冷戦時代の核実験や民間防衛をめぐるカルチャー

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デンマークの民間防衛ブックレット(1962)


Hvis krigen kommer

デンマーク政府は1962年に、スウェーデンの民間防衛ブックレット「Om Kriget Kommer(戦争が起きたら」の発行配布にインスパイヤされて、同様のブックレットを発行配布した。検討は1951年から始まっていたが、ベルリンの壁建設を機に発行が決定した。
戦争が起きたら (Hvis krigen kommer)

1962年1月、首相府(Statsministeriet)は、戦争が起きたときデンマーク人がどうすべきかを記述したブックレット「戦争が起きたら」を発行した。ブックレットは150万部配布された。32ページ構成で、敵の心理戦、核兵器の効果、民間防衛のミッション、サイレンによる警報の意味、シェルター設計、大都市からの避難について記載している。

Viggo kampmann首相がブックレットの前書きを執筆し、1962年1月8日に記者会見を行った。彼は、戦時の生存は、平時において国民が戦時の準備できているかにかかっていることを強調した。なので、ブックレットはシェルター設計と非常用物資調達について9ページを使っている。同時に、民間防衛局は個人用シェルター設計について47ページの詳細ガイドを発行している。

ブックレットの発行は、ベルリンの壁が建設され、NATO統合司令部の創設され、多くの人々が「戦争が起きる可能性があり、核戦争は破滅的であるとの印象」を持っていて、したがって、政府は「攻撃を受けたときの生存可能性について知らしめたい」と考えた、1961年8月に議論された。ブックレット発行の最終決定は、ベルリンの壁建設の2日後の、1961年8月15日の閣議で行われた。[1]

ブックレットは賛否両論をもって迎えられた。特に、シェルターについては、誤解を招くもので、非現実出来で、そのような方法では国民の生命の危険性が高まると批判された。しかし、1962年3月、専門員会は、そのような批判を棄却した。[2]

1962年4月のGallupによる世論調査によれば、国民の66%はブックレットを読んだが、半数以上がブックレットで戦争での生存可能性についての見方は変わらなかったと回答した。推奨された非常用物資を購入したのは4%にすぎず、わずか6%が、シェルターを建設したか、その検討中だと回答した。[3]

ブックレットは1960年3月に政府が組織した出版委員会が作成した。委員会は、報道及び、民間防衛局と外務省と国防省の代表者で構成されていた。これには 戦時中の状況に対する人口の意識を高めるために平時に必要な情報サービスの調整も含まれていた。

委員会は1960年6月に作業を始め、1961年3月に首相府が加わった。首相府の参画は、「ブックレットが国民の安全に対して個々の国民の責任を重点を置くこと」を意味し、ブックレットの記述は恐怖を煽るものではなかった。[4]

ブックレットは、1961年5月に発行された同様のスウェーデンのブックレット「Om Kriget Kommer(戦争が起きたら)」にインスパイヤされたものだ。[5] しかし、スウェーデンのブックレットはシェルター設計より住民の避難に重点を置いていた。スウェーデンの民間防衛は、戦時に国民を守る、おそらく最も重要な手段は、避難と宿泊であると考えていた。[6]

デンマークでは、1957年に議会は、核攻撃を受けたときの防護についてのブックレットに対する予算の提案を検討していた。しかし、当時はその提案は否決された。政治家たちは、ブックレットを発行すれば混乱が起きるだけだと考えた。[7]

民間防衛協会は1959年に短編映画「Luftangreb(空襲)」を公開、1961年には映画「”Radioaktivt nedfald(放射性降下物)」を公開した。1962年にブックレット「Hvis krigen kommer(戦争が起きたら)」が発行されたとき、「放射性降下物」はテレビ放映され、短縮版が映画館で上映された。この2つの映画は、映画監督Helge Robbertによって制作された。

1983年に民間防衛局は改訂版ブックレット「om at overleve (生き残るため)」を発行したが、各世帯には配布されなかった。1987年に民間防衛局は非常用シェルター設計ガイダンスの新版を発行した。


