最終更新: sen_no_risho 2009年05月25日(月) 22:42:39履歴
フィボナッチの名を冠するテクニカルには、
フィボナッチ・リトレースメント
フィボナッチ・アーク
フィボナッチ・ファン
フィボナッチ・チャネル
フィボナッチ・プロジェクション(エクスパンション)
フィボナッチ・タイムゾーン
フィボナッチ・ゾーン
など多数ある。飛びぬけて有名かつ使いやすいのは第二十八夜でも紹介したフィボナッチ・リトレースメントだ。
その他のテクニカルも、チャートの機能によっては表示することができるし、見たことがある人もいるかも知れない。
フィボナッチ・リトレースメントは、「高値」「安値」の間に「61.8%」「50%」「38.2%」の3つの点を作って、時間軸は無関係にとにかくその3つの価格に達したら一旦もみ合う可能性がある、と考えるものだった。
フィボナッチ・アークは、そこに「いくらかの時間軸要素」を加味する。
アーク(arc)というのは「円弧」という意味で、チャートにいくつかの同心円を書き加えて、相場がその同心円の「円弧を横切るとき」一旦もみ合う、と考える。
具体的には、まずはポイントとなる「高値」と「安値」を選ぶ。これはフィボナッチ・リトレースメントと同様である。このうち、時間的に先にある点をA、後にある点をBとしよう。つまり、Aの後にBがあるとする。A、Bのどちらが高値かは問わない。
ここで、「チャート上におけるAとBの距離」を求める。距離というのは、単にレート差や時間差だけではない。
AとBはレートも時間も違うから、ABを結ぶ線は、右上がりか右下がりの斜めの線のはずだ。このABを結ぶ線を基準にし、その長さ(A−B間の距離)を求めるのである。
次に、B点、つまり時間的に後にある点を中心にして、半径が
・ A−B間の距離の100%(つまりA−B間の距離そのもの)
・ A−B間の距離の61.8%
・ A−B間の距離の50%
・ A−B間の距離の38.2%
となるような、4つの同心円の円弧(アーク)を描く。
Bが高値の場合は、描く同心円は下半分だけで良い。
Bが安値の場合は、描く同心円は上半分だけで良い。
このような同心円を描くと、B点以降の相場の推移で、いつかこの円弧を横切るだろう。このとき、相場が一旦もみ合う可能性がある、と考えるのである。
チャート上に描画した絵は、こちらや、こちらなどで見ることができる。
円弧を描くので、B点以降、相場が急角度で上下に向かえば、かなりのレート変動がなければ円弧に達しない。
反対に、B点以降、相場がゆっくり緩い角度で上下すれば、少しのレート変動で円弧に達する。
このように、時間軸を無視していたフィボナッチ・リトレースメントに、時間の要素を加えることができるという発想だ。
なお、同心円を描く半径は、チャート上のA−B間の距離だけでなく、
・A−B間のレート差 を半径として、B点を中心に同心円を描くもの(絵の例)
・A−B間の時間差 を半径として、B点を中心に同心円を描くもの(絵の例)
という応用もある。この場合、どちらも半径100%の円弧はA点は通らない。
(基本通りに描けば、半径100%の円弧は当然必ずA点を通る)
さて、フィボナッチ・アークは、次の点で “致命的な欠陥” があるため、利用すべきでない。
実は、フィボナッチ・アークを描くとき、「チャートの縦横比をどう表示・印刷するか」で結果が変わってしまうのだ。
例えば、画面上(や印刷した紙の上)でチャートが、縦軸のレートの「1円」分が、横軸の時間の「1日」分とたまたま同じ長さだったとする。ここにフィボナッチ・アークの円を描いたとしよう。
次に、同じローソク足チャートを、設定を変えて縦軸のレートの「1円」分が横軸の時間の「12時間」分と同じ長さに表示されるように、表示の縦横比だけ変えて描き直したとする。これに、同じ高値・安値でフィボナッチ・アークの円を描いたとしよう。
すると、単に表示の縦横比を変えただけで、同じ高値安値で選んだフィボナッチ・アークの円は「全く違うところ」に描かれてしまうのだ。つまり、先程の2つ描き方では、B点以降で相場がもみ合うとみられる時刻とレートは、全く異なるものになりうる。
これは、チャートの縦軸と横軸の長さが無関係なのにも関わらず、同心円を描いてしまう行為に原因がある。
チャートの縦横比を変えると結果が変わるということは、最初に、各人がアークを描いた時点で、各人各様のバラバラなアークを描いている、ということだ。
