セリフ

フラワーガーデン開園前
瞳子……?
???……。
……。
瞳子……ふふっ♪どうぞ。興味があったら、近くで見ていいわよ。
美羽わっ、ば、ばれちゃってるっ!ど、どうしよう、加奈ちゃんっ!
加奈ど、どうしよう美羽ちゃんっ!……えとえとっ、覗いちゃったりしてすみませんっ。素敵なお花の飾りだなぁって……!
瞳子フラワーアレンジメントっていうのよ。こうして……いろいろな花を並べて、活けていくの。色合いを考えながら、ね。
加奈・美羽わぁ〜〜♪
美羽……あ、わたし、矢口美羽っていいますっ!こちらが今日、お友だちになった加奈ちゃん!
加奈はいっ、加奈ちゃんです!……じゃなくてっ、今井加奈です!よろしくお願いします!
瞳子私は服部瞳子。今日はよろしくね。私たちのフラワーガーデン、一緒に成功させましょ。
加奈・美羽はいっ♪
瞳子あら、貴方たちが持っているのも、素敵なお花ね?
加奈実は、ふたりで考えていたところなんです。せっかくのお花、どうしようって……。
美羽ステージで、花を使った……はなれわざ、を、なにかできないかな、と!
瞳子……なるほど。そうね。私が貴方たちなら、そのままで勝負すると思うわ。
加奈……そのまま……?
瞳子どちらの花も、みずみずしくて、可愛らしくて――眺めれば、心が暖かくなって。
瞳子ただそこに揺れているだけで、まわりの人は元気をもらえる。そういう花だと思うの。
美羽な……なるほどっ!素材を活かす、というやつですね!ありがとうございますっ!
美羽わたしたちも頑張って、アレンジメントを極めんと……!いこっ、加奈ちゃん!
加奈うんっ、美羽ちゃん!
瞳子……さてと。私も元気をもらっちゃった。……それにしても――
瞳子今朝はやけにお客さんが多いわね。
美優い、いえ……その……別に隠れていたわけでは……す、すみません……!
留美はじめまして、になるかしら。服部瞳子さんよね。私は和久井留美。こちらが三船美優さん。
瞳子服部瞳子です。よろしくお願いします。おふたりとも、今日の共演者ではないようだけれど……。
留美見学させてもらえるよう、頼んできたんです。瞳子さん、貴方の噂はよく耳にしているから。
瞳子あら、どういう噂?25にもなってアイドルにしがみつく、執念深い女――とか、そういう?
美優あ、いえっ、そういうことじゃ――
留美ええ。まさにそのとおりよ。
美優る、留美さんっ……!?
留美歳を言うなら、私も美優さんも貴方と同じくらい。でも、何の因果か、アイドルをやっていくことになった。
留美今日は、噂の貴方の仕事ぶりを覗かせてもらいにきたの。盗めるところは、盗みたいと思ってね。
美優そ、そうなんです!ぜひ、勉強させてもらえたら、というわけで……よ、よろしくお願いしますっ。
瞳子ふふふ……!はっきり言うわね。でも、好きよ。真正面から接しようとしてくれるところ。
瞳子留美さん……貴方はきっと仕事ができる人でしょう。そんな人が、私の仕事を参考になんて、光栄だわ。
瞳子それから、美優さん。貴方はとても正直ね。相手によって態度を変えたりしない、純粋な人。
留美……瞳子さん。……貴方は――
留美きっと私には想像もできない、貴方にしかわからない人生経験を経てきた人なのでしょうね。
美優あ……これって、フラワーアレンジメントですか?とっても綺麗……花びらがいっぱい溢れていて。
瞳子ふふ、ちょっと溢れすぎちゃったかしらね。
美優そんな……想いを感じられて素敵だと思います。まるで、大切な誰かへの贈り物のような……。
瞳子ええ。そういったところよ。一本一本、想いを込めてるの。
留美どんな想いか、聞いてもいいかしら?
