[桜並木] | |
一同は、『未完成の歴史』のCD特典を撮影するために 事務所から移動していた」 | |
加蓮 「わ、見て! もう桜咲いてるー。 今年はちょっと早いのかな?」 | |
肇 「そうみたいですね。 散ってしまう前に、是非事務所のみんなでお花見をしたいです。 今日は残念ながら、何の準備もないですが……。」 | |
飛鳥 「花見……か。 明るい場所も、群れるのも別に好きじゃないけれど。 この桜に美しさくらいは、ボクにだって理解できなくもない。」 | |
飛鳥 「けれど……オトナたちは何故わざわざ、 桜の下で酒盛りをしたがるんだろうか? 酔って浮かれ騒ぎたいなら、飲み屋でも行けばいいだろうにさ。」 | |
加蓮 「……だってさー? ねぇどうなのプロデューサーさん、オトナ代表としてはー? おーいっ?」 | |
P 「……ふぅ、ふぅ。」 | |
肇 「あ、あの、プロデューサーさん。 やっぱり私、自分の鞄は自分で持ちますから……。」 | |
加蓮 「こら肇、甘やかしちゃだーめっ。 プロデューサーさんはもっと、キビキビ歩いてよー? ……ふふっ♪」 | |
飛鳥 「ああ。今日の荷物持ち兼カメラマン役を承諾したのは、 ほかでもないプロデューサーなんだ。 その役割は、全うしてもらわなくては困るな。」 | |
[一時間前……] | |
飛鳥・加蓮・肇 「…………。 …………。」 | |
何か、イヤな予感が…… | |
加蓮 「ねぇねぇ、プロデューサーさん? 『未完成の歴史』のCD特典用に、『私たちの今』を、 私たちで撮ってこい……っていう話だったけどさ〜。」 | |
肇 「えっと……プロのカメラマンの方の手を借りずに、ということは、 撮影する行為そのものも含めて、 『私たちの今』という解釈で、大丈夫ですか?」 | |
【うん】 | |
飛鳥 「フム……ということは。 この撮影には、どうあっても、プロデューサーの同行が 必須ということになってしまうね。」 | |
【えっ】 【どうして?】*1 | |
肇 「それは、もちろん。 『私たちの今』を表現するには プロデューサーさんという存在が、必須だからですよ。」 | |
加蓮 「ま、そういうことだよねー。 ほらプロデューサーさん、たまにはいいでしょ? 机仕事はちひろさんに任せておけば、なんとかなるって!」 | |
飛鳥 「……それにキミはときどき、ボクらを放任して 試練を課すようなきらいがあるからね。 たまには煽動者ではなく、共犯者になるべきだと思うな。」 | |
肇 「私たちとしては、 プロデューサーさんがついて来てくれるなら、 安心できますし……。」 | |
加蓮 「そーそー。 ふふっ、今回は、ちゃーんと最後まで付き合ってもらうんだから。 あっ、ついでにーカバンも持ってくれると嬉しいな♪」 | |
【加蓮のカバンが一番重いんだけど…】 【このカバン、何が入ってるの?】*2 | |
加蓮 「えー?別に、大したものは入ってないよ? ペットボトルとー。コスメ一式とー。みんなのおやつとー。 あと寒いかもしれないから、予備の上着とかー。」 | |
飛鳥 「フフ。光栄に思うがいいさ、プロデューサー。 己の大事な荷物を預けるということは、 それだけ信頼をしていると宣言しているようなものだからね。」 | |
肇 「あっ、あの……事務所を出てから、 だいぶ歩いてきましたし。 このへんで休憩がてら、撮影をしてみませんか?」 | |
加蓮 「ん〜、ま、そうだね。 桜もキレイだし、ロケーション的にもいいんじゃない?」 | |
飛鳥 「ボクも構わないよ。 元より、あてなどない放浪だ…… 方角だけは、プロデューサーに委ねたけれど。」 | |
肇 「では……プロデューサーさん。 すみませんが、シャッターをお願いします。」 | |
肇 「やっぱり最初は、3人で写りたいですし。 通行人の方に声をかけて お願いするのは、ちょっと気おくれしますので……。」 | |
【わかった】 | |
P 「それじゃあ、並んで――……。」 | |
加蓮 「うんっ、ありがと♪ プロデューサーさん、撮ったやつ見せて。 どれどれ……。……ん〜。」 | |
飛鳥 「……残念だが、今ひとつだと言わざるを得ないかな。 というか……肇はどうして直立不動なんだ? まるで学校の集合写真みたいじゃないか。」 | |
肇 「えっ……お、おかしかったですか? でも、言われてみれば、場にそぐわなかったかも知れません。 加蓮さんは、私に比べると……まるでモデルさんですね。」 | |