フィボナッチ・アークは、時間軸を要素に加えるという発想は良いのだが、原理的に欠陥があるため利用しない方が良い。仮に、フィボナッチ・アークを利用する人が多かったとしても皆がほぼバラバラの結果を出すなら、意識ポイントにさえならない。
(実際は、相場の上昇速度と下降速度は似通っており、フィボナッチ・アークの結果は、普通にフィボナッチ・リトレースメントを算出した結果とほぼ近く、さほど問題になっていないとも考えられるが)
フィボナッチ・ファンは、選んだ高値・安値のA点・B点を結ぶ線の間に「角度をつけた線」を引いて、これを相場がもみ合うラインと見なすやりかただ。
まず、今までと同様に、目ぼしい高値・安値を選び出す。このうち、時間的に先にある方をA、後にある方をBとする。
Aから水平線を引き、Bから垂直線を引き、交わった点をCとする。点Cは、レートがAと同じで、時刻はBと同じになるはずだ。
(ACは水平、BCは垂直で、△ABCは直角三角形)
ここで、辺BCの長さを、「61.8%」「50%」「38.2%」で分割する。
要は、フィボナッチ・リトレースメントで算出される3つのレートを、辺BCの上に当てていく。この点を上から順に、D・E・F、としよう。D・E・Fは、BCの上にある。
もし、D・E・Fを通る3本の「水平線」を引いてしまえばフィボナッチ・リトレースメントと同じことになるが、フィボナッチ・ファンではAD、AE、AFを結ぶ線を引く。単にAD・AE・AFを結ぶだけでなく、D・E・Fの右側(=未来)に延長することが大事だ。
当然、D・E・Fは、Aとレートが違うから、AD、AE、AFは斜線となるだろう。
さらに、一番上にあるAB、一番下にあるAC(これは水平線)と合わせて見ると、上から順に、AB・AD・AE・AF・AC、とAを中心にして5本の放射状の線が描かれることになる。
そして、B点以降、相場が5本のAB、AD、AE、AF、ACを横切る時にもみ合う、と考えるのである。
言葉では捉えにくいが、これを絵で表したものは、こちらで見ることができる。
(ただしこの絵には、余計な線が多数引いてある。この絵で言えば、放射状の線が一点に集まった左下の点がA、対角線上の右上の点がB、右下の点がCで、「←38.2%」(38.2%戻し)の点がD、「←50%」(半値戻し)の点がE、「←61.8%」(61.8%戻し)の点がFとなり、右に伸びた4本の斜線のうち、これらの数字の書かれた点を通過する3本が、AD、AE、AFとなる)
元の高値・安値を結ぶ線が斜線なので、時間とともに、AD、AE、AFは放射状に開いていく。時々刻々、意識ポイントとなるレートが変化していくのが特徴であり、フィボナッチ・ファンも時間要素を加えたものだと言える。
なお、フィボナッチ・ファンの描画は、チャートの縦横比(縦横の縮尺)に関係なく、必ず同じところを通る線を描くことが出来るので、フィボナッチ・アークのような欠陥はない。
フィボナッチ・チャネルは、フィボナッチ・リトレースメントを、「チャネル・ライン」という別のテクニカルラインに適用したものだ。
チャネル・ラインは、上値・下値のラインが平行に引けるときの2本線だ。上値・下値ラインは必ずしも水平に引けるとは限らず、多かれ少なかれ右肩上がりか右肩下がりの斜線になる。
このチャネルラインを相場が上下どちらかに抜けたとき、その行き先を知るのに、相場にチャネルラインの平行線(同じ傾きを持つ線)を多数引いておき、行き先を知るものだ。
2本のチャネルラインの間隔を100%として、新たに描き加える平行線を、138.2%、150%、161.8%など黄金比率を使った間隔で引いていく。
(チャネルラインをブレークしたときなので、38.2%や61.8%のような「間にくる数」ではなく、138.2%や161.8%のように「範囲外にくる数」を用いる)
具体的な絵は、こちらで見ることができる。
この絵では、多数の平行線のうち上2本がチャネルラインで、上から3本目が161.8%戻しのフィボナッチ・チャネルである。
(「見事にヒット」と書かれたところ)
フィボナッチ・チャネルは、「チャネルラインのブレーク」に「フィボナッチの黄金比率」の考えを組み合わせた複合ワザと言える。
フィボナッチ・プロジェクションは、フィボナッチ・リトレースメントでいう引き返しの、さらに「再・引き返し」がどこまで行くかを予想するものだ。
