システムの名称

合同対空監視所 (JAOP: Joint Aerial Observation Post)

概要

防空管制部隊のレーダーが捕捉できない地域に位置し、レーダーで探知するのが困難な航空機や航跡を観測して、通信網を利用し、防空管制機構に報告する対空監視機構。

合同低高度対空監視システムの発展方向

ttp://www.jcs.mil.kr/views/jsp/download.jsp?location=magazine&no=490
陸軍中領シン・ドンホ合同参謀作戦本部

1. 序論

AOP(Aerial Observation Post: 対空肉眼監視所) は、1968年当時、性能が不十分な空軍管制レーダーの低高度探知能力を補強して、気球、グライダーなどレーダーで捕捉できない空中航体を肉眼で観測するために、第1・第3軍前方高地に設置された。以後、88年のオリンピックに備えて約70か所まで増やされたが、管制レーダーの性能向上などにより、最近は約40か所に調整して運用している。

しかし、AOPは実効性が落ち、高所派遣について部隊管理の負担要因になるなど、運用システム全般に対する改善の必要性が再三に渡って申し立てられていた。そこで、AOPの機能を必要とする空軍管制部隊と、改善を要求する野戦軍との意見を調整して、既存のAOPは大部分を閉鎖し、新たな概念の合同対空監視所 (JAOP) システムを構築することになった。ここでは、JAOP構築の過程を紹介することで、低高度対空監視システムの重要性を説明したい。

2. 肉眼対空監視システムの必要性

現代の空中監視システムは、人工衛星、AWACS、多機能レーダー及び3次元レーダーなど電子的監視手段として発展している。韓半島全体が電子的監視手段によって24時間監視されていることは周知の事実と言える。しかし、気球、グライダーなどと同じ超軽量飛行装置は、レーダーで探知できず隠密浸透が可能である。

また、<表1> のとおり、将来の空中脅威は、巡航ミサイル、無人航空機などの低高度低速小型航空機の脅威がより一層増加することを示している。
このような小型標的は、レーダーで完璧に探知することができないため、肉眼監視は電子監視手段を補助する役割として、その必要性は今も変わらないと言える。
特に、北朝鮮はAN-2機、H-500系列ヘリコプター、MI系列ヘリコプターなど多様な低空低速浸透手段を保有しており、主に、夜間に航空機の航法灯を消し、レーダーの死角地域を利用して隠密に浸透する戦術を使うので、低高度浸透に対する肉眼監視システムはより一層必要なのが実情である。

3. AOPの実効性を検討

このように、肉眼対空監視システムの必要性にもかかわらず、これまで運用してきたAOPは、さまざまな側面から維持・必要性の検討がなされてきた。「探知レーダーなど電子監視手段が発展したので廃止せよ」という主張に対して、「AOPが本当に本来の機能を果たしており、その機能を代替する手段はないのか?」という側面から、AOPの実効性を作戦遂行面と部隊管理条件面とで分析した。

3.1 作戦遂行面
第1に、AOPの配置位置について、本来の任務と機能に相応しいかの分析をした。
下の絵は、AOPの配置位置を要道で表現したものだ。AOPは000地域後方に位置しているために最初の探知が遅れ、また、大部分が300m以上の高地に位置していることから、渓谷を利用して低高度で浸透する低速機の観測と夜間の騒音聞き取りが制限された。さらに、AOP相互間が10km以上も離れており、空白地域が発生している場合もあった。したがって、既存のAOPは本来の趣旨とは異なり、低高度・死角地域での観測には脆弱なことが分かった。

第2に、AOP要員の専門性の問題だ。AOPはこれまで非編成で運用されており、歩兵、小銃手、迫撃放射手、特功要員、装甲車運用兵、通信兵など、まさに陸軍の全兵科・兵士から非常に多様に編成されている。これにより、各員の主任務とAOP任務を平行して行うことになり、1〜3か月の周期で頻繁に交代をしていると任務遂行能力が不十分になり、何よりもリーダーシップや責任意識が希薄な状態になっていた。

第3に、非編成部隊で運用されるため、本来、緊迫した対応が要求される時期に編成部隊に復帰してしまうことで監視体制に空白が発生するなど、戦時及び平時の連係が不十分だった。このように、既存のAOPは配置位置、専門性など作戦遂行面において実効性が不十分なのが実情である。

3.2 部隊管理条件面
AOPの運用形態は、AOP専門担当警戒所(単独)で運用したり、通信中継所、先行獲得部隊、海岸境界警戒所などと並行して運用する警戒所から構成されてきた。

このような警戒所は大部分が小隊規模以下で、高地帯から隔奧地で運用されている。それまでの任務が実効性を失ったことから部隊を撤収させようとしても、AOPの運用のために仕方なく残留させて運用するなど、AOP維持のための指揮負担が大きくなっていた。
また、休養及び施設管理面を見ると、大部分が高地に位置し、駐屯地と0.2〜2km以上離れているために食事や水の運搬に困難が生じたり、ロープウェーの利用など生活条件が極めて劣悪だった。
さらに、AOPは各種の宿営施設が老朽化しているが、非編制のため予算措置がなかなか行われず、施設の改善が困難なのが実態であった。

4. AOP代替可能資産の調査

上記の問題点を解決し、作戦の実効性が充足される代替手段を探すことがカギだった。野戦現場を見て回ると、近くで接することができる立派な対空監視手段が多かった。まず、前方GOP地域は、多くの昼・夜間境界警戒所を運用して、地上及び対空監視任務を遂行している。ただし、報告系統が多段階で構成されており、空中航跡監視情報が空軍MCRCまで実質的に報告されていなかった。
前方GOP地域の次には、防空陣地が位置していた。防空陣地は防空中隊長により教育訓練がなされており、専門的な対空監視能力を維持しているので、空軍前方監視所 (RP) から報告する通信網だけを構成すれば、良質の監視情報を直ちに活用することができることが分かった。

その他にも、独立部隊級で運用する対空警戒所、電子監視手段のRASIT、Hawk Eyeなど、電子光学監視装備も流用した手段によることもできた。そして、このような多様な対空監視手段の統合運用が可能なように、システムだけを構成すれば、既存のAOPより作戦面で効率性が高く、効果的な肉眼対空監視システムを構築することができるはずだという結論に至った。

5. 新たな概念の合同対空監視所 (JAOP) 任務開始

AOPの実効性の不足と代替手段の効用性の立証により、既存のAOPは大部分を閉鎖して、前方GOP地域と防空陣地から直接、空軍RPへ報告する新たな概念のJAOPシステムを構成することを決めた。<表2> の構成システム図を見れば、JAOPは空軍前方監視所 (RP) と無線網を構成して直接報告することとし、無線網が使用できないときは有線を活用して、軍団経由でMCRCへ報告する通信網システムを構成した。したがって、AN-2機など、低空低速機の浸透時、JAOPからRPに肉眼で観測したことを報告すれば、RPではMCRCへ報告して、MCRCからAM全軍警報網とRAWS(リアルタイム防空警報システム)を通じて、全軍に敵機の浸透状況が同時に伝わり、即座に戦術措置を取ることが可能なシステムが構築された。

6. 期待効果

新たな概念のJAOPは、作戦効率性が高く既存のシステムをそのまま利用する低費用・高効率なシステムとして、空軍の前方監視レーダーと陸軍の地上監視手段が結びついた合同作戦の見本と言える。

また、前方GOP地域と防空陣地は、戦時でもそのまま任務が継続されるので、戦時及び平時における任務連係の効率性が最大化されることになった。何よりも、AOPの閉鎖により、40年間続いてきた非編成兵力が原隊復帰することで、隔奧地の兵力が大幅に減少し、指揮負担を軽減させ、予算を節減する実質的な効果を得ることができた。

7. 結論

我等に与えられた作戦環境は時間が過ぎれば変化する。それにもかかわらず、考えが過去に縛られるのならば永遠に発展はないだろう。40年余りの間、前方高地で任務を尽くして消え去るAOPは自らその役割をやり遂げたが、JAOPはより発展的な役割をやり遂げることを期待する。防空作戦は寸刻を争う時間との戦いであるから、迅速な報告システムが大変重要である。AOPは各軍の努力が結集して、立派な合同対空監視所 (JAOP) として生まれ変わった。JAOPの見事な活躍を期待する

(2010.11.06.2)










◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

管理人/副管理人のみ編集できます