加蓮 「ん〜、ちょーっとセクシー路線にしすぎたかもね。 飛鳥は……このポーズ、カッコつけすぎじゃない?」 | |
飛鳥 「どうやらボクの肉体が、 意識ではなく魂に従って動いてしまったらしい。 プロデューサーにレンズを向けられるなんて、滅多に無いからね。」 | |
肇 「……なんというか。 全体的に……まとまりが、ないですよね。 ぎこちないとも言えるでしょうか?」 | |
加蓮 「そうだね……撮ってくれた プロデューサーさんの腕がどうこうっていうより、 私たち被写体の問題かな。」 | |
飛鳥 「フム……。 ボクらのあいだに通じるものが……あるいは、 響くものがない、といえるかも知れないな。」 | |
飛鳥 「……まあ、むべなるかな、といったところさ。 歌はともかく……ボクら3人で、 共有すべき価値観があるわけでもないからね。」 | |
肇 「そ、そうでしょうか? でも、そうだとすれば……どうしたら、この3人で 良い写真が撮れるでしょうか?」 | |
肇 「私たちの歌った、『未完成の歴史』というCDを 手に取ってくれた方が、喜んでくれるような写真を……。」 | |
加蓮 「んー……。 そもそも、『私たちの今』って、どうやったら撮れるのかな。 ただ撮るだけじゃダメなんだよね。」 | |
肇 「あの、プロデューサーさん。 はじまったばかりなので恐縮なのですが…… 何か、手がかりを頂けませんでしょうか。」 | |
【ヒントを指さす】 | |
肇 「えっ……あれっ? あそこにいるのって……。」 | |
柚 「あはははっ! そーれっ!」 | |
日菜子 「むふふふふ〜♪」 |
[プロデューサー室] | |
3人が過去を振り返るために 別の場所へと移動し、しばらくが過ぎた…… | |
P (そろそろ、3人を迎えに行こう。) | |
(まず、誰を迎えに行こうか……) | |
【加蓮を迎えに行く】 【飛鳥を迎えに行く】 【肇を迎えに行く】*3 | |
(「飛鳥を迎えに行く」選択の場合) 飛鳥 「……キミか。」 | |
【迎えに来たよ】 | |
飛鳥 「……。」 | |
飛鳥 「……思えば、最初から不可解だったんだ。 キミはどうしてボクたち3人に、『未完成の歴史』という曲を 与えたのか……ってね。」 | |
飛鳥 「とどのつまり、こういうことだろう? プロデューサーは、ボクたちがそれぞれに歩む道…… 3つの歴史が交差する、その瞬間を見たかったわけだ。」 | |
飛鳥 「ボクたち3人は趣味も思想も性格も、まるで違うが。 その根底に、いささかの捩じれを抱えている点は共通している…… ま、加蓮はことさら口に出そうとしないし、仮説だけどね。」 | |
飛鳥 「道と道が交差する時、立ち止まった旅人は他の道を観測し、 自分自身の過去の道程を歴史を再認識する。」 | |
飛鳥 「地図を持たないボクらにとって、それは必要な儀式ということか。 自らの歩む道が、真っ直ぐに目指す先へと延びているか…… 確信を持って、未来へと進むために。」 | |
飛鳥 「ああ、いいさ。誰とぶつかりあうことになろうと…… ボクはキミが拓いたこの道で、探求の旅を続けよう。 生きてゆく方法を……存在証明の手段を、探す旅を。」 | |
飛鳥 「……おっと。 ひとつはもう、見つかっているんだった。それはこの、喧しい世界に叛逆する術――……そう、歌うことさ。」 | |
(「加蓮を迎えに行く」選択の場合) 加蓮 「……あ、プロデューサーさん。」 | |
【迎えに来たよ】 | |
加蓮 「うん、ありがと。 ……あのさ、プロデューサーさん。 ちょっといい?」 | |
【どうしたの?】 | |
加蓮 「それじゃ、私のカメラのココ見ててね。 ……はい、並んでー♪」 | |
【……?】 | |
加蓮 「……へへ。 今日は写真何枚も撮ったけど、 プロデューサーさんとは撮ってなかったなって思ってさ。」 | |
加蓮 「……プロデューサーさんにはさ、 私のダメダメだった頃をいろいろ知られちゃってるわけだけど。 そういうのもちゃんと……忘れないでいてね。」 | |
加蓮 「あ。別に、押し付けようってワケじゃないんだよ? でも……いま撮った1枚だって、 昔のそういうのだって、私の歴史なんだから。」 | |
加蓮 「暗い歴史を乗り越えて、自分の歴史はようやく動きはじめた。 周りには、たくさんのまばゆい星があるけれど…… 私は……誰より輝く星になるよ。」 | |