まず、相場が適当な安値A→高値Bに向かったとする。これを基準の動きとし、その値幅(高値−安値)をLとしよう。
その後、高値Bで一旦引き返すとする。
一旦引き返したあと、押し目Cで再度引き返して元の動きと同じ向きに動き出したとする。このあと、どこまで行くか?を見るものだ。
ちなみに、Cの後の上昇幅として、元のA→Bの値幅Lと同じ(100%)だけ見れば、これは「一目均衡表の“N計算値”」と同じことになる。
フィボナッチ・プロジェクションでは、Cの後の上昇幅として、Lと同じ(100%)だけでなく、ここにフィボナッチで使われる黄金比率を適用し、Lの何%の点まで行くか、を見る。
一般的には、Lと同じ100%の点を越えてさらに向こう側まで行くのを見るのに使われ、100%、138.2%、150%、161.8%の値幅の計算を行う。
(フィボナッチ・リトレースメントと同じように、38.2%、50%、61.8%も加えて良い)
例えば、安値Aから高値Bに上昇し、一旦押し目Cまで下落したあと、再上昇したとすると、その到達予想点Dは、A, B, C, Dをそれぞれのレートとして
D=C+(B−A)×38.2%
D=C+(B−A)×50%
D=C+(B−A)×61.8%
D=C+(B−A)×100% (←これは均衡表のN計算値と同じ)
D=C+(B−A)×138.2%
D=C+(B−A)×150%
D=C+(B−A)×161.8%
といった点が意識されるだろう、と見る。
具体的な絵は、こちらで見ることができる。(この絵では、138.2%で反発)
フィボナッチ・タイムゾーンは、時間軸を特に強調したテクニカルだ。
相場には、いくつかの高値となる小山・小谷が並ぶことがある。この時間間隔が、時として黄金比率で並ぶことがある、というものだ。
(1〜2個の山や谷が並ぶのはありえるが、3つも4つも5つも、となるといささか懐疑的だが・・)
チャート機能としては、ある時刻を起点として、そこから時間間隔がフィボナッチ数(1, 2, 3, 5, 8, 13,…)に沿って広がる縦線(時間を区切る線)が多数表示される。この数は、その時の「ローソク足の本数分」で時間が区切られるようだ。
そして、この線の何本かが、目指す小山・小谷のいくつかに重なるようにしたとき、未来に描かれている縦線のどれかで同様に小山や小谷が出来るかも知れない、というものだ。
よく、相場において、ある時間サイクルで山・谷が並ぶという発想はあるが、フィボナッチ・タイムゾーンはそのサイクルが黄金比率で拡大されていくという考えを適用したものだ。
具体的な絵は、こちらの16ページで見ることができる。(本資料はチャート機能等の説明書である)
ここではフィボナッチ数そのものを利用しているが、基本は隣同士の時間区画が黄金比率1.618…倍になることを利用しているので、フィボナッチ数でなく、後で述べるリュカ数を使っても概ね同じ効果がある。
フィボナッチ・ゾーンは、フィボナッチ・タイムゾーンと名前は似ているが、全く異なるテクニカルである。また、大変複雑な上に、過去の膨大な統計が必要になるため、ここでは非常に大雑把な紹介に留める(それでもかなりの長さになるが)。
フィボナッチ・ゾーンは、むしろ「ピボット指数」の応用形である。
基準点はピボット指数と同じく、
(前日高値H + 前日安値L + 前日終値C)÷3
で求める。フィボナッチ・ゾーンでは、これをピボットではなく「バランス・ポイント(BP)」と呼ぶ。
また、ピボット指数と同じく、2つのレジスタンスと2つのサポートを持っている。
異なるのは、2つのレジスタンスと2つのサポートが、単一のレートではなく「ゾーン」と呼ばれる値幅を持っていることだ。
つまり、
R2上端・R2下端で作る「レジスタンス・ゾーン2」
R1上端・R1下端で作る「レジスタンス・ゾーン1」
S1上端・S1下端で作る「サポート・ゾーン1」
S2上端・S2下端で作る「サポート・ゾーン2」
がある。
具体的には、
R2上端=BP+(H−L)×1.382
R2下端=BP+(H−L)×1 この間がレジスタンス・ゾーン2
R1上端=BP+(H−L)×0.618
R1下端=BP+(H−L)×0.5 この間がレジスタンス・ゾーン1
BP=(H+L+C)÷3 (ピボットと同じ)
S1上端=BP−(H−L)×0.5
S1下端=BP−(H−L)×0.618 この間がサポート・ゾーン1
