"あなたが欲しい!"
あなたの口から飛び出たのは、そんな言葉だった。
大神のみが持つ全知の権能は、あなたにとって余りにも魅力的だったのだ。
目の前の神を自分の物に出来れば、それが丸ごと手に入る。
あなたの所有権が欲しい。
不敬極まると分かっていても、知識欲の権化たるあなたが口を閉ざせる訳が無かった。
即座に命を奪われても致し方無い、そんな要求を聞いた神は……。
"……くく。
 そうかそうか、私が欲しいか。
 そうだ、お前はそういうものだ。
 だから気に入ったのだったな"
予想外な事に、なんとも嬉しそうに笑っている。
更に軽く手まで叩き、あなたを賞賛しているほどだ。

"すぐに頷いてやっても良いのだがな。
 一応、決まりは決まりだ。
 我が試練を受けて貰うとしよう"
そう宣言すると、神は一本の槍をどこからともなく出現させた。
その穂先は酷く禍々しい。
五つの刃は生者を憎む亡者の指のようだ。
血を思わせるような赤黒い刃には幾重にも返しが付けられ、絶対に獲物は逃がさぬと無言
で語る。
強烈すぎる悪寒に身を引こうとした時には、もう遅い。
投擲の姿勢など全くなかった。
だというのに槍はいつの間にかあなたへと到達し、その胸を抉っていたのだ。
"試練の内容は簡単だ。
 私の足元まで生きて辿り着けば、それで良い。
 もっとも、お前の才は今、全てを奪わせて貰った。
 簡単にはいかんぞ?"
>>↓1 コンマ判定 【即死抵抗】
耐久 1
目標値 1

【即死抵抗】
目標値 1  出目 10
ファンブル!!
容赦の無い神の一撃。
そんなものに、人間ごときが耐えられる道理があるはずもない。
意識の全ては一瞬にして、死の川の向こうへと旅立った。
"……あれ?"
最後に聞いたのは、実に不思議そうな少女のような声であった。

そうして、あなたは暗い迷宮の中で目を覚ました。
床に横たわっていた体を起こし、頭を振る。
今のは夢だったのか?
疑問を抱くあなただったが、すぐに現実に起こった事であると気付くだろう。
証明となる物は、一つ。
"ん、ようやく起きたか?
 肉の体とは随分不便な物だな"
あなたの正面に座り、つまらなそうに呟く、神と同じ姿の少女である。

少女は混乱するあなたへと語った。
自分は神によって作られた、あなたの妻となるべき運命を背負った人間であると。
挑戦したが何も得られなかったのでは哀れだろうと、オマケとして生み出されたのだとい
う。
"そういう訳で、見た目と性格は親とほぼ同等だ。
 何の権能も無く、迷宮の探索を助ける事も出来ず、神の知も持たない、ただの女だがな"
……どうやら、そういう事であるらしい。

■ あなたの妻
【筋力】 7  【耐久】 10
【敏捷】 8  【感覚】 10
【知識】 9  【意思】 10
【魔力】 9  【幸運】 10
◆ 職業
【あなたの妻】
NPC専用職業。
特に効果は無い。
◆ 特殊能力
【佳人長命】
このキャラクターは、絶対に老化せず、永遠に若さと美貌を保ち続ける。
また、一切の攻撃は無効化され、絶対に負傷しない。
この能力は神の権能以外のいかなる能力を用いても貫通できない。
【相死相愛】
このキャラクターは、あなたが死亡した時に自動的に死亡する。
この能力による死はいかなる能力を用いても回避できない。
【家内万全】
このキャラクターは、妻として世界最高峰の能力を持つ。
妻としてのあらゆる務めが自動的にクリティカルになる。
【純情一途】
このキャラクターは、あなただけを愛し続ける。
あらゆる魅了効果を持つ能力を無効化し、心移りが発生しない。
【制約 : 試練】
このキャラクターは、迷宮内において一切のサポートを行えない。


◆ 全能力値 1 だけど何とか頑張って脱出したよルート
"そら、朝食が出来たぞ。
 ……朝っぱらからまた本か。
 もう少し妻を労わるとかしたらどうなんだ?"
あなたは少女の声に、渋々と本を畳んだ。
そのまま手を取られ、引かれるままに食卓につく。
しかし、視線は未だ本に向いている。
あなたの知識欲は深く重い。
朝食の間だけとはいえ、知識の収集を禁じられるのは苦痛であった。
"……はぁ、全く。
 分かった分かった、いつも通り食べさせてやるから、お前は好きに読んでおけ"
あなたの態度に折れた少女は顔を顰めながらも本を手渡した。
勿論、あなたは歓喜に包まれる。
軽く礼を言って本を開き、読み進め、その合間に口元に運ばれるスプーンから食事を取
る。
……どこに出しても恥ずかしいダメ人間の、まさに見本であった。

迷宮から戻った後、あなたが真っ先に行った事は資金稼ぎであった。
その方法は言うまでもなく、妻頼りである。
人間として最上級、いやむしろ上限を突き破りかねない能力を生かし、商売を始めさせた
のだ。
最初は渋っていた少女であったが、神の力により巨大すぎる愛をその胸に植え付けられて
いる。
惚れた弱みによってあなたに逆らえる訳も無く、抵抗は僅か十数分の物であった。
そうして生活基盤を築いたあなたは、こうして毎日取り寄せた書物を読み耽り、
ダメ夫を支えるために、少女は今日も必死に店を……いや、今や大商会となったそれを切
り盛りするのである。
周囲は同情して離婚を勧めているが、少女本人が内心頼られる事に喜んでいるのだから何
とも救いがない。
"じゃあ、私は行って来る。
 昼食はテーブルに置いてあるから、ちゃんと食べるようにな"
ひらひらと手を振って少女を見送る。
その間も本から目を離す事は無い。
あなたにとっての夢のような楽園は、今日もいつも通り続いていくのだった。
GOOD END...?

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