瞳子ええ。この一本に、必ず咲いてみせるのだという誓いを。この一本に、果てしない道のりを歩みつづける覚悟を。
瞳子そして、この一本に、私という花を見つけてくれた感謝を。
瞳子忘れようとしていた夢を忘れてはいけないのだと、人生を一緒に賭けようと言ってくれたことへの――
瞳子って、ごめんなさい。重かったわよね、こんな話……。
美優いいえ、瞳子さんの気持ち……きっと、大切な人にも伝わりますよ。
留美それに、私たちはもう大人だもの……募ってやまない想いのひとつやふたつ、あるわよね。
瞳子ええ。……今日、私はこれからフラワーガーデンのステージに立つわ。
瞳子みずみずしくはない。光だけを浴びて、まっすぐ育ってきた花ではない。
瞳子でも、それでいいと私は思うの。堂々と晒すわ。精いっぱい咲く私自身を。
瞳子たとえ、執着であっても――みっともない足掻きでも――それが、私という花だから。
美優瞳子さん……。
瞳子私が一度、挫折したアイドルだということは知っているわよね。
留美……ええ。調べてはいたわ。
瞳子だからかしらね。「人の運命には意志が宿っている」って……思うのよ。
美優運命の……それそのものが持つ、意志……ということ、ですか……?
瞳子運命は一度、私を叶わない夢の中へ突き落とした。そしてまた、気まぐれのように手を差し伸べた。
留美その時は……一言では済まないような悲しい想いも……悔しい想いも、したんでしょうね。
瞳子そう……だからこそ、再び掴んだ夢を……大切な人の手を私は絶対に離さないわ。強くその腕にしがみつく。
瞳子そうすることで、私は咲くの。無垢で透明なんかじゃない。執念の色にまみれた花よ。でも――
瞳子この世にたった一本くらい、そういう花があってもいいでしょ?
美優……はい。
留美……ありがとう。今日のステージ、学ばせてもらうわ。私も精いっぱいで、ね。
留美それから……またお会いできるかしら。いつかお時間のあるときにでも。
瞳子ええ。こちらこそ、お願いしたいわ。貴方たちのお話も、ぜひ聞かせて。
留美じゃあ、私たちはそろそろ行くけど……貴方はもうしばらくここに?
瞳子ええ。待つわ。もうすぐ寄ってくれる気がするの。私の「運命」さんがね……♪
美優ここには、いろんな花が咲いているんですね。この花……綺麗……とても色が深くて……。
留美「運命そのものに意志がある」……か……。
留美おとぎ話みたいで、以前の私……アイドルになる前の私なら、信じなかったでしょうね。
美優さっきの瞳子さんの言葉ですか。彼女らしい……強さのある言葉でした。
美優運命の持つ意志に、ただそのまま身を委ねるのではなく、無意味に抗うのでもない――。
留美運命を愛する、とでもいうのかしらね。
美優はい。過去の重みを知っているからこそ……今この場所にいる理由があるからこそ、輝く言葉でした。
美優……あっ、そろそろお客さんが入りはじめていますね。オープンステージですから、きっと偶然観ていく方も……。
留美ええ。ステージの上に、みんな今日はさまざまな花を見るのでしょう。
美優さまざまな形や色をした花たち……瞳子さんという花も、その中にあるんですね。
留美もしかするとその花は、すべての人にとって目を奪う花ではないのかもしれない。けれど――
留美誰かにとっては、彼女の花の色こそが、心のどこかでずっと待ち焦がれていた色そのもの、ということだってあるわ。
留美彼女が彼女のままに咲くその姿が、誰かに勇気や希望を与える。とてもアイドルらしい姿だわ。
留美服部瞳子さん。貴方と出会った今日こそが、きっと誰かにとって、運命の日になるのでしょうね。
瞳子あら、いらっしゃい。どう?素敵な花になったでしょう?
瞳子さて、ご注文をどうぞ。貴方好みの……コーヒーでいいかしら。なんてね♪

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