S2上端=BP−(H−L)×1
S2下端=BP−(H−L)×1.382 この間がサポート・ゾーン2
と計算する。
ピボット指数では、R1〜ピボットの間隔と、ピボット〜S1の間隔は異なるが、フィボナッチ・ゾーンでは、R2・R1と、S1・S2は、BPを挟んで上下対称だ。
また、ピボット指数のHBOP・LBOP(ターニングポイント)のようなものは無い。
こうして得られた5つのゾーンを「境界」として、相場を6つに区分する。つまり、
ゾーン1 =レジスタンス・ゾーン2より上すべて
ゾーン2 =レジスタンス・ゾーン2とレジスタンス・ゾーン1の間
ゾーン3 =レジスタンス・ゾーン1とバランスポイントの間
ゾーン4 =バランスポイントとサポート・ゾーン1の間
ゾーン5 =サポート・ゾーン1とサポート・ゾーン2の間
ゾーン6 =サポート・ゾーン2より下すべて
とする。
このように区分された6つのゾーンの中を相場は動いていくわけだが、
●前日の終値が、2日前のレートで計算されたどのゾーンで引けて
●当日の始値が、前日のレートで計算されたどのゾーンで始まったか
を、6×6の36通りに分けて過去の統計を取る。
(為替の場合、前日終値=当日始値、であるが、前日終値を判定するゾーンは2日前のもの、当日始値を判定するゾーンは前日のもの、で、ゾーンの方がずれているので、前日終値=当日始値でも異なるゾーンになることがある。ただ、株式のように当日寄付きが極端に離れるケースがないので、36通りのうちほとんどのケースは起こらない。例えば「前日終値がゾーン1にあり、当日始値がゾーン6にある」ということは、まずなさそうだ)
そして、これら36通りの組み合わせそれぞれで、その日(当日)一日でどのゾーンまで相場が動いたか、どのゾーンがサポートやレジスタンスの機能を果たしたか、を、過去の膨大な統計に基づいて確率で表示する。
つまり、過去の値動きの統計に基づき、
●前日終値が、2日前のレートで計算されたどのゾーンで引けたか
●当日始値が、前日のレートで計算されたどのゾーンで始まったか
の36パターンに応じて、
●当日の値動きが、どのゾーンまで動きうるか
を、6つのゾーンごとに確率で表すことができる。
よって、「安すぎる値段で指値をしてヒットしなかった」という状況を回避し、高確率でヒット可能な良好な指値を置くことで、効率的な売買が出来るだろう、という予測である。
ただ、6つの区分は連続しておらず、たまたまどのゾーンにも属さずに、境界内(例えばレジスタンス・ゾーン1)の途中で引けた場合に、これを「6つのゾーンのどこで引けたと考えるか」は良く分からない。
(境界であるレジスタンス・ゾーン1で引けた場合、それは上のゾーン2なのか、下のゾーン3なのか)
36通りの組み合わせそれぞれで各ゾーンにどれだけ到達したか、というのはかなりの組み合わせであり、必要な統計数は数年分くらいに及ぶらしい。このテクニカルを「自分で算出する」のはほぼ不可能に近そうだ。
フィボナッチ数は、最初の2つの数を「0 と 1」とし、以降「前2つの数を足して次の数にする」という決まりで作られる数列であった。
つまり、
F0 =0、 F1=1
F(n+2)=F(n+1)+Fn (n=0,1,2,…)
だ。
これを、「前3つの数を足して次の数にする」と拡張するとどうなるか。
つまり、最初の3つの数を「0、0、1」とし、以降「3つ前、2つ前、1つ前の数を足して次の数にする」という決まりにするとどうなるか。
記号で書けば、
T0 =0、 T1=0、 T2=1
T(n+3)=T(n+2)+T(n+1)+Tn (n=0,1,2,…)
ということだ。
このような数列を書き下してみると、
0, 0, 1, 1, 2, 4, 7, 13, 24, 44, 81, 149, 274, 504, 927,…
となる。これを、トリボナッチ数という。
トリボナッチ(tribonacci)は、フィボナッチ(Fibonacci)の語頭の Fi- を、「3」を意味する tri- に置き換えた造語である。
(人により トリナッチ trinacci と言う人もいる)
隣り合うトリボナッチ数の比率は、徐々に 1.839… 倍に近づいていく。
この数を、「トリボナッチ定数」と呼ぶ。
(隣り合うフィボナッチ数の比率は、1.618…倍(黄金比率)だった)
なお、トリボナッチ定数 1.839… は、トリボナッチ数の漸化式
