冷戦時代の核実験や民間防衛をめぐるカルチャー

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Om Kriget Kommer (1943-1991)


"Om Kriget Kommer"は1943年〜1991年にかけて幾度か改訂されながら、全世帯に配布された(1980年代は教育目的で発行され、全戸配布は行われていない)、スウェーデンの民間防衛ブックレットである。
In order to investigate how warfare meets welfare and how images of neutrality and folkhem intersect in the early Cold War period, I will refer to one very significant civil defense instruction manual, If War Comes: Instructions for Sweden's Citizens (Om kriget kommer: vägledning för Sveriges medborgare). This brochure was reissued in a number of updated versions throughout the Cold War period and distributed to all households in Sweden, although in this context I will focus on the three editions from 1943, 1952, and 1961. In If War Comes, warm welfare and cold war are two sides of the same coin. The topics dealt with include not only preparedness for war, but also moral values, family ideals, work ethos, welfare, and cleanliness.

冷戦初期に、戦争が福祉と遭遇し、中立と福祉国家のイメージが交差したかを調べるために、非常に重要な民間防衛インストラクションマニュアルである「戦争が起きたら: スウェーデン市民への指示」に触れておく。この冊子は、冷戦時代を通じて幾度か改訂・再発行され、スウェーデン全世帯に配布された。このコンテキストでは、1943, 1952, 1961年版に触れる。「戦争が起きたら」では、熱戦と冷戦は同じコインの両面である。冊子が取り上げたトピックは戦争準備だけでなく、倫理価値・家族の理想・労働のエトス・福祉・清潔なども取り上げている。

[ Annette Vowinckel, Marcus M. Payk, Thomas Lindenberger: "Cold War Cultures: Perspectives on Eastern and Western European Societies" (2012), p.192 ]

sv.wikipedia:Om kriget kommerによれば、以下のバージョンがある。
  • Om kriget kommer – vägledning för rikets medborgare i händelse av krig, Statens informationsstyr., 1943 (16 s.)
  • Om kriget kommer – vägledning för Sveriges medborgare, Kungliga Civilförsvarsstyrelsen, 1952 (33 s.)
  • Om kriget kommer – vägledning för Sveriges medborgare, Kungliga Civilförsvarsstyrelsen, 1961 (48 s.)
  • Om kriget kommer – vad du bör veta, Beredskapsnämnden för psykologiskt försvar, 1983 (39 s.)
  • Om kriget kommer, Styrelsen för psykologiskt försvar (SPF), 1987 (31 s.) Denna utgåva var avsedd att användas i utbildningssyfte inom totalförsvaret. Källa; omslaget på utgåvan
  • Om kriget eller katastrofen kommer – vad gör vi med barnen?, Socialstyrelsen, 1991 (49 s.)

なお、1952年は、6月13日と6月16日に、スウェーデン軍のDC-3がソ連軍によって撃墜されたカタリナ事件が起きている。また、1961年にはフィンランド覚書危機が起きている。

この他に、1984-85年には電話帳に短縮版綴じ込まれていた。(電話帳版)

[ "Om Kriget Kommer" (2012/04/18) on HJAK ]

同じ中立国家であるスイスでは、ゼノフォビアなブックレットZivilverteidigungsbuch(民間防衛)の発行・配布は文字通り炎上案件と化し、配布されたブックレットを集めて燃やすという抗議活動が行われるなど強い批判を招いた。そして、その中核的な思想活動である精神的国土防衛を政府は放棄せざるを得なくなった。しかし、スウェーデンでは、特にそのような問題が起きることなく、1990年代まで継続できている。

内容は警報・都市部からの退避・核攻撃時の対応・放射性降下物対策と、一通りの核戦争対応の民間防衛ネタをカバーしている。1961年版の記述だと...

(緊急警報・空襲警報・警報解除)
[ Om Kriget Kommer ]


避難
[ Om Kriget Kommer ]


避難準備
[ wikipedia ]


奇襲攻撃時・放射線防護
[ Om Kriget Kommer ]

なお、この1961年版にインスパイヤされて、1962年にデンマークが民間防衛ブックレットを作成・配布している。

何故か、このスウェーデンの民間防衛ブックレットの1952年版発行について、豪州の新聞が報道している。それによれば...

「戦争が起きたら」 スウェーデン人は新しいハンドブックを手にした。

「戦争が起きたら」は、1943年には行されたマニュアルの改訂・拡張・現代化版であり、現在、政府により、スウェーデンの全世帯に280万部が配布されている。これは、スウェーデンの軍事及び民間防衛を強化するために取られている対策をつなぐものである。「スウェーデンは自衛し、自衛可能であり、自衛を決意している」というモットーのもと、ハンドブックは、緊急事態あるいは突然の戦争勃発のときに民間人がどうすればいいか、詳細に指示している。マニュアルは、140年近く平和に過ごし、諸外国と友好関係を維持し続けているスウェーデンという事実を振り返る。しかし、Gustaf Adolf国王とTage Erlander首相が署名したアピールで、スウェーデンの自由と独立を侵そうとする試みは、軍事力によって対抗され、レジスタンス恒常的かつ、あらゆる状況で続けられることが、強調されている。

平時同様に戦時もスウェーデンは憲法に従って統治されることが強調される一方で、非常事態においては、一連の法律が有効化され、戦時条件が迅速に整えられ、臨戦態勢が整えられることもハンドブックは指摘している。この臨戦態勢では、軍や民間防衛組織や経済防衛組織の部分的動員が行われる。...

