フィギュアスケート×ファンタジーのテキストベースRPG


氷都とモンスター娘

人間と異種族が共存する街、氷都

氷都には、異界から来た人たちが大勢暮らしています。
その中には、人間とは異なる種族もいます。
自然の中で、のびのびと過ごしていた者もいれば
危険な「魔物」として恐れられ、その世界の人間から迫害されていた者もいます。

でも、もう安心。
氷都には、異種族に偏見を持つ人はいません。
氷都の民は、小さい頃から異種族の隣人と一緒に暮らすからです。

人間との共存のために

自分は、人間をむやみに傷つけるつもりはない。
だけど、自分たちの常識と、人間たちの常識は違っていて…。

自分では「じゃれついた」だけのつもりが、人間から見れば「襲われた」。
そんな悲しいすれ違いが、過去に幾度も繰り返されてきました。

氷都の紋章術研究機関「氷都紋章院」は、この問題の解決にも積極的に取り組みました。
その成果として編み出されたのが「人化の紋章」です。

この紋章を身体に描くことで、異種族を人間の姿に変身させることが
できるようになりました。

たとえば、今まで有り余る腕力でうっかり人間の住居を壊してしまった怪力の種族でも
人間の身体に変身し、人間の非力さと傷つきやすさを実感することで
適切な力加減を学べるのです。

異種族解放区

現在の氷都では、外からやってきた異種族の旅人全員に初回入場の時点で
もれなく「人化の紋章」を描いています。
こうすれば、未知の種族であっても、ある程度の安全は確保できるからです。

けれども、異種族を人間に変身させるだけでは、単なる同化政策です。

そこで、氷都の地下の一角に「異種族解放区」が作られました。
通称を「モン娘パーク」と呼びます。
紋章建築技術で、異界の自然豊かな環境を再現したこの地区は
文字通り「モンスター娘たちのサファリパーク」となっています。
ここでなら、氷都市内では元の姿に戻れない事情がある者でも
本来の姿に戻って、のびのび過ごすことができるのです。

他の地区より頑丈に作られているので、元の姿に戻って自由に駆け回れます。
多少暴れたって平気。
今では、観光名所の一つにもなっています。

女神アウロラと、蛇女メドゥーサの物語


現在の氷都では、人と異種族が当たり前に共存しています。
では、昔はどうだったのでしょうか?
氷都の今につながる、こんなエピソードが残されています。


それは、今から100年以上前、氷都ができて間もない頃のこと。
「異界視」の力を持つ女神、アウロラの脳裏に
どこのものとも分からない、異界の映像が飛び込んできました。




ある異界に、メドゥーサという人間の娘がいました。
彼女は絶世の美少女と評判で、その髪は「女神よりも美しい」と評され
とある有力な神からの寵愛を受けてもいました。

しかしある時、彼女の評判を耳にした異界の女神が嫉妬に狂い
メドゥーサに呪いをかけ、髪の毛一本一本が蛇と化した
異形の姿へと変えてしまいました。

その上、メドゥーサの瞳には、見たもの全てを石に変えてしまう
呪いの力が宿ってしまったのです。


哀れなことに、彼女は「魔物」として人間の社会から追放され
神からの寵愛も失ってしまいました。



この様子を、はるかな別次元から見ていた女神アウロラは
魔物に変えられた娘を哀れに思い、悲しみました。
同時に、遠くから見ているだけしかできない自分を、歯がゆくも思ったのです。

それから、しばらく経ったある日。
女神アウロラの脳裏に、また見覚えのある映像が浮かび上がりました。



ああ、なんということでしょう!

人間たちから忌み嫌われ、追われ続けてやつれ果てたメドゥーサを
完全武装した屈強な戦士たちが包囲しています。
彼らはみな、メドゥーサの瞳の魔力で石にされないように
鏡のように磨かれた盾をかざし、盾に映った敵の姿を頼りに攻撃しているのです。
どうやら、盾のアイデアはメドゥーサに呪いをかけた
異界の女神が授けた作戦のようです。


一方のメドゥーサは、多勢に無勢で、もう傷だらけ。
このままでは、命を絶たれるのも時間の問題でしょう。

彼女に呪いをかけるだけでは飽き足らず、刺客を差し向け命まで奪おうとするなんて。

女神アウロラは、本当に醜いのは魔物に姿を変えられたメドゥーサではなく
個人的な嫉妬で人間の運命をもてあそぶ、異界の女神の方だと思いました。
アウロラは、女神でありながら人間を見下すことはしなかったのです。