T(n+3)=T(n+2)+T(n+1)+Tn
の特性方程式
x3=x2+x+1
の正の実数解 1.839… に等しい。フィボナッチ数も、トリボナッチ数も、隣り合う数の比率は徐々にそれぞれの特性方程式の正の実数解に近づいていく。
相場でトリボナッチが使われる場合は、フィボナッチ関係のテクニカルで61.8%(0.618、黄金比率−1)が使われていたところを、83.9%(0.839、トリボナッチ定数−1)を使うことになる。
よって、「フィボナッチ・〜〜」と名の付くものは、全て「トリボナッチ・〜〜」に変えることが出来る。
ただし、フィボナッチ関係のテクニカル指標よりも利用する参加者は少ないだろうから、トリボナッチを用いたテクニカル指標への意識度は低く、相場の反応は鈍いだろう。
同じように、「前4つの数の和で次の数を作る」という決まりで数列を作ると、それはテトラナッチ数となる。
つまり、最初の4つの数を「0、0、0、1」とし、以後、
T(n+4)=T(n+3)+T(n+2)+T(n+1)+Tn (n=0,1,2,…)
と計算する。
書き下せば、
0, 0, 0, 1, 1, 2, 4, 8, 15, 29, 56, 108, 208, 401,…
となる。
隣り合うテトラナッチ数の比率は、徐々に 1.928…倍に近づいていく。
この数はテトラナッチ定数といい、テトラナッチ数の漸化式
T(n+4)=T(n+3)+T(n+2)+T(n+1)+Tn
の特性方程式
x4=x3+x2+x+1
の正の実数解 1.928… に等しい。
フィボナッチやテトラナッチ関係のテクニカルで、61.8%や83.9%を用いていたところを、92.8%(0.928…、テトラナッチ定数−1)に置き換えて用いることになる。
(名称は、トリボナッチではフィボナッチの「フィ」だけを置き換えたが、テトラナッチ以降はフィボナッチの「フィボ」を置き換えるのが普通である)
同じように、さらに「前5つの数の和で次の数を作る」「前6つの数の和で次の数を作る」…と次々と拡張することは可能である。
前5つの数の和なら、ペンタナッチ数(pentanacci、penta- は「5」の意味)
前6つの数の和なら、ヘキサナッチ数(hexanacci、hexa- は「6」の意味)
前7つの数の和なら、ヘプタナッチ数(heptanacci、hepta- は「7」の意味)
:
となる。
が、そのように拡張しても、何も面白いことは起こらない。
フィボナッチ数・トリボナッチ数・テトラナッチ数・ペンタナッチ数・ヘキサナッチ数・ヘプタナッチ数、と拡張しても、それぞれの数列の「隣り合う数の比率」は、1.618…、1.839…、1.928…、1.966…、1.984…、1.992…と、だんだん 2 に近づくだけだ。
フィボナッチ数の拡張版としてトリボナッチ数、テトラナッチ数を用いても、特別面白い比率が得られるわけでもなく、利用頻度もさほど高くないから、まさしく「そういうものもある」程度で良いだろう。
第二十八夜でも紹介したが、フィボナッチ数と似ているものにリュカ数がある。フィボナッチ数は最初の2つの数が「0、1」だったが、これを「2、1」にするとリュカ数となる。
リュカ数を書き下せば、
2, 1, 3, 4, 7, 11, 18, 29, 47, 76, 123, 199, 322, …
となるが、「前2つの数の和で次の数を作る」という決まりがフィボナッチ数と同じなので、リュカ数も「隣り合うリュカ数の比率」は黄金比率 1.618… 倍に近づく。
よって、リュカ数を使うことと、フィボナッチ数を使うこととは、特段に違いは出ない。
余談ながら、「フィボナッチ数」を並べて出来る数列を「フィボナッチ数列」と呼ぶので、フィボナッチ数とフィボナッチ数列は同じ物と考えて良いが、「リュカ数」を並べて出来る数列を「リュカ数列」と呼んではいけない。
実は、数学的には「リュカ数列」は、単にリュカ数を並べたものよりもっと広い概念であり、フィボナッチ数やリュカ数を含め、ある特徴を持つたくさんの数列を“総称”して「リュカ数列」と呼ぶ。
よって、
フィボナッチ数≒フィボナッチ数列 (実質的にイコールと思って良い)
リュカ数 ≠リュカ数列 (全くの別物)
だから注意しよう。
(フィボナッチ数もリュカ数も、リュカ数列の1つ)
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