Sources and literature

Boel, Erik: Socialdemokratiets atomvåbenpolitik 1945-88, København: Akademisk Forlag 1988.
Bærholm, Anders Kristian & Jakob K.B. Lorenzen: Hvis krigen kommer – historien om en pjece fra den kolde fra den kolde krig, i Klaus Petersen og Nils Arne Sørensen (red.): Den kolde krig på hjemmefronten, Odense: Syddansk Universitetsforlag 2004.
Civilforsvarsstyrelsen: 40 års civilforsvar 1938-1978, København: Civilforsvarsstyrelsen 1978.
Jensen, Bent: Ulve, får og vogtere – Den Kolde Krig i Danmark 1945-1991, København: Gyldendal 2014.
Rosander, Lennart & Per Olgarsson: Om kriget kommer, Stockholm läns museums skriftserie nr. 2, Malmø: Ross & Tegner 2014.

notes

1. Ministermødeprotokollen, 15. august 1961.
2. Civilforsvarsstyrelsen (1978: 67-69) samt Bærholm og Lorenzen (2004: 174-77).
3. Ugens Gallup, april 1962: En trediedel af befolkningen læste ikke “Hvis krigen kommer”.
4. Bærholm & Lorenzen (2004: 166-67).
5. Jensen (2014: Bind 2, 264).
6. Rosander & Olgarsson (2014: 40-42).
7. Boel (1988: 84).

[ Hvis krigen kommer on "Danmark under den kolde krig"]

その内容は以下のようなもので、特に他国の民間防衛ブックレットと違いは見られない。
  • 国内の敵
  • 古い兵器と新しい兵器
  • 警報と防護
  • シェルター
  • シェルターの設備備蓄
  • 避難
  • 攻撃を受けたら






Hvis krigen kommer(1962)


戦時の心理戦についての記述は2ページで、「femtekolonne(第5列)」という表現が時代を感じさせるが、スウェーデンの記述と同様である。


国内の敵

攻撃者が適切と考える兵器を使って戦争が起きる。最も恐ろしい兵器が使われることも考えられるが、敵がそのような兵器の使用を制限する可能性が高い。戦争の手段の幅は非常に大きい。個人にとっては、あらうる状況で身を守るための備えをしておくのが現実的である。

敵は、実際に戦闘行動をとる前に、混乱を起こし、戦意を喪失させようとするだろう。敵は、プロパガンダや嘘情報や破壊工作や第5列活動で、民間人に働きかけるだろう。敵は、政府や隣人に対する信頼や、防衛や国や個人の生存能力に対する自信を弱めようとする。敵は、直ちに降伏させようと、優しく誘惑したり、暴力と破壊の脅威で恫喝したりする。

情報を入手し続け、パニックを起こさない。

誰もがこの心理戦を警戒し、我々を弱体化させる効果との戦いに参加しなければならない。

不安や疑念や噂や誤情報と戦う山稜の手段として、正しく迅速なニュース報道を維持しなければならない。

新聞は可能な限り発行し続けられる。政府当局及び可能な限りニュース報道を維持する特別任務にあたる人々によって、ラジオは可能な限り頻繁に、情報と指示を放送する。どこにいても情報を入手し続け、政府による状況全容の方が、個人の評価よりも正しいと信頼すること。パニックを起こさず、可能な限り、日々の仕事をつづけること。

正統なデンマーク政府発令しない限り、動員中止や抵抗中止や動員開始の中断や戦闘中断などの命令に従わないこと。

誰もが、第5列活動や破壊工作を警戒すること。反国家活動を示唆するいかなる状況も、最寄りのデンマーク政府当局に通報すること。わが軍の準備及び移動は秘匿され、敵に情報を与えてはならない。電話や電報は過負荷になり、つながらないことがあるだろう。しかし、通信途絶したというわけではない。重要通話は優先順が高く、通常通話より優先して、つながっているだけである。電話を使うときは、敵が盗聴していることを忘れないこと。

軍人及び民間防衛隊員は動員が発令されたり、我が国が攻撃を受けたときに、どこに配置されるか知っている。彼らが任地に到達するのを支援すること。

軍地方防衛隊及び婦人部隊を含む郷土防衛隊は、地方で任につく。指示に従うこと。民間防衛隊は人命を救助し、人々を助け、物的損害を抑える準備ができている。


パニックを起こさず、日々の仕事を可能な限り続けること

国内の敵に警戒すること。疑わしい状況は最寄りの当局に通報のこと。

Hvis krigen kommer(1962)


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