そして、何とかしてメドゥーサを助けたい、と強く願いました。

戦士のひとりが、哀れなメドゥーサの首を狩り取ろうと
剣を振りかざした…まさにその時。

突然、異界の空が暗くなり、戦士たちは何事かと天を見上げました。
天上から地上の様子を見ていた、異界の女神も何かおかしいと気づきます。

やがて、暗い空に現れたのは、神秘的な緑の燐光。
それは瞬く間に空を覆い尽くし、不思議な光の爆発を起こしました。
何も傷つけず、何も壊さないまま。

光が収まった時。
気がつくと、メドゥーサの姿はその場からこつ然と消えていました。
あまりの怪異に、戦士たちはおろか異界の女神まで、驚きを隠せませんでした。
もちろん、それが異界からの干渉であるとは分かるはずもなく…



一方、光の爆発に巻き込まれたメドゥーサは
驚きのあまり、まるで自身が石にでもなったかのように
その場に立ち尽くしていました。

さらに、彼女は信じられないものを目にします。


驚かせてごめんなさい。でも、もう安心ですよ。


なんと、魔物に変えられる以前の美しいメドゥーサにそっくりな「何者か」が
こちらをまじまじと見て、微笑みかけてきているのです。
下手に自分と目を合わせたら、相手は石になってしまうはずなのに…!

ここはどこで、お前は何者なのか。
どうして、魔物にされる前の自分にそっくりで、目を合わせても石にならないのか。

警戒の色を強くするメドゥーサの疑問に、謎の女性は答えました。


私の名はアウロラ。神としての役割を宿命づけられた者です。
ここは、私の神殿。ずっと前からあなたのことを見ていました。


アウロラは、今までの事情をメドゥーサに説明しました。
ただ見ているだけなのがつらくて、何とかしたいと強く願ったら
自分でも思わぬことが起きてしまったと。
あの光の爆発は、アウロラ自身にとっても予想外の出来事だったのです。

それから、またメドゥーサに微笑みました。


あなたは、本当に自分の美しさに自信があったのですね。
私の姿が、魔物にされる前のあなたそっくりに見えたということは…
それが、あなたの「美しいと思うもの」だからです。


メドゥーサはその意味が分からず、首をかしげます。


これが、私にかけられた「呪い」。
あなたの瞳の魔力を、受け付けないほどの強力な呪いなのです。

私は、自分の「本当の姿」を奪われ、他人から見た姿が
「その人の美しいと思うもの」となるように、呪いをかけられたのです。
あなたの見た私の姿は、あなた自身の心が作り出した虚像…。


それは、衝撃的な事実でした。

片方は怪物、片方は美の女神。
けれども、「ありのままの姿」を奪われたという点では共通しています。
メドゥーサとアウロラは、お互いが同じ「呪われし者」同士だと理解しました。


みんなが私を、「美しい」とほめたたえる。
けれども、それは「私の美しさ」ではありません。
私を見る人の美意識が、ただ鏡写しになっただけの「偽りの美」…。


そう言われると、メドゥーサも不思議と、目の前の自分そっくりな女神に対して
美しいはずなのに妬みの感情が起こらず、むしろ奇妙な同情をおぼえるのでした。

さらに、アウロラは言いました。


見るもの全てを石に変える、あなたを恐れない私なら
きっとあなたの「友達」になれます。

私には、残念ながらあなたの呪いを解く方法は分かりませんが
瞳の魔力を抑える方法なら、一緒に考えることができます。

それに、あなたの力が人の役に立つことだって、あるんですよ。
今、この都市「氷都」では、建設用の石材が不足しています。
あなたなら、ただの土を石に変えることだって、できますね?


呪いで魔物に変えられて以来、人間として扱われず
たび重なる苦難に己の運命を呪い、心まで魔物になりかけていたメドゥーサにとって
それは、思いがけないことでした。

久しぶりに人間として扱われ、長い孤独からも解放された彼女は
目から大粒の涙を流し、女神アウロラに終生変わらぬ友情と
氷都の発展のため、力を尽くすことを誓ったのでした。



この出来事があって以来、氷都では
異界で「魔物」として迫害されてきた善良な異種族たちを
新たな市民として受け入れることが増えました。

そして、100年以上の時が流れた現在、メドゥーサの子孫のモンスター娘たちは
紋章技術の力によって瞳の魔力を制御し
今でも建築家や石工職人、彫刻家などとして、氷都で活躍しているのです。

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