートヘアを振り乱し、混乱した声を上げる。
 だが、すでに佐々木と彼女はお互いの性器でつながりあっていた。
「いまごろ正気に返ってももう遅いぜ」
 佐々木が得意げに告げた。
 彼女のバージンは──すでに頂いてしまったのだ。
 勝利の気持ちをかみしめながら、佐々木はピストン運動を開始した。
「なんでっ? なんで、あたしっ……? 嫌っ、やめてっ、抜いてェ、嫌あっ!」
 悠美が体をバタバタさせて抵抗する。佐々木は荒々しく彼女を組み伏せ、処女を失ったばかりの
体を貪った。
 処女だけあって、膣内の粘膜は堅い。彼のものを食いちぎらんばかりに締め付けてくる。それで
も何度も何度もこすり上げるうちに、少しずつ動きやすくなってきた。
 破瓜の出血のせいなのか、それとも女体の防衛本能で濡れてきたためかは分からないが、膣内に
ぬめった感触がある。
「あ……んっ……」
 悠美は相変わらず苦しげな吐息を漏らしている。幼い顔立ちとは裏腹に、色気のある喘ぎ声だっ
た。




「うう、狭いな。風俗嬢とは全然違うぜ」
 ピストンするたびに、初めて男の挿入を許した膣がペニスを心地よく締め付ける。その強烈さに、
佐々木は五分ももたず音をあげた。
「ううっ、イクッ!」
 肉棒を深々と押し込み、悠美の胎内におびただしい量の精液を迸らせた。処女を奪われたばかり
の女子大生の膣に、思う存分の中出しだ。
(ナマで出しちゃったけど、いいのかな)
 一瞬不安を覚える。一ヶ月に一度くらいのペースで行く風俗では、いつもゴムをつけている。彼
にとって生まれて初めて経験する膣内への射精だった。
 コンドーム越しの射精とはまったく違う。女を征服した、という感触は、狂おしいほどの快感だ
った。佐々木は蕩けるような気持ちで体を震わせ、最後の一滴まで彼女の中に射精した。
 ずるり、と肉棒を引き抜くと、ペニスの胴回りに赤い筋が付着していた。
 悠美の処女を奪った証を目にし、佐々木はあらためて感激に体を震わせる。
(血がついてる……本当に処女とヤッたんだ、俺)
「ひどい……」
 シーツについた赤い染みを見て、悠美が唇を震わせた。見る見るうちに、瞳に涙がたまっていく。
初体験にロマンチックな夢でも抱いていたのだろうか。
 おもむろに携帯電話を取り出し、佐々木はボタンを押した。彼が悠美の処女を奪った、証拠の写
真だ。
「な、なんのつもりですか」
 悠美が悲鳴を上げた。
「こういうときのお約束だろ。脅迫写真ってやつだ」
 佐々木の口の端に笑みが浮かぶ。
 こんなにも可愛らしい子と一回限りで終わらせるのは、あまりにも勿体ない。
「これからも仲良くお付き合いしてもらおうと思ってさ。なんせ俺はお前の『初めての男』なんだ
からな」
 たちまち悠美の顔色が蒼白になる。ぱしゃり、ぱしゃり、とシャッターを切る音だけが、静かな
部屋に響き渡った。




                            【終わり】

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