冷戦時代の核実験や民間防衛をめぐるカルチャー

古代核戦争

欧州人は古代宇宙人の支援を必要としない


1990年以来、10版を重ねる、疑似考古学批判 兼 考古学入門教科書『Frauds, Myths and Misteries』を執筆している考古学者Kenneth L. Federは、この『幻想の古代史』で、古代宇宙飛行士説も取り上げている。

その中で、エーリッヒ・フォン・デニケンが『Chariots of the Gods(神々の戦車?, 未来の記憶)』で、古代に宇宙人の支援を受けたと想定する場所・遺跡の大半が欧州以外であることを指摘している。すなわち、古代ミノア人のクノッソスや古代ギリシア人のパルテノン神殿の建設は欧州人自らが行って、何らの謎もないが、それ以外の地域の建造物をそうではないと。

現在の観点から --- フォン・デニケン現象

フォン・デニケンは、人類の祖先の知性と能力を繰り返し過小評価し、過去を説明するための異様な仮説を提案している。それは明らかだ。しかし、先史時代の人々に偉大な成果を手に入れる能力があったことを考学的記録が示しているのに、フォン・デニケンがそれを受け人れられない理由として私が二番目に挙げるものは、それほど明白ではない(一番目の理由は単なる無知だ)。すでに簡単に触れたが、その二番目の理由とはヨーロッパ民族中心主義だ。

『Chariots of The Gods?(神々の戦車?, 未来の記憶)』を読めば、私の言いたいことが明らかになる。フォン・デニケンが第三の仮説(「われらの先祖は愚かだった」)を証明するために提示しようとするのは、アフリカ、アジア、北アメリカ、南アメリカの例ばかりだということは興味深い。しかしヨーロ,パに関することとなると、フォン・デニケンは珍しく、そして不思議なことに、黙り込んでしまうのだ。このような感触が非常に強かったので、私は『神々の戦車?』を読みながら、人間が自力で達成するのは不可能なほど高度で、洗練されていて、優れたものであるとフォン・デニケンが見なす、驚異的な成果への具体的言及を記録していった。私が注意を払ったのは、そうした事例が世界のどの地域(大陸)のものかという点だった。その結果は、次のようになった。

|事例の存在する地域|事例の数|割合(%)|
|アフリカ     |  16|   31|
|アジア      |  12|   23|
|ヨーロッパ    |   2|    4|
|北アメリカ    |  11|   22|
|南アメリカ    |  10|   20|
|合計       |  51|  100|

ここで調べたフォン・デニケンの事例の大多数は、ヨーロッパ以外の地域のものだった。古代のアフリカ、アジア、北アメリカ、南アメリカの考古学的記録について、フォン・デニケンは驚き呆れているように見える。驚きのあまりフォン・デニケンは、考古学者がこれらの大陸で発見した先史時代の事物を、肌の黒い、茶色い、黄色い、赤い人々が作り出したとしたら、宇宙人の援助があった達いないと考えるのだ。

興当深いことに、古代のミノア人がクノッソスに見事な神殿を建設し、ギリシア人がパルテノン神殿を造ったとき、誰が手を貸したのか、あるいはローマ人にコロッセオの造り方を教えたのはどの宇宙飛行士だったったのか、などとフォン・デニケンが問うことはけっしてない。なぜなのか。こうしたモニュメントはどの部分をとっても、フォン・テ=ケンが言及するモニュメントと同じくらい見事なのに。クノッソスの神殿は三五〇〇年以上前、パルテノン神殿は二五〇〇年近く前、コロッセオはほぼ二〇〇〇年前のものた。イングランドにあるストーンヘンジについてさえ、フォン・デニケンは妙に言葉が少なく、『神々の戦車?』でわずかに独れているだけだ --- もっとも、比較的新しい著書『神々への経路 (Pathways to the Gods)』では、ようやくストーンヘンジを取り上げているが。

フォン・デニケンの成功の鍵はここにあるのかもしれない。『パブリッシャーズ・ウィークリー (Publishers Weekly)』がまとめた、これまでに出版された全書籍のベストセラー・リストによると、『神々の戦車?』は七〇〇万部が売れたという。ちなみにこの数字は、『アンネの日記』、『キャッチ22』、『西部戦線異状なし』よりも大ぎい。

エジプトのビラミッド、メキシコの廃墟、中国の古代文明などのことは、多くの人が知っている。しかし、現在は自分たちより遅れていて、知的にも劣っていると思える人々の祖先が、先史時代にこれほど見事な事物をどうやって生み出したのだろうかと考える人も一部にはいる。何と言っても、今日のエジプトは発展途上国だし、メキシコのインディオは貧しく、識字率も低く、中国人はようやく現代世界のテクノロジーに追いつき始めたばかりだ。こうした人々の祖先が、ピラミッド、文字、農業、数学、天文学を、自分たちだけで生み出せるほど進んでいたということがあり得るだろうか。

そこへフォン・デニケンが、手軽な答えを持ってやってくる。そうした人々は自力で物事を成し遂げたのではない。何らかの手助けが外部から与えられた。地球外からの「平和部隊」が力を貸したのだと。もし、私がここに示唆した通りだとすれば、実に嘆かわしいことだ。人類の先史時代は、それ自体が壮大な物語たからである。どの人種も、誇るべき過去を持っている。古代の宇宙飛行士という幻想が人り込む余地はないし、そのようなものに頼る必要もまったくない。

[ケネス・フィーダー (福岡洋一 訳): "幻想の古代史 (下)", 楽工社, 2009, pp.99-102 (Kenneth L. Feder: "Frauds, Myths, and Mysteries, 6th edition", 2008)]
すなわち、白人であるアトランティス人が世界の古代文明に知恵を授けたという形式のアトランティス伝説と同様の効果を持っている。おそらく、古代宇宙飛行士説は、アトランティス伝説と同じ需要を満たすことになり、同じマーケットに売れていると思われる。
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