加蓮 「完成っていうものが本当にあるかは、いまはわからないけど。 最後まで、ぜーんぶ見ててよね。 私のプロデューサーさん。」 | |
(「肇を迎えに行く」選択の場合) 肇 「……プロデューサーさん。 わざわざ、迎えに来てくれたんですか。」 | |
【うん】 | |
肇 「ふふっ、すみません。 ありがとうございます。」 | |
肇 「…………。 ……あの、プロデューサーさん。」 | |
肇 「過去の私は、自分の手が創る器の……そして、自分自身の つまらなさが嫌で、変わりたくて、アイドルを目指しました。 でも……。」 | |
肇 「お仕事をさせてもらう内に、こう思えるようになったんです。 自分には、つまらないわけじゃない部分や、このままで…… そのままでいい部分が、たくさんあるかも知れないって。」 | |
肇 「きっと私の、藤原肇の自分らしさって 長い長い陶芸の歴史が繋いできた精神性を、 現代に生きる私なりに受け継いだものなんだと思います。」 | |
肇 「そして、ですね。アイドルになれた ひと続きの道を歩めている、と。……そう思えるのは プロデューサーさんが、私を大切に育ててくれているから……。」 | |
肇 「だから……あらためて。 私に出会ってくれて、本当にありがとうございます。 プロデューサーさん。」 | |
(飛鳥、加蓮、肇の迎えに行くを選択後) 休憩を終えた3人は、それからしばらく 『未完成の歴史』特典のための撮影を続けていた…… | |
加蓮 「んー、もうすっかり暗くなってきたね……。 早起きな肇は、そろそろ眠いんじゃない?」 | |
肇 「えっと……実をいうと、少しだけ。 いろんなことがあった一日でしたから。」 | |
飛鳥 「おや、そうかい? ボクの方は、ようやく目が冴えてきたところさ。 桜の花も、月明かりの下のほうが映えるというものだね。」 | |
加蓮 「確かにね。それじゃあ最後の1枚は、ここで撮ろうか。 ……っていうか、そっか。 これで最後かぁ。」 | |
肇 「今日は、とっても楽しかったですけど…… でも、明日からは……。」 | |
飛鳥 「……そうだね。 ボクたちには、次の仕事やレッスンが待っている。 それぞれ別の、新しい出来事が。」 | |
加蓮 「プロデューサーさんの話だと、 このメンバーで一緒の仕事って、当分予定が無いみたいだしね。っていうことは……。」 | |
肇 「次は、ライバル同士として…… ぶつかりあうことになるかも知れないんですね。」 | |
加蓮 「……ふふっ。アイドルって、面白いよね。 ユニットとして、互いを高め合うこともあれば…… ライバルとして、ぶつかることも出来る。」 | |
飛鳥 「そして、もっとおかしなことに。 生まれや境遇、積み重ねた歴史がまるで違っても…… アイドルになる上では、なんの障害にもならない。」 | |
肇 「根を詰めて精進し、自分を磨き上げることも。 その過程を楽しむことも、自由……なんですよね。 ……こんなふうに……。」 | |
加蓮 「あっ、肇。 シートも無いのに、寝っ転がっちゃうの?」 | |
肇 「ふふ。夜桜も星空も、とても綺麗だったので。 それに……もし柚ちゃんたちだったら、 こんなふうに自由な方法で、楽しむんじゃないかなあって。」 | |
飛鳥 「……ああ。 実をいうと……ボクもそういう楽しみ方は、 キライじゃないんだ。」 | |
加蓮 「もう、飛鳥まで。 じゃあ、私もつきあっちゃおっかな。 ……んしょっと。」 | |
肇 「まだ少し、風は冷たいですが…… こうして寝転ぶと、土の温かさを感じます。 ……春ですね。」 | |
飛鳥 「凍える季節は、記憶の中で切れ切れのスナップとなり。 過去の己が、少しだけ前に進んで、アイドルとなって…… 現在のボクらの目の前には、鮮やかな花霞が広がっている。」 | |
肇 「あのとき踏み出さなければ、 アイドルになっていなければ、きっと私たちは、出会うことすらありませんでした。」 | |
加蓮 「今日が終われば、私たちはまた離れる。 でも、仕事を通じて感じたものは、記憶に積み重なって…… 自分の歩く道を振り返るための、手がかりになる。」 | |
肇 「歩く道や、生き方が違っても。 できる限り、アイドルとして、高みを目指したい。 変えようのない過去からつながる、それぞれの方法で……。」 | |
飛鳥 「目指すは遥か彼方……星のごとく、輝いているもの。」 |
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