[ 'If War Comes' - Swedes Get New Hand Book (1952/11/18) on Examiner ]

敵のプロパガンダについての記述

Om Kriget Kommerには、敵の工作についての記述はあまりなく、32ページある1989年版ブックレットだと、次の1ペーじのみ。


敵は我々を欺こうとする

戦争では敵は兵器だけを我々に向けるわけではない。敵は我々を欺こうとする。ビラやラジオで我々を降伏に誘う。敵は我々を不安と困惑に陥れる。

スウェーデンのラジオやテレビは迅速かつ真実の報道を行う。それにより我々は敵のプロパガンダを批判できる。
・いつも読んでいる信頼できる新聞や雑誌を読む。
・スウェーデンの新聞の偽物に注意。
・ビラには間違った情報が書かれている
・いついも聞いている周波数のスウェーデンのラジオを聞くこと。他のスウェーデンの放送局も聞いて確認すること。
・人々は多くを話すが、誰もが真実を話すわけではない。批判的に聞くこと。聞いたことを誰かに伝えないこと。


平時においても、スパイは我々のトータルディフェンスを調べている。防衛について彼らに話せば、スウェーデンとそこの住む人々をひどく損なうことになる。

・機密事項や機密と思われることを話さないこと。
・防衛や発電所や工場などについて外国人に話さないこと。
・スパイと思われる人物や破壊工作をしようとしている人物がいたら、ただちに警察に通報すること。

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戦いをやめ、動員をやめるべきだというメッセージを見たら、それは誤りであり、信じてはならない。

また、1962年版でも、2ページの記述があるのみ。


警戒

平時においても、スパイは我々の防衛力や産業や発電所や通信網について探ろうとしている。第2次世界大戦後の我が国で、多くの重大なスパイ行為が明らかになっている。スパイや破壊工作のリスクは目立って増えている。

軍事機密の漏洩や重要施設への破壊工作は、多くの人命が失われたり、物的損失を受けたり、防衛力を危うくする。防衛力や電気ガス水道供給に損害を与える情報を提供した者には厳罰が待っている。スパイ行為は反逆罪にあたり、戦時であれば死刑になることもある。

1. 漏洩してはならないことがわかっているか、そう考えられることについて、話してはならない。
2. 不安について十分に警戒する。過小にも過剰にも語ってはならない。
3. 当局者でない者に、防衛や自分の仕事について話してはならない。
4. 意図せずして漏洩した情報であっても、重大な被害を招くことがあることを銘記すること。敵が欲しい情報を得てしまうかもしれない。
5. スパイ行為や破壊工作と思われることを見つけたら、ただちに警察に通報すること。

Om kriget eller katastrofen kommer (1991)

この「戦争やカタストロフが起きたら、子供たちに何ができるか」は、1943年に始まる民間防衛ブックレット"Om kriget kommer"(戦争が起きたら)のシリーズとは少し異なるブックレットである。発行元はスウェーデン保健福祉庁であり...
Gustafsson Lars H ; Otto Ulf: "Om kriget eller katastrofen kommer : Vad gör vi med barnen" (Socialstyrelsen; 1991)
「戦争やカタストロフが起きたら、子供たちに何ができるか」(スウェーデン保健福祉庁: 1991)

Krig och terror drabbar barnen mest. Det är därför en moralisk skyldighet för oss alla att förebygga och lindra kriser, krig och katastrofer när det gäller barnen.

Inom vår svenska hälso- och sjukvård finns en stor erfarenhet av arbete med barn i kris. Icke desto mindre är beredskapen låg när det gäller att ta hand om de akuta situationer där många barn drabbas. För att förbättra detta krävs bättre samordning av resurserna, med bättre planering och utbildning.

戦争やテロは子供たちに最も影響する。したがって、我々には、危機や戦争や災害を抑止し、子供たちへの影響を緩和する道徳的義務がある。

スウェーデンでの医療体制は、危機のときの子供たちへの対応経験が多くある。しかし、多くの子供たちが影響を受けるような非常事態への対応準備はあまりできていない。これを改善するには、よりよい計画と教育とリソースのよりよい協調が必要である。


[via Lars H Gustafsson ]


新たなブックレットの配布(2018)

2018年度の危機準備週間(Krisberedskapsveckan)(5/28〜6/3)に合わせて、Om Kriget Kommerの改訂版が2018/5/29〜5/30に全戸(480万戸)配布される。

"Så ska alla svenskar förberedas för krig och kris" (2018/01/13) on Aftobladet.se

Foldern "Om kriget kommer" har inte skickats ut till svenska folket på årtionden. Nu är det dags igen. Om några månader landar den hos 4,7 miljoner svenska hushåll. Den berättar hur vi ska förbereda oss för terrorattentat, naturkatastrofer och krig.

スウェーデン国民は戦争と危機に備える

"Om kriget kommer"(戦争が起きたら)はスウェーデン国民に数十年にわたり配布されていなかった。今や、再び配布される。数か月以内に、スウェーデンの470万世帯に配布される。これは、テロリストの攻撃や自然災害や戦争にどう備えるかを、国民に教える。

掲載項目はFrivilligutbildningによれば...
  • 個人の責任と社会の責任
  • 危機が社会と国民の日常生活にどう影響するのか
  • 危機の時に社会的支援がなくても食料・水・暖房・通信を確保する方法
  • 虚偽情報とプロパガンダを見抜く方法
  • テロ攻撃への対処
  • トータルディフェンスの構成要素、トータルディフェンスの義務、公共サービスの義務、戦闘配置
  • 準備のレベルと行動のレベル
  • 国民への警報システム(VMA・緊急警報・空襲警報)と警報発令時の対処方法
  • シェルターと防護施設
  • 避難
  • 国民の参加方法
  • 重要なウェブサイトと電話番号
  • 詳細はDinSäkerhet.seを参照

なお、2018年5月22日には、スウェーデン語版PDFと英語版PDFがアップされている。


発行年1943195219611983
日本語訳
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発行年198719892018
